ミヒャエル・エンデの『モモ』来、ファンタジー系政策だったのが、とうとうEUの中央銀行で実行される時代になった。
手数料を取られるというような認識や報道があるかもしれないが、マイナス金利を手数料と理解することは大きな判断の誤りを招く。
お金の怖いところは増えることしかできないことだ。
個人としてお金は使うとなくなるが、全体としては発行されるお金はどんどん増えていく。
これは金利が設定されているからだ。
その性質上、お金はどんどんと製造されて増え続けるしかない。
Bitcoinのように発掘上限、負のフィードバッグを仕組みに組み込んで上限をあらかじめ仕様として設定しているところもあるが、基本、各国の中央銀行が発行する通貨や債権は利子が設定された正のフィードバッグがかかっている。
お金、国債、信用、ほかもろもろ。
金利によって増えたお金(元本)はさらに増えた元本に対して金利がかかる。
細胞分裂のように、1つから2つにわかれた細胞はそれぞれが2つにわかれる。
増えた種はそれぞれがまた花をつける。
ひらたく言うとこれが複利だ。
簡単に式で表すと、
元本×(1+金利利率)^金利の発生回数
// 例excel =$B$1*(1+$B$2)^A4
こうなる
グラフで簡単に模式化するとこういう風に時間経過によりぐんぐん伸びて無限大に発散していく。
何十年かまえの日本では郵便局の定期預金金利が7%を越えていたから10年預ければ元本が倍になったそうだ。
もしその金利が続いていれば20年で4倍、30年で10倍、40年で20倍にもなっている。しかし今の日本の銀行預金金利はなんと0.03%だ。この金利で運用すると元本が倍になるにはなんと2311年もの年月が必要だ。
だが他方で、いまでも金利が10%近く、国債などもとても高金利の新興国が同じ世界に存在している。
このように世界のどこかしらで増え続けたお金にたいして価値がじゃぶじゃぶと希釈してしまう。
だが、それでも今までは問題があまりなかった。
かつての日本もそうであったように、通貨や国債というのは戦争など適度なタイミングで無価値になったり、デノミとかで単位を変更されたりしたからだ。
しかし、最近の成熟国の通貨の死亡率は低く、増え続けるしか機能がないお金や金利の仕組みではうまくまわらなくなってきた。コレ以上お金が増えないように、なんとか延命しようとゼロ金利にしたりなんだりしてきたが、世界のどこかで結局お金は奔流のように湧き続ける。そして交換される。
そこでついに実行されたのがマイナス金利である。
お金はとうとう減る機能を手にいれることができたのだ!てぃってぃりー♪
マイナス金利がうまくまわるということがわかれば、生物でいうなら、単細胞生物アメーバーのように栄養状態さえよければ無限に増え続けていたものが、殺されて死滅する以外に、アポトーシス(自死)という多細胞生物の機能を得るべく進化したと言ってよい。
単細胞国家のアポトーシスは自滅でしかないが、高密度連携国家(多細胞)の自死機能はなくてはならない機能だ。
そしてマイナス金利はとんでも宗教の世界からどうやらこちらがわの世界にやってきた。もっともトラブルは続出するだろうが、マイナス金利が実施できるということは、多細胞生物に進化したという左証であるように思う。
そんなわけで、複利のもたらす乗数効果をわからずに中央銀行のマイナス金利を『ただの手数料』として捉えてしまうと、大きく事象を見誤るのでござる。にんにん。
www.jp-bank.japanpost.jp/cgi-bin/kinri.cgi
www.bloomberg.co.jp/markets/rates.html