最低賃金上昇は若者の雇用機会を奪うのか?


「最低賃金をあげるべきだ!」
「労働者の最低賃金をあげると、逆に低練度の雇用がなくなんぞ!?」
「経営者側の傲慢だ!そんなのは低賃金で使い潰したいだけに違いない!」

なーんていう、長年の議論に日本の実態統計をぶつけるとなんかもう結果がでているようなので、レポートtoみんな。

アルバイト時給が大幅上昇 10月全国平均、10円近い上げ幅  :日本経済新聞
www.nikkei.com/article/DGXLASDJ19H3A_Z11C15A1EA2000/
全国の募集時平均時給は947円となり、前月に比べ7円上がった
(略)
10月に最低賃金が改定され、全国平均で18円(2.3%)上がった

最低賃金が18円あがってるのに7円反映ってことはそんだけ最低賃金界隈での募集が多かったってことかな。

 

東京都の最低時給は現在907円/時で、近所の商店街のお店とかみてると、もうバイトとか気軽におねがいできないわ、ひゃっほーいって感じ。日常品は販売価格の価格硬直性が高くて、値段変更が容易じゃなくて、まだ消費税とか円安まわりの粗利減少に対応できておらず、しかも労動付加価値低い産業なので、値頃感として新規バイトの賃金上昇圧に耐えられない。
www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

上位の5グループ、下位の5グループともに1.95-2.5%程度の綺麗な上昇になっており、ここ数年かなりでこぼこしている消費者物価指数やその他の雇用賃金統計などの経済実情から考慮したものというよりは、先に数字目標ありきの設定っぽい。

最低賃金上昇推移2015-11-20 18_22_03-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

で、この最低賃金上昇がどういう意味を持つのか?

 

労働力調査 長期時系列データとぶつけて評価してみよう。

雇用者数男女2015-11-20 18_28_03-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

近似曲線を引くと綺麗な線形がでてて、非正規はこの10年で約500万人増えてる。「非正規ガー」の議論に踏み込むとめんどくさいことになるので今回はスルー。

雇用者数男2015-11-20 18_32_30-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

男性の非正規はそれほど増えておらず、比較的変化がなだらかであることがわかる。

 

雇用者数女2015-11-20 18_35_31-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

とくに非正規の雇用の問題が女性がメインであることがわかる。

で、そのなかから特に非熟練、低練度である労働者、24歳未満の女性の推移をみてみる。

雇用者数24歳未満女2015-11-20 18_37_53-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

正規、非正規ともに数としては減少していることがわかる。

これだけでは人口動態による変化を含んでしまっている可能性があるので、年齢階級別の人口統計から就労可能人口を年代別にぶつけて、%にした。

雇用者数24歳未満女割合2015-11-20 18_43_05-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

結論、総世代では非正規は増加傾向にあるにもかかわらず、低年齢層では正規だけじゃなくて、非正規の数も減っておりましたとさ。

 

 

雇用者数24歳未満男割合2015-11-20 18_52_40-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

ちなみに男でもゆるやかながら同傾向。

 

雇用者数34歳未満男 割合2015-11-20 18_54_56-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel 雇用者数34歳未満割合女2015-11-20 18_57_54-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

非熟練の雇い止めをして、24~34歳ぐらいのバリバリ実務担当できるぐらいの練度の労働者を非正規化することで賃金をさげることでなにをあれこれしているんでしょうね。

 

ちなみに、完全失業率は改善しています。
www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/

 

仕事を潰さないかわりにみんなでワークシェアしているような感じでしょうか?

別にこの結果をもってして最低賃金上昇が原因だ!と申そうとしているわけではなくて、労働力もモジュール化した社会において、労働生産性がひくいところで低練度の労働者を雇い入れる弾性力がなくなってるだけだともおもう。みんなの賃金もあがってハッピーってなるためには社会全体のパイが拡大していないとだめ。いま、縮小を始めたところなので(こないだRESAS調べてて面白データみつけたのでこんど紹介するね)、こっちを先に改善しないと、低練度の労働資本に頼らざるをえない若年労働者がワリを食うよね。なんてことを申したいのでございます。

 

まあなんですかね、そういうツケを若年者、とくに女性が払わされているというのは、最低賃金あげてやったから感謝しろという態度以上に考えなければいけないものがありますな。戦争法案だなんだと、およよってる間に意味のわからん労動派遣法改正が通ってるし、資本金純資産で2000万詰めない中小とかは営業ができなくなるし。なんていうか数字先行で実態みてない感じがして、なにがしたいんだろうなと思うところです。数字がつくりたいだけなのかな?

 

 

雇用形態別雇用者数 - 全国 男女計
www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm#hyo_1

表10
【年平均結果―全国】
年齢階級,雇用形態別雇用者数(エクセル:163KB)(正規の職員・従業員,非正規の職員・従業員(パート・アルバイト,派遣社員など)) (2002年~)

表3
【年平均結果―全国】
(1) 年齢階級(5歳階級)別15歳以上人口(エクセル:86KB) (1968年~)


稼げない人のお金の使い方、またはその逆


お金を稼ぐ人は何にお金を使っているのか。逆に稼げない人はどうか?

平成26年(2014年) 年報 家計調査年報(家計収支編) 第3表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(総世帯)を元に、しらべ、全体平均と区分平均との比率をグラフにした。
www.stat.go.jp/data/kakei/2014np/index.htm

具体的には区分ごとの平均を

  • 年収171万未満ブロックの平均が122万
  • 年収171~244万ブロックの平均が209万
  • 年収244~304万ブロックの平均が276万
  • 年収304~360万ブロックの平均が333万
  • 年収360~325万ブロックの平均が391万
  • 年収425~504万ブロックの平均が463万
  • 年収504~601万ブロックの平均が550万
  • 年収601~737万ブロックの平均が663万
  • 年収737~941万ブロックの平均が828万
  • 年収941以上ブロックの平均が1308万

年間収入(万円)の全体の平均514万で割って、
全体平均からの乖離割合を%でグラフ化する。

171万のブロックでは122/514=23.74% というようにだ。
グラフにするとこうなる。

年間収入

こんどはコレに消費支出、どれだけお金を使っているかという%のグラフを足してみる。
ちなみに全体の平均は25万だ。

消費支出

そうすると、低所得者は収入は全体平均の23%だが、支出は44%(11万)と収入のわりにお金をつかっていることがわかり、逆に高額所得者は平均1308万を稼いでる層でも176%(44万)と稼ぎのわりには支出していないことがわかる。

世帯人員

世帯人員は年収の低い人ほど独居率、少人数世帯が多く、有業人員=職に就いている人は、425万の層まで1人以下で働いていないことがわかる。グラフには記載しなかったが、世帯主の平均年令が全体平均が58.3歳、171万未満ブロックは66.1歳であることから低収入の場合は独居老人が多く含まれていることが伺える。
意外な事に世帯収入による持ち家率の差はあまりなく、最低所得層を除けば7割代であることがわかる。
持ち家でもない、家賃も地代も払っていないなぞの層が低所得者で6.4%(生活保護かな?)他の層では2%前後(パラサイトかな?)、最高所得層では-0.4%存在する(セカンドハウスかな?)。

食料部門

生鮮食品

生鮮食品

生鮮食品はあまり世帯ごとに掛けている金額がかわらないことがわかる。最高所得者層でも平均の160%程度で収まっている。世帯人員が3倍差があることを考えると随分と安くついている。逆に低所得者層は年収に比べると食料品がずいぶんと高くついている。お一人様分で野菜などを買うのは非効率、不経済であることがわかる。所得504万の層で果物類が落ち込んでいてここに自由に使えるお金の壁、逆転する何かがあるように感じる。

油や調味料、菓子類なども同様の傾向なので飛ばす。

飲料

飲料

面白いのが中所得者層(360万、425万)で茶や、他の飲料に掛ける金額の低下がみられること。本業が紅茶屋であるので、少しここには踏み込んで調べてみたい。後日、1世帯当たり品目別支出金額から、何食って、何を飲んでいるのかをから細かく調べてまとめたいとおもう。

外食

外食

ようやくグラフに変化が出だした。
賄い費は賄い付きの同居人がいる単身世帯のみの計算で、逆に学校給食は単身世帯では計算しないそうだ。
給食費が高所得者ほど跳ね上がっているのでホテルオークラのシェフがつくった給食でも食ってる連中が平均を押し上げているのかと思ったのだけれども単純に低所得者層が就学児童数を抱える数はすくないのであろう。老人年金世帯が多いのであれば納得だ。逆に賄い費が多いということは扶養食費が多いことを意味している。

生活住居部門

住居

住居

低所得者でも家賃地代にお金をかけていることがわかる。逆に高所得者はレントの費用は下がり、修繕や工事の費用があがっている。黄色の棒、これについて面白いのが山が3つほどあることだ。244万、504万の層で一旦下がる。ライフステージの問題であろうか?

光熱費

光熱費

年収によってほとんど変わらない。高所得であったり世帯人員が増えたからといって光熱費では贅沢のしようもないということであろう。唯一、低所得者層で人気の「他の光熱費」について目がひかれるが、詳しく細目を調べたら主には灯油であった。その他もあったが少額で炭とか薪などであろう。

家具類

家具類

所得による差が歴然と出だした。耐久財であるために買い替えの必要がほとんどなく、かつ無くても生活にはさほど困らないためか、737万の層になるまで平均に達しない。つまり高額所得者の消費が平均を著しく押し上げている。
オーダーメイドが効くようなワンオフの高級家具屋か、ニトリやイケアのような大型量家具店の二極化していることを意味していて、中間所得者層向けの家具屋がブルーオーシャンであることがわかる。なお生命の少ないブルーオーシャンで生きていけるとは限らない。

ファッション

ファッション

お洒落は足元から、靴を見ればわかるというが実態は少し違うようだ。
ファッションも家具と同様、お金を掛けなくても死にはしない分野のため、所得によって明確な差が出ているがその変化は足元からではないようだ。下着類は425万を超えたあたりから平均に達し、履物で見分けるには504万、そして突然和服とかに手を出しだしたら年収601万の層だ。洋服で見分けようとすると737万ぐらいになるまで平均から乖離しない。

和服は高価でかつ着れるスチュエーションも限られている。祭りのような年に一度しか出番のないハッピのようなものでも3万ぐらいする。お付き合いで和服を買えるようになるにはある程度の収入が必要なのであろう。
また高価被服品を揃えるとクリーニング(洗濯代)などの被服関連サービスにお金を使うようになるのも特徴か。クリーニングを平均以上に利用しだすのも年収601万からの層である。

健康医療

保険医療、健康保持用摂取品などは中間所得者向けのサービスのようだ。所得が多いからといって消費が多くなるわけでも、所得がすくないからといって利用をすくなくできるわけでもない。低所得者層だけ64%、82%と離れているが、横並びとなっている。図は省略する。

交通・通信部門

交通通信

自動車購入が必要なのは所得360万の層のようだ。
交通費や通信費は年収に応じて増えていく。稼ぐためには移動や通信が必要であることが伺える。自動車購入とはリニアではないようだ。
逆に自動車の購入は737万の層をピークに落ち着く。推測であるが、そもそも年収1000万を超えるようであれば人件費払いではなく事業経費としたほうが税控除の範囲が広くなるので、高級車などを個人消費支出でまかなうよりも社用車として購入しているのではないだろうか。

教育

教育

稼げない人のお金の使い方の答えがここにあるように感じた。これが結論だ。
0.57%と、もはや棒グラフにも表示できないほどショックな値なので、表中にデータテーブルを追加しておく。教養娯楽サービスには宿泊料、パック旅行費、月謝類が含まれるが代表値として月謝類を採用した。

単身世帯が多いこともあるとは思うが、教育につかうお金の差はファッションや家具などを大きく引き離す。
最低所得者層が最高所得者層の比較を具体額で計算すると教育はなんと560倍もある。
比較的に差があった家具でさえ9.2倍、和服が15.3倍であることを考えるとそれらすら無視してよいぐらいのスケールの差があることがわかる。
教育に興味がないから稼げないのか、稼げないから教育に投資できないのかその順序はともかくとして、貧困の再生産と裕福層の再生産は教育によりおこなわれている。

貧富の差を埋めるために教育費を下げろという言説があるが、そもそも教育以外には消費をしているのだ。分配の問題でどれだけ振る舞いが違うかで差がもっとも顕著にでたところが教育というのは仕組みの問題ではなくマインドの問題である。

書籍など印刷物への消費価格がそれほど変わらないのはどんなに高い本を買っても、読める量には限界があることと、低俗とされる印刷物でも結構なお値段がすることによるものだろう。細目を5階層分類による富裕層と低所得者層とで比較してみると新聞は73%であるのにたいし、書籍は35%しか使っていないことがわかる。

同様に教育の細目も計算しておく。授業料等2.1%、教科書・学習参考教材3.3%、補習教育0.9%である。

授業料
授業料

教科書代など
教科書代

余談であるが消費支出にパチンコのような特定娯楽品目はない。諸雑費サービスだとすると、貧富対比32%、諸雑費たばこで86%つかっている。

月謝類

高所得者ほどスポーツ、音楽目的の月謝にお金をつかっていることがわかる。

こづかいなど

こづかい

教育の後ではもうインパクトも無いが、こづかいと交際費についても載せておく。
交際費は所得に応じてあまり変化があるものではないが、所得が多くなると使途不明金は増えていくようだ。

結論

教育だよ教育。教育にお金を使うか使わないかがあきらかな違い。


軽減税率が負担軽減のためだなんて信じるの?


いや、そもそも税が再分配のために行われてるなんてことを信じて救われるのかい?
どんな商売でも率で相手が言い出した時は注意しろ?

h26エンゲル係数消費支出率
家計調査年報(家計収支編)平成26年(2014年) 第3表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯 当たり1か月間の収入と支出(総世帯)より作成

年間171万以下の低所得者は月に30,424円を食費にかけるので2%軽減すると608円
年間941万以上の高所得者は月に92,253円を食費にかけるので2%軽減すると1,845円

複雑にすると、裁量が生まれる。裁量は権利であり利権だ。
ああ、だからシンプルにしておけって言ったのに、このバカ。
KISS(Keep it simple,stupid!)の原則はなにもエンジニアリング業界だけではない。
制度、施策はなぜもこんなにスパゲッティモンスターなのか。窓からどこまでも空高く投げ飛ばしたほうがいい。

英米法系と大陸法系

先に日本の法律体系について言っておかなければならない。
英米は判例重視で、運用してみて、なんか問題があったら裁判にして、判断を積み重ねる。
日本やドイツは事前に法で定義した範囲で運用する許認可制。ルールで許可されていないことはやってはいけない。

もし「XXX」 だったら やってもよい(大陸法系:許認可制)
もし「XXX」 だったら やっちゃだめ(英米法系:判例重視)

許認可制をうまく運用していくためには、物事がおきるまえに事前にXXXを定義していく必要がある。
だから、まだ技術や常識、倫理が確立していない新しく未知のものに対する取り組みはアメリカのような国で「やってみよう」というスタンスのほうがスピーディーに取り組める。また取り組んだ結果、裁判でやっぱダメーとなる「事故」も多い。
逆に日本ではやったことが裁判でひっくり返るような事故はまずないが、まだそれが起きてももないうちに審議を尽くさなければいけないので議論が見当違いだったり、ともかく足が遅い。
これは、どちらがいいというのではなく、それぞれの特徴。一長一短。

特に日本では、

  • お酒製造免許をもっていればお酒をつくってもよい
  • お酒製造免許取得には生産能力があること
  • 生産能力があることはお酒の製造実績により証明される

このような論理的に二律背反するサンドイッチで挟むことによって、だいたい何でもお上にお伺いを立て特別に許可をもらわないと「やっちゃだめ」という仕組みになっている。
まあ、だから運用のために認可をするのは人間系でカバーせざるを得ず、特定個人による裁量が入り込む余地が多くなってしまう。ロジックが破綻していることが多く、悪く言えば人治になっている部分も多い。
そこで「やっちゃダメ」の例外をつくるために、ともかく但し書きをつけていく。ただしYYYでZZZの時は除く。
法律にバッチをあてて穴をあけていく。
さて、これが議論の前提。

軽減税率はまさに穴あけ

消費税は10%とする。「但し」「XXX」は除く。
「XXX」とは「YYY」であること。
「YYY」であるためには「ZZZ」を満たすこと。
とかね、ともかく例外がずらりと定義される。

食料品とはどんな定義なのか、食玩付きのお菓子は食料なのか玩具なのか。高級品はいくらからが高級品なのか。それともグラム単位だとどうなるのか。など事細かく場合分けをしていく。if文だらけの糞プログラム。

ルールを複雑にすると、穴をついたり、その認定認可の過程で個人のごまかしや裁量が入り込む余地がおおきくうまれる。

分配はまさに権利

消費税は社会福祉に使うよという目的税なんだって。でも建前と実際が違うのなんて中学生だって知ってるよね。
結局、どのように分配するのか予算を決める過程で個人の裁量がはいりこむので、大きく目的とずれちゃうんだよね。

そもそもそれをチェックする仕組みがない。
企業の財務会計なら何にいくらつかっていくらのリターンがあったかがわかるようになっている。
自治体もようやく財務諸表が公開されるようになったが、結局はいまだにもって単式簿記。
予算が守られているかは確認するけれども、その内実、社会保障に割り当てられた予算が「再分配」にまわっているのか、社会保障関係の施設の「土地建物」にまわっているのかはチェックできない。

税による再分配.pdf

だからこうなる。税による再分配効果?税はとっているけど再分配なんておこなわれていない。よくわからないうちに取られてよくわからないところに消えていく。まずは会計をなんとかしないと議論もできないよね。

消費税増税の影響

途中がどうなってるかわからないから結果で追うしか無い。
制度を設計している人たちの目標が、それぞれがどれだけ大きな裁量を握るかというところに執着しているので、その制度の結果どうなったかというところは無視されがちになる。
消費税を増税したらどの程度の経済的影響があるかという議論はあったけれども結局どうなったかという評価もたいしてすることなく次の増税と軽減税率について論じようとしている。

でも、実際に観測されたのはコレだ。
消費税率引上げの影響 - 内閣府

消費総合指数

補助線を引いておく。

消費総合指数 補助線付き

この景気減速によるブレーキなければ税収もあがってたんじゃないかっていう話。

生かさず殺さずかね。むしろ殺しにかかってるよね。

でも死んじゃう!

軽減税率がなされると死ぬのは中小企業だけではない。
どんなレジスターにも企業独自の管理会計の仕組みにも、財務会計の仕組みにも商品ごとに税率を変更する仕組みなんてない。お金が絡むシステムすべてが作り直しになる。修繕じゃすまない。作り直し。

例えば、多くのお店が持っているレジスターにはPLUと呼ばれる商品ID(PK)と、部門、商品名、商品価格程度がはいっている。消費税率はレジスターに設定されている1つのみだ。

中小企業はまずこの時点で、すべてを内税にして売価として処理をしなければならなくなるが、例えば、値引きなどの日常的な処理が100円(外税)の40%引きなのか、110円(内税)の40%引きなのかはまるで違う結果になる。
例えば売上1000万円未満の零細企業でも、結局のところ仕入れ時に支払い消費税があるので、その分の原価変更をおこなわなければならない。

この原価変更によりお店取り扱いの商品のすべての価格が変更になる。
レジスター、店頭、全てね。これが全国のお店の数分おきる。お店本業とは関係ないところで、雑務で死んじゃうんだから。

で、値段変更しても、結局卸元からまた値段変更通知がくるでしょ?
そうするとまた値段変更するでしょ?
するとまた玉突きがおきて値段変更が発生するでしょ?
あっちが変更したらこっちも変更しなきゃで1年は価格が落ち着かないんだよ。

価格設定が1年に一回みたいな業界も多いのに、事前に売り出してたら仕入れ値が変わっちゃったとか悲劇だよね。

大手上場企業だって多くの業界で税引き前利益なんて5%もなくて、平均で食品3.8%卸1.49%とかなわけですよ。
消費税とかで2%とか3%とか軽くあげちゃってくれてるけど、そんな大雑把なことされても吸収できる余裕ないんだよね。

さて、この値段変更。利益にも結びつかなければ、生産性の向上とも結びつかないんだ。
コストセンターでしかない。
国民が「健康で文化的な生活を営む」ことを目標とするなら、なんら貢献のない労動だよね。
国民に朝方に穴掘って、夕方に埋め戻す仕事ばかりさせてたらみんな狂っちゃうよね。

大手ならPOSレジをいじるだけで対応できるでしょ?とか思ってるのかもしれないけど、そこらへん設計したこともあるけど、そんなふうにはなってねぇからな。税率変えるだけでしょとか言う奴いたらちょっとツイッターで呟いてごらん。

場合の組み合わせが跳ね上がるから、まじで作り直しなんだよ。商品テーブルだけだったのが、軽減税率テーブルと軽減税率品目テーブルを持たなきゃいけない。

州ごとに税率が異なったり、イートインとトゥーゴーで税率が違ったりする国はそういう社会資本やら文化資本があったうえでのその税率なんだよ。そもそもチップの文化で源泉徴収がされているとでも言うのかい?

全然軽減じゃないんだよ。じゃぁぁあああああないんだよっ。

エンゲル係数の統計では23%、年収300万ですべてを消費支出にまわしてたとしても年間食費は69万、ここから2%を軽減しても13,800円にしかならない。月1000円だよ?
そんなもののために仕組みをつくろうとしている。
なら低所得者に配るかその分予め引いておけばいいじゃない。
消費税を9%にするのと何が違うのか。結果ではなくプロセスで存在感を出したいからだけでしょ。

なにに税金をかけるのかということを決定する権力を持ちたいがために、いったいいくつの屍をつくるつもりなのか。

家計調査によれば別に年収250万だろうが2,000万だろうがエンゲル係数はその実あまり変わらない。消費支出のわりあいもあんまかわらない。
高級食材をあつかっているスーパーに行けば、物価の優等生である鶏卵だって1つ600円ぐらいする烏骨鶏があるんだ。
某金持ちの住まうエリアでは月間の食費に百万以上かけている家庭がゴロゴロと存在している。
年間2万もいかない税負担を軽減させるふりして、20万以上軽くなる家庭もあるからね。誰のための軽減だって話しだよ。

つうか、零細小売をやっている身としては消費税増税による値付け混乱という懲役から自由になりたいんで、軽減税率とかさらなる罰ゲーム勘弁してくださいというのが本音なんだけどね。まじで勘弁。

だから、複雑なルールをつくって我が物顔させておくよりは、できるだけシンプルにしておけっていう話しさ。

参考引用資料など

www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je09/pdf/09p03023.pdf
第1節 労働市場の構造変化と家計行動>第3-2-13図 再分配効果の国際比較

僕が軽減税率には絶対反対な理由
rick08.hatenablog.com/entry/2014/12/05/135909

軽減税率はむしろ富裕層減税??
ameblo.jp/typexr/entry-11925151199.html

軽減税率で税金が安くなる! と喜んでいるあなたへ ・・・勘違いしてるだけです
cocoopit-2.hatenablog.com/entry/2015/09/14/140754

消費税
内閣府ホーム > 経済財政政策 > 白書等(経済財政白書、世界経済の潮流等) > 平成26年度 年次経済財政報告 >www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je14/index.html
第1-1-2図 消費税率引上げの影響
www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je14/h05_hz010102.html

内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 経済財政政策 > 月例経済報告関係資料 > 月例経済報告
www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html

家計調査 家計収支編 総世帯 詳細結果表 年次 2014年
www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001129456