特殊な技能を持っているスペシャリストの賞味期限がどんどん短くなってきている。
技能を磨いても道具や環境の進化でその技能を持ったなくても成立する分野が出てきてしまうため、技術の特殊性で食えなくなってきた。技能鍛錬による特殊性を道具が補なわれてしまうため、アドバンテージがなくなってしまうのだ。
例えば、音楽家は幼少の頃より鍛錬を始め超特殊なスキルを持ったプロとして活躍する。
今でもそのようなプロフェッショナルは居る。だが録音技術が発達すると楽器もろくに引けない音楽家も増えてきた。そして今では作曲も演奏もせずに人の曲をその場で切ったり貼ったりのDJミックスのほうが経済的に成功していたりする。提供するのに利用する技能は違うが、楽しい音楽を提供するというサービスの形にはあまり違いがない。
大工の工法もそうだ。ツーバイフォー工法などの近代工法で見習いのような人達でなんとかなってしまうようになった。
料理も、農畜産物の生産が変わり、流通がかわり、火加減や、道具が特殊性を下げるようになった。
現代において必要なのは熟練労働者より、人工の安い若手労働者だ。
超一流の技能者は残存価値、希少性により評価が無くなることは無いが、経済的合理性で名声はあがれど稼ぎは落ちるだろう。何かを収めた一流の人物は、もしその技能が失われたとしても、その習得力、探究心の強さにより、また違う分野でも成功を収めることができる可能性は高い。一流ではないものの技能者として認められる程度の人は、技術のブレイクスルーがあったある日を境に非熟練の労働者と同じ人的評価しかできないようになる。道具の進歩は熟練技能者を非熟練労働者に変えてしまう。
技能の陳腐化まで半世代ぐらいかかっていれば、商売変えもなんとかなるかもしれないが、昨今のように技術の陳腐化が激しいとどうしょうもあるめぇ。最近、ポテトチップスの賞味期限まで短くなっちまった。なんとも、酸化の激しい社会だね。