なぜ化学調味料は毒だという言う人は後を絶たないのか


義務教育の敗北とは言うけれど、義務教育ではやらないようなことまでちと踏み込んでみると違う感想をいだくかもしれない。

昨日ひさかたぶりに更新したブログで味覚や嗅覚のお話しをした。味覚嗅覚障害で味や匂いがしなくなった人もいるかもしれないが、もしかしたら「それが普通ですけど?」の人もいるかもねというようなお話しだ。同じものを食してもそもそも味覚受容体に差があるのだから、感じ方が違う。

この味は好きだとか美味しいとか、そういう好みの感想ではなく、そもそもその味覚を感知できていない可能性に触れた。だから紅茶はコーヒーに比べると不遇だと。目が悪いので細かいのとか遠いのはそもそも見えてないけど、味覚や嗅覚にメガネに相当するものが無い以上、個人間でそれらを共通のものとして比較しあうことはナンセンスだ。

人間が味を感じる仕組みだが、舌というセンサーが刺激をうけとって、それを伝達する神経回路を通って、それを脳みそが記憶などとぶつけて照合する。

人間の味覚には5つあると言われていて(最近では6つ目の脂肪酸を感知できる神経回路があるとも研究がすすんできている)、塩味、酸味、甘み、うま味、苦みである。

このうち、塩や酸味はイオンチャンネル型受容体で、甘み、うま味、苦みはGタンパク質共役型受容体となる。

これを模式的に説明するのはしんどいが、イオンチャンネル型は通過したのをピコーンって検知する、電気回路に例えるなら電球型。タンパク質共役型受容体型は電線の上に方位磁石をおいて、磁石がうごくようなら電流がながれているのを検知するみたいな構造に近い。(あってる?)

電球型のほうがシンプルなので、壊れにくいし、点く点かないなので検知も簡単だ。共益型は磁石がだめになったり、電線と磁石の距離が離れすぎていたり、磁石がうごいたのをちゃんと見てなかったりと要素が増えるので精度の差が出やすい。

で、うま味調味料のお話し。
これは、うま味を足すものである。

なので、うま味の分解能が低い人がつくった料理を、うま味の分解能が高い人が食べると、「こりゃ毒だ!」ってなる量を、添加してしまうことがある。

これが塩なら、あまり舌に個人差が出ないので、
「しょっぱすぎるよ!」「そうかなー?」とはならないが、うま味の場合は、ある人にとっては「舌がピリピリするほど」で、ある人にとっては、それでようやく「うま味」を感じ始める程度だったりするのである。

で、たっぷりとうま味を足された料理を食べた人は、びっくりして「この料理をつくったもんを出せ!」となるわけだ。で、やはり人口調味料が原因か!!という「体験」を積んでいくのである。実際には口にだして文句を言ったりすることは少ないだろうが、なるほどこれがうま味調味料かと認知していくわけだ。

天然の素材からうま味を抽出しても、そこまで暴力的なうま味の濃度にすることはできない。
だから、「あんなものは体に悪い」は、彼ら彼女らの実体験としての蓄積でもある。

同じようなものに、「人工甘味料は体に悪い」というような言説もある。
本当に体に悪いかどうかはおいておいて、あれも、人工甘味料を舌で認知できる人とできない人がいることが最近の研究で判明してきている。
苦み受容体の遺伝子の働きによるものなので、これも訓練でどうにかなるものではない。
人工甘味料が入っているとすぐわかる人と、まったくわからない人にわかれるのだ。

「全然違うじゃん!!」といっても、全会一致とはならない。だって、そもそも違いがわからない人がいるんだもん。

同じ程度に紫外線を浴びても火傷を起こす人と適度な日光浴でビタミンDがつくられて健康になる人がいるように適量は人によって異なる。

悲劇なのは、双方において、わからないのをわかっていないことだ。

ほうじ茶に昆布の切れっ端を入れて飲むとおいしい。
それくらいのうま味で十分な人もいれば、味の素だぱーって入れたほうが美味しいっていう人もいる。
積んでいるセンサーが違うのだから、同じ感想にはなりえない。
時にそれは「毒盛りやがって」という感想になる。

特に、「甘み、うま味、苦み」は、その機構から、より個体差が出やすく、感応性が人によって異りやすそうだ。それらは受容体遺伝子は複合体なので、片方がノックアウトしたりしていたり、発現がうまくいってなかったりすると結果の活性の強さには大きく差が開く。

同じようなことは嗅覚受容体にも言える。だが、先天的な複合型の受容体遺伝子の問題なので、時にそれはセンシティブな問題になることも将来的にはあろう。義務教育の敗北というが、義務教育から卒業した人たちは、そもそもが違うということを理解しておくことが大事だ。

日本の場合は、遺伝子の個人差があまりないので、この甘さは生命に危機を感じるほどなので無理ですっ!!となるようなことはあまりないが、これが人種をまたぐとそうも言ってられなくなる。
真皮や新皮質の厚さは人種(遺伝)によって異なる。体重差の関係で浸透圧で無事でいられるイオン濃度も異なる。複合的な要因で、食は生存の危機にも直結する。

サミルアッキやマーマイトを常食して無事でいられる日本人は少ないかもしれない。(←これはただの冗談ね?)

参考やら部分的引用メモ

ヒトのT1r1+T1r3系では、イノシン酸はグルタミン酸の応答のみを特異的に増強する
イノシン酸はグルタミン酸応答
アミノ酸応答を増強する

L.Buckらは、1999年に嗅覚受容体がGTP結合タンパク質共役型受容体であることを明らかにして、ノーベル賞を受賞

味細胞から、2つの新しい受容体遺伝子 (T1r1とT1r2)が同定

「アミノ酸結合部位以外の領域で決定される受容体の活性の強さ」

うま味の相乗効果は,ヒトのみならず,マウス,ラット,イヌ,ネコ,サルなど哺乳類で広く共通して認められる。

味覚受容体の種類や機能には動物種ごとに違いがあ
ります.一方で,同じ動物種内でも味覚受容体遺伝
子の多型により,特定の物質に対する感度が異なっ
たり,場合によっては全く感じなくなったりと個体
差が生じます.

AVI型(低感受性型)の
TAS2R38をもつ人は,ブロッコリーやクレソンなど
のアブラナ科の野菜の苦みをあまり感じないという
報告もあります

感受性の違いは味覚受容体だけで
なく,嗅覚受容体にも生じます.みんなで一緒のも
のを食べていても,味や香りの感じ方はそれぞれの
人で異なっている可能性が高いのです

メチオナール以外にも,香気成
分が味覚受容体に作用する例として,コーヒー中の香気
成分が苦味受容体の活性を抑制することが報告されてい

15) B. Suess, A. Brockhoff, W. Meyerhof & T. Hofmann: J.Agric. Food Chem., 66, 2301 (2018).

うま味受容体
www.umamiinfo.jp/what/attraction/receptor/

旨味受容体T1R1/T1R3のアミノ酸選択性を決定する分子メカニズムの同定
www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2014/20140109-1.html

うま味受容機構と嗜好性
www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/96/12/96_12_829/_pdf/-char/en

機能解析技術が明らかにした味覚受容体と食物成分のかかわり味の感じ方は生き物それぞれ 戸田安香
www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/57/2/57_570210/_pdf

味覚受容体
bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%91%B3%E8%A6%9A%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

料理研究家リュウジ氏、味の素めぐり「金があるなら昆布が…」の声に「義務教育の敗北を感じた」
news.yahoo.co.jp/articles/45027695e530e051763275a72d54d44c1509526a


喫茶店の紅茶があれなのは舌や鼻にメガネみたいな補助具がないからさ


紅茶チェーン店が成功しないのはなぜなのか?
紅茶にコーヒーフレッシュでミルクティーがまかり通るのはなぜなのか?
そんなのがSNSで話題になってた。

一応、紅茶屋なので、口を挟みたくなった。長くなりそうなので、Xじゃものたらん。
でも、お店のほうのブログはもう数年更新もしてないし、このブログもサーバーの更新請求がきてて思い出したぐらいで7ヶ月ぶり・・・、だけど、まあ、よろしくお付き合いください。
紅茶とコーヒーをマーケティング観点から市場分析したこともあるけど、今日は人体の生理学的な観点から。

外食の味付、匂い付け

外食産業では味付けは甘じょっぱくするのが基本だ。
だが、甘すぎても辛すぎても浸透圧の関係から生命の危険を感じ始める濃度がある。
塩味、甘味もやがて飽和に達すると、今度はうま味で工夫するようになる。
そして、第6の味覚ともいわれる「脂肪味」、油マシマシ、オリーブオイルだばーになり、それすらも限界に達すると、今度は味覚ではなく痛覚、つまり「辛味」や炭酸のようなシュワシュワな刺激、はたまた噛んだときの食感やら喉越しみたいなもので特徴づけをするようになる。あとは視覚とかね。

香り。
動物は生存戦略の関係から焦げ臭さに敏感だ。特にタンパク質や炭水化物、油分が焦げる匂いにはごく敏感に反応する。
そして、腐敗臭、卵の腐ったような匂い、つまり硫黄臭にも敏感に反応する。だからどんなに、花粉症で鼻が詰まってもごくごく僅かに添加されているだけのチオール(ガス漏れの匂い)がわかるし、チーズ臭や焦がしねぎにんにく背脂ちゃっちゃの香りまでわからなくなる人はあまりいない。

同様に、味覚の中でも腐敗や毒と関係している酸味や苦みまでわからなくなる人は少ない。
加齢により苦みが分かりづらく、脳がアルコール代謝系にはいると酸味を好むようになるが、それでもまあ、どんなに二日酔いタバコやらで匂いも味も鈍化していたとしても、コーヒーの香りをわからない人はいないし、昭和ながらの酸っぱ苦いコーヒーの味までわからなくなるなんて人はまあ少ないのである。

これらはプレーンな紅茶にはないものだ。
だから、市販の紅茶飲料は柑橘系の香りを足したり、乳脂肪分を足したり、極限まで甘くすることで特徴づけをされる。

味力、嗅力

紅茶やらハーブティーやらを扱ってきてつくづく思ったのは、人の視力に違いがあるように、味覚や嗅覚にだって個人差があるということ。これは、努力とかではなんともならない、センシティブな部分も一部含むので、ちょっと説明や喩えが回りくどくなるかもだけどごめんして。

現代なら味覚を視力のように数値化するのはやろうと思えば簡単にできる。
例えば、お酢、砂糖、塩を溶かした溶液を希釈などして、何倍薄めたものまで、どれがお酢だとか当てられるかみたいな格付けチェック。こういうのを二重盲検でやってもらうだけで定量化はできる。脳波で反応をみてもよい。

でも、味覚や嗅覚は定量化、数値化することに意義が見出されることはなかなかない。

なぜか、視力ならメガネ、聴力なら補聴器みたいな矯正器具があるが、味覚や嗅覚には今のところそれらを補助する道具はそもそもない。
だから、その能力を定量化して計ったとしてもしようがないことだからである。

色の区別がつきにくい色弱、色盲というものがある。
赤色の感度が弱ければ、焼けた肉と生肉の色の違いをとるのは困難だ。
他方、通常の常人の100倍程度の色の見分けができる4色型色覚を持つ人なども居る。良い悪い、優れているだの劣っているだのではなく、人の特性は様々だという話。
その様々をあえて優劣という順にして並べたら、おそらくはそれらの出現頻度は身長のような感じに統計上は正規分布をとる。

おそらくと表現したのは、例えばこれに年齢や人種、職業などの生活様式で多項分布になりうるからだ。視力6.0が最頻値みたいな自然豊かなところで暮らす部族と、メガネばかりの理系学生みたいな偏った母集団を混ぜるなキケン。

遺伝子と色覚

人間の遺伝子は約32億塩基対から構成されるが、このうちわずか2箇所の文字が違うことにより瞳の色が決定される。青い色だったり茶色だったり。これは、虹彩のメラニン量の違いによるものだが、このメラニン色素の差が紫外線への感受性への差につながる。

赤道付近の金ピカの仏像やら、ネオン街、派手な看板、極彩色ごちゃごちゃした配色の町並みと、北欧とか極北の町並みの色使いの差は、単なる文化コード上だけの問題ではなく、そこに住まう人たちの遺伝由来の紫外線への感応性の差からきた指向性でもある。だから逆にはならない。

日本のように遺伝子プールが狭く、画一的な教育をうけた文化圏で生活をしていると、それらの差が、ごくわずかな比較可能な個人差となる。
日本人の場合は遺伝子的にも北と南からの流入組があるので、価値観は分かれることがあるが、まあ、同レギュレーションという前提でどんぐりの背比べをしているだけだ。世界は広いのでその前提となるレギュレーションが同一ではないことがあるということは少しだけ覚えておいてほしい。

遺伝子と味覚

さて、わかりやすく色覚をとりあげたが、同じように味覚にも遺伝子由来の差がある。

近年、人工甘味料への苦味反応における遺伝子差が発見された。
舌の受容体そのものに差があって、わかるひとには明確に違うし、わからない人にはわからないものだったのだ。そりゃ話しが噛み合わないよね。

我々の科学力はまだ、味覚において視覚における色弱と同じレベルの概念の発見にすら至っていない。

もともと積んでるセンサーのレギュレーションが異なる上に、それを受け取る脳も違う。これに生活習慣や、ウイルス感染症やら、重金属や化学物質暴露なんかで受容体のセンシングも変われば、あの人が感じている味と、この人の味が実は同じものではない可能性がある。

皮膚も違う。
他の人種と比較して、表皮は薄く真皮と皮下組織は厚い日本人。舌の味蕾にもその影響がでている可能性もある。

先天的、後天的

1枚の絵画を前に、色弱の人と4色型色覚の人では、見てるものは同じだが、見えているものは違う。
これは先天的なものだ。

爆音を聞き続ければ難聴になる。それがごく一時的なものなのか、数ヶ月で治るのか、はたまた、もう戻らないなんてこともあろう。こーいうのは後天的なものだ。

音の聞き分けや、色の分解能が人それぞれであるように、味の分解能の差が舌の受容体レベルで違うなんてことが多いにありうる。

ある種の感染症の後遺症による嗅覚味覚障害や、亜鉛不足など、味覚障害はいつなんどきでも起こり得る。
舌が馬鹿になったとか、味音痴なんて言葉はあるが、大抵はその人の前後の変化で、他人との比較で定量的に計測されることはない。

最初からわからない人には関係ないものなので、味覚を補助矯正してくれる道具や薬が生まれるニーズもないだろう。腹がふくれればいい。それだけがニーズの人もいる。

だから、食品開発をする場合は味付けは大衆向けマス層を狙って、味付けはきっぱりはっきり、そして香料をしっかり足すことになる。

おわりに

外国で日本人が料理にうんざりしたらインド人街か中華街にいけば間違いない。
日本人は味覚や嗅覚については相当なうるさ側の人種だ。日本以外で日本人が求めるそのクオリティにたどり着けることはまずないとほぼ断言できる。

香りが強く、味がわかりやすいとされるコーヒーでさえ、日本でのそれは別格だ。

闘茶やら香道など、それらをゲーム化できるのは同じようなレベルの人たちがいるからだ。
生命の危機を感じるほど甘すぎるお菓子や10分前に通過した人の香水の残り香で苦しむこともない。
牛乳やチーズなど、関税由来で触りがある分野もあるが、どんな料理も日本にもってくれば間違いがない。

だが、そんな日本でさえ、紅茶には不満を覚える人たちがいる。
売れている商品、はたまた売れなくて消えていった商品を見ると、ノンフレーバーで砂糖もミルクも足さずに、チャノキ品種ごとの煮出し汁の味の違いなんてのを楽しむことができるのは、少なくともマス層ではないからだ。

繊細すぎる分解能を持つ舌と、マス向けの味付けの利害衝突が発生している。

枯れたチェロの深みのあるビブラートを生音で聞きたい人と、こまけぇこたいいから体が揺れるほどのサウンドでフロア揺らしてくれる?って要望が同じ会場にいるようなものだ。同存しえない。

だから、もし、美味しい紅茶を飲みたければ紅茶屋をやるのがよろしいかと結論づけておきます。
でも、それはマス向けにはならないから、茶や塩にこだわると身代を潰すって諺とご一緒にご案内。

まあ、ここらへん、行き過ぎると、なぜワインが高級化するのかと似たようなものがある。
本当は違いなどわかっていなくても、知識で無双して、違いがわかるんだぞと騙れるからさ。
だって、舌や鼻にメガネはないからね。

参考

genetics.qlife.jp/tutorials/Genetics-and-Human-Traits/Is-eye-color-determined-by-genetics

dm-net.co.jp/calendar/2019/028900.php#:~:text=%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AB%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%82%8C,%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8B%E3%82%82%E3%81%97%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82

jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201202216168784210


宛先を天空の城にしても届く、それが住所


住所表記は柔軟さを豊富に含む。
自分が子供の頃、年賀状の宛先を「市内 天空の城」で記したが相手に届いたことがあった。(※
名字がある程度珍しくその地域で一意に特定可能なものであれば、住所がかなり適当なものでも届く。
それが住所だ。

※)このツケは高校生の時、年賀状バイトで自ら払ったので弁償済みにしてもらいたい・・・。

住所は原型を留めぬほどのなりはてでも届くし、はたまた、ほんの一文字が判読不能になっても届かない。
矛盾を孕んだ存在、それが住所だ。

前回の続き、住所のお話し。

もはや自由記入欄の住所

住所とは届け先を一意に特定するための文字列であると定義したとき、それを欠くと届けることができなくなりうるすべての文字列が住所たりえる。

例をあげる。

  • 例1「不在時は宅配ボックスにお願いします」
  • 例2「奥の青い屋根の家の右のポスト」
  • 例3「CODE-999999999999999」

これすらも住所の一部たりえる。

不在時は宅配ボックスにお願いします

まだ宅配ボックスが珍しかったころに急に住所に登場した文字列。
宅配ボックスがマンション戸数と比較してすくない普及期に、配達人に考慮なしに宅配ボックスに入れられると宅配ボックスが溢れるので、判を押したようにこの文字列が流行した。宅配ボックスが一般化したことにより最近は減りつつあるが、住所はとうとう条件分岐(if文)を内包するようになった。

物流が逼迫し、再配達率を下げるためにはしかたのないこと。配送日時指定とかなどは条件分岐の最たるものであるが、住所がさらに複雑な論理構造を持つ未来も遠くはないだろう。

奥の青い屋根の家の右のポスト

一意に特定するために、アクセス方法を事細かに書いた住所だ。
京都や札幌で使われる、東入ルだの下ルなどのような、アクセスの仕方が書かれた住所もこれに分類されるだろう。

古い家で親族で土地を分けた場合、同じ住所地番に同じ名字の家が多く住まうことがある。
手前の山田さんと、奥の山田さんみたいに。
親の名前が似ているから子供の名前も似る。
二世帯住宅なんてものもある。建物が同じで、名字も同じ。だが、ポストは別。

だからそれを特定するためにポストの細かな情景描写をしなければならない。

「奥の青い屋根の家の右のポスト、ポストには表札はありませんがウサギのかわいらしいシールが貼ってあります。」

こだわれば小説のような情緒的な書き方すらできる。
あるいは漫才。緑の鞄に500万入れて白の紙で黄色の鞄言うて・・・。
だが、こんな情報でも抜ければ配達員は届けることができないのであれば、それは住所なのだ。

「CODE-999999999999999」

もはや乱数みたいなハッシュコード。なんにつかわれているのかもわからない。

最近の住所に含まれる、よくわからないアルファベットに数字が混ざったみたいな長い文字列。

10年以上前であれば、これらの文字列は、住所が漏れたときにどこから漏れたのかを特定するために、セキュリティ意識の高い人がつけることがあった。住所の中にショッピングモール-店名みたいな情報を含んでいた。滅多にいないが見たことはある程度。

5年ぐらい前、国外への小型郵便物流通網が生きていた頃は少し意味合いが変わってきて、P.O.(私書箱)的なハッシュコードの意味合いで使われた。

小さく軽量なものはSAL便なんかを利用すると、東京から九州、北海道への宅急便代金などより安い送料で国外に送れる時代があったのだが、サイズが一定より大きく重くなると、途端に送料が高くなる。

なので、国外から一定量を日本のネットショップで購入するひとは、日本国内の住所で一度受け取って、まとめて送ることで送料を節約できる国際転送代行サービスを利用することがある。そのとき、誰の注文物かを振り分けるために、住所欄にP.O.番号みたいな長いハッシュコードをつけることがある。名前から判断するに韓国の方の利用者が多かった。

そんなコードがどうも様子がここ最近おかしい。
受取人が日本名なのにやたら長いハッシュコードがついていることがある。

住所を隠蔽したまま商品をうけとるためのサービスなのかもしれないし、ただ単に宅配ボックスとかの登録コードなのかもしれないけど、このハッシュ値がやったら長い。

Amazonなんかの住所表示欄では、長すぎるということで表示上(htmlのtext-overflow)「…」(三点リーダー)とかに丸められてしまうことがある。というか、丸められる。CSVやExcelに落とすと、先頭がゼロ落ちしてしまうことがあるので、お手々でその元のデータを住所に反映してやらなければならない。

何につかわれているかはわからないのだけど、それが原因で届かなかったら困るので、落とすわけにもいかなそうな文字列なので、取り扱いに頭を悩ますのである。

ちなみにYahooStoreとかだと、電話番号が住所欄にはいってきちゃったりするので、そういうのは住所印字のときにtrimしている。落とさなきゃいけない電話番号みたいな数字の羅列と、落としちゃいけないハッシュが混在する。

もしかしたら人によって用途は違うのかもしれないが、ちょっとなんなのか想像がつかない。クレカや住所が使えるかとかのトラックコードとかだったらやだな。

マンション名ビル名会社名部署名屋号の地獄

人名や法人登記に使える文字は限られているが、マンション名や屋号、部署名などはその限りではない。

漢字、ひらがな、カタカナ、異体字、旧仮名、変体仮名、そして英語、英語のカタカナ表記、そしてここにきてフランス語やらのアクセント記号、アクサン・テギュやらドイツ語のウムラウト、そしてギリシャ数字。はたまた機種依存文字①、㈱みたいなものまで、どこまでも自由につかわれる。

住所印刷を投げるときにエクスポートするんだけどsjisでしか受け付けないシステムとかあるから、そういうのがデータが落ちたり文字化けしたりするのである。
SQLインジェクションかよって思うようなマンション名すらある。実際シングルクォーテーションを含むマンション名は多い。で、なんかのシステムを経由したためにエスケープシーケンスがついたり”になっちゃってたりみたいなこともよくある。

新宿の1階層ごとに郵便番号が異なる住所で、ビル名が長そうなものを適当に今ピックアップしてみた。

〒 160-6190
東京都
新宿区
西新宿住友不動産新宿グランドタワー(地階・階層不明)

www.post.japanpost.jp/cgi-zip/zipcode.php?pref=13&city=1131040&cmp=1

近代のビルには数千世帯(数千人)が同居していることも少なくない。
そして大抵、似たようなビル名は少し違うだけでA棟、B棟のように複数連立して立つのである。

件の例だと「西新宿住友不動産新宿オークタワー(地階・階層不明)」みたいに、グランドタワーとオークタワーみたいに似たビル名の建物が近隣にある。それぞれ38階と54階まで、別の郵便番号になっている。

ちょっとした田舎の町の人口がひとつのビルに出現するわけだ。

◯丁目◯番地◯号A棟2023号室
みたいに命名法に表記規則があればまだ管理は楽であっただろう。

例えばだけど、その地域にいくつも建つような建築会社のブランド「ライオンズマンション」みたいなものは、その地域の名前を復唱することがある。
[ライオンズマンション***市***町*丁目]のように。
住所を一意に特定するために必要なのはマンション名を抜いたあとの部分が必要なのだが、正式名称がそうであるためマンション名も丁寧に入力される。

先の新宿の例で考えるならば、
住所「西新宿住友不動産新宿グランドタワー(地階・階層不明)」
会社名「株式会社****西新宿住友不動産新宿グランドタワー支店~~~部~~~課」
みたいに続くことが容易に想像ができるだろう。

だが、データ登録欄、あるいは宛名印字のためのスペースが限られているのだ。

長いマンション名に押し出されて肝心な情報が欠落してしまうことがある。または、この中間に出現する謎の複雑怪奇なマルチ言語の文字列により文字化けをおこしたりなんだり。

つまり何かというと、うゔぁーなのだ。

パレスだとかレジデンスだとかヒルズだとかをしっかり入力したがために肝心の部屋番号が落ちてたりすると、あー、これじゃ届けられないぞと問い合わせが必要になったりするのだ。
で、調べてみた結果、部屋番号もない数軒程度アパートだったりして胸をなでおろしつつもやっとした気持ちになるのである。

感想

最近は在邦の外国の方も増え、特に、繁体字や簡体字はそのまま使われる方が多くなってきた。
今のところRLT (Right To Left)が無いのが唯一の救いではあるが、住所の正規化が簡単だなんてのたまうものは、地獄の劫火で焼かれるべきものである。

住所、まだまだいい足りないが、こんなもんで勘弁してやんよ!!