原発論。取り除き難きは正論に紛れ巣食うもの。


原発について大きく声をあげる人たちは放射脳と揶揄されるか、経済的合理性のために一日も早く原発を動かせという人とに大別される。しかし、おおよその人たちは無関心か中庸で、与えられた情報を一様に判断して意見を言うほど単純でもない。

川内原発再稼働の報を聞いて、あー、動いたのかーぐらいの所感ではあるのだが、賛成派も反対派も言っていることに違和感があるので経済的観点を中心にいろいろ資料を漁ってみた。

原子力発電所は運用コストが安いという。しかし、本来、アウトプット(発電量)が一緒なのに仕入れのコスト(ウラン、天然ガス)が異なるのは普通は理由がある。競争障壁が構築されてるか、コストを支払うタイミングが違うかなどである。

自由競争下で供給量が同じであるという前提で考える。
薪の時代に炭が発明されて市場に出回るようになったとしよう。薪よりも炭のほうが燃焼効率も可搬性も優れているので炭の価格はあがり薪の価格が下がる。しかし、価格決定幅には限度というものがあり、おおよその値頃感が市場で形成される。はずだ。

主要燃料の調達先

カナダやカザフスタンはなぜウラン鉱石の取引価格を原油のように競争力をもたせることができないのだろうか?ウランのほうが希少資源であるに?

需要があるのであれば供給者は値段を釣り上げることができるはずである。しかし市場に登場して時間が経つにもかかわらず、価格は硬直している。
価格は硬直する理由はそこが世界的な需給水準であるということだ。原子力は発電コストが安いというが、調達物の単価差が生じている理由は無視していいものでもないし、その価格でいつまでも調達できると考えるのもまずいのではなかろうか。

価格の推移

燃料費調整制度というものがあり、過去3ヶ月分の平均燃料価格が2ヶ月後の料金に毎月反映される仕組となっているため、日本の電力産業は仕入れを工夫しないと言われている。

天然ガス価格の推移(年次)
ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html
天然ガス価格の推移

原油(WTI原油先物) 天然ガス(Henry Hub)先物(NYMEX)
www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/clc1.html
先物天然ガス2年
先物天然ガス二年

先物原油2年
先物原油2年

上記は世界の商品市場の価格の推移(2年)である。

こちらは東電の燃料費調整を含めたモデル価格の推移である。
東京電力 燃料費調整 モデル価格の推移 (2013/1-2015/8)
燃料費調整モデル価格

電気料金の価格変化はベースロード電源としていた原子力発電の稼働が停止したこととに由来するんだそうだ。産業系では電気料金の価格反映にかなりの割合の価格影響が現在もあるようで、経営者の方々からは厳しい話しをよく聞く。

しかし、エネルギー価格は世界的にみればかなりの下落傾向である。(円安で打ち消されているが…)
シェールガスなどでアメリカが輸出に回っているが日本の調達先にアメリカは含まれていない。
安全保障上の問題によるものもあるだろうが、10年単位で調達契約するために価格の変動が発生してもおいそれと変更することがないのだと聞いた。前段の仕入先について工夫しないと言われているのもこれのような羽振りのいい調達に由来する。売価で競争する必要がなければ仕入れを工夫する必要もない。

2015年4~6月期の連結決算は大手電力9社が経常黒字を記録している。

電力需給検証小委員会レポートのまとめ

電力の予備率。関西と九電の予備率は3.0%の試算。9電平均7.0%。東京は予備率11%
川内原発再稼働時の予備率の試算

2014年の実績値ではピーク需要日の太陽光発電は4%、2015年夏季の想定は3% 太陽光は2015年は130万Kwほど減る試算になっている。火力は増え風力は減る試算になっているが、なぜだかは記述がない。
全国需要想定

燃料種類ごとの海外調達比。天然ガスのオーストラリア20.8% とマレーシア16.9%ある。原油も天然ガスもシェールガスやオイルで湧くアメリカからは輸入していない

燃料毎の海外調達比

原発の燃料費は年0.3兆円との試算のようだ。燃料費増3.4兆円増、内LNGが+2.5兆分。先の国別比率で考えるとオーストラリアとマレーシアで0.9兆円換算
燃料費増加

予想外に太陽光発電ががんばっている。予測では3%となっているが、買い取り制限をおこなわなかった場合は今年度分は5-6%ぐらいまで見てもいいのではなだろうか。というか3%想定は何か意図を含んでいると勘ぐられてもしかたない数字なのではないか?

英国の原子力発電動向

川内原発再稼働について英国の在日大使館が歓迎する旨の発言をしているのはなかなかに趣深いので、英国の原子力発電所についての歴史をまとめておく。

英国の原子力産業の動向

1947年 原子爆弾で使用する兵器級プルトニウム生産のため原発建設(最初)
1995年 サイズウェルB原発建設(今のところ最後)
1997年 プルトニウムとウランから混合酸化物(MOX)燃料を輸出用に工場建設
1998年 英国核燃料公社(BNFL)ウェスティングハウス・エレクトリック社など買収
2001年 MOX燃料工場操業認可
2002年 ブリティッシュ・エナジー財政難
2003年 イラク戦争開戦 原油価格高騰
2003年 政府原子力発電所の新設を支持せず、廃炉に優先順位を移すことを決定、BNFL見直しに着手
2005年 MOX燃料輸出用に燃料集合体を製造
2005年 BNFL 原子力廃止措置機関(NDA)に移管開始
2005年 再処理工場THORP漏えい事故発生2018年閉鎖されることが決定
2006年 BNFL所有のウェスティングハウスを東芝に売却(54億ドル約6600億円)
2008年 英国内原発新設計画浮上(ティム・ストーン氏主導)
2008年 EDFがブリティッシュ・エナジー買収
2009年 セントリカ社ブリティッシュ・エナジーの株式20%を23億ポンドで取得
2009年 BNFL正式に解散
2010年 再処理工場の顧客として残っていたのは日本の電気事業者のみ
2011年 福島原発事故
2011年 福島原発事故を受けて、再処理工場を閉鎖

2015年 [現在] 日本の原発再稼働を歓迎の声明

2018-19年 現在稼働の6基廃炉予定
2023年 現在稼働の8基廃炉予定、新設しなければ全て廃炉 35-47年で廃炉

英国原発

※同年度は別の時系列から拾っているため前後関係はあやふや。

2003年から2008年のイラク戦争を契機に方針を180度転換し、原発路線に切り替え投資を加速させた先の福島事故であった。やはり中東の問題、イラク戦争の総括をなしに、あれこれ進んでいくのは危険だねとは思う。余談だが2015年はイラクが経済的にも強い注目を集めている。

他国の原子力動向

2030年における原子力発電の見通し(IAEA)

2030IAEA原発見通し

【米国】
2012年には34年ぶりに新規建設計画を認可。現在21基の新設が計画されているが、シェールガス革命と電力需要の伸びの鈍化の影響により、計画遅延。

【ドイツ】
2002年に脱原発法を制定、福島第一原発事故後に原子力法を改正、古い原発を即時
閉鎖。
【スイス】
2011年5月「エネルギー戦略2050」安全技術の寿命に至るまで運転を認める段階的な脱原発

【ロシア】
「エネルギー戦略2030」に基づき、2030年までに原子力比率(発電電力量)を現在の16%から25%~30%に高める
プーチン大統領も28基の新設を表明

【フランス】
2012年に原子力比率(発電電力量)を75%→50%へ低減し、最古の原発閉鎖を表明するも、原発1基の建設を続行。

【英国】
2013年に電力市場改革を決定し、原子力にも固定価格買取制度(CfD)と債務保証を導入。中国資本も受入れ、2基の新設が決定。

【中東】
UAE 2008年包括的な原子力政策に基づき、10数基を建設予定。
サウジアラビア 2010年の国王令、今後20年間で16基新設する予定。

【インド】
2012年に「第12次5ヶ年計画」を決定し、2030年までに約6,000万kWに達する見込み。

【韓国】
2035年までに約18基建設し、約4,400万kW、原発比率(設備容量)を29%とする。

【中国】
2020年には約50基増、8,800万kWとなる見込み

感想

中国、インドが原子力発電でも存在感を増す感じ。
燃料費が騰がったのも、CO2削減をしなければいけないのもインド、新興国のエネルギー需要を抜きには考えられない。インド、ロシア、中国で計画通りの原発の新設が続くと、ウラン調達でも日本が買い負けるっていう事態がでてくるんじゃなかろうか。

エネルギーの調達に関しては、本当にまずい調達をしているなと思う。安全保障上も経済上も合理性はあまりあるようには思えない。エネルギーの輸入元はポートフォリオとして分散するべきであるならば、調達国もある程度は分散するべきなのではないだろうか。

英国は稼働から35年もまたずに廃炉にしているのを知った。
他方日本は国内の原発で廃炉が完了したものは1基もないそうである。
54基もあるが、2000年以降に運転開始をした原発は下記の5つのみである。

2002年1月30日女川原子力3 号
2005年1月18日浜岡原子力5 号
2005年12月8日東通原子力1号
2006年3月15日志賀原子力2 号
2009年12月22日泊3号

他、いくらなんでも古すぎるだろう。
事故をおこした福島原発の稼働年数40年というのもそうだが、稼働から30年経った川内原発を運用のために再稼働というのは、30年前の船舶、30年前の飛行機、30年前の電車をまだ減価償却が終わらないからと運用をひっぱるようなものではないだろうか。科学技術の進歩を考えれば、もはや遺跡に近い。
正常系で終了したことがないというのは、国内の技術では正常系で終了させることができないのではないかという疑念も覚える。
この30年でおきたことは溶鉱炉のようなものですら小型化、モジュール化、省エネ化であり、原子力産業を輸出するにしても、、、、まぁ難儀なことだなとは思う。

参考、引用元データなど

夏の電力に余裕がある理由の一つはやっぱり太陽光発電にありそうな件
d.hatena.ne.jp/tei_wa1421/20150808/power

電力需給検証小委員会 報告書 平成 27 年 4 月 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_jukyu/pdf/report04_02_00.pdf

クリックして20130702japanese.pdfにアクセス

www.gov.uk/government/world-location-news/japans-nuclear-restarts-message-from-british-ambassador.ja

関西電力と九州電力も黒字に、電力会社10社で第1四半期に4700億円の増益

www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1508/03/news032.html

NHKニュース 川内原発1号機 再稼働
www3.nhk.or.jp/news/gad/tokusetsu/sendai20150811.html

総合資源エネルギー調査会 原子力小委員会第3回会合 参考資料1 平成26年7月
www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denkijigyou/genshiryoku/pdf/003_s01_00.pdf

エネルギー価格の動向について 平成26年11月 経済産業省
www.cas.go.jp/jp/seisaku/energycost/dai1/siryou1.pdf

東京電力 過去の燃料費調整のお知らせ一覧
www.tepco.co.jp/e-rates/individual/fuel/adjust/backnumber/menu-j.html

東京電力 平均モデルの影響額(手動でスクレイピング2015/8-2013/1)
7,724円 7,936円 8,240円 8,519円 8,501円 8,562円 8,481円 8,417円 8,388円 8,402円 8,423円 8,477円 8,509円 8,541円 8,567円 8,541円 8,111円 7,963円 7,873円 7,847円 7,894円 7,946円 8,004円 8,004円 7,978円 7,920円 7,804円 7,636円 7,415円 7,284円 7,273円 7,342円

全国54箇所の原発の発電力量と寿命
www.ecoichi.com/setsuden/nuclear/nuclear_power_station.html

電力9社が経常黒字 4~6月、燃料費10社で34%減
www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLASDZ31HLY_31072015TJC000


最終 第八夜 ちどり足の格差論


マンション組合の会合で年配の女性がまだ若い女性と一触即発の空気をつくりだしていた。

「共働きで忙しいから無理って、負担金もお金に余裕がないから無理って、なんでもムリムリいうものじゃないわよ!」
ピシッ
「だいたい共働きなのになんで生活が苦しいの?」
ピシッ
「わたしがあなたぐらいの年齢のときは、お父さんの稼ぎだけで生活できたものよ。贅沢してるんじゃないの?旦那は仕事してないんじゃないの?」
ピシッ
ピシッ
ピシッ!

マンション組合の会合などに出たことはないし、まったくの空想であるが、似たような世代ハラスメントは各地で繰り広げられているのかもしれない。
togetter.com/li/836975

完結 財福主義

忘れてたわけじゃないんだけど… もうかなり書いた気がするので完結させることにした。

序論 盗人と資本主義
第一夜 自然科学と経済の白熱教室
第二夜 社畜という現代奴隷の重要性
第三夜 区切られた財。奪えども足りぬゆえ格差
第四夜 CO-枯れた才能
第五夜 資本と時価
第六夜 時間選好による隠者の経済 リスクフリーレート
第七夜 この規模のマネタリーベースでおきたら大変トリクルダウン

格差は縮まる、広がる?

経済学者クズネッツ氏は、1971年に「格差は縮まる」 との論文でノーベル賞を受賞した。
経済学者ピケティ氏は、2014年に「格差は広がる」 との著書で、まるでロックスターのような扱いを受けた。

経営学において、完全競争業界は他の産業より利益がある場合、新規参入が相次ぎ利益は平準化する。
しかし、法規制などの競争障壁が構成されることで参入や競争はされなくなり暗黙的談合がおこなわれ、小資本者がジャイアントキリングをおこなうことはなくなる。

化学において、例えばNaClを水に溶かすと、分子活動により時間経過とともに濃度はやがて均一になる。
しかし、大量の溶質を加えたり、溶媒の温度を下げたりすると、溶解平衡に達し飽和状態になり溶けない溶質はその場に留まる。溶液の粘性をあげたりすればもちろん濃度にはばらつきが生まれる。

人口動態経済

日本は労働人口が減少する局面にある。非生産人口は増えている。
かつての中国やブラジル、いまのインドネシアやフィリピンのように人口ボーナス期のように熱量があり、価値創造がどんどんなされている拡大成長時であれば、なるほど格差はやがて縮まるであろう。ここまではクズネッツだ。

人口減少局面においてはどうなるか。作り出せる富が平衡に達したときはどうなるか。利益ではなく不利益が発生した場合はどうなるか。不利益も平準化するだろうか?どうやらしないようだというのがピケティなのではないだろうか。

歴史を紐解けば天候不順などにより飢饉が発生した際には、一揆や戦争という暴力的な解決にいたる例は枚挙にいとまがない。疫病や飢饉など大きな不利益が発生したときは、地域や身分などによる隔離というゾーニングで不利益が拡散しないようにする解決策が多いように思う。富は増えても減っても混乱がつきまとうようだ。

ランダムウォーク

あるギャンブラーが同率の勝ちと負けを繰り返した場合どうなるか?
たとえば掛け金の30%増と、30%減を繰り返した場合だ。
同率の勝ち負けを繰り返しているだけなのにこのギャンブラーはやがて破産する。
親のハネマエ、テラ銭率の話しではない。

1000*130%=1300
1300*70%=910
910*130%=1183
1183*70%=828
828*130%=1077
1077*70%=754
754*130%=979

わずか7回の繰り返しで勝っているのに元本を割り込むようになってしまった。
この30%の勝ちに対義するのは30%の負けではなく100/130、76.92つまり23.08%の負けである。
倍の対義は半分であるが、50%増の対義は33%減であるし、50%減の対義は100%増である。

話しが余談にそれたが、まあ、何がいいたいかというと少なからぬ人が勝ちと負けの線引をしくじっていることがある。
そして、率で考えた場合、増加よりも減少のほうがシビアで、その影響は元額面が大きいほど顕著であるということだ。
さらにおおよそ負の財産は許容されない。
金持ちはけちくさいという社会通念があるが、保持しているものが大きければ勝ちよりも負けに強くこだわらなければならなくなる。まあ、それをケチくさいというのかもしれないが、この線引がわからないと前述のギャンブラーのように勝ってるつもりが負けていて細かく破産を繰り返すことになる。

振幅の大きい社会(でかいボラティリティ)においては、小資本と大資本の結果の差は出やすい。
太宰治の実家は東北でも指折りの資産家であったそうな。金貸しをしていた。
天候というものは定まらぬもので、不作や凶作になる年が出てくる。近代農法以前の東北では更に顕著であったそうな。
凶作時、資産に余裕のあるものは金を貸し、生活もままならないものは小作に身を落としたり子供を年季奉公に出す。
これを繰り返すうちに、富める者はますます富み、貧するものはますます貧するという金持ちが数本の指に収まる社会をつくりだした。

その時代、資産(ワンイヤールールに当てはまらない固定資産)が集まったのは凶作の時代だ。
土地という資産が、凶作により流動資産に変換できずに土地や人を処分する。
豊作の時代になったときには今度は土地も人もないのでその恩恵に預かれない。

今世紀になって、農地だったものが、産業資本、金融資本、不動産資本だのに変化しても、その本質は変わらないようだ。
地政学的な情勢不安や社会保障不安などで経済が縮退し、思ったような利益があがらないようになると産業資本を処分される。金融資本はより安定的で高利率な地域に流出する。アベノミクスの恩恵にあずかるには不景気時に金持ちでなければならない。
なんらかの契機で、好景気に循環したとしても、エンジンを手放した車が走り出すことはない。

アルコールは少量づつ保管するよりも、まとめて保管するほうが蒸発しにくい。
また、少量づつアルコールを製造するよりも、まとめて製造したほうが効率がよい。
経済、世の中の価値生産がランダムウォークであるならば、その増加期には格差は縮小し、減少期には、格差は拡大するのであろう。

なるほどr>gなのかもしれないが、dも加えてやってくれ。

d(有利子負債増加率)>r(資本収益率)>g(経済成長率)

結論

それでも、格差は縮まっている。
豊かさ、それがただの銀行貯金の多寡だけしか意味しなくなってきたからだ。

労働と勤勉さだけでは、相続財産とそこから生まれる所得による快適さの水準を達成できないという。
だがしかし、貸借対照表の資産の部からは奴隷という勘定科目はなくなったのだ。
丁稚や年季奉公もいなくなった。

現在議論されている格差とはおおよそお金に帰結する格差だ。
もしかしたら将来、才能の格差や、機会の格差、容姿の格差、隣人の格差など、%で課税しても減らない、お金には不換算なものが格差の中心として議論される時代がくるかもしれないが、1900年代と比較しても、1600年代と比較しても、800年代と比較しても、格差は縮まっている。千鳥足でも時代は進んでいるのだから。

おまけ。ピケティや皆様への質問

考え事をするのに、どうぞ。

1.税による再分配所得は当初所得の格差解決策?

日本の場合は税による再分配効果はほとんどなく公的移転による再分配がおこなわれています。
現役世代から老齢人口に対しておこなう構造です。一般に若者より老齢層のほうが資産を持っていているわけで、そういう意味においては貧乏人から金持ちに配る構造になっています。

厚労省の所得再分配調査によれば当初所得格差は拡大してますが社会保障費含む再分配所得の格差は縮小しています。
年齢階層別所得再分配状況を見ると、59歳以下は全世代において再分配係数がマイナスになっています。
日本では税をあげても当初所得の改善には影響しないとおもいますがどうでしょう。

cf.所得再分配調査
www.mhlw.go.jp/toukei/list/96-1.html

クリックしてh23hou_1.pdfにアクセス

3 税・社会保障による所得再分配 内閣府
www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je09/pdf/09p03023.pdf

世帯主の年齢階層別所得再分配状況(図表抜き出し)
kuippa.com/blog/wp-content/uploads/2015/01/66ae752e8a4310a357a2a27379077a74.png

公的移転による再分配効果、税による再分配効果(図表抜き出し)

2.資産運用における不確実性を無視しすぎじゃないですか?

資産の追跡調査をできるのは、市場に残留しているプレイヤーだけなので、統計としてまとめてしまうとわからなくなりますがその内訳、プレイヤーは異なっているはず。不確実性の値踏みをせずにリターンが高いって指摘はずるくないですか?

3.ゼロとかマイナスうろうろしているのにrがとかgがとか言ってる場合じゃないんじゃないですか?

日本の前年度比名目GDP(支出)で+1.8%、GNIで+2.5%。しかし1994年から2013年までの20年でみれば日本のGNI/国民総所得は+0.32%、国内総生産(生産側)はマイナス2.52%。1995-2013のGDP比較ではマイナス4.26%。
現在の国債利回りは0.254%。国債の取引ではマイナス金利も発生。
日銀は2%の物価成長目標だそうですが、でも住宅ローンフラット35は35年フラットで1.370%が設定されました。

もしピケティが言うように資本による収益率の想定が正しいのだとしたら、家計の部で1,654兆円(2014年9月末)も保有している超資産家の日本の成長が20年で0~マイナスをウロウロしているのはどうしたわけでしょうか。住宅ローンのほうが物価目標より低くされているのはどうしたわけでしょうか。

成長分野の利益を失敬して、非成長分野に付け替えても、再投資ができないから超低成長になるのは日本が既に証明したのでは?

d(有利子負債増加率)>> r(資本収益率)≒ g(経済成長率)

実態はこんなんだったりしませんか?

cf.国内総生産勘定
国内総生産(生産側)(単位:10億円)
1994/495,612.2
2013/483,110.3
国民総所得
1994/499,504.9
2013/501,063.3

内閣府ホーム > 統計情報・調査結果 > 国民経済計算(GDP統計) > 統計データ > 統計表(国民経済計算確報) > 2013年度国民経済計算(2005年基準・93SNA)
www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h25/h25_kaku_top.html

内閣府ホーム > 統計情報・調査結果 > 国民経済計算(GDP統計) > 統計データ > 統計表(国民経済計算確報) > 2013年度国民経済計算(2005年基準・93SNA) > 2013年
www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h25/sankou/materials_j.html

4.お金の流通量が増えてますよね?考慮しなくていいんですか?

富めるものはますます富むとありました。時間経過のなかでお金で計量すればそうかもしれませんが、そもそも世界のお金の流通量(マネーストック)が馬鹿みたいに増えてる最中です。日本だけでみても「日本銀行が供給する通貨(マネタリーベース)」はわずか1年で倍になりました。このご時世にお金をモノサシにして過去との比較はどうなんでしょう?
もし供給されたお金が全部市場に流通したら物価は偉いことになりますよね。

日本のマネタリーベース平均残高
2013/1/1 1,319,205億円
2015/1/1 2,753,859億円

マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」

日本銀行 ホーム > 統計 > 日本銀行関連統計 > その他 > マネタリーベース
www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/#p03

日本銀行 ホーム > 統計 > 通貨関連統計 > マネーストック
www.boj.or.jp/statistics/money/ms/index.htm/

主要時系列統計データ表(月次)
www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/m.html


ふぁふぁ新国立競技場でぴょんぴょん跳ねる


進めるだけ進めておいてだれも責任を取ろうとしない。責任のとりようもない事態。なんだこれ集団浅慮?
新国立競技場の建設から改修費用まで考慮すると3566億が必要となる。
50年フル稼働で使い続けたとして、1日あたり1,954万円が建物償却費用にあてないとならない。
どうしてこれで黒字になるという試算がでるのか??

Screenshot 2015-07-08 23.24.13

Screenshot 2015-07-08 23.24.33

報道では「年間3800万円の黒字に留まる」とあったが、元資料を読んでみるとそこには建設費用を耐久年数で減価償却費した費用も、大型修繕費用の1046億円も含まれていなかった。なんだこの事業計画は。料理長を出せ!!!

これ建物の減価償却費含んでない!!!

Screenshot 2015-07-08 23.29.01

しかも修繕費まで含んでない!
それで年間3,800万しか黒にならないのかよ!!!
2日分の減価償却費も賄えないじゃないか。
実質全損じゃぬゎいか。
こんな事業計画書ありえないわ。というか、許しちゃだめだ。
家賃いれなければ黒字です言うようなものだぞ。
言えないところから財源を回す予定だから費用は考えない方針なのだろうか?
ずさんすぎる。
ずさんすぎるのに、だれも突っ込まないこの異常事態はなんだね??
なんなんだね??

建設物情報

敷地面積 113,039.62 ㎡
建築面積 78,110.21 ㎡
延べ面積 219,430.96 ㎡
総座席数 80,305席

Screenshot 2015-07-08 23.20.28

Screenshot 2015-07-08 23.21.05

日本財団による地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会報告書によると、スポーツ・レクリエーション系等施設の建て替え 36万円/平米

Screenshot 2015-06-07 23.55.43

建築面積で計算すれば2811,960万円 281億円が標準相場となる。
延べ面積で計算しても789億円
つまり、2,520億円はいわずもがな、べらぼぅに高い。
べらんめぇに高い。てやんでぇ。

公共事業は景気を刺激するから善だと論ずる人もいる。
だけれども、維持するのにも壊すのにも人とお金が掛かるのじゃよ。
今回の場合は2520億円が建設費用で、1046億円の維持費用がかかることが見えている。
建てるお金の財源も見えてないのに保守費用は、債権以上の将来負担だ。
+の効果のみこめない資金投下は投資ではない。キンドブだ。負債に変わらない分、まだ金をドブに投げ捨てるほうがましってやつだ。

なによりコンクリートは耐久消費財なのだ。
建設費用のかなりの部分は資材の購入へ当てられる。コンクリートや鉄、どちらも国内で賄うわけではなく、多くの部分を輸入によってまかなっている。結局その富は海外に流出してしまうのだ。

コンクリートでみてみると、日本は2012年次の量を輸入している。

砂 フィリピン/116,432トン
砂利 フィリピン/20,417トン
石灰石 ベトナム/326,141トン
石灰石 マレーシア/270,450トン

で、あるのに何故、今の時代になっても大型工事をおこなおうとするのか。
マイナンバーも導入されるし、国外資産の追跡もされるようになった。政治資金規正法やらなんやらで癒着や収賄は厳しくなっては居る。ゼネコンへの眼も厳しい。

しかし、フィリピンやベトナム、マレーシアで資源メジャーがどう振舞っているのかとか、それらの国で誰の名義でよくわからない口座があったとしても、チェックのしようもない。
向こうさんも買って欲しいだろうし、大手のゼネコンを通した巨額発注なら、調達先もほぼ限定できる。下衆な邪推でしかないが、責任のとりようもない規模に膨らんでるのにそれでも全会一致だとかいう進め方がされているのを見ると、下衆リングせざるを得ない。

委員

国立競技場将来構想有識者会議 委員名簿(平成26年度)
安西 祐一郎 独立行政法人日本学術振興会理事長
安藤 忠雄 建築家
遠藤 利明 スポーツ議員連盟幹事長 衆議院議員
小倉 純二 公益財団法人日本サッカー協会名誉会長
佐藤 禎一 元日本国政府ユネスコ代表部特命全権大使
鈴木 秀典 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構会長
竹田 恆和 公益財団法人日本オリンピック委員会会長
張 富士夫 公益財団法人日本体育協会会長
都倉 俊一 作曲家 一般社団法人日本音楽著作権協会会長
鳥原 光憲 公益財団法人日本障害者スポーツ協会会長
舛添 要一 東京都知事
森 喜朗 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会会長
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長
横川 浩 公益財団法人日本陸上競技連盟会長
笠 浩史 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会推進議員連盟幹事長代理 衆議院議員

まあ、なんか名誉職が並んでるだけなので実働的な本丸はここじゃぁなさそうだね。

建築費用で比較

東京スカイツリーの総事業費 総事業費は約650億円 建設費用 約400億円
H-IIA H-IIB ロケットの開発費は1,802億円
ブルジュ・ハリファ 建設費 階数 160階 延床面積 464,511 m² 15億USドル(1,820.8303 億円)
瀬戸大橋 総事業費 約1兆1,338億円
東京湾アクアライン 総事業費 約1兆4,409億円
首都高速道路の更新 新都心線50.4kmを建設 総建築費3.8兆円試算 キロ当り道路建設費:756億円

代替案

開閉部の屋根が二重折りたたみ空気膜になるそうだ。
虚構新聞さんがARでやればいいと記事にしていたが、いっそ新国立は超巨大バルーンドームにしよう。構造つくらなければ安く済む。
エアートランポリンにしよう!


onestep-miyazaki.com/sair/adome/201-hiyoko.html

参考

www.jpnsport.go.jp/newstadium/tabid/411/Default.aspx

www3.nhk.or.jp/news/html/20150707/k10010142211000.html

www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/syutokou/pdf/21.pdf
www.jichi-sogo.jp/wp/wp-content/uploads/2011/06/2011_02.pdf
biz-journal.jp/2015/06/post_10553.html
crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000159342