地方活性化どうこうに見る違和感の正体


先日RESASをつかった「地方創生 政策アイデアコンテスト2015」というものがあり、地方創生なるものについて考える機会があった。

RESASであなたが見つけた「課題」と「アイデア」で地元を元気にする!
expo.nikkeibp.co.jp/bdc/resas/contest2015/
地元を元気にしたいんじゃー!

自分がデータを眺めて分析したところ、結構おもしろいことがわかったのだけれども、身も蓋もない結論になってしまった。応募したんだが選外だったようだ。詮なきこと。せっかくなので、調べたデータを何回かにわけて紹介していきたいと思う。

 

でもその前に「地方活性化」なるものの定義が曖昧なのでそれについての問題意識を共有しておきたい。

やる気がある状態とない状態

ハーズバーグの二要因理論をご存知だろうか?
やる気がある状態や、やる気がない状態は一直線上にあるわけではなく、動機付けの要因と衛生要因に分解される。
従業員のやる気について言われていることは、給与水準が平均より低いと衛生要因が悪化して不満足があがるが、給与をたくさんあげたとしてもモチベーションには結びつかないことが知られている。

飲食店への満足や不満足

満足要因:ごはんがおいしい、心地良い空間
不満足要因:料理が不味い、トイレが汚い、愛想の悪い店員

トイレだけをどんなに綺麗にしても飲食店としての満足とはならない。不満を稼ぐポイントと、満足を稼ぐポイントは異なるのだ。満足を覚える点と不満足を覚える点は同時に存在する。

 

健康と不健康の定義

健康:肉体的にも、精神的にも、社会的にもすべてが満たされた状態(WHOの健康の定義)
不健康:病気である

ただ単に病気から回復した状態をもって健康であるとは言わない。

 

慰めるのか奮い立たせるのか

「XXが死んじゃったの」 ← 慰めを必要としている
「なんか面白いことないかなー」 ← 景気付けを必要としている

沈みそうな船と早く進みたい船

沈みそうな船 ← 嵐だ帆をタタメ! 船底から水をかき出せ!
早く進みたい船 ← 帆を張れ! 船の外を漕げ!

化学反応

一酸化炭素(CO):酸素たんないわー
二酸化炭素(CO2):安定だわー ←化学的にはここが不活性
三酸化炭素(CO3):酸素あまってるわー
酸素が足りない状況からニュートラルな安定状態にするのと、酸素を吐き出させるような状況をつくるのは反応経路や投下させるものがまったく異なる。一直線上にはまったくない。

地方不活性化と活性化

お金、人、仕事がたんない!! ← 不活性都市(?)
お金、人、仕事はあるけどね? ← 活性都市(?)
お金や仕事がないと叫ぶ都市にお金をつかって、人をなんとか移住させようとして、活性化を目指すの?
でも、その不活性と活性は連続した直線上にはないよね?
風邪で寝込んでいる人に「毎日のランニングは健康にいいですよ走るべきです」と勧めてくる医者がいたらどう感じるだろうか?
親族を亡くして落ち込んでいるひとに、「宴会芸を披露して楽しい気分にさせよう!」とする友人がいたらどうだろう?
嵐のなかで沈みそうな帆船を「沈むより早く進めば大丈夫だろう!」と帆を張る船長がいたらどうだろう?
一酸化炭素中毒が怖いからと「酸素を足し続ければ酸素を生み出す物質になるんじゃないかな」と密室で一酸化炭素相手に酸素を足し続ける化学者がいたらどうだろうか?

死ぬ前に目を覚ませ。どうかしていると言わざるを得ないが、こと「地方創生」という獏としたマジックワードのもとではおなじようなことが起きているように感じる。
人が住んでられないと出て行く要因と、人が集まる要因は異なる。一直線上にはない要因だ。
ネガティブループをとめるための方策と、ポジティブループをすすめるための方策は異なる。
地方活性化?
現段階でもネガティブな向きではあるが既に活性状態にあるといえる。

地方創生の定義
地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服する。
www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/h26/dai2/siryou1.pdf

年寄に若々しい肉体を再び授けようと約束しているような怖さを感じる。
成長する肉体は成長期のものだよね……。
地方活性化の定義を「財政的にも、居住環境も、将来展望もすべてが満たされた状態」だと仮に定義するならば、何がネガティブ要素で、どこがポジティブ要素かも切り分けは比較的容易だ。

若返りの薬をひたすら求め、胡散臭い山師に騙され続けるのはそろそろ辞めにしていただきたいところ。
そこに夢だの希望だのはあるかはおいておいて、何がおこっているかは統計データがおしえてくれている。


大仏の螺髪の数についてそれっぽいことをのたまう


奈良の大仏の螺髪が文献の数と異なっていることがニュースになっていた。

奈良の大仏、髪の量半分だった レーザー解析で定説覆る
www.asahi.com/articles/ASHD24DYBHD2UTIL01R.html
奈良・東大寺の大仏の毛髪(螺髪〈らほつ〉)が、定説の「966個」ではなく、「492個」だったことがわかった。
(略)
「東大寺要録本願章第一」には、「天平勝宝元年(749年)12月~同3年6月、螺髪を966個つくった」とある。
(略)
東大寺の大仏には483個の螺髪があり、9個分が欠けていたことが確認された。
(略)
966や492にどんな意味があるのか、現時点では思い浮かばない」と話す。(石山英明)

 

現存の483個を二倍にすると966になるので、螺髪の構造が2つをあわせて1つにするような入れ子や合わせの構造になっているのではないだろうか?なんてことを思った。
さらに欠けているとされる9個の意味について思いを馳せる。
眉間と額と天頂の大きい3つの螺髪を抜けば480ヶとなる。

745年に製作、752年に完成にかかった7年、743年に造像が発願からすると9年。ここにヒントがあるのではないか。

現在の暦に直すと何月なのかがわからないが、仮に発願から開眼まで8年かかったとするとここにちょうどにたようになる数字がある。
8年間に六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)が何回あるか数えると486.6曜だ。
で、旧暦は太陽暦ではなく太陰暦(お月さんの満ち欠け)がメインになっている。
で、ここで欠けている9個と、月の満ち欠けがなんとなーーーく、クロスする。

 

当時の月食が何回あったのかは、ちょっとググったぐらいではでてこないのだけれども、
21世紀の100年、月食は142回(皆既月食85回、部分月食57回)あるそうだ。
年平均に直すと1.42回。

 

8年間だとおおよそ11.36回の月食が観測される想定になる。
9とは差があるけれども、なんかそれっぽい数字ではにゃーだろうか。
月食は1年間に2回起こるか起こらない年、3回起こる年などもあるので、観測期間によっては9回になることもあんじゃねぇかなと思う。
なんてことを思いながら大仏のあたまのぐるぐるに思いを馳せ、お腹がへってきたのであった。

 


最低賃金上昇は若者の雇用機会を奪うのか?


「最低賃金をあげるべきだ!」
「労働者の最低賃金をあげると、逆に低練度の雇用がなくなんぞ!?」
「経営者側の傲慢だ!そんなのは低賃金で使い潰したいだけに違いない!」

なーんていう、長年の議論に日本の実態統計をぶつけるとなんかもう結果がでているようなので、レポートtoみんな。

アルバイト時給が大幅上昇 10月全国平均、10円近い上げ幅  :日本経済新聞
www.nikkei.com/article/DGXLASDJ19H3A_Z11C15A1EA2000/
全国の募集時平均時給は947円となり、前月に比べ7円上がった
(略)
10月に最低賃金が改定され、全国平均で18円(2.3%)上がった

最低賃金が18円あがってるのに7円反映ってことはそんだけ最低賃金界隈での募集が多かったってことかな。

 

東京都の最低時給は現在907円/時で、近所の商店街のお店とかみてると、もうバイトとか気軽におねがいできないわ、ひゃっほーいって感じ。日常品は販売価格の価格硬直性が高くて、値段変更が容易じゃなくて、まだ消費税とか円安まわりの粗利減少に対応できておらず、しかも労動付加価値低い産業なので、値頃感として新規バイトの賃金上昇圧に耐えられない。
www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

上位の5グループ、下位の5グループともに1.95-2.5%程度の綺麗な上昇になっており、ここ数年かなりでこぼこしている消費者物価指数やその他の雇用賃金統計などの経済実情から考慮したものというよりは、先に数字目標ありきの設定っぽい。

最低賃金上昇推移2015-11-20 18_22_03-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

で、この最低賃金上昇がどういう意味を持つのか?

 

労働力調査 長期時系列データとぶつけて評価してみよう。

雇用者数男女2015-11-20 18_28_03-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

近似曲線を引くと綺麗な線形がでてて、非正規はこの10年で約500万人増えてる。「非正規ガー」の議論に踏み込むとめんどくさいことになるので今回はスルー。

雇用者数男2015-11-20 18_32_30-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

男性の非正規はそれほど増えておらず、比較的変化がなだらかであることがわかる。

 

雇用者数女2015-11-20 18_35_31-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

とくに非正規の雇用の問題が女性がメインであることがわかる。

で、そのなかから特に非熟練、低練度である労働者、24歳未満の女性の推移をみてみる。

雇用者数24歳未満女2015-11-20 18_37_53-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

正規、非正規ともに数としては減少していることがわかる。

これだけでは人口動態による変化を含んでしまっている可能性があるので、年齢階級別の人口統計から就労可能人口を年代別にぶつけて、%にした。

雇用者数24歳未満女割合2015-11-20 18_43_05-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

結論、総世代では非正規は増加傾向にあるにもかかわらず、低年齢層では正規だけじゃなくて、非正規の数も減っておりましたとさ。

 

 

雇用者数24歳未満男割合2015-11-20 18_52_40-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

ちなみに男でもゆるやかながら同傾向。

 

雇用者数34歳未満男 割合2015-11-20 18_54_56-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel 雇用者数34歳未満割合女2015-11-20 18_57_54-年齢雇用形態別統計lt52.xlsx [互換モード] - Excel

非熟練の雇い止めをして、24~34歳ぐらいのバリバリ実務担当できるぐらいの練度の労働者を非正規化することで賃金をさげることでなにをあれこれしているんでしょうね。

 

ちなみに、完全失業率は改善しています。
www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/

 

仕事を潰さないかわりにみんなでワークシェアしているような感じでしょうか?

別にこの結果をもってして最低賃金上昇が原因だ!と申そうとしているわけではなくて、労働力もモジュール化した社会において、労働生産性がひくいところで低練度の労働者を雇い入れる弾性力がなくなってるだけだともおもう。みんなの賃金もあがってハッピーってなるためには社会全体のパイが拡大していないとだめ。いま、縮小を始めたところなので(こないだRESAS調べてて面白データみつけたのでこんど紹介するね)、こっちを先に改善しないと、低練度の労働資本に頼らざるをえない若年労働者がワリを食うよね。なんてことを申したいのでございます。

 

まあなんですかね、そういうツケを若年者、とくに女性が払わされているというのは、最低賃金あげてやったから感謝しろという態度以上に考えなければいけないものがありますな。戦争法案だなんだと、およよってる間に意味のわからん労動派遣法改正が通ってるし、資本金純資産で2000万詰めない中小とかは営業ができなくなるし。なんていうか数字先行で実態みてない感じがして、なにがしたいんだろうなと思うところです。数字がつくりたいだけなのかな?

 

 

雇用形態別雇用者数 - 全国 男女計
www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.htm#hyo_1

表10
【年平均結果―全国】
年齢階級,雇用形態別雇用者数(エクセル:163KB)(正規の職員・従業員,非正規の職員・従業員(パート・アルバイト,派遣社員など)) (2002年~)

表3
【年平均結果―全国】
(1) 年齢階級(5歳階級)別15歳以上人口(エクセル:86KB) (1968年~)