喫茶店の紅茶があれなのは舌や鼻にメガネみたいな補助具がないからさ


紅茶チェーン店が成功しないのはなぜなのか?
紅茶にコーヒーフレッシュでミルクティーがまかり通るのはなぜなのか?
そんなのがSNSで話題になってた。

一応、紅茶屋なので、口を挟みたくなった。長くなりそうなので、Xじゃものたらん。
でも、お店のほうのブログはもう数年更新もしてないし、このブログもサーバーの更新請求がきてて思い出したぐらいで7ヶ月ぶり・・・、だけど、まあ、よろしくお付き合いください。
紅茶とコーヒーをマーケティング観点から市場分析したこともあるけど、今日は人体の生理学的な観点から。

外食の味付、匂い付け

外食産業では味付けは甘じょっぱくするのが基本だ。
だが、甘すぎても辛すぎても浸透圧の関係から生命の危険を感じ始める濃度がある。
塩味、甘味もやがて飽和に達すると、今度はうま味で工夫するようになる。
そして、第6の味覚ともいわれる「脂肪味」、油マシマシ、オリーブオイルだばーになり、それすらも限界に達すると、今度は味覚ではなく痛覚、つまり「辛味」や炭酸のようなシュワシュワな刺激、はたまた噛んだときの食感やら喉越しみたいなもので特徴づけをするようになる。あとは視覚とかね。

香り。
動物は生存戦略の関係から焦げ臭さに敏感だ。特にタンパク質や炭水化物、油分が焦げる匂いにはごく敏感に反応する。
そして、腐敗臭、卵の腐ったような匂い、つまり硫黄臭にも敏感に反応する。だからどんなに、花粉症で鼻が詰まってもごくごく僅かに添加されているだけのチオール(ガス漏れの匂い)がわかるし、チーズ臭や焦がしねぎにんにく背脂ちゃっちゃの香りまでわからなくなる人はあまりいない。

同様に、味覚の中でも腐敗や毒と関係している酸味や苦みまでわからなくなる人は少ない。
加齢により苦みが分かりづらく、脳がアルコール代謝系にはいると酸味を好むようになるが、それでもまあ、どんなに二日酔いタバコやらで匂いも味も鈍化していたとしても、コーヒーの香りをわからない人はいないし、昭和ながらの酸っぱ苦いコーヒーの味までわからなくなるなんて人はまあ少ないのである。

これらはプレーンな紅茶にはないものだ。
だから、市販の紅茶飲料は柑橘系の香りを足したり、乳脂肪分を足したり、極限まで甘くすることで特徴づけをされる。

味力、嗅力

紅茶やらハーブティーやらを扱ってきてつくづく思ったのは、人の視力に違いがあるように、味覚や嗅覚にだって個人差があるということ。これは、努力とかではなんともならない、センシティブな部分も一部含むので、ちょっと説明や喩えが回りくどくなるかもだけどごめんして。

現代なら味覚を視力のように数値化するのはやろうと思えば簡単にできる。
例えば、お酢、砂糖、塩を溶かした溶液を希釈などして、何倍薄めたものまで、どれがお酢だとか当てられるかみたいな格付けチェック。こういうのを二重盲検でやってもらうだけで定量化はできる。脳波で反応をみてもよい。

でも、味覚や嗅覚は定量化、数値化することに意義が見出されることはなかなかない。

なぜか、視力ならメガネ、聴力なら補聴器みたいな矯正器具があるが、味覚や嗅覚には今のところそれらを補助する道具はそもそもない。
だから、その能力を定量化して計ったとしてもしようがないことだからである。

色の区別がつきにくい色弱、色盲というものがある。
赤色の感度が弱ければ、焼けた肉と生肉の色の違いをとるのは困難だ。
他方、通常の常人の100倍程度の色の見分けができる4色型色覚を持つ人なども居る。良い悪い、優れているだの劣っているだのではなく、人の特性は様々だという話。
その様々をあえて優劣という順にして並べたら、おそらくはそれらの出現頻度は身長のような感じに統計上は正規分布をとる。

おそらくと表現したのは、例えばこれに年齢や人種、職業などの生活様式で多項分布になりうるからだ。視力6.0が最頻値みたいな自然豊かなところで暮らす部族と、メガネばかりの理系学生みたいな偏った母集団を混ぜるなキケン。

遺伝子と色覚

人間の遺伝子は約32億塩基対から構成されるが、このうちわずか2箇所の文字が違うことにより瞳の色が決定される。青い色だったり茶色だったり。これは、虹彩のメラニン量の違いによるものだが、このメラニン色素の差が紫外線への感受性への差につながる。

赤道付近の金ピカの仏像やら、ネオン街、派手な看板、極彩色ごちゃごちゃした配色の町並みと、北欧とか極北の町並みの色使いの差は、単なる文化コード上だけの問題ではなく、そこに住まう人たちの遺伝由来の紫外線への感応性の差からきた指向性でもある。だから逆にはならない。

日本のように遺伝子プールが狭く、画一的な教育をうけた文化圏で生活をしていると、それらの差が、ごくわずかな比較可能な個人差となる。
日本人の場合は遺伝子的にも北と南からの流入組があるので、価値観は分かれることがあるが、まあ、同レギュレーションという前提でどんぐりの背比べをしているだけだ。世界は広いのでその前提となるレギュレーションが同一ではないことがあるということは少しだけ覚えておいてほしい。

遺伝子と味覚

さて、わかりやすく色覚をとりあげたが、同じように味覚にも遺伝子由来の差がある。

近年、人工甘味料への苦味反応における遺伝子差が発見された。
舌の受容体そのものに差があって、わかるひとには明確に違うし、わからない人にはわからないものだったのだ。そりゃ話しが噛み合わないよね。

我々の科学力はまだ、味覚において視覚における色弱と同じレベルの概念の発見にすら至っていない。

もともと積んでるセンサーのレギュレーションが異なる上に、それを受け取る脳も違う。これに生活習慣や、ウイルス感染症やら、重金属や化学物質暴露なんかで受容体のセンシングも変われば、あの人が感じている味と、この人の味が実は同じものではない可能性がある。

皮膚も違う。
他の人種と比較して、表皮は薄く真皮と皮下組織は厚い日本人。舌の味蕾にもその影響がでている可能性もある。

先天的、後天的

1枚の絵画を前に、色弱の人と4色型色覚の人では、見てるものは同じだが、見えているものは違う。
これは先天的なものだ。

爆音を聞き続ければ難聴になる。それがごく一時的なものなのか、数ヶ月で治るのか、はたまた、もう戻らないなんてこともあろう。こーいうのは後天的なものだ。

音の聞き分けや、色の分解能が人それぞれであるように、味の分解能の差が舌の受容体レベルで違うなんてことが多いにありうる。

ある種の感染症の後遺症による嗅覚味覚障害や、亜鉛不足など、味覚障害はいつなんどきでも起こり得る。
舌が馬鹿になったとか、味音痴なんて言葉はあるが、大抵はその人の前後の変化で、他人との比較で定量的に計測されることはない。

最初からわからない人には関係ないものなので、味覚を補助矯正してくれる道具や薬が生まれるニーズもないだろう。腹がふくれればいい。それだけがニーズの人もいる。

だから、食品開発をする場合は味付けは大衆向けマス層を狙って、味付けはきっぱりはっきり、そして香料をしっかり足すことになる。

おわりに

外国で日本人が料理にうんざりしたらインド人街か中華街にいけば間違いない。
日本人は味覚や嗅覚については相当なうるさ側の人種だ。日本以外で日本人が求めるそのクオリティにたどり着けることはまずないとほぼ断言できる。

香りが強く、味がわかりやすいとされるコーヒーでさえ、日本でのそれは別格だ。

闘茶やら香道など、それらをゲーム化できるのは同じようなレベルの人たちがいるからだ。
生命の危機を感じるほど甘すぎるお菓子や10分前に通過した人の香水の残り香で苦しむこともない。
牛乳やチーズなど、関税由来で触りがある分野もあるが、どんな料理も日本にもってくれば間違いがない。

だが、そんな日本でさえ、紅茶には不満を覚える人たちがいる。
売れている商品、はたまた売れなくて消えていった商品を見ると、ノンフレーバーで砂糖もミルクも足さずに、チャノキ品種ごとの煮出し汁の味の違いなんてのを楽しむことができるのは、少なくともマス層ではないからだ。

繊細すぎる分解能を持つ舌と、マス向けの味付けの利害衝突が発生している。

枯れたチェロの深みのあるビブラートを生音で聞きたい人と、こまけぇこたいいから体が揺れるほどのサウンドでフロア揺らしてくれる?って要望が同じ会場にいるようなものだ。同存しえない。

だから、もし、美味しい紅茶を飲みたければ紅茶屋をやるのがよろしいかと結論づけておきます。
でも、それはマス向けにはならないから、茶や塩にこだわると身代を潰すって諺とご一緒にご案内。

まあ、ここらへん、行き過ぎると、なぜワインが高級化するのかと似たようなものがある。
本当は違いなどわかっていなくても、知識で無双して、違いがわかるんだぞと騙れるからさ。
だって、舌や鼻にメガネはないからね。

参考

genetics.qlife.jp/tutorials/Genetics-and-Human-Traits/Is-eye-color-determined-by-genetics

dm-net.co.jp/calendar/2019/028900.php#:~:text=%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AB%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%82%8C,%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8B%E3%82%82%E3%81%97%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82

jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201202216168784210


宛先を天空の城にしても届く、それが住所


住所表記は柔軟さを豊富に含む。
自分が子供の頃、年賀状の宛先を「市内 天空の城」で記したが相手に届いたことがあった。(※
名字がある程度珍しくその地域で一意に特定可能なものであれば、住所がかなり適当なものでも届く。
それが住所だ。

※)このツケは高校生の時、年賀状バイトで自ら払ったので弁償済みにしてもらいたい・・・。

住所は原型を留めぬほどのなりはてでも届くし、はたまた、ほんの一文字が判読不能になっても届かない。
矛盾を孕んだ存在、それが住所だ。

前回の続き、住所のお話し。

もはや自由記入欄の住所

住所とは届け先を一意に特定するための文字列であると定義したとき、それを欠くと届けることができなくなりうるすべての文字列が住所たりえる。

例をあげる。

  • 例1「不在時は宅配ボックスにお願いします」
  • 例2「奥の青い屋根の家の右のポスト」
  • 例3「CODE-999999999999999」

これすらも住所の一部たりえる。

不在時は宅配ボックスにお願いします

まだ宅配ボックスが珍しかったころに急に住所に登場した文字列。
宅配ボックスがマンション戸数と比較してすくない普及期に、配達人に考慮なしに宅配ボックスに入れられると宅配ボックスが溢れるので、判を押したようにこの文字列が流行した。宅配ボックスが一般化したことにより最近は減りつつあるが、住所はとうとう条件分岐(if文)を内包するようになった。

物流が逼迫し、再配達率を下げるためにはしかたのないこと。配送日時指定とかなどは条件分岐の最たるものであるが、住所がさらに複雑な論理構造を持つ未来も遠くはないだろう。

奥の青い屋根の家の右のポスト

一意に特定するために、アクセス方法を事細かに書いた住所だ。
京都や札幌で使われる、東入ルだの下ルなどのような、アクセスの仕方が書かれた住所もこれに分類されるだろう。

古い家で親族で土地を分けた場合、同じ住所地番に同じ名字の家が多く住まうことがある。
手前の山田さんと、奥の山田さんみたいに。
親の名前が似ているから子供の名前も似る。
二世帯住宅なんてものもある。建物が同じで、名字も同じ。だが、ポストは別。

だからそれを特定するためにポストの細かな情景描写をしなければならない。

「奥の青い屋根の家の右のポスト、ポストには表札はありませんがウサギのかわいらしいシールが貼ってあります。」

こだわれば小説のような情緒的な書き方すらできる。
あるいは漫才。緑の鞄に500万入れて白の紙で黄色の鞄言うて・・・。
だが、こんな情報でも抜ければ配達員は届けることができないのであれば、それは住所なのだ。

「CODE-999999999999999」

もはや乱数みたいなハッシュコード。なんにつかわれているのかもわからない。

最近の住所に含まれる、よくわからないアルファベットに数字が混ざったみたいな長い文字列。

10年以上前であれば、これらの文字列は、住所が漏れたときにどこから漏れたのかを特定するために、セキュリティ意識の高い人がつけることがあった。住所の中にショッピングモール-店名みたいな情報を含んでいた。滅多にいないが見たことはある程度。

5年ぐらい前、国外への小型郵便物流通網が生きていた頃は少し意味合いが変わってきて、P.O.(私書箱)的なハッシュコードの意味合いで使われた。

小さく軽量なものはSAL便なんかを利用すると、東京から九州、北海道への宅急便代金などより安い送料で国外に送れる時代があったのだが、サイズが一定より大きく重くなると、途端に送料が高くなる。

なので、国外から一定量を日本のネットショップで購入するひとは、日本国内の住所で一度受け取って、まとめて送ることで送料を節約できる国際転送代行サービスを利用することがある。そのとき、誰の注文物かを振り分けるために、住所欄にP.O.番号みたいな長いハッシュコードをつけることがある。名前から判断するに韓国の方の利用者が多かった。

そんなコードがどうも様子がここ最近おかしい。
受取人が日本名なのにやたら長いハッシュコードがついていることがある。

住所を隠蔽したまま商品をうけとるためのサービスなのかもしれないし、ただ単に宅配ボックスとかの登録コードなのかもしれないけど、このハッシュ値がやったら長い。

Amazonなんかの住所表示欄では、長すぎるということで表示上(htmlのtext-overflow)「…」(三点リーダー)とかに丸められてしまうことがある。というか、丸められる。CSVやExcelに落とすと、先頭がゼロ落ちしてしまうことがあるので、お手々でその元のデータを住所に反映してやらなければならない。

何につかわれているかはわからないのだけど、それが原因で届かなかったら困るので、落とすわけにもいかなそうな文字列なので、取り扱いに頭を悩ますのである。

ちなみにYahooStoreとかだと、電話番号が住所欄にはいってきちゃったりするので、そういうのは住所印字のときにtrimしている。落とさなきゃいけない電話番号みたいな数字の羅列と、落としちゃいけないハッシュが混在する。

もしかしたら人によって用途は違うのかもしれないが、ちょっとなんなのか想像がつかない。クレカや住所が使えるかとかのトラックコードとかだったらやだな。

マンション名ビル名会社名部署名屋号の地獄

人名や法人登記に使える文字は限られているが、マンション名や屋号、部署名などはその限りではない。

漢字、ひらがな、カタカナ、異体字、旧仮名、変体仮名、そして英語、英語のカタカナ表記、そしてここにきてフランス語やらのアクセント記号、アクサン・テギュやらドイツ語のウムラウト、そしてギリシャ数字。はたまた機種依存文字①、㈱みたいなものまで、どこまでも自由につかわれる。

住所印刷を投げるときにエクスポートするんだけどsjisでしか受け付けないシステムとかあるから、そういうのがデータが落ちたり文字化けしたりするのである。
SQLインジェクションかよって思うようなマンション名すらある。実際シングルクォーテーションを含むマンション名は多い。で、なんかのシステムを経由したためにエスケープシーケンスがついたり”になっちゃってたりみたいなこともよくある。

新宿の1階層ごとに郵便番号が異なる住所で、ビル名が長そうなものを適当に今ピックアップしてみた。

〒 160-6190
東京都
新宿区
西新宿住友不動産新宿グランドタワー(地階・階層不明)

www.post.japanpost.jp/cgi-zip/zipcode.php?pref=13&city=1131040&cmp=1

近代のビルには数千世帯(数千人)が同居していることも少なくない。
そして大抵、似たようなビル名は少し違うだけでA棟、B棟のように複数連立して立つのである。

件の例だと「西新宿住友不動産新宿オークタワー(地階・階層不明)」みたいに、グランドタワーとオークタワーみたいに似たビル名の建物が近隣にある。それぞれ38階と54階まで、別の郵便番号になっている。

ちょっとした田舎の町の人口がひとつのビルに出現するわけだ。

◯丁目◯番地◯号A棟2023号室
みたいに命名法に表記規則があればまだ管理は楽であっただろう。

例えばだけど、その地域にいくつも建つような建築会社のブランド「ライオンズマンション」みたいなものは、その地域の名前を復唱することがある。
[ライオンズマンション***市***町*丁目]のように。
住所を一意に特定するために必要なのはマンション名を抜いたあとの部分が必要なのだが、正式名称がそうであるためマンション名も丁寧に入力される。

先の新宿の例で考えるならば、
住所「西新宿住友不動産新宿グランドタワー(地階・階層不明)」
会社名「株式会社****西新宿住友不動産新宿グランドタワー支店~~~部~~~課」
みたいに続くことが容易に想像ができるだろう。

だが、データ登録欄、あるいは宛名印字のためのスペースが限られているのだ。

長いマンション名に押し出されて肝心な情報が欠落してしまうことがある。または、この中間に出現する謎の複雑怪奇なマルチ言語の文字列により文字化けをおこしたりなんだり。

つまり何かというと、うゔぁーなのだ。

パレスだとかレジデンスだとかヒルズだとかをしっかり入力したがために肝心の部屋番号が落ちてたりすると、あー、これじゃ届けられないぞと問い合わせが必要になったりするのだ。
で、調べてみた結果、部屋番号もない数軒程度アパートだったりして胸をなでおろしつつもやっとした気持ちになるのである。

感想

最近は在邦の外国の方も増え、特に、繁体字や簡体字はそのまま使われる方が多くなってきた。
今のところRLT (Right To Left)が無いのが唯一の救いではあるが、住所の正規化が簡単だなんてのたまうものは、地獄の劫火で焼かれるべきものである。

住所、まだまだいい足りないが、こんなもんで勘弁してやんよ!!


住所正規化問題は住所地獄の一丁目


前回のつづき。
どこまでが町名でどこが番地名だ、みたいな、住所正規化の問題。
そんなものはコンバーターの精度を競うまでもなく、住所問題を扱うときには実はさしたる問題ではない。

半角カタカナを全角ひらがなに変化できる程度のDX人材がいないと駄目だとか、なければ人員と努力忍耐根性が必要だとか、まあいろいろあるけれども、前回書いたような基礎自治体、町名ぐらいまでの問題のほとんどは郵便番号辞書で解決することができるからだ。

パソコンなどの日本語入力IMEの郵便番号辞書をONにしていれば、郵便番号の数字をいれるだけで住所に変換することができる。

新たに作ったシステム導入の説明ついでに、日本語入力IMEに郵便番号辞書をONにするやり方を教えてあげたら、それが一番喜ばれたなんていう悲しい体験があるほど郵便番号辞書の利用はDX化においてまずなされるべきことだと思う。


だから、そんなものは住所問題地獄の一丁目でしかない。
なにせ郵便番号辞書という「正解」があるのだからそれにぶつければよいだけの問題だからだ。

ふたとおりの正しい住所

というわけで、地獄の二丁目の門をくぐろう。

日本の住所には、本籍地などで使われる「法務局(登記所)が定めた住所」と、郵便物などでつかわれる「住居表示に関する法律」により定められたふたとおりの住所というものがある。土地登記地獄のフタもあるのでこれも盛大に不満をぶちまけたいが、ここでは触れない。

◯丁目◯番地◯号みたいなのは、住居表示実施適用済みの住所。
昭和37年より前は、地番が住所として使われていた。当時は家も人口少なかったから地域名に連番を振るだけで住所が管理できた。昭和中期のベビーブーム、人口爆発により、ひとつの土地に複数家族が住み始め、連番の途中に新たに家が立ち、アパートが立ち、ビルが立ち、そして、地名+連番+枝番による住所管理は破綻を迎えた。

いまの23区は東京市で、都は東京府で三鷹が村だったり町だったりした頃から現役の表札。地番表示。

昭和37年、住居表示に関する法律が制定された。
1962年の法律なら、もういい加減一律悉皆に適用されていそうだが、実はそうでもない。

田舎などは古い地番がそのままつかっていたり、北海道みたいな非人口密集地だと、無番地みたいなエリアも多い。まあそれくらいは、実務の用であるので使いやすいほうを選択しても問題はない気もする。

だが、実際は人口が多く入れ替わりが多い新宿区ですらまだ未実施地区はこんなにもあるのだ。

東側の青紫の色のところが未実施地区

新宿区住居表示実施図(PDF)
www.city.shinjuku.lg.jp/content/000280624.pdf

新宿だよ?
乗降車人数が世界最多の一日に350万人の新宿駅を擁する新宿区がだよ?
昭和37年の住所改正すらまだ途中なのよ。
しかも厄介なことに、住居表示実施適用済みでも古い地番の住所を使う人もいる。

新宿区からの注文で、住所が新宿区**町3番みたいな。
あー、書き漏れかな? 新宿みたいな人口多い地域でこれじゃ届かないだろと確認の問い合わせしたら、「うちはずっとこれで届いてきたから」と。
あえてそれを使う側にもこだわりもある。戦争で焼けなかった地域には残されたもののプライドも継いでいるわけさ。

郵便番号の地獄

古い番地が残る新宿の東側とは逆に、新宿区の西側、都庁がある超高層ビル群に変貌したエリアは、ひとつのビルに数百の会社、数千人がすし詰まっているので、ひとつのビルにいくつも郵便番号があったり、排他的論理和みたいな「次のビルを除く」表記になっていたりしてさらに混迷の様相をみせる。

丸の内とか、西新宿とかはこんなんばっかりだ。

〒163-0701 西新宿小田急第一生命ビル(1階)
〒163-0702 西新宿小田急第一生命ビル(2階)

フロアごとに郵便番号が異なる。
郵便番号データを信じすぎるとこういうデータとも戦わなければいけない。

郵便番号辞書を信頼しなければ始まらないが、信用してしまってはだめなのだ。

郵便番号が一つのエリアにユニークに紐づいていれば問題は少なかったのかもしれないが、現実はそれを許してはくれない。同じ町名なのに、郵便番号が分かれることもあれば、一つの郵便番号にも複数の異なる町名がぶら下がるなんてこともある。

厄介なことに、例えば「山田町」と「山田」みたいに似ているけれども非なるものが同じ郵便番号にぶら下がっていることも結構な出現頻度であるのだ。

拗音促音濁点半濁点地獄

オフコンや汎用機の時代に作られたシステムでは、小さい「ぁぃぅぇぉ」や「゛」「゜」が現在のシステムの扱いのそれとは異なることがある。顕著なのが自治体や郵便局、銀行など、80年代、90年代、システム化が早かった界隈だ。ATMなど制限された平面に物理の文字ボタンの入力に対応していたため、濁点などを含んだすべての読み仮名のボタンを配置することができなかったのだ。

うちは紅茶の茶葉さんなので会社名に「茶屋」という漢字が入る。
自分はこれを「ちゃや」のつもりでつけたのだけど、銀行口座をつくるときちょっとした手違いでふりがなが「ぢゃや」になってしまった。
日本郵便などは促音にも対応していない銀行の場合は、小さい「ャ」がなく、「ヂ」が「チ」+「゛」で表現される。つまり「ヂャヤ」は「チ゛ヤヤ」となるわけだ。

システム上(文字コード上も)、「ヂ」と「チ゛」はまったく別のものなのでこれを同じものと見做すためには、同じものですよと変換してやるか、それらを同じものとしてつないで定義してやらなければ検索することもできない。だから、システム化するときに「チ゛」は「ヂ」にしてデータベースに格納することにしよう。そんな風にして、全銀聯などはデータベース連携をすすめたのだろう。

なるほど、システムの更新や仕様策定のときにそう変換するルールを決めることは大切だ。
では、「ア゛」と入力された場合は?
そして運用をはじめて具体的な例外が次々に出てきて頭を抱えることになるのである。

「チ゛ヤヤ」と登録してしまったデータから「ヂャヤ」を復号することはできないのだ。
かくして「チ゛ヤヤ」のデータも正しいものとして生存し続けることになるわけだ。

タレントの中川翔子さんは、薔子(しょうこ)で命名しようとしたが「薔」が常用漢字でないために登録できず、しかも、促音の「ょ」が「よ」になってしまい本名「しようこ」で戸籍登録されてしまったそうである。あ、ご結婚おめでとうございます!

そんな感じに、名前は役所届け出のときに使えない漢字だの、つかえない読みだのと拒否されシステムにあわせて、担当者の胸先三寸で運用され、そして「正しい」データが増えていくのである。

法務局の屋号はチャヤになったのに銀行はヂヤヤだ。果たして我が社の正しい読み方とはなんぞや?

住所には宛名も含むので当然だが、同じような問題が住所にもおこる。

日本郵便の郵便番号辞書CSVのダウンロードページに行くと面白いものが今でも見れる。
読み仮名データの促音・拗音を小書きで表記しないものと、小書きで表記するものがある。
例:ホツカイドウ
例:ホッカイドウ

何故2023年にもなって「ホツカイドウ」のデータを残しておく必要があるのか?
名寄して変換できるじゃないか!というモノのみ石を投げよ。
マサカリが投げ返されることであろうぞ。

このペースで書いていくとあと2回ぶんぐらい続きそう。

他参考

IMIコンポーネントツール
info.gbiz.go.jp/tools/imi_tools/

(前回の投稿)明るい日本の住所表記に安心してくださいはできますか
kuippa.com/blog/?p=2228