最終 第八夜 ちどり足の格差論


マンション組合の会合で年配の女性がまだ若い女性と一触即発の空気をつくりだしていた。

「共働きで忙しいから無理って、負担金もお金に余裕がないから無理って、なんでもムリムリいうものじゃないわよ!」
ピシッ
「だいたい共働きなのになんで生活が苦しいの?」
ピシッ
「わたしがあなたぐらいの年齢のときは、お父さんの稼ぎだけで生活できたものよ。贅沢してるんじゃないの?旦那は仕事してないんじゃないの?」
ピシッ
ピシッ
ピシッ!

マンション組合の会合などに出たことはないし、まったくの空想であるが、似たような世代ハラスメントは各地で繰り広げられているのかもしれない。
togetter.com/li/836975

完結 財福主義

忘れてたわけじゃないんだけど… もうかなり書いた気がするので完結させることにした。

序論 盗人と資本主義
第一夜 自然科学と経済の白熱教室
第二夜 社畜という現代奴隷の重要性
第三夜 区切られた財。奪えども足りぬゆえ格差
第四夜 CO-枯れた才能
第五夜 資本と時価
第六夜 時間選好による隠者の経済 リスクフリーレート
第七夜 この規模のマネタリーベースでおきたら大変トリクルダウン

格差は縮まる、広がる?

経済学者クズネッツ氏は、1971年に「格差は縮まる」 との論文でノーベル賞を受賞した。
経済学者ピケティ氏は、2014年に「格差は広がる」 との著書で、まるでロックスターのような扱いを受けた。

経営学において、完全競争業界は他の産業より利益がある場合、新規参入が相次ぎ利益は平準化する。
しかし、法規制などの競争障壁が構成されることで参入や競争はされなくなり暗黙的談合がおこなわれ、小資本者がジャイアントキリングをおこなうことはなくなる。

化学において、例えばNaClを水に溶かすと、分子活動により時間経過とともに濃度はやがて均一になる。
しかし、大量の溶質を加えたり、溶媒の温度を下げたりすると、溶解平衡に達し飽和状態になり溶けない溶質はその場に留まる。溶液の粘性をあげたりすればもちろん濃度にはばらつきが生まれる。

人口動態経済

日本は労働人口が減少する局面にある。非生産人口は増えている。
かつての中国やブラジル、いまのインドネシアやフィリピンのように人口ボーナス期のように熱量があり、価値創造がどんどんなされている拡大成長時であれば、なるほど格差はやがて縮まるであろう。ここまではクズネッツだ。

人口減少局面においてはどうなるか。作り出せる富が平衡に達したときはどうなるか。利益ではなく不利益が発生した場合はどうなるか。不利益も平準化するだろうか?どうやらしないようだというのがピケティなのではないだろうか。

歴史を紐解けば天候不順などにより飢饉が発生した際には、一揆や戦争という暴力的な解決にいたる例は枚挙にいとまがない。疫病や飢饉など大きな不利益が発生したときは、地域や身分などによる隔離というゾーニングで不利益が拡散しないようにする解決策が多いように思う。富は増えても減っても混乱がつきまとうようだ。

ランダムウォーク

あるギャンブラーが同率の勝ちと負けを繰り返した場合どうなるか?
たとえば掛け金の30%増と、30%減を繰り返した場合だ。
同率の勝ち負けを繰り返しているだけなのにこのギャンブラーはやがて破産する。
親のハネマエ、テラ銭率の話しではない。

1000*130%=1300
1300*70%=910
910*130%=1183
1183*70%=828
828*130%=1077
1077*70%=754
754*130%=979

わずか7回の繰り返しで勝っているのに元本を割り込むようになってしまった。
この30%の勝ちに対義するのは30%の負けではなく100/130、76.92つまり23.08%の負けである。
倍の対義は半分であるが、50%増の対義は33%減であるし、50%減の対義は100%増である。

話しが余談にそれたが、まあ、何がいいたいかというと少なからぬ人が勝ちと負けの線引をしくじっていることがある。
そして、率で考えた場合、増加よりも減少のほうがシビアで、その影響は元額面が大きいほど顕著であるということだ。
さらにおおよそ負の財産は許容されない。
金持ちはけちくさいという社会通念があるが、保持しているものが大きければ勝ちよりも負けに強くこだわらなければならなくなる。まあ、それをケチくさいというのかもしれないが、この線引がわからないと前述のギャンブラーのように勝ってるつもりが負けていて細かく破産を繰り返すことになる。

振幅の大きい社会(でかいボラティリティ)においては、小資本と大資本の結果の差は出やすい。
太宰治の実家は東北でも指折りの資産家であったそうな。金貸しをしていた。
天候というものは定まらぬもので、不作や凶作になる年が出てくる。近代農法以前の東北では更に顕著であったそうな。
凶作時、資産に余裕のあるものは金を貸し、生活もままならないものは小作に身を落としたり子供を年季奉公に出す。
これを繰り返すうちに、富める者はますます富み、貧するものはますます貧するという金持ちが数本の指に収まる社会をつくりだした。

その時代、資産(ワンイヤールールに当てはまらない固定資産)が集まったのは凶作の時代だ。
土地という資産が、凶作により流動資産に変換できずに土地や人を処分する。
豊作の時代になったときには今度は土地も人もないのでその恩恵に預かれない。

今世紀になって、農地だったものが、産業資本、金融資本、不動産資本だのに変化しても、その本質は変わらないようだ。
地政学的な情勢不安や社会保障不安などで経済が縮退し、思ったような利益があがらないようになると産業資本を処分される。金融資本はより安定的で高利率な地域に流出する。アベノミクスの恩恵にあずかるには不景気時に金持ちでなければならない。
なんらかの契機で、好景気に循環したとしても、エンジンを手放した車が走り出すことはない。

アルコールは少量づつ保管するよりも、まとめて保管するほうが蒸発しにくい。
また、少量づつアルコールを製造するよりも、まとめて製造したほうが効率がよい。
経済、世の中の価値生産がランダムウォークであるならば、その増加期には格差は縮小し、減少期には、格差は拡大するのであろう。

なるほどr>gなのかもしれないが、dも加えてやってくれ。

d(有利子負債増加率)>r(資本収益率)>g(経済成長率)

結論

それでも、格差は縮まっている。
豊かさ、それがただの銀行貯金の多寡だけしか意味しなくなってきたからだ。

労働と勤勉さだけでは、相続財産とそこから生まれる所得による快適さの水準を達成できないという。
だがしかし、貸借対照表の資産の部からは奴隷という勘定科目はなくなったのだ。
丁稚や年季奉公もいなくなった。

現在議論されている格差とはおおよそお金に帰結する格差だ。
もしかしたら将来、才能の格差や、機会の格差、容姿の格差、隣人の格差など、%で課税しても減らない、お金には不換算なものが格差の中心として議論される時代がくるかもしれないが、1900年代と比較しても、1600年代と比較しても、800年代と比較しても、格差は縮まっている。千鳥足でも時代は進んでいるのだから。

おまけ。ピケティや皆様への質問

考え事をするのに、どうぞ。

1.税による再分配所得は当初所得の格差解決策?

日本の場合は税による再分配効果はほとんどなく公的移転による再分配がおこなわれています。
現役世代から老齢人口に対しておこなう構造です。一般に若者より老齢層のほうが資産を持っていているわけで、そういう意味においては貧乏人から金持ちに配る構造になっています。

厚労省の所得再分配調査によれば当初所得格差は拡大してますが社会保障費含む再分配所得の格差は縮小しています。
年齢階層別所得再分配状況を見ると、59歳以下は全世代において再分配係数がマイナスになっています。
日本では税をあげても当初所得の改善には影響しないとおもいますがどうでしょう。

cf.所得再分配調査
www.mhlw.go.jp/toukei/list/96-1.html

クリックしてh23hou_1.pdfにアクセス

3 税・社会保障による所得再分配 内閣府
www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je09/pdf/09p03023.pdf

世帯主の年齢階層別所得再分配状況(図表抜き出し)
kuippa.com/blog/wp-content/uploads/2015/01/66ae752e8a4310a357a2a27379077a74.png

公的移転による再分配効果、税による再分配効果(図表抜き出し)

2.資産運用における不確実性を無視しすぎじゃないですか?

資産の追跡調査をできるのは、市場に残留しているプレイヤーだけなので、統計としてまとめてしまうとわからなくなりますがその内訳、プレイヤーは異なっているはず。不確実性の値踏みをせずにリターンが高いって指摘はずるくないですか?

3.ゼロとかマイナスうろうろしているのにrがとかgがとか言ってる場合じゃないんじゃないですか?

日本の前年度比名目GDP(支出)で+1.8%、GNIで+2.5%。しかし1994年から2013年までの20年でみれば日本のGNI/国民総所得は+0.32%、国内総生産(生産側)はマイナス2.52%。1995-2013のGDP比較ではマイナス4.26%。
現在の国債利回りは0.254%。国債の取引ではマイナス金利も発生。
日銀は2%の物価成長目標だそうですが、でも住宅ローンフラット35は35年フラットで1.370%が設定されました。

もしピケティが言うように資本による収益率の想定が正しいのだとしたら、家計の部で1,654兆円(2014年9月末)も保有している超資産家の日本の成長が20年で0~マイナスをウロウロしているのはどうしたわけでしょうか。住宅ローンのほうが物価目標より低くされているのはどうしたわけでしょうか。

成長分野の利益を失敬して、非成長分野に付け替えても、再投資ができないから超低成長になるのは日本が既に証明したのでは?

d(有利子負債増加率)>> r(資本収益率)≒ g(経済成長率)

実態はこんなんだったりしませんか?

cf.国内総生産勘定
国内総生産(生産側)(単位:10億円)
1994/495,612.2
2013/483,110.3
国民総所得
1994/499,504.9
2013/501,063.3

内閣府ホーム > 統計情報・調査結果 > 国民経済計算(GDP統計) > 統計データ > 統計表(国民経済計算確報) > 2013年度国民経済計算(2005年基準・93SNA)
www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h25/h25_kaku_top.html

内閣府ホーム > 統計情報・調査結果 > 国民経済計算(GDP統計) > 統計データ > 統計表(国民経済計算確報) > 2013年度国民経済計算(2005年基準・93SNA) > 2013年
www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h25/sankou/materials_j.html

4.お金の流通量が増えてますよね?考慮しなくていいんですか?

富めるものはますます富むとありました。時間経過のなかでお金で計量すればそうかもしれませんが、そもそも世界のお金の流通量(マネーストック)が馬鹿みたいに増えてる最中です。日本だけでみても「日本銀行が供給する通貨(マネタリーベース)」はわずか1年で倍になりました。このご時世にお金をモノサシにして過去との比較はどうなんでしょう?
もし供給されたお金が全部市場に流通したら物価は偉いことになりますよね。

日本のマネタリーベース平均残高
2013/1/1 1,319,205億円
2015/1/1 2,753,859億円

マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」

日本銀行 ホーム > 統計 > 日本銀行関連統計 > その他 > マネタリーベース
www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/index.htm/#p03

日本銀行 ホーム > 統計 > 通貨関連統計 > マネーストック
www.boj.or.jp/statistics/money/ms/index.htm/

主要時系列統計データ表(月次)
www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/m.html


ふぁふぁ新国立競技場でぴょんぴょん跳ねる


進めるだけ進めておいてだれも責任を取ろうとしない。責任のとりようもない事態。なんだこれ集団浅慮?
新国立競技場の建設から改修費用まで考慮すると3566億が必要となる。
50年フル稼働で使い続けたとして、1日あたり1,954万円が建物償却費用にあてないとならない。
どうしてこれで黒字になるという試算がでるのか??

Screenshot 2015-07-08 23.24.13

Screenshot 2015-07-08 23.24.33

報道では「年間3800万円の黒字に留まる」とあったが、元資料を読んでみるとそこには建設費用を耐久年数で減価償却費した費用も、大型修繕費用の1046億円も含まれていなかった。なんだこの事業計画は。料理長を出せ!!!

これ建物の減価償却費含んでない!!!

Screenshot 2015-07-08 23.29.01

しかも修繕費まで含んでない!
それで年間3,800万しか黒にならないのかよ!!!
2日分の減価償却費も賄えないじゃないか。
実質全損じゃぬゎいか。
こんな事業計画書ありえないわ。というか、許しちゃだめだ。
家賃いれなければ黒字です言うようなものだぞ。
言えないところから財源を回す予定だから費用は考えない方針なのだろうか?
ずさんすぎる。
ずさんすぎるのに、だれも突っ込まないこの異常事態はなんだね??
なんなんだね??

建設物情報

敷地面積 113,039.62 ㎡
建築面積 78,110.21 ㎡
延べ面積 219,430.96 ㎡
総座席数 80,305席

Screenshot 2015-07-08 23.20.28

Screenshot 2015-07-08 23.21.05

日本財団による地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会報告書によると、スポーツ・レクリエーション系等施設の建て替え 36万円/平米

Screenshot 2015-06-07 23.55.43

建築面積で計算すれば2811,960万円 281億円が標準相場となる。
延べ面積で計算しても789億円
つまり、2,520億円はいわずもがな、べらぼぅに高い。
べらんめぇに高い。てやんでぇ。

公共事業は景気を刺激するから善だと論ずる人もいる。
だけれども、維持するのにも壊すのにも人とお金が掛かるのじゃよ。
今回の場合は2520億円が建設費用で、1046億円の維持費用がかかることが見えている。
建てるお金の財源も見えてないのに保守費用は、債権以上の将来負担だ。
+の効果のみこめない資金投下は投資ではない。キンドブだ。負債に変わらない分、まだ金をドブに投げ捨てるほうがましってやつだ。

なによりコンクリートは耐久消費財なのだ。
建設費用のかなりの部分は資材の購入へ当てられる。コンクリートや鉄、どちらも国内で賄うわけではなく、多くの部分を輸入によってまかなっている。結局その富は海外に流出してしまうのだ。

コンクリートでみてみると、日本は2012年次の量を輸入している。

砂 フィリピン/116,432トン
砂利 フィリピン/20,417トン
石灰石 ベトナム/326,141トン
石灰石 マレーシア/270,450トン

で、あるのに何故、今の時代になっても大型工事をおこなおうとするのか。
マイナンバーも導入されるし、国外資産の追跡もされるようになった。政治資金規正法やらなんやらで癒着や収賄は厳しくなっては居る。ゼネコンへの眼も厳しい。

しかし、フィリピンやベトナム、マレーシアで資源メジャーがどう振舞っているのかとか、それらの国で誰の名義でよくわからない口座があったとしても、チェックのしようもない。
向こうさんも買って欲しいだろうし、大手のゼネコンを通した巨額発注なら、調達先もほぼ限定できる。下衆な邪推でしかないが、責任のとりようもない規模に膨らんでるのにそれでも全会一致だとかいう進め方がされているのを見ると、下衆リングせざるを得ない。

委員

国立競技場将来構想有識者会議 委員名簿(平成26年度)
安西 祐一郎 独立行政法人日本学術振興会理事長
安藤 忠雄 建築家
遠藤 利明 スポーツ議員連盟幹事長 衆議院議員
小倉 純二 公益財団法人日本サッカー協会名誉会長
佐藤 禎一 元日本国政府ユネスコ代表部特命全権大使
鈴木 秀典 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構会長
竹田 恆和 公益財団法人日本オリンピック委員会会長
張 富士夫 公益財団法人日本体育協会会長
都倉 俊一 作曲家 一般社団法人日本音楽著作権協会会長
鳥原 光憲 公益財団法人日本障害者スポーツ協会会長
舛添 要一 東京都知事
森 喜朗 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会会長
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長
横川 浩 公益財団法人日本陸上競技連盟会長
笠 浩史 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会推進議員連盟幹事長代理 衆議院議員

まあ、なんか名誉職が並んでるだけなので実働的な本丸はここじゃぁなさそうだね。

建築費用で比較

東京スカイツリーの総事業費 総事業費は約650億円 建設費用 約400億円
H-IIA H-IIB ロケットの開発費は1,802億円
ブルジュ・ハリファ 建設費 階数 160階 延床面積 464,511 m² 15億USドル(1,820.8303 億円)
瀬戸大橋 総事業費 約1兆1,338億円
東京湾アクアライン 総事業費 約1兆4,409億円
首都高速道路の更新 新都心線50.4kmを建設 総建築費3.8兆円試算 キロ当り道路建設費:756億円

代替案

開閉部の屋根が二重折りたたみ空気膜になるそうだ。
虚構新聞さんがARでやればいいと記事にしていたが、いっそ新国立は超巨大バルーンドームにしよう。構造つくらなければ安く済む。
エアートランポリンにしよう!


onestep-miyazaki.com/sair/adome/201-hiyoko.html

参考

www.jpnsport.go.jp/newstadium/tabid/411/Default.aspx

www3.nhk.or.jp/news/html/20150707/k10010142211000.html

www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/syutokou/pdf/21.pdf
www.jichi-sogo.jp/wp/wp-content/uploads/2011/06/2011_02.pdf
biz-journal.jp/2015/06/post_10553.html
crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000159342


武蔵野プレイスから学ぶ。公共建築物にお金をかけるべきか?


こんな話題があった。
anond.hatelabo.jp/20150606185828
ちょうど昨日武蔵野プレイスに居たので、つらつら調べながら書いておく。

武蔵野プレイス

JR中央線武蔵境駅南口駅前。
農水省食糧倉庫跡地に建てられた複合施設。1Fには民間のカフェが入り、雑誌コーナーや特設展が開催される。
地下3階、地上4階だてのアップルコンピューター的なデザイン物件。窓は丸いし、ついでにいうと壁と天井の継ぎ目もなく丸い。正確には丸というよりは長方形の角落としたオーバル型。うっかり窓際に近寄ると背の高い人は頭をうつ。結構痛い。


写真 (c)会社名(有)kwhgアーキテクツ kwhg.co.jp/wp/

川原田 康子さんと、比嘉 武彦さんによる二人組の有限会社の建築作品? 2人でやるとはなかなかやるね。

吹き抜けも多くあり近未来的な様相がある開放的な建築物である。書棚が低く視界を遮らずフロア全体を見渡せる。本が圧縮陳列されていないので蔵書数が少ないようにも感じるが図書館は地下2階にまで拡がっているので蔵書数は14万冊ほどある。子供用の読み聞かせスペースなども充実していていろいろいい感じ。

3〜4階は上は会議室や学習用の貸しスペースになっていて、小会議室は2,000〜円ぐらいでプロジェクター付きで半日借りられる。ここ2年ぐらいプログラマーズカフェはここを借りて開催している。全館wifiの自由利用ができるのだが、フィルターが掛けられているためにyoutubeなどは見ることはできない。ポートが閉じられていたり、接続人数制限でしょっちゅう切れるので、まぁ無いよりはいいねという感じ。
地下3階にはたしか300円ぐらいで借りられる格安の貸し音楽スタジオがある。しかし、ここはティーンしか利用できない秘密の花園なので、おっさんがうっかり地下にたどり着いてしまったのならばすみやかに引き返す必要があるだろう。

武蔵野プレイス
www.musashino.or.jp/place/_1191.html
「集う、学ぶ、創る、育む〜知的創造拠点」というコンセプト
「知識・情報の場」「創造の場」「表現の場」「体験の場」「集いの場」と、この5つの場
「図書館機能」「会議・研究・発表」「創造・練習・鑑賞」「交流」という4つの施設機能

武蔵野市

おしゃれ臭のする図書館ということで武雄と武蔵野の区別が怪しい、はてなブックマーカーもいるようなのだが、武蔵野市は東京にあり吉祥寺を有する財政的にも恵まれた街である。東京23区はもともと旧東京市なので都が管轄する部分も多く、そもそも特別区であるので地方自治体ではないのだが、それに隣接する武蔵野市や三鷹市からは地方自治体になる。法区分ではその他の地方都市と同列だ。

で、枠組み的には地方となるのだが、その税収は潤沢だ。

武蔵野プレイス(仮称)専門家会議最終報告 乗降車数
なにせ武蔵境駅、三鷹駅(の半分)、吉祥寺駅は武蔵野市なのだ。

武蔵野市は平成26年に全国55しかない地方交付税の不交付団体の1つである。
地方自治体は全国に合計1,741あるので内1,686は財源不足団体となる。 [[ www.soumu.go.jp/main_content/000304504.pdf ]]

平成26年度不交付団体は下記のわずか55団体。

北海道 泊村
青森県 六ヶ所村
福島県 広野町 大熊町
茨城県 神栖市 東海村
栃木県 芳賀町
群馬県 上野村
埼玉県 戸田市 三芳町
千葉県 市川市 成田市 君津市 浦安市 袖ケ浦市
東京都 立川市 武蔵野市 三鷹市 府中市 調布市 多摩市
神奈川県 鎌倉市 藤沢市 厚木市 寒川町 箱根町 愛川町
新潟県 聖籠町 刈羽村
山梨県 昭和町 忍野村 山中湖村
長野県 軽井沢町
静岡県 御前崎市 長泉町
愛知県 碧南市 刈谷市 豊田市 安城市 小牧市 東海市 大府市 みよし市 長久手市 豊山町 大口町 飛島村 幸田町
三重県 川越町
滋賀県 竜王町
京都府 久御山町
大阪府 田尻町
福岡県 苅田町
佐賀県 玄海町

なんか、日本で黒字地方自治体になるには、原発もつか、王国もつか、空港もつか、夢の国もつかしかないんじゃないかとすら思う。一般市民税収入などから黒字運営できているところはホント少ない。でも、山中湖村にできてるんだからとも思う。

武蔵野市の平成25年度で歳入合計は623億、市税分で375億ある。
全国平均と比較しても高所得者が多く、また低所得者が少ない。5%しかいない年収1,000万以上の高額所得者が税収の35%近くを支えているという素敵構造だ。ゴチになります。

課税標準額段階別納税義務者の構成比較(平成25年度)

課税標準額段階別所得割額の構成比較(平成25年度)

[[ www.city.musashino.lg.jp/dbps_data/material/_files/000/000/018/919/shiryo3.pdf ]]

ここらへんの市の関係者に聞くと無駄遣いをして交付団体になったほうが実はつかえる財源は多くなるんだが挟持ってものがあるらしい。
あ、ちなみにすごく本筋からはずれるのだが武雄図書館は2013年で、武蔵野プレイスは2010年開館なのである。あまり深くは書かない。

図書館

本を読むから高所得者が多いのか、高所得者が多いから図書館の利用率が高いのかはわからぬのだが武蔵野市は図書館の貸出数は全国1位だそうだ。

平成22年度の統計を見ると、武蔵野市立図書館の貸出数は、同規模自治体(人口 10〜15 万人)の中で、全国第1位であり、近隣自治体の中でも、市民1人当たりの貸出数 13.68 冊は第1位
www.library.musashino.tokyo.jp/data/houkoku/houkoku_23.pdf

なんと武蔵野プレイスだけで年間160万人もの利用者がある。

公益財団法人 武蔵野生涯学習振興事業団 (平成 27 年度〜平成 31 年度)

クリックして201553110275.pdfにアクセス

各施設の利用者数の推移(利用者数)
各施設の利用者数の推移(利用者数)

逆に周辺都市の三鷹市の図書館利用率は武蔵野プレイスオープン以降下がっている。

クリックしてattach_48727_1.pdfにアクセス

Screenshot 2015-06-07 23.25.59

建設コスト

総事業費約82億5千万円、用地取得費約25億5千万円
[[ www.city.musashino.lg.jp/sesaku_keikaku/kyoikubu/musashinoplace_kensetsu/004290.html ]]

建設コスト

地上4階建ての500坪程度の建物にしては結構お高いように感じる。地下3階もつくっているからだろうか?

建物本体の工事費は,35億円程度だと思います.グレードにもよりますが,一級建築士製図試験に出題される規模の美術館や図書館等の公共施設の工事費は,20〜40億円程度となります
blog.livedoor.jp/ura410/archives/53190593.html

三鷹市の商業地区、防火地区に居るので法規制がどんなものなのかはある程度はわかっているつもりではあるのだが、ここらの地区では法的な用件を満たすために、使用可能な耐火材など建築資材や工法がほぼ限定される。ここらへんで地下を無くして鉄骨7階建てのビルを建てても100坪ぐらいならざくーっと4〜5億ぐらいなので単純に5倍したら25億か。階段2系統にエレベーター3系統とか、大規模公共施設の要件とか満たそうとすると35億ぐらいになってしまうのかな?
建物に吹き抜けが多いのもおしゃれが理由ではなく、容積率の問題のような気がする。

建 蔽 率 73 % ( 許容建蔽率 100 %(建基法 53 条 5 項による))
容 積 率 458 % ( 許容容積率 500 %)
建築面積 1,591平米
容積対象床面積 約 9,010平米 1F 約 1,180平米
延べ床面積 約 9,937平米
地上4階 地下3階
[[ www.city.musashino.lg.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/004/802/7579-1.pdf ]]

商業地区、防火地区で公共施設を建てようとすると高さを稼ぐよりも地下に掘ってしまったほうが安いのだろうか?少し調べてみたが学校、博物館、美術館又は図書館に準ずる特殊建築物は高さ31m以上になるとなにやらあるようだけど、パッと見た感じ、地下室をつくるよりコストがかかるほどとは見えない。
www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1011306001.html

それとも、防災や、防火的な別の意図や意味合いがあるのであろうか?
接道は十分確保されていて商業地区であれば少なくとも10階以上のビルは建てられると思うのだが、なぜ地上4階地下3階の構造にしたのだろう?んー。なぞい。環境配慮、景観保全?軍事利用、防衛?遮断性配慮?それともシールド工法とか、地下のほじくりが安くなったのか?

だいぶ年代が遡るが隣の三鷹駅前コミュニティ・センター(三鷹駅前図書館)と比較してみる

敷地面積 922.75平米
総面積 2,631.40平米
買収額(敷地 平成4年) 35億2千万
建築総工事費 23億7千万
地上5階 地下2階

クリックして13_omoto.pdfにアクセス

20年以上前のバブル期だから駅からは離れているのに用地取得費が高くついているが、建築費用はこちらの方がずいぶんと安い。まあ駅前コミセンは普通のビルだからな…。その差かな?

日本財団の工事費用調査から調べた。
40万円/平米だとすると1万平米で40億。妥当なラインになる。

地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会報告書 日本財団

クリックして2011_02.pdfにアクセス

Screenshot 2015-06-07 23.55.43

Screenshot 2015-06-08 00.00.21

国土交通省の新営予算単価による地域別工事費指数では、東京を100とした地域別の差は概ね±10の範囲であるため、更新単価において地域差は考慮しない

日本建築学会「建築物の耐久計画に関する考え方」 鉄筋コンクリート造・鉄骨コンクリート造の目標耐用年数60年、建設時より30年後に大規模改修を行い、60年間使用して建替える。
大規模改修時単価は建て替え単価の約60%相当。

経営

プレイス関連決算h25

公益財団法人 武蔵野生涯学習振興事業団

税制上の耐用年数は50年?30年?
鉄筋コンクリート製建物左記以外のものだとすると耐用年数50年

国税庁 第2章 耐用年数関係各論 第1節 建物 (左記以外のもの)
[[ www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sonota/700525/02/02_01.htm ]]

50年で考えると減価償却費で考えると年間1.1億ぐらい。
まぁ、年間160万人が利用する建物の事業費として考えれば序盤としては大成功といっていいと思う。

公益財団法人 武蔵野生涯学習振興事業団 (平成 27 年度〜平成 31 年度)
[[ www.city.musashino.lg.jp/sesaku_keikaku/kyoikubu/musashinoplace_kensetsu/004811.html ]]

建築物にお金をかけるべきかかけないべきか

自治団体が自己裁量の財源で事業を行い、しかもそれが対外的にみて成功しているのであればそれは良いことなのではないだろうか。

会社の福利厚生のようなものだ。黒字会社が福利厚生を厚くする。他の会社から羨まれ、離職率は下り、優秀な人材を確保できるようになる。
事実、三鷹市の図書館の貸出件数がプレイス以降下がっているということは周辺の商業施設にも影響があり、事業体としては周辺経済に影響を与えていて商流に変化を与えている。言ってみれば、その自治体はその事業で周辺自治体から外貨を稼いだわけだ。余剰金の処分方法として、次につながる褒められるべき手腕だ。

しかし、これを形だけ真似て、同規模の建物を建てることには関心しない。
不採算の地方自治体が財政赤字を垂れ流したまま、更生施設に投資をするというのは一体何を意味するだろうか?
会社が赤字だけど、いい暮らししたいから福利厚生あげたいというようなものだ。タコが食うものがなくて自分の足食うような蛸配当に近い。
本業部門でマイナスなのに、市債を発行して衛生環境をあげても、本業の収支は改善しないばかりか、維持費や将来の改修費用など新たな費用を発生させる。

公共事業や箱物行政は地域の経済を支えるというような考え方がある。
たしかに、人に使われるなら経済がまわるが、資材につかわれるため海外に流出する割合も多い。建築は基盤産業ではないのだ。
また近代において建築はモジュール化、ユニット化、プレファブリケーション化がすすみ、在来工法のように建設費が職人におちる割合はすくない。コンクリートや鉄筋など耐久投資材への購入費用となる。
コンクリート、石、鉄、また木材などの建築資材は日本は海外から購入している。日本全国どこで建物を建てても建築費用が変わらない。国土交通省の新営予算単価では地域別工事費指数は差が10前後に収まるので無視するとある。不動産価値は土地代と資材費でしかない。

耐久消費財で経済を回そうとすれば、10の経済を回すのに100の投資をしなければいけない。
また耐久消費財は維持費用や撤去費用がかかるのだ。
ハコモノの場合30ごとに60%の同様の費用が発生するとある。
全国で一番最初に上下水道普及100%になった三鷹は、昨今は改修でてんやわんやだ。
国や自治体の予算作成は単年度予算作成で、財務3表どころか、複式簿記すら採用しておらず、資産の現在価値の把握や、保守のための複次年度の予算計画が困難である。
戦後高度経済成長期に建てられたトンネルやダム、団地などはこれから改修が喫緊の課題となる。

ザハザハ案の代々木国立競技場は、町中に橋梁をつくりょうなものなので、そもそも無理だとしても、費用と効果は考慮されるべきものだと思う。
その建物があることで街の価値があがり、外から人が流入し経済効果があがるのであればそれは投資になるが、あの建物はワシが建てたという銅像と変わらない政治家の自己顕示的な使われ方をしては、それは債務だ。代々木の新国立競技場はどっちであろうか?

石原知事、猪瀬知事あたりで決まってたのに動かなくなったもの。
築地の豊洲新市場の場外業者が2社、ごめんなさいしたのを考えると、なんかあれこれ、あれが何して何だったのかね?