メートル法について


前回、前々回とお米と、アメリカ(米国)について書いたので、「米(メートル)」について書こうと思う。
米つながり。
ちなみにメートルの当て字の「米」ね。米 (m)、瓦 (g)、立 (L)。
と、思って、メートルでニュースみてみたんだけど、メートルのニュースなんてないよな。

4月から大学生になった子も多いとおもうけど、理系の大学に進学するとまず習うのがSI単位系なんではないだろうか?

アメリカとかで使われているヤード・ポンド法とかもあるけど、国際的な規格はSI単位系。メートル法。
NASAの火星探査機が落ちた理由が、ヤーポンとメートルを間違えたからみたいな話しもある。調べると原因はそれだけではないみたいだけど、まあ、実務ではヤーポンに向き合うと、トラブルもまま経験することになるので、完全には無視できないところ。国際通商では単位とても大事。

テレビやモニターのサイズなんかもいまだにインチだし、ゴルフなんかでも何ヤードみたいな言い方はいまだにする。
例えば、靴のサイズひとつとっても英国とアメリカで同じインチを採用しているはずなのにサイズが違う。

日本の25センチはUSだと7インチになって、UKだと6.5インチになる。メンズとレディースでも違って、レディースの25センチはUS8インチで、UKだと6.5インチになる。つまるところ、なんのこっちゃわからねぇって話し。

天下を我が物とするために、権力者が常々やってきたのは利便性ではなく、単位の統一と変更。

日本でも明治維新政府が、幕府の影響を削ぐためにいろいろやった。
前任者の全否定、キャンセルは世の常。
明治改暦もそのひとつで、不定時法(日中、夜間の1/6を1刻とする。夏と冬で1刻の長さが違う)から現在の24時間制の定時法に。暦も農業に適した太陰暦から太陽暦への変更した。
その中でも、尺貫法から計量法への変更も行われたのだが、これにはだいぶ苦労している様子がうかがえる。

度量衡法、尺貫法と併用1891年(明治24年)
から、
尺貫法の使用を禁止1951年(昭和26年)
メートル法完全実施は1959年(昭和34年)
まではだいぶ間、60年もある。

祖父の持ち物で、秤が新品の状態で出てきて、なんだろうと思ったのだが、尺貫法が禁じられる昭和34年直前に買ったのだろう。祖父らしい。

twitter.com/intent/retweet?tweet_id=1443897196672217090

これなどを見ると、この資料が何年のものかはわからないが、
尺貫度量衡の製造禁止、昭和9年(1934年)
メートル法以外の使用禁止、昭和14年(1939年)
とあることから、少なくとも昭和初期にも完全切り替えをしようとして失敗していることがうかがえる。

無理もない。
明治24年の導入から少なくとも数十年は送らないとその単位を仕事でバリバリ使っていた旧世代が引退しない限り無理だ。

特に、建築物などに使われる単位となると世代を超えて単位が残る。
ホームセンターなどでは2×4木材が182cmとかあるいは364cmで売られているが、これは単に江戸間の1間が約182cmだからである。182cmが1単位になっているので、これを1単位にしていろいろ作ると、いろいろすっぽりハマるのである。

1間とか、1坪、1畳とか、民家から畳がなくなっても、お部屋が何畳という感覚は、伝統建築物がその単位で残る限り残り続けるだろう。だって近代工業製品である電車のドアだって182cmみたいな高さで未だに設計されるからね。メートル法にあわせて2mのドアとかだったらなんかそわそわするとおもうよ。
座って半畳、寝て一畳とか、半歩の距離とかみたいな、肉体に基づいたサイズ感は、家具の使い勝手や街全体にかかるものなので、北極から赤道までの長さを1000万で割った1メートルよりも、実感訴求力があるのはいたしかたないところ。

江戸期の江戸は、人口密集と物流から栄養状態が悪く、身長が低く平均で156cm程度しかなかったと研究されている。

・江戸間では一畳が176cm×88cm
・京間は一畳が191cm×95.5cm

で、江戸の一畳が小さいのも、こういった理由からだろう。
時代が進めば、もしかしたら洋式便器の高さが1単位になるかもしれない。
ちなみに国によって体格が異なるので、便器の高さは国によってだいぶ違うが、日本国内ではだいたい一緒。
というのも、日本人の平均身長は、ほぼすべての都道府県で数センチも差がないから。

茶碗一杯の量とか、ドリンクの標準サイズとか、そういう、淘汰されてもある程度残る単位っていうのは、生活に根ざしたものになるので、それが文化なのかなって思う。

まあ、だが、華氏(°F)貴様だけは許さないけど。

参考

メートル法
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E6%B3%95

メートル法になれましょう 昭和34年
x.com/intent/retweet?tweet_id=1443587526640369666

ちなみにこのメートル法の資料でもう1つ、見つけたことあるものがこちら(昭和初期)
x.com/intent/retweet?tweet_id=1443897196672217090

マーズ・クライメイト・オービター
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%BC

「NASAの火星探査機がヤード・ポンド法が原因で失敗した」という話は正しいのか?
note.com/celestial_worlds/n/nb77ea16bf253

US/UKサイズの靴は何cm…?靴の『サイズ』を徹底解説!
www.t-w-c.net/topics/detail/1225/

尺貫法とは? 歴史や計算方法、住宅建築での使い方
www.eyefulhome.jp/sodate/article/japanese-traditional-unit/

京間(関西間)とは?畳の寸法・サイズや江戸間(関東間)との違いやについて解説!
suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/sumai_nyumon/other/kyouma/

ワインボトルの世界基準が750mlの理由とは
wsommelier.com/note/2024/12/06/post-844r/

明治改暦
ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E6%94%B9%E6%9A%A6

江戸時代の男女の平均身長はどれくらいか。(2004年)
www.edo-tokyo-museum.or.jp/purpose/library/reference/alphabet/5148/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%94%B7%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%B9%B3%E5%9D%87%E8%BA%AB%E9%95%B7%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%82%8C%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%8B%E3%80%82%EF%BC%882004


coinhive公開意見書の事前公開


coinhiveについて意見書なるものが求められてると聞き、ちょろりと書こうと思ったのだが、技術者と呼ぶにはロートルなので公開する。それは変じゃねってあったらコメントつけてください。・・・ロートル。英語かとおもったら老頭児、中国語なんだね。らぉとぅ儿か。びっくりだ。

私は誰か

2000年初頭、新卒から技術職が50~100名程度のちいさなソフトウエア開発会社にプログラマー技術職として勤めていた。スペシャリストや部長職などを経て、子会社の役員CTOなどもやったが、ご多分に漏れずSIerと呼ばれるシステム開発業界隈から身を遠ざけ、緩く喫茶や小売業をまったりやる個人起業をし十数年になる。

技術職であった期間より、もはや商店街で部長をやっている期間のほうが長くなり、プログラマーとしては疑問符がつくようになってしまったが、おかげさまでICT界隈の技術には理解がない人達へ説明をする能力は得ることができた。

自分で手を動かし、ある程度のソフトウエアは設計から実装まで仕上げることができたが、前線からは離れているので先端技術者としてのスペシャリティはない。だが、プログラマーが集まるコミュニティの運営をしているので技術者の声は今でも聞くし、三鷹市界隈のICT事業者をあつめた協会の理事もやっているので経営者の声も聞く。ついでに言うと三鷹市の情報推進の委員などもしているので行政の意見も聞く機会があり広範囲に情報は得ているほうだと思う。

そのような観点からcoinhive騒動についての意見を申し上げたい。
なお、これからの意見は会社や組織を代表するものではなく、あくまで個人の意見である。おさだまり文言。

論点項目

・行為の主体
・刑法としての解釈
・coinhiveの評価と程度の問題

行為の主体

商店主にプログラミング言語を説明しようとしたら、ぴ~ひょろろというFAXが発する音のようなものを発声するのだと言う人が居たが、これを読まれる方は、そのような層よりはパソコンなどの操作について馴染みがあるものとして話しをすすめる。

プログラミングとは、簡単に言えばコンピューターが動作するにあたり、どのように挙動するかの指示を列挙した指示書のようなものである。

指示の中で別の指示書を呼び出したりするのが最近のプログラムでは常なので、そのため連鎖反応のように自動で実行されているように見えるものもあるが、あくまで実行の主体者は辿れば最初にそれを実行した者に行き着く。

正常系であれば実行者が居て、それを実行可能な環境が揃うことで実行結果を得ることができる。
異常系であれば機械などハードウエアの異常が不随意に発生したもの、または製作者も意図していなかった挙動、実行者の意図を欺いて実行されるものなどが考えられる。

多くの人が無自覚におこなっているホームページ閲覧という仕組みの正常系を技術的に考えてみると、閲覧者はまずホームページを保管しているサーバーへ閲覧したいという要望(リクエスト)を投げる。サーバー側はそれを許可し閲覧者にアクセスさせる。閲覧者はそれを自身のパソコンなどに持ち帰り自身のマシンで指示書を翻訳し実行し、閲覧を行う。

ホームページの提供者は閲覧者がいつ来てもよいように、家(サーバー)の鍵(ポート)をあけて待機状態(リッスン)にしておき、ときにはそのリクエストに応じてサーバー側で演算して実行結果として渡してあげる必要がある。最初に問い合わせをし閲覧許可の要望を投げるのも、それを実行するのも行為の主体は閲覧者である。閲覧者の指示を契機にしておこなわれる。

刑法としての解釈

いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪(不正指令電磁的記録作成等)についてであるが、coinhiveはこの定義からは外れるものと考える。実行形態を見ても実行結果をみてもそもそもコンピューターウイルスの定義に当てはまらない。

coinhiveなどを利用し、ホームページ提供者でもない第三者が他者のホームページを書き換えマイニングスクリプトを設置したり、閲覧者がリクエストもしてないのに保存させたり実行させたり、なにかを騙り詐謀しユーザーにマイニングをさせるマルウエアやウイルスは存在する。しかし、それらのものと今回のWEBデザイナーがWEBサイトの部品としてcoinhiveを設置したものは手続き的にも技術的にも明確に区別できる。

今回の場合、ホームページ提供者が設置したものを閲覧者がリクエストして、それに応じてファイルへのアクセスを許可したものであり、またそれを実行したのも閲覧者である。

閲覧者はそのホームページのURLにアクセスすることで構成する索引(インデックスファイル)を取得し、その索引から閲覧するために個々のファイルを取得する。閲覧者の意図はホームページ全体を完全な形で閲覧することを前提としており、その意図に添った動作を行っているといえる。

プログラムや提供されるホームページを著者の著作物だと考えれば、著作者人格権うち同一性保持権は適応されて然るべきであろう。公衆送信権をサーバーに委譲しているに過ぎない。

もし、閲覧者の意図がホームページの完全な状態の実行ではなく、作者が意図しない形で閲覧をしたいのであれば、その閲覧者の意図に沿ってHTTPリクエストを逐次段階的に処理していく必要がある。TCP/IPのプロトコル(決まりごと)はそれを可能にしているが、手順が煩雑になるために、閲覧実行時(ブラウジング)に実行権限を委譲することでブラウザーがリクエストと応答をまとめて代理処理されている。

一般的なホームページ閲覧ソフト(ブラウザー)はjavascriptの実行を許可しない設定に切り替えることができるし、httpプロトコルをブラウザ任せにしなければ、その取捨選択をおこなう機会は失われていない。
インターネットを構築する技術仕様はRFCで公開されており、それに則ったやりとりの範囲でおこなわれる。しかも今回の件は、ブラウザが許可した範囲内でしか動けないJavaScriptの話しである。ページを立ち去れば終了するのだ。

仕様上そのようにはなっていないので、閲覧者側に気がつく機会は提供されなかったものとは言うことはできない。その機会をブラウザに権限委譲することで煩わしさから逃れているのだ。現代において一般的なホームページ上でも数えられぬほどのJavaScriptが動いている。もし、chormeブラウザを使っているならF12ボタンを押せば、現在どのようなファイルを取得して実行していて、ネットワークの状態などを検証することは容易に確認することができるだろう。確認してみるといい。そのうちいくつが閲覧者の意図に沿ったものだろうか?ホームページ設置者すら意図していないものもあるかもしれない。

coinhiveの実行はホームページの閲覧には不必要な挙動であり、正当な理由のないものとの意見、解釈もあるだろう。だが、ホームページ提供者の意図を閲覧者が定義することはできない。製作者が意図する完全な状態はcoinhiveを含むものとする著作者意図を閲覧者側の閲覧したいものの意図に沿わないから不正な電磁的記録であるとしてしまう危険性を今一度考慮する必要がある。

著作物と閲覧者が異なる人物である場合、閲覧者の意図を過不足なく斟酌して、著作者が著作物を用意することはできない。閲覧者の意図によって、その内容が不正指令電磁的記録になるのであれば、その影響範囲は現行のインターネット上の仕組みの根幹にも影響する。

インターネット初期の頃、ホームページを開くと自動で音楽が流れるようなサイトも多くあった。現在の流行りはサイトを閲覧するために動画広告を強制的に視聴させるようなホームページも多い。
これらの動画を流すために、見えないところで広告をより効率的に見せるためのトラッカー、アクセス解析などが動いている。情報を取得しユーザー上のマシンリソースを使用している。coinhiveと、広告などとの違いを社会的コンセンサスという不確かな定義のものの上に置いてしまうと、技術的にはそれらを区別することはできなくなるだろう。 欧州のGDPRのおかげでcookieなどはオプトイン形式になり可視化されつつあるが、 認識されていないだけで見えていない広告関連の仕組みは実に多い。ユーザーには一見認識することができない非常に多くの構造体が目に見える仕組みを支えている。

ホームページ提供者が閲覧者のマシン演算力をより多く必要とする部品を設置することにマナーとしては諸説紛々あるやもしれないが、これをもってコンピュータウイルスの定義を当てはめるのは定義を拡大しすぎである。

coinhiveの評価と程度の問題

ホームページの維持管理のためには、閲覧者が24時間いつきてもいいように電気をつけて待っている必要がある。経済的利益の確保はホームページ更新の動機になるばかりでなく必要な経費であり正当な理由の範囲内として考えることができる。 というより設置者が得られる利益も、閲覧者に見込まれる不利益もはたして公の議論にあたいするほど影響があるほどボリュームがあるものとは考えられない。いったいいくらの経済被害がこれによって生じうるのか。捜査や公判維持にいくらの経費をかけているのか。

coinhiveが問題となったのは、おそらくは、ホームページ改ざんなどで他人のホームページにそれらを埋め込むウイルスが流行ったことによりウイルス対策プログラムのパターンファイルに登録されたことをきっかけにウイルスと誤認されたことをきっかけにしているにすぎないように思う。また、仮想通貨のマイニングといういかがわしさが拍車をかけているのだろう。

だが、いちWEBデザイナーがホームページの部品として設置できる程度のものに、刑法犯に問うべきような過失や未必の故意がありえるだろうか?

いったい閲覧者に幾らの経済的損失を与え、幾らの不当な利益を得たというのだろうか? ホームページ閲覧中の滞在時間、javascriptがブラウザ上の割り当てたメモリ内とCPUの優先順序で動ける範囲で消費できる電気料金?数円、よくって数十円、どんなにがんばっても数百円もいかないだろう。見込める利益も予見の範囲、たかが知れている。

coinhiveで逮捕されたと話題になった当時、評価のため、オーストラリアのユニセフが設置したcoinhiveにアクセスしたり、通常のサイトと閲覧比較をしてCPU利用率などを比べてみたことがある。

下記は、量販品のメーカー製パソコンでCPU50%でcoinhiveを回したときのCPU可動遷移率だ。

次の画像は動画が再生される毎日新聞社のニュースページのCPU可動遷移率。

CPU稼働率の上限を制御できる分、coinhiveのほうがまだ閲覧者のPCには優しい。 電気泥棒だなどと非難する声もあるが、動画広告は閲覧者の時間泥棒である。通信帯域も食うことから、中継機の電気も食うし、その後のハードディスクの保存量も食う。 個人的にはホームページ閲覧の滞在時間なども勘案すればCPU利用率を2-30%ぐらいに絞ってくれるのならば動画広告より歓迎すべき未来のようにも思える。

画面のはじっこでチラチラ変な動画がぴょこぴょこしていたり、得ようとしている情報とは関係ないPR情報が記事に割り込んでくるのは苦痛なので、こういう収益化手段の遷移は歓迎したい。

たしかに仮想通貨マイニングはうさんくさい。coinhiveも終了した。だが、分散コンピューティングは将来は公益に資する可能性が大きくある。

いま人類を悩ませている新型コロナウイルス(COVID-19)。この解析に分散コンピューティングのFolding@homeプロジェクトが動きはじめている。
だがどうだろう、もし誰かが、これらをブラウザ上でも動くようにするプログラムを書いて、ホームページ上に置くことでこれらの解析に貢献できるものを作ったら? 日本では設置した人も、設置できるコードを書いた人も刑事罰の対象として逮捕されてしまうのだろうか。もしされないのであればその違いはなんであろうか。罪刑は法律が規定する範囲で運用されるべきもので、刑法犯については特に慎重に検討願いたい。

その他引用とか参考とか

BOINC is used by many volunteer computing projects.
boinc.berkeley.edu/projects.php

【寄稿】コインハイブ事件 意見書ご協力のお願い
www.hacker.or.jp/coinhiveopinion/

違法マイニングとされたcoinhiveの法と技術のはなし
kuippa.com/blog/%e9%81%95%e6%b3%95%e3%83%9e%e3%82%a4%e3%83%8b%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%81%a8%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%9fcoinhive%e3%81%ae%e6%b3%95%e3%81%a8%e6%8a%80%e8%a1%93%e3%81%ae%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%97/

新型コロナウイルスの解析、分散コンピューティングで誰でも参加できるように 「Folding@home」が対応
www.itmedia.co.jp/news/articles/2003/15/news015.html


軽減税率は1300人が死亡する災害に匹敵する


軽減税率はなにもかもが壮大な無駄というだけでなく害悪しかない。人をも殺しうる災害だ。経済は月単位で凍りつき、花は枯れ鳥は空を捨てるだろう。

自分で掘った穴を自分埋めるただの無為な強制労働なら、土を耕したり、まだ筋肉トレーニングぐらいの効用があるかもしれない。だが、軽減税率は本当に本当に害悪でしかない。日本人を裸でシベリアに無為に抑留するようなものだ。しかも、消費税や軽減税率などの対応を迫られるのは経理や価格を決定できるマネージャークラスの人間だ。お金で外注できる労働力で済まない。才能と時間、ほどよく育った人間までをすりつぶす亡国の賊法である。海外ではやられてるじゃないかと言う人がいるかもしれない。違う。既にそれとは違う商習慣で運用がされている国に一律悉皆にデプロイしようってのが、糞い。サマータイムでも同じような話しがあった。血液型A型にB型を輸血するようなことをなぜ平然とやるのか。

趣味でやってるんでしょと言われても否定できない規模の零細な紅茶屋をやっている。うん、まあ趣味。 商売をやられている先輩方から、消費税が3-5%にあがったときはまじきつかったとそこここで聞いてはいた。1997年はバブル崩壊からの金融危機や貸しはがしがあいまって発生した不況があったから、その絡みだと思っていた。だが、前回の5から8%に消費税の税率があがったときに、体感した。あ、こりゃ納得と舌をまいた。

どんな小さな零細企業でも小売なら取扱商品は数百点はあるし仕入先は数十社に及ぶ。 飲食店とかで見た目、数十しかメニューがないようなお店でさえ、季節でメニューは変わるし、それを構成する食材などは多岐に及ぶ。コンビニなら表に並べているだけで数千点が常時おいてある。

消費税が5から8%に変わったとき、めんどくさいなぁと思いながらも棚卸しをして、値段変更をおこなった。売価を5から8%にすればいいんでしょと思ったものだ。
うちの場合はネットショップなどもあるので、楽天やamazon、ヤフー、当時は独自ドメインのショップなどもあって、カタログリスト、店舗のレジスターの変更などを考えれば、千点は優に超すぐらいの値段変更をおこなわなければならない。期末決算の棚卸し残高を求めるよりも3倍ぐらいしんどい作業ながらもおこなった。

だが、しばらくすると仕入先からも価格変更の案内が届くようになる。結構な変動幅だ。ひとつには、ヤマト運輸などの配送会社が消費税率変更に伴い大幅な値上げが敢行されたことなどがある。流通価格があがれば当然原価計算費用などにも影響してくる。そのほかには、その前の時期に発生していた急激な円安や、原材料高に由来する価格調整がとうとう耐えられなくなってきてどばっと降ってきたのだ。

長年の取引があると利益的にはほとんど出ていないけど、長いお付き合いだしということで昔ながらの価格で取り扱うことがある。でも、それも、売ったら赤字にならない範囲でだ。だけど、いろいろ価格がうごいたことで、利益率などを計算しなおしたところ、販売価格や卸が価格を変えだしたわけだ。そうすると、玉突きでポンポンと値段が変わる。中間財の仕入れ値が変わるのだから、最終財も変わるわけだ。それを仕入れて加工し販売するところはさらに値段がかわる。販売側も、そうしょっちゅうは価格変更がおこなえないので、しばらくは泣いていても、こらえきれずに価格変更をおこなう。そして、また異なった時期に玉突きで価格変更が発生するのだ。

食品などのマーケットは価格硬直性が高い業界と言われ、販売価格を変更するぐらいなら内容量を変えるという業界である。いつの間にか箱がスカスカのクッキーや空気しか入ってないんじゃないのというポテトチップスが登場するわけだ。内容量が変わっても配送料や、包装代などは発生するので、またここでも玉突きの価格変動が発生する。

結果、5%から8%に変わっただけの消費税の影響で、有に1年以上も販売価格が安定しなかったのだ。実はこの影響はいまだ続いているようにも感じる。

というのも、在庫の評価方法は先入先出法や後入先出し総平均法、移動平均法など少なくとも7種類もあり会社によって、届け出ている税務上の原価計算方法が異なるのだ。
だからどのタイミングでどのように仕入れ価格に反映されてくるかは、一律に決定されない。ひとつの商品がひとつの仕入先からだけできているわけでなはいので、同じ商品について何度も何度も価格改定の通知が来ることになる。それを涙をのんで自社で被るか、どのタイミングで売価に反映するかの判断を迫られることになった。毎月価格変更などはやっていられないし、契約の関係で1年はこの値段で納入を契約とかいろいろあるのだ。

それ以外の問題もある。

企業側からしてみれば在庫回転率、仕入れから販売までは時間がかかる。販売が成立しても売掛(クレジットカード払いなどのように実際に入金されるのは1月先とか)になる、それに対して仕入れはそれより前に発生しているので支払いと入金サイトには数ヶ月のラグがあるわけだ。世にいう黒字倒産、キャッシュフローの問題だ。

日本で上場している企業でさえ、純利益で考えれば売上に対しては5%もない。ちょいと調べてみると小売業ではわずか1.19%だそうだ。

これは100万円分を仕入れて、120万で売りましたとした場合、粗利の20万から人件費や家賃などを払ったら1万2千円が残せましたというのに等しい。

このような状況下で、仕入れから売上までの間に消費税増税分の3%だけ、利益とは関係ないところで資金需要が必要となる。いままで100万円分買えてた同じ量を仕入れようとした場合103万円の現金を用意しなければいけないことを意味する。

じゃあ余分の3万円を出せばいいじゃないと言う人も居ると思うが、それはパンがなければケーキを食べればいいじゃない論に等しい。3万まだ可能性ありだけど30万なら?300万なら?3000万なら??

そこまで資金余裕がない会社は、仕入量をへらすか、運転資金の借り入れを行う必要がある。だが、借り入れには金利が発生するので、借入先の銀行の金利ぶんまで余分に稼がないとならなくなるわけだ。行政というのはどうもお金の時間による効用を無視する傾向があり、現在価値、将来価値が無視された計画がなされることがあるが、まさにその典型だ。純利益が1%しか残らないほど過剰最適され乾いた雑巾状態の業界で、銀行金利分の数%を吐き出す資金余剰はないのである。チューニングがいきすぎたピーキーな経済はここでも悲鳴をあげ、また玉突き事故がおこるのだ。

軽減税率はさらにわろし

10月に導入するということだが、軽減税率についてわかっているひとがまわりの商店を見回しても一人もいない。国税などに聞いても会社の判断でお願いしますということになっている。

軽減税率の対象となる品目 – 国税庁の図解を貼っておく。

「Keep it simple, stupid.」(シンプルにしておけ!この間抜け)

いや、そもそも店舗にあるレジスターは項目ごとに税率を打ち出すことなんてできないのだ。どうするの?
うちの商店街のお店の人たちを見回しても、ごく最近にでもできたお店でなければ、もうレジスターを数十年使ってますけどなにか? みたいなお店も多い。レジを購入することについて助成金が出ているらしく怪しげな営業がうろうろ回っている。見せてもらったら現金を引き出すドロアーとタブレット型で3~50万ぐらい。多分助成金申請の関係で強気の値段設定なのだろう。お店に買わせて国に払わせるみたいな世界だ。だけどな、70歳過ぎた店主が新しいレジ買って新しい設定なんかできるわけがないんだよ。

そういえば昔、プログラムを書くお仕事が専業だったころレジスター周りのシステムを作ったことがある。日本だと大きいレジメーカーは数社しかないので、あれなんだけど、まあああいうのは、数店舗抱えるチェーン店はレジと独自システムを連携させて、日別の売上とかを集計したり分析したりするんだよね。何社かつくったけど、税率変わるぐらいは想定はしてたけど、そんな細目ごとに税率変更できる設計とか実装とかした覚えなんかないんだわ、ごめんなー。

対企業取引(BtoB)でも弊害が出てくる。
電話とかメールとかFAXとかで「いつものお願いしますー」と言われて、「はいよー」って言って、前回の請求書とか領収書とか伝票と同じものを日付変えて出力、商品に同梱みたいな業務なわけですよ。
でもね、茶葉は8%で茶器は10%、発送料は10%でなんて細目ごとに異なると全部の取引先に対して帳票のレイアウトから作り直しなわけですよ。

普通、小計があって、その下に消費税の項目があって、税率かけて終わりでしょ? これが作り直しになるわけですよ。ぶっちゃけ、もう一度会社をゼロから作り直せっていう規模の事務作業量なわけですよ。しかもどこまでが8%なんかもわけわからん。え、この茶缶入の茶葉は8%? でも茶缶だけで仕入れたときは10%? はい、送料無料で送料を含んじゃってる茶葉とかは税率どうしたらいいの? え、会社判断で? え、インボイス??? え、paypayとかは還元いれる??? ほえ? え!? え!!?? え?????

結論。軽減税率の導入は無理。わかるひとが一人もいねぇ。
うちの場合、商品点数半分ぐらいに絞っても、対応厳しいことになると思う。やるなら落ち着くまでしばらくお店とか閉めて寝てたほうがいいレベル。だから今は消費税が導入されない方に全掛けしている。

消費税の税収

しかもな、消費税をあげれば税収があがるならまだしも、下がるなら意味がなくない。 あがったの?

額面税収から見れば
10.8兆から17兆円代。たしかに額面は増えてるよね。

法人税率下げたとはいえ割合変わってないじゃんか・・・。
財務省絶対みとめようとしてないけど消費税率のアップで経済そのものが沈んでるし・・・。

なぜ災害に匹敵するか

平成28年度の飲食料品の事業所数は299,120件。
1事業所あたり1人が消費税対応のために半月対応したとすると、15万人月=12,500人年
日本人の平均寿命は83.98歳らしいので84歳でこれを割ると、148.8人の人生が無駄に消えていくことになる。これは少なく見積もってもだ。

生産労働年齢の定義に従って15歳から65歳の50年の月20日、一日8時間で1920年時間。計算すれば、人生で96,000時間しかないので、15万人月=150,000*160時間の労働を消化するためには250人分の社会人人生が必要となる。

小売業全体では990,246もある。卸業は364,814件。
78万人月が、なんの生産性もない付加価値もうまない税を徴収するためだけの代理をするためだけに1300人の社会人人生が無駄になる。
本当に導入されたら、どんなに温厚な俺でも呪詛を吐き続けるマンになるよ。

資料とか

14- 2 卸売業・小売業の産業別事業所数,従業者数と年間商品販売額(エクセル:29KB)
www.stat.go.jp/data/nihon/14.html

軽減税率の対象となる品目 – 国税庁
www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/01.pdf