いや、そもそも税が再分配のために行われてるなんてことを信じて救われるのかい?
どんな商売でも率で相手が言い出した時は注意しろ?
家計調査年報(家計収支編)平成26年(2014年) 第3表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯 当たり1か月間の収入と支出(総世帯)より作成
年間171万以下の低所得者は月に30,424円を食費にかけるので2%軽減すると608円
年間941万以上の高所得者は月に92,253円を食費にかけるので2%軽減すると1,845円
複雑にすると、裁量が生まれる。裁量は権利であり利権だ。
ああ、だからシンプルにしておけって言ったのに、このバカ。
KISS(Keep it simple,stupid!)の原則はなにもエンジニアリング業界だけではない。
制度、施策はなぜもこんなにスパゲッティモンスターなのか。窓からどこまでも空高く投げ飛ばしたほうがいい。
英米法系と大陸法系
先に日本の法律体系について言っておかなければならない。
英米は判例重視で、運用してみて、なんか問題があったら裁判にして、判断を積み重ねる。
日本やドイツは事前に法で定義した範囲で運用する許認可制。ルールで許可されていないことはやってはいけない。
もし「XXX」 だったら やってもよい(大陸法系:許認可制)
もし「XXX」 だったら やっちゃだめ(英米法系:判例重視)
許認可制をうまく運用していくためには、物事がおきるまえに事前にXXXを定義していく必要がある。
だから、まだ技術や常識、倫理が確立していない新しく未知のものに対する取り組みはアメリカのような国で「やってみよう」というスタンスのほうがスピーディーに取り組める。また取り組んだ結果、裁判でやっぱダメーとなる「事故」も多い。
逆に日本ではやったことが裁判でひっくり返るような事故はまずないが、まだそれが起きてももないうちに審議を尽くさなければいけないので議論が見当違いだったり、ともかく足が遅い。
これは、どちらがいいというのではなく、それぞれの特徴。一長一短。
特に日本では、
- お酒製造免許をもっていればお酒をつくってもよい
- お酒製造免許取得には生産能力があること
- 生産能力があることはお酒の製造実績により証明される
このような論理的に二律背反するサンドイッチで挟むことによって、だいたい何でもお上にお伺いを立て特別に許可をもらわないと「やっちゃだめ」という仕組みになっている。
まあ、だから運用のために認可をするのは人間系でカバーせざるを得ず、特定個人による裁量が入り込む余地が多くなってしまう。ロジックが破綻していることが多く、悪く言えば人治になっている部分も多い。
そこで「やっちゃダメ」の例外をつくるために、ともかく但し書きをつけていく。ただしYYYでZZZの時は除く。
法律にバッチをあてて穴をあけていく。
さて、これが議論の前提。
軽減税率はまさに穴あけ
消費税は10%とする。「但し」「XXX」は除く。
「XXX」とは「YYY」であること。
「YYY」であるためには「ZZZ」を満たすこと。
とかね、ともかく例外がずらりと定義される。
食料品とはどんな定義なのか、食玩付きのお菓子は食料なのか玩具なのか。高級品はいくらからが高級品なのか。それともグラム単位だとどうなるのか。など事細かく場合分けをしていく。if文だらけの糞プログラム。
ルールを複雑にすると、穴をついたり、その認定認可の過程で個人のごまかしや裁量が入り込む余地がおおきくうまれる。
分配はまさに権利
消費税は社会福祉に使うよという目的税なんだって。でも建前と実際が違うのなんて中学生だって知ってるよね。
結局、どのように分配するのか予算を決める過程で個人の裁量がはいりこむので、大きく目的とずれちゃうんだよね。
そもそもそれをチェックする仕組みがない。
企業の財務会計なら何にいくらつかっていくらのリターンがあったかがわかるようになっている。
自治体もようやく財務諸表が公開されるようになったが、結局はいまだにもって単式簿記。
予算が守られているかは確認するけれども、その内実、社会保障に割り当てられた予算が「再分配」にまわっているのか、社会保障関係の施設の「土地建物」にまわっているのかはチェックできない。
だからこうなる。税による再分配効果?税はとっているけど再分配なんておこなわれていない。よくわからないうちに取られてよくわからないところに消えていく。まずは会計をなんとかしないと議論もできないよね。
消費税増税の影響
途中がどうなってるかわからないから結果で追うしか無い。
制度を設計している人たちの目標が、それぞれがどれだけ大きな裁量を握るかというところに執着しているので、その制度の結果どうなったかというところは無視されがちになる。
消費税を増税したらどの程度の経済的影響があるかという議論はあったけれども結局どうなったかという評価もたいしてすることなく次の増税と軽減税率について論じようとしている。
補助線を引いておく。
この景気減速によるブレーキなければ税収もあがってたんじゃないかっていう話。
生かさず殺さずかね。むしろ殺しにかかってるよね。
でも死んじゃう!
軽減税率がなされると死ぬのは中小企業だけではない。
どんなレジスターにも企業独自の管理会計の仕組みにも、財務会計の仕組みにも商品ごとに税率を変更する仕組みなんてない。お金が絡むシステムすべてが作り直しになる。修繕じゃすまない。作り直し。
例えば、多くのお店が持っているレジスターにはPLUと呼ばれる商品ID(PK)と、部門、商品名、商品価格程度がはいっている。消費税率はレジスターに設定されている1つのみだ。
中小企業はまずこの時点で、すべてを内税にして売価として処理をしなければならなくなるが、例えば、値引きなどの日常的な処理が100円(外税)の40%引きなのか、110円(内税)の40%引きなのかはまるで違う結果になる。
例えば売上1000万円未満の零細企業でも、結局のところ仕入れ時に支払い消費税があるので、その分の原価変更をおこなわなければならない。
この原価変更によりお店取り扱いの商品のすべての価格が変更になる。
レジスター、店頭、全てね。これが全国のお店の数分おきる。お店本業とは関係ないところで、雑務で死んじゃうんだから。
で、値段変更しても、結局卸元からまた値段変更通知がくるでしょ?
そうするとまた値段変更するでしょ?
するとまた玉突きがおきて値段変更が発生するでしょ?
あっちが変更したらこっちも変更しなきゃで1年は価格が落ち着かないんだよ。
価格設定が1年に一回みたいな業界も多いのに、事前に売り出してたら仕入れ値が変わっちゃったとか悲劇だよね。
大手上場企業だって多くの業界で税引き前利益なんて5%もなくて、平均で食品3.8%卸1.49%とかなわけですよ。
消費税とかで2%とか3%とか軽くあげちゃってくれてるけど、そんな大雑把なことされても吸収できる余裕ないんだよね。
さて、この値段変更。利益にも結びつかなければ、生産性の向上とも結びつかないんだ。
コストセンターでしかない。
国民が「健康で文化的な生活を営む」ことを目標とするなら、なんら貢献のない労動だよね。
国民に朝方に穴掘って、夕方に埋め戻す仕事ばかりさせてたらみんな狂っちゃうよね。
大手ならPOSレジをいじるだけで対応できるでしょ?とか思ってるのかもしれないけど、そこらへん設計したこともあるけど、そんなふうにはなってねぇからな。税率変えるだけでしょとか言う奴いたらちょっとツイッターで呟いてごらん。
場合の組み合わせが跳ね上がるから、まじで作り直しなんだよ。商品テーブルだけだったのが、軽減税率テーブルと軽減税率品目テーブルを持たなきゃいけない。
州ごとに税率が異なったり、イートインとトゥーゴーで税率が違ったりする国はそういう社会資本やら文化資本があったうえでのその税率なんだよ。そもそもチップの文化で源泉徴収がされているとでも言うのかい?
全然軽減じゃないんだよ。じゃぁぁあああああないんだよっ。
エンゲル係数の統計では23%、年収300万ですべてを消費支出にまわしてたとしても年間食費は69万、ここから2%を軽減しても13,800円にしかならない。月1000円だよ?
そんなもののために仕組みをつくろうとしている。
なら低所得者に配るかその分予め引いておけばいいじゃない。
消費税を9%にするのと何が違うのか。結果ではなくプロセスで存在感を出したいからだけでしょ。
なにに税金をかけるのかということを決定する権力を持ちたいがために、いったいいくつの屍をつくるつもりなのか。
家計調査によれば別に年収250万だろうが2,000万だろうがエンゲル係数はその実あまり変わらない。消費支出のわりあいもあんまかわらない。
高級食材をあつかっているスーパーに行けば、物価の優等生である鶏卵だって1つ600円ぐらいする烏骨鶏があるんだ。
某金持ちの住まうエリアでは月間の食費に百万以上かけている家庭がゴロゴロと存在している。
年間2万もいかない税負担を軽減させるふりして、20万以上軽くなる家庭もあるからね。誰のための軽減だって話しだよ。
つうか、零細小売をやっている身としては消費税増税による値付け混乱という懲役から自由になりたいんで、軽減税率とかさらなる罰ゲーム勘弁してくださいというのが本音なんだけどね。まじで勘弁。
だから、複雑なルールをつくって我が物顔させておくよりは、できるだけシンプルにしておけっていう話しさ。
参考引用資料など
www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je09/pdf/09p03023.pdf
第1節 労働市場の構造変化と家計行動>第3-2-13図 再分配効果の国際比較
僕が軽減税率には絶対反対な理由
rick08.hatenablog.com/entry/2014/12/05/135909
軽減税率はむしろ富裕層減税??
ameblo.jp/typexr/entry-11925151199.html
軽減税率で税金が安くなる! と喜んでいるあなたへ ・・・勘違いしてるだけです
cocoopit-2.hatenablog.com/entry/2015/09/14/140754
消費税
内閣府ホーム > 経済財政政策 > 白書等(経済財政白書、世界経済の潮流等) > 平成26年度 年次経済財政報告 >www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je14/index.html
第1-1-2図 消費税率引上げの影響
www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je14/h05_hz010102.html
内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 経済財政政策 > 月例経済報告関係資料 > 月例経済報告
www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html
家計調査 家計収支編 総世帯 詳細結果表 年次 2014年
www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001129456