カテゴリー: 生物

  • なるべく科学的になぜ皇統は男系男子であるべきか

    ひとことで言うと、現在の科学では累代すると純粋な母系か男系しか安定的に追跡することができないので、人類の継代観察の標準コントロールグループを途中で変えるべきではないから。

    ・・・と、ひとことでは納得できない人のためにいろいろ書く。
    とてもセンシティブ案件なので、前段部分には理解に必要そうな、ある程度コンセンサスのとれている科学分野の辺縁的な知識を記載し、それを踏まえ後段に推論や私見を書く。歴史文化史的側面や、あるいは宗教についてはここではできるだけ触れないようにする。言及しないことで不満を覚えるかもしれないが、そのような意図はなく、ここではあくまで科学的な側面からの追求であるのだとご容赦いただきたい。

    あるいは、その逆に、血統や出自によって何かが決まることは優生思想ではないか、など忌避感を覚える人がいるかもしれない。優生思想と優生学は別のものなのだが、不幸な人類史などを持ち出して科学とは別のレベルで感情的に納得できない人もいることだろう。あるいは遺伝や統計的には理科の素養が必要になるので人によっては理解が難しいかもしれない。ここでは近代の権威争いの権勢史とは離れ、自然科学史、分子生物学的な観点から論建てをするつもりだ。

    参議院選挙の候補者で女性天皇や女系天皇でもいいという主張があった。
    文化史的な側面から男系男子でなければならないという逆の主張もあった。
    エクスキューズが長くなったが、なぜ皇統は男系男子でないとだめなのか。
    科学的な側面をあげるので議論の一助になれば幸いである。

    気候について

    ・地球の地軸は歳差運動により2万6千年周期で傾きが一巡する
    ・地軸の傾きが変わると海流や気候が変動し植生が変わるため動植物の生息域が変動する
    ・地球の気候は長期には氷期と間氷期を繰り返す。現在は間氷期。
    ・最終氷期は11.5万年前に始まって1.17万年前に終了した。
    ・最終氷期最盛期は21000~20000年前でその時期の海水面は現在より約-100m低い。

    類人猿について

    ・ホモ・エレクトス(北京原人)70万-30万年前
    ・現生人類ホモ・サピエンスはアフリカ中央部で20万年前にルーツ
    ・小型ホモ・フローレシエンシス 10万-6万年前(インドネシア)
    ・ネアンデルタール人(3万年前まで)、デニソワ人(1万年前まで)と現生人類は一部混血

    噴火について

    ・7万4000年前のインドネシアのトバ火山の破局噴火(火山爆発係数VIE8)
    ・25,700年前ニュージーランドのオルアヌイの破局噴火(火山爆発係数VIE8)
    ・北海道破局噴火VIE7:支笏カルデラ(BP44000)、屈斜路カルデラ(BP39000)
    ・九州破局噴火VIE7:姶良カルデラ(約2万9千年前)、鬼界カルデラ(約7300年前)
    ・VIE8の噴火では地球規模で大量絶滅が発生する。デス・ストランディング(と言いたかっただけ)。現在の遺伝子多様性からトバカタストロフで生き残った現生人類はわずか数千ペアと推計されている。
    ・VIE7の噴火では地域の大量絶滅が発生する。アカホヤ鬼界噴火の火砕流は山口、四国にまで到達。九州側の縄文人は全滅したとされる。

    日本列島への人類の流入と海水面について

    ・2万年前の最終氷期最盛期で海水面は最大120~130m低下
    ・海水面低下7000年前は浅底の瀬戸内海は陸地
    ・対馬海峡、津軽海峡は深さ130mあるので本州が確実に陸続きは30万年以上前
    ・津軽海峡は最終氷期最盛期において2~9mごく短期間陸橋が成立した可能性はある
    ・対馬海峡は最終氷期最盛期でも幅10~15キロ深さ10m程度の水路状に残ったと推定がある
    ・6000年前の縄文海進時には海水面は約+8m上昇
    ・1万5千年前の縄文時代に九州方面から日本にたどり着くには最低10キロ以上の航海技術が必要
    ・神津島や北海道の黒曜石が本州の縄文遺跡から出土(航海技術の傍証)
    ・日本人の流入は縄文期、弥生期、古墳期におこなわれた三重構造説が有力

    遺跡と文明について

    ・最古の農耕テル・アブ・フレイラ(現シリア)1万3000年前
    ・ギョベクリ・テペ(現トルコ南部)1万年~8000年前
    ・メソポタミア8000年前
    ・エジプト文明(エジプト先王朝時代)5100年前
    ・黄河文明9000年前
    ・長江文明9000年前(1.6万年前栽培前段階)
    ・縄文時代16000年前
    ・青森県三内丸山遺跡は栗栽培、定住大規模集落。縄文中期5900~4200年前
    ・日本列島では縄文後期ごろに稲作開始(イネゲノムから栽培原種は長江流域)
    ・九州吉野ヶ里遺跡は弥生時代

    メンデル遺伝の法則とY染色体とミトコンドリアについて

    メンデル遺伝の法則の基礎。
    オスメスがある両性生物は互いの遺伝子を半分ずつ受け継いだ子孫をつくるが、その際、同じ染色体上にある遺伝子はメンデル則に従い交配する。
    親の遺伝的特徴を子どもは継ぐため遺伝的特徴は継承するが交配しているため、まったく同じではない。

    しかし性染色体についてはメンデル則に従わない。
    メスはXX接合体だがオスはXY接合体。
    オスの性染色体は対となるペアがないので交配しない。
    ホモ・サピエンスの場合は23番目のY染色体は父系からのコピー染色体となる。
    息子のY染色体と父方の父方の父方のY染色体は同一のものとなる。

    他方、女子のXX接合体はXとXで同形なのでメンデル則に従い交配する。娘のX染色体と母の母の母のX染色体とは交配するため性染色体であってもX染色体からは遺伝的純系は追うことはできない。遺伝的に近しいと言うことはできるが、同じではない。

    ミトコンドリアは真核生物の細胞と共生している細胞小器官である。
    対象の生物の持つDNAとは別にミトコンドリアDNAという別のDNAを持つ。
    胚の元となる受精卵は、細胞分裂の元となった卵子から続くので、母方の母方の母方であれば、ミトコンドリアのDNAはまったく同じものとなる。人のDNAからは母系の遺伝的純系を追うことができないが、ミトコンドリアのDNAを使えば母系の純系は追うことができる。

    母系でも男系でもない場合は、世代数が離れすぎると交配による置き換えが多すぎるため遺伝的系統を追うことは困難。
    遺伝的影響は世代を追うにしたがい1/2、1/4、1/8、1/16、1/32と乗数で希釈される。
    10世代遡れば1024人のご先祖がおり、100代も遡れば10の30乗(126穣)ものご先祖がいることになる。
    現在の日本人の人口は1億2000万人だが、卑弥呼の時代には2~300万人(3×10の6乗)、関ケ原の時代(1600年)に1200万人、1700年頃の江戸時代で2500万人ほどだったと推計されている。

    つまり、ご先祖様はかなりの数どこかで重複している。
    たいがいは親戚であるが故、数十代も遡ると遺骨があったとしても現代の科学では遺伝情報からは本当にご先祖であるかは判別できないのである。
    いまの科学では10の30乗も居るご先祖のうち、純粋な母系か純粋な男系のご先祖しか追うことができない。

    Yハプログループ、ミトコンドリアハプログループ

    DNAの転写ミスで変異がおきることがある。
    人の場合、2億5千万塩基対からなるが、わずか数文字が変わっただけで、目の色や肌の色が変わる。
    7万年前にわずかなペアからスタートした遺伝子群は、少しづつ変異を重ね系統をつくっていく。

    人間の場合1万~数千年スケールで、そのオリジナルグループからは枝分かれ(フォーク)した別グループと呼ぶべきものになることもある。それがハプログループだ。
    変異はその子グループや孫グループにも引き継がれるので、順次派生していくことになる。

    Yハプログループやミトコンドリアハプログループを調べれば、どの時代で分岐した兄弟系統なのか、追うことができる。

    図:Inferring human history in East Asia from Y chromosomes より

    ここからは推論、私見

    人類史について言えばトバ噴火で滅んでるので7万年よりこちら側だけを考えればよい。日本列島への人類の流入については、陸続きになった可能性のある2万年前だが、7000年前の鬼界噴火で南側は滅んでいる。間氷期に入り島国と化した日本は遠洋航海技術が発達し稲作が伝来するまでの約2000年前と朝鮮半島経由の古墳時代がメインとなる。

    日本の皇室は人類史上最も長く男系男子で継代観察がなされている系譜である。
    日本で現存する最古の家系図を持つ家系は皇室ではないが、日本で最も身元が確かな一族であることは間違いない。
    衆人環視がなされてきただけでなく、陵墓も残っている点も大きい。
    技術革新があり縄文人からもDNAが採取できつつある。様々な理由で天皇陵とされる前方後円墳などを暴くような調査はなされないだろうが、保管されているというのは非常に重要だ。
    人類の100代の継代観察の集大成でなお今も続いているのは驚愕に値いする。

    分子生物学的にはYハプログループが途中で別のグループになることはない。
    しかし、Yハプログループが途中で入れ替わることは社会生物学的にはありうる。養子や托卵、嬰児すげ替えなどいくつかの可能性がありうる。

    男系が絶えてしまったため先帝と4親等以上離れた継体天皇(507年)や、戦国時代、葬儀もままならなかった後奈良天皇(1536年)、後柏原天皇(1521年)。江戸幕府の大政奉還と遷都があり幼帝で即位した明治天皇(1867年)など幾度となく危機はあった。だが、それも含めて傍流を追えばどこで何がおこったのは検証可能だ。エビデンスなにそれと対極の世界。

    男系を追跡していたのに、もし世代を重ねる途中でYハプログループが変わっていたら、それはそういうことだろうが、だがそれを含めて人類史だと思うし、これを同じような経過観察するためには、家系図的な系譜の記録と、1000年以上もの継代が必要となる。

    皇族のハプログループは今のところ秘匿されているが、源氏平家含め数多ほどの傍流を産んだと考えると日本人で多くの割合を占めるハプログループのどれかであることは間違いない。
    日本人に見られるYハプログループを現代日本人に多い順に下記に軽くまとめる。

    Dグループであれば、皇族が稲作と共に弥生時代などに伝来。
    Bグループであれば、中国南部、ハワイ、南米までの縄文海洋系。
    M7グループはBよりも更に古く幻の大陸スンダランド。
    Gグループは中国北部で枝分かれしたグループ。
    Aグループ。シベリア側からの流入組。
    N9グループ。カムチャッカ
    Fグループ。東南アジア。海洋民族
    Zグループ。シベリアから北欧まで。
    M8aグループ。中国漢民族
    Cグループ。中国北部

    DeNAのサイトから並べて見てるんだけど、あれ、このサイトO2bがないな・・・?

    イネゲノムは長江流域なのでチベット側から稲作とともに来たのならDグループ。
    ポリネシア系の航海技術とともに渡来した最古期の海洋縄文人をルーツならBかM7グループ。でも国譲りの神話からするとこれはないかな?
    北のハプログループとなると、黄河流域組なので、栽培原種でいうと稗や粟など。どちらかというと坂上田村麻呂にやられた側で皇室でない側ではないか。
    中華の王朝交代に伴う大量流入。商とか殷、古墳時代などの流入であれば中華系であれば、蘇我氏や秦氏のような技術伝来時に日本書紀、古事記編纂時にちょっとやった可能性がある。

    もしかしたら膠着語という日本語の言語特性からすると、中央アジアやバイカル湖周辺のアルタイ系でもっと古くNとかZとか。

    卑弥呼の時代からやってることは変わらない。
    桃を全国から集めて評価して、美味しいやつを増やして下賜する。おっと、これ以上はまずいから辞めよう。皇室が少ないから男系男子が現実的ではないというのは本末転倒だとおもう。

    日本人のY・mtDNA系統分布とハプログループ研究

    最後にChatGPTくんにDeepリサーチかけさせてそれを軽くまとめてもらったので追記しておく。

    日本人男性のY染色体ハプログループ分布を見ると、弥生時代以降に渡来した大陸系集団由来のO系統(特にO1b2)が優勢ですが、縄文人由来のD1b(旧名D2)やC1a1も一定数存在します。実際、鳥取・青谷上寺地遺跡(弥生後期)の出土男性骨のゲノム解析では、O1b2系統とともにD1bやC1a1といった縄文型ハプロタイプも確認されており、現代日本人に見られる大陸系と縄文系の混合型構成が示唆されていますpref.tottori.lg.jp。また現代の調査では、大和民族ではおおよそO系優位ながら、東北や沖縄の一部ではD系(縄文系)が高頻度となっています。母系(mtDNA)の分布では、ハプログループD4・D5(東アジア広域に分布する系統)が約40%と最多で、次いでB群(約15%)、南方系とみられるM7a群(本州約7.5%、沖縄約25%)、北方系N9群、稀に欧州系などが挙げられますterumozaidan.or.jp。これらのハプログループ構成から、日本列島は縄文人(D, C, M7など)と弥生系渡来人(O系統)の混血によって形成されたことが裏付けられます。

    参考

    一応あれこれ調べて書いたんですが、Chat GPTに数字の校正をしてもらいました。

    図 2: 機械学習による日本人集団内の微細遺伝構造の可視化
    https://research-er.jp/img/article/20250718/6879eed79ae7e.png
    https://research-er.jp/articles/view/146584

    最終氷期の海水準変動に対する日本海の応答
    -塩分収支モデルによる陸橋成立の可能性の検証
    https://www.kyotofu-maibun.or.jp/data/kankou/kankou-pdf/ronsyuu7/1nakagawa.pdf

    最終氷期の海水準変動に対する日本海の応答-塩 分収支モデルによる陸橋成立の可能性の検証
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaqua1957/37/3/37_3_221/_pdf

    DeNAがDNA解析!日本人の祖先のルーツをたどる
    https://dena.com/jp/news/3157a/

    パレオゲノミクスで解明された日本人の三重構造
    https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/96414/

    Inferring human history in East Asia from Y chromosomes
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3687582/#:~:text=paternal%20Y%20chromosomal%20and%20maternal,specific

  • ノロ対策としてのマスク

    料理人にマスクは有用→わかる
    ノロ対策で手洗いは有用→わかる
    ノロはお口からも出る→わかる
    ノロ対策でマスクは有用→わからん。感染してるぞ、そんな装備で大丈夫か?

    タイムラインでのやりとり見て思わず横レスしちゃったので、反省してブログにまとめておきます。

    料理人にマスクは有効

    人の口腔内は、身体において出口についで雑菌が多い部位なので「菌」が料理につかないようにするマスクは有用です。

    「菌」は、栄養があるところにつくと自己増殖をして数が増える生き物です。
    料理をして火が入った直後が最小で、そこらから時間経過で親子孫ひ孫と倍々ばいばいんっと増えていくので、その菌の中に有害な菌が混じってると食中毒などの危険も増していくわけですね。

    なので、調理から食べるまで数時間がみこまれる給食やお弁当では、菌を食材に「つけない」ための対策、マスクや手袋、帽子なんかが重要になります。

    逆に調理後すぐ食べる家庭での料理や飲食店の場合、人間の口腔由来の菌がつくことによる食中毒の危険性はほぼ無視できるので、マスクなどの有用性は下がります。

    それよりは、
    ヒトの口腔由来ではない、非加熱食材の菌が料理につかないようにすることや、
    しっかり火を通して混じった菌を「ころす」ことがより重要です。

    保温や冷蔵などもありますが、これは菌を「ふやさない」ための対策ですね。
    「つけない」「ころす」「ふやさない」が菌による食中毒の基本対策です。

    菌とウイルスの違い

    さて、ここで食中毒としても名高いノロウイルスですが、これはウイルスです。
    菌は生き物ですが、ウイルスは生物と石ころなんかの無機物の中間ぐらいのなにかです。
    ウイルスと呼ばれています。中国語だと病毒。漢字のほうがイメージしやすいでしょうか?

    ウイルスが生物に分類されないのは、自己増殖しないからです。
    生物(宿主)の生体活動にタダ乗りして増殖します。しますという自発性があるもののようですが、振る舞いは砂埃のようなものです。うっかりウイルスを取り込んだ細胞が、間違ってウイルスのほうを増やしちまって、んー、パニック!パニック!みたいな感じでしょうか。

    なので自己増殖できないウイルスは、料理についたとて増えません。
    料理は生命活動をしていないからです。

    ウイルスがもし、料理に「ついてしまった」としても、食中毒のリスクは、
    菌とは逆に、料理直後(付着直後)が最大でそのあと時間と伴に減少します。

    ウイルスは、生き物ではないので生物学的にはウイルスが死ぬとかいう表現はしません。
    不活とか失活化したと表現します。生きていないので殺せもしない。
    壊れる、壊れたという表現のほうが近いです。
    水に濡れたから壊れた、乾燥して壊れた、光にあたったから壊れた、それくらいのものです。

    ですが、そんなものでも、短い時間で完全に不活化しようとする場合、紫外線をあてたり、アルコールや、次亜塩素酸などの消毒対応が必要になりますし、もし、それが細胞内に入ってしてしまったら免疫が感染細胞ごと破壊したりと厄介なことになります。感染した細胞は、そのウイルスを複製して放出して、近くの健康な細胞にも感染するので、ん~厄介厄介。

    ウイルス対策としての手洗い

    ノロウイルスは人間の場合、主に腸管(小腸)の細胞に感染し増殖します。
    なので病状としては、嘔吐や下痢のような症状に現れます。
    コロナウイルスの場合、上気道の細胞に主に感染するので咽頭痛や、咳などの呼吸器疾患ですね。

    で、なぜ手洗いが有用かを説明すると、感染者がなんらかの形で放出したウイルスを健常者が消化吸収系まで取り込まずに済む可能性があるからです。

    なんらかの理由で付着したウイルスが細胞に取り込まれる、これが感染成立です。

    手から口→胃→腸で腸の細胞に取り込まれて感染なので、手や皮膚の細胞の表面についたぐらいの段階では、まだ細胞内には取り込まれていないので感染はまだ成立していません。
    手で栄養吸収したり、呼吸をしたりする人間の方はあまりいないと思うので、手は洗い流せればえんがちょバリアセーフなわけです。

    ノロウイルスに感染した二枚貝を料理人が手で触ったぐらいでは、料理人には感染は成立しません。
    手洗いは、非感染者を非感染者のままでいさせるための主要な手段になります。

    ウイルス対策としてのマスク

    で、元ネタ。
    たぶんですが、ノロウイルスが唾液腺からも確認されたというニュースを見て、ノロウイルス対策としてマスクが必要だという発想になったのだと推測します。
    ですが、ウイルスが主要経路以外で感染能をもったまま他の細胞からみつかるのはままあることです。

    そしてなにより、腸で増えたウイルスが口から出るのはそんなに驚くべきことのほどでもありません。生物の基本構造は腸と入口出口であとは付属パーツで、口から腸までは一本の管。そりゃ口からも普通に出でます。
    おならを我慢したら、血液から吸収されて肺にまわって口から出たり、汗腺に回って体臭になるみたいなものです。

    正直、今回の新型コロナ騒動まではウイルス対策としてはサージカルマスク程度では効果がないものだとおもっていました。ウイルスのサイズは菌の数十~数百分の1と、とても小さいので、素焼きの植木鉢を水が通り抜けるぐらいの感じで貫通します。

    ですが、感染者が唾液とともに放出する唾液コロイドを捉える程度には十分細かいので、ソーシャルディスタンスな距離を2mから50cmにすることができます。感染を完全には防除することはできませんが確率を下げました。感染防止策というより、感染者数拡大防止策として抜群の効果がありましたね。水は漏れてるけど、水浸しにはならずに済んだ感じですね。

    というわけで、ウイルスは細胞外で増えるものではありません。
    感染した細胞をもつもののみから放出されます。

    なので、ノロウイルスの食中毒対策としてマスクが意味あるケースは、マスクをしている人物が感染者であるケースです。

    この時、マスクにどれほどの効果があるのか?
    この答えは、今のところわかりません。あるかもしれないし、ないかもしれない。
    ただ、調理人がマスクをしていたか否かぐらいでそれを食べた人が助かる確率は、今まで知られている情報からすると、かなり一か八かもしれませんね。

    ウイルス力価について

    細胞に感染が成立する、そのウイルス量のことをウイルス力価とか、ウイルス価、ウイルス感染価と表したりします。
    ノロウイルスの場合、感染に最低限必要なウイルス価がとても少なく、ほんのわずか数十個で感染が成立するといわれています。

    これはかなりつよつよなウイルスです。
    つまり、ノロウイルスはマップ兵器です。大規模呪文に相当します。
    キッチンに感染者に入りこまれた時点でほぼ全滅覚悟を覚悟されたし。

    感染者が道端で吐いてもどしたゲロの横を通ったら、乾燥した部分が空気中にまいあがってそれが呼吸とともに口にはいって感染とか、感染者がトイレをつかって、フタを閉めずに流したらその飛沫が30分間空気中に漂っててそれを吸って感染とか、それぐらいの勢いです。
    ちょっと大げさかもしれないけど、そういう実例がある程度にはそれほど大げさでもないぐらいの列伝で名を馳せているツワモノです。

    うんこの匂いは臭いですよね。
    なぜ物体から離れているのに匂いがわかるのでしょうか?
    糞から分離したアンモニアなり、スカトールなりインドールなりな分子が空気中を漂って、鼻の嗅細胞にとりついて嗅覚神経を刺激しているから臭いと感じるわけです。
    つまり、うんこが臭い範囲、そこはうんこの制空圏なわけです。
    インドールの分子量(117)と、ウイルスの分子量は50KDa(分子量換算5万)ぐらいなので、500倍もかわらんわけですよ。
    もし、マスクごしにうんこの匂いがわかる場合、そんな装甲はとうに抜かれているというわけです。

    無いよりはあったほうがいいでしょう。
    でも、そんな装備で大丈夫か?

    参考

    検体中のSARS-CoV-2ウイルスコピー数とウイルス力価に係る考察
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2502-idsc/iasr-in/10133-491d01.html

    https://www.daiki-axis.com/official/wp-content/uploads/2021/05/20090714.pdf

    新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の基礎知識
    エイズ治療・研究開発センター センター長 岡 慎一
    https://www.acc.ncgm.go.jp/pdf/SHC-COVID_20200416.pdf

    ノロウイルスの不活化条件に関する調査 報告書 国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000125854.pdf

  • 磯焼けと海苔の不作からすける除草剤の残効

    有明海だの瀬戸内海だの、千葉だの各地で海苔が不作であるそうだ。わかめや昆布も大変で、海の砂漠化、”磯焼け”なんてワードもよく聞くようになってきた。

    海中カメラで調査したらチヌ(クロダイ)が食い荒らしてたとか、アカモクを食い荒らしているのはイスズミだとかはたまたウニが全部食べちゃうとか。はたまた温暖化による海水温の変化が原因だなんだと騒がれている。

    あのー・・・もしかして除草剤じゃね??

    魚は何故減った?

    先日、「魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う (東大教授が世界に示した衝撃のエビデンス)」なる本を読んだ。

    東京大学大学院新領域創成科学研究科 山室真澄教授
    陸水学、沿岸海洋学、生物地球化学

    この本を買ったのはこの講演動画が面白かったからだ。

    「魚はなぜ減った?~見えない真犯人を追う」
    https://www.youtube.com/watch?v=gDSlR1ZEJmE

    毒舌なので講演のほうがおもしろい。本のほうはデータや引用論文が豊富。

    ざーーくり要約

    山室さんは閉鎖水系、汽水域の研究をしていて、30年にわたってシジミと寒さに負けずに頑張っている松岡修造で有名な島根県、宍道湖(しんじこ)を中心に調査されていた。

    ネオニコチノイド系殺虫剤が日本国内で許可された1992年から、うなぎ、ワカサギ、シラウオの漁獲量の激減とともに、底生生物、オオユスリカのような節足動物、ゴカイのような環形動物、エビのような甲殻類が減っていることを見つけたという。

    残留濃度は人間や魚には影響がないようにデザインされているので魚が死んで浮かぶようなことはないので気がつきにくいが、無脊椎動物にとってはそれらは十分に致命的な濃度だという。まあそのための殺虫剤ですから。餌がなくなりゃそりゃ魚も減るよねって話。

    で、本の内容なのでここでは踏み込まないが、いろんなエビデンスが載ってる。海老のエビデンス!(ここでぐらいしか使えないから許して欲しい。おじさんなのだ。)

    様々なデータをあげて、富栄養化も貧栄養化でも、溶存無機窒素量、化学的酸素要求量(COD)でも、湾岸改変でも農地基盤整備でも、はたまた水温変化でもねぇんじゃねぇかってさ。

    で、ここからは素人の推論と仮説

    長年みているyoutubeチャンネルに、ただひたすら海に潜ってただウニをわりつづけているチャンネルがある。ただ割れていくウニとそれをついばむ魚を見るのに理由が必要な人は見ることはないだろう。

    大成功を収めたアカモク育成のラストにまさかの事態が起こる【アカモク育成最終回】

    何年も前からただウニを叩いていたのだけど、最近とうとう砂場でのアカモクという海藻の繁茂に成功しいて、逆になんで?と思った。え、磯場のときは駄目だったのに砂場では成功できるん?っと。逆になんでなん??と。

    ちゃんねる主は食欲旺盛なイスズミ(お魚の名前)の回遊路から外れたからではないからと考えているようだけれども・・・。自分の中ではあまり腑に落ちしなかった。

    ヤギがいる畑で作物を育てるのは難しいが、ヤギが居ないところなら育つ。

    じつに正論。

    しかし、どちらかといえば海の中で育つ海藻は雑草が持つ恒常性と均衡に近い。
    雑草は管理して繁殖させようとするのは難しいがヤギが食べればなくなる。ヤギがいなければ増える。

    このときその地域のヤギの頭数は雑草の繁茂力と同じかそれ以下で均衡するはずである。
    釣り合っている状態のことを平衡に達したという。

    繁茂力が食欲が下回るとき、それはヤギにとっての飢饉なので、ヤギが移動不能(閉鎖系)である場合はヤギは減り、食料の供給率に達するまで頭数を減らすことになるだろう。
    ヤギが移動可能(開放系)である場合、その地域の雑草を食い尽くしたとき移動することになるだろう。

    捕食、被食関係で均衡が破れるケースは捕食側の変化、被食側の変化によるものである。
    捕食者側に考えられるケースは異様繁殖などによる要求量の増大で、被食者側の場合はなんらかの理由による増殖や成長率の鈍化が考えられる。

    開放系ともいえる海の中で、捕食側の食害で食い尽くされて絶えるなんてことがあろうだろうか?
    バッタの蝗害みたいな群生発生と高度回遊がおきているわけでもないのに?

    そして、最近それがごく短い期間でそれが全部なくなったというのを見て、やっぱり仮説を強くした。

    あ、やっぱこの時期? 海藻にも除草剤の残留効果が原因じゃないのかなと。

    環境水中の残留除草剤

    前述の本によれば、河川、水道水中における残留除草剤の濃度は田植えが盛んな地域では5月1週目が最高濃度となっているデータがあった。

    除草剤のクロルニトロフェン(CNP)は胆のうがんに繋がり、人体にも影響があるということで農薬取締法改正により改善したのかその後はよくわからんが、現代も環境水中の除草剤の濃度は5月の上旬が一番高いであろうことは容易に推測できる。

    除草剤はその後も進化し、人間にとってはより安全に、そして雑草にとってはより過酷に。自然界で分解するのに効果日時も持続するようになった。

    ここに日本固有の特殊事情が加わる。
    日本では畑だけでなく水田が存在する。田植えは一年に一度で地域で同じ品種をつくるため、同じような時期に一気に作付けをおこなう。都会に出稼ぎにでたやつも戻って実家を手伝えというゴールデンウィークというやつだ。
    結果、水田に撒かれた水溶性の除草剤や殺虫剤はそのまま河川にごく短期間高濃度で流出し海に出る。

    水田に撒かれる除草剤は、初期、中期、後期と一発処理剤に分かれるそうだが、田植え後に撒かれる初期一発剤は除草剤のなかでも自然分解までの期間が長く処理後30~50日と残効期間が続く。

    そりゃ30日もあれば海にも出るわな。
    海に出ても除草剤の効果は損なわれない。
    水田に撒く除草剤は、稲を枯らさぬように沈水植物にも効くように作られたものなのだから。

    「宍道湖における沈水植物大量発生前後の水質 」

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/75/2/75_99/_pdf

    2006年5月から「食品中の残留する農薬等の基準に係るポジティブリスト制度」が施行されたことにより、それまで検出されたらアウトなブラックリスト方式であった残留農薬基準がこの物質がこれ以下ならいいよというホワイトリスト方式に変更された。

    その結果、宍道湖のシジミからホワイトリストにない除草剤が検出されたことから、周辺農家に除草剤の使用量や使用方法の働きかけがなされ除草剤の残留濃度に大きな変化が出た。で、宍道湖の沈水植物の大量発生に繋がる。

    流れ込む除草剤が減ったら藻が昔のように増えた。
    流れ込む除草剤が増えれば海藻が減るというエビデンスは今のところない。

    なにせ調査がないのだから。
    だからこれはただの素人の仮説にすぎない。

    環境水のモニタリング

    残念ながら日本では環境水中の濃度に関する研究がほとんどなされていないそうだ。
    先の本の中では1999までの論文で殺虫剤であるネオニコチノイドの環境水中濃度についての調査は一件もなかったと嘆かれていたが、2023現在ciniiを検索すると、近年増えてきているようなので、将来に期待である。
    自分みたいなノラにも読めるオープン論文はないので、指を加えてリストを眺めるだけだ。

    ネオニコチノイドやその他残留農薬は水溶性なので堆積物からの過去の調査を行うこともできないそうだ。
    さらに残念なことに日本の環境モニタリングでは降雨による影響がないよう濁水を採取しないことになっているそうで、田面、水田土壌、化学物質の影響が検出されにくいのだという。されにくいというかできないんじゃ?

    そりゃ駄目だよね。
    東京オリンピックのときにトライアスロン会場の大腸菌が話題になったが、日本の下水道は多くがいまだ雨水合流だ。特に戦後復興を急いだ東京23区では8割が未だに合流式下水道である。
    昨日の大雨で目黒川がクサイとTwitterで話題になっていたがあたりまえだ。それ本当に下水だもん。

    https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/about/pdf/09gouryu-kubu.pdf

    雨の量が一定レベルを超えると、下水処理施設の限界を超えるため、トイレットペーパーとかそのままに東京湾に放出される。神田川とか目黒川とか渋谷川とかのガンジス川モードだ。

    そりゃ、そんな濁水をモニタリングしたら、いろんな環境基準に触れて一発アウト。知恵を絞って考えたのだろう。データがなければ大丈夫ンゴ!!って。

    濁水のデータもモニタリングするべきだとは思うけど、そのお金や対策費はどうするんだってお話しになるので、みんなそっと蓋を閉じるのかもしれないね。箱のフタを開けて観測しなければ猫は死んでいるか生きているか確定しない。そのシステムは今、動いてるんだから触るんじゃねぇってね。

    豊洲市場の排水ピットに長靴でばちゃばちゃ入って、ジャムの瓶に濁水くんで、アルカリ性ですだの、環境基準の何倍も出ました!!とかをやれというわけではないが、なんでこう極端から極端しかねぇんだろ。
    データが貯まればいいとおもうし、濁水のデータもとったほうがいいよね。
    研究者に予算つけてあげてとおもうのである。

    頑張れ研究者、ネバー ギブアップ

    参考・引用元

    海の水質向上で神戸の「養殖ノリ」が激減? 収穫量は20年前の2割減 原因はチヌの増加か…
    https://www.youtube.com/watch?v=S6ROO82UNgI

    https://minorasu.basf.co.jp/80228

    https://ci.nii.ac.jp/author/DA15881523

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/75/2/75_99/_pdf