ブログ

  • 枯れ葉

    落ち葉の掃除が大変な時期がやってきた。掃いた端から降ってくる。
    なんで植物は冬に葉を落とすという進化をしたのだろうか?
    冬葉が生えたっていいじゃないか。

    針葉樹は冬にも葉を落とさないが、広葉樹のほうがより進化適応した植物だと習った記憶がある。

    では進化の途中で、夏は葉っぱを広げて、秋口からは松みたいな芯芽を生やしておけば冬でも光合成できるではないか。冬と夏で日照時間が短くなるとはいえ、光合成に必要なエネルギーが得られないほどだとは思えない。もし、冬は光合成できないほどであれば、太陽光発電なぞは夏だけ稼働するものになってしまうだろう。
    効率坊の植物はいなかったのかな?

    光合成の速度はともかくとしては、水分の蒸散の速度は違うだろうなとは思う。
    だが植物は、夏毛と冬毛を生え変わらすことをせずに、冬はいっそ諦めるという潔さをとった。不思議だ。

    なぜ、丸坊主になるまで葉を落とすのだろうか。まてよ、草なんかはいっそ枯れてしまって、冬場は種とか球根になってしまうやつまでいる。お前ら冬で諦めすぎじゃね?冬は諦めて冬眠でもするのが自然の摂理なのかもしれない。だとしたら俺も冬眠したい。

    蒸散の速度が原因?

    葉による水分の蒸散速度が低下することが影響するのはなんだろう?
    カルビン回路か、懐かしいね。暗反応とかあったな。二酸化炭素の固定にも水は必要だよね。もう、こうなってくるとわからないからぐぐろう。

    個葉の光合成速度が決まるしくみと測定原理
    > 数種常緑広葉樹の光合成・蒸散速度の日変化と季節変化について 小杉緑子・小橋澄治・柴田昌三


    図2蒸散速度の日変化および季節変化

    季節変化では夏と冬の差が非常に顕著で,冬はほとんど蒸散しない


    図3光合成速度の日変化および季節変化

    秋以降低下するアラカシ,クスノキに対して,マテバシイでは秋でも夏と変わらない光合成活動が見られた。

    あはぁん~。
    うん、まあ予想通り。
    夏冬で、蒸散速度は結構違うけど、冬でも光合成してる植物はいるみたい。

    マテバシイは、どんぐりの木、ブナ科の常緑高木。あれ、どんぐりの木って、冬は葉っぱを落とさなかったっけ?そういえば近所の御神木のスダジイとか冬も葉っぱついているな。少し考えたら、生け垣のネズミモチとか、広葉樹だけど冬にも葉をつけっぱなしのやつは多いぞ。あれ、冬に葉を残すのは針葉樹だけじゃないのか・・・。

    ・・・。
    そういえば、広葉樹にも枯れて葉を落とすやつもいれば、落とさないやつもいるね……。
    はい、終了。

    冬といえば針葉樹という頭があって、夏場は広葉樹で、冬場は針葉樹になるハイブリッド種ができたら最強じゃね!?とか思ったけど、別に広葉樹の葉っぱのまんまでいけたみたい。

    なんか、特別な進化上の淘汰があって、そういう進化をしたやつもいたけれども気候に対して過剰最適した結果、気候変動とかで滅びたのかなとかまで考えたんだけど、冬は寒から諦めるよーってやつもいれば、諦めないやつもいる。植物の世界は存外多様性があった。

    目につく枯れ葉にだまされるな。冬来たれり。

  • 無実と無罪とゴーン

    ルノー、三菱自動車、三菱自動車工業の会長であったカルロス・ゴーンが東京地検特捜部により身柄を拘束された。これについての報道や世間の反応をみていると、この国では無実と無罪の区別について思考放棄がすすんでるのかなとか感じたりもする。株式上場している会社について憶測を交えていいかげんなことを書くと風説の流布になってしまうので、あまり踏み込んだで書きたくないのだが、外形的なことを私的ブログでぐだぐだ言うぐらなら許されるだろう。

    海外ドラマと海外法律

    いつの間にか契約していたAmazon Primeで、BGMのように海外ドラマやらアニメなんかを流している。今は海外版の「suits」をシーズン6までみてるところ。もう最終盤。ドラマではハーバード・ロー・スクール卒業と弁護士を騙るニセものだけど天才と、実績も才能もあるけれども勝ちのみにこだわる冷血漢な師弟コンビが繰り広げるドラマなんだけれども、こういう海外ドラマを多く見すぎたせいか、今回の事もお国の事情が違うだけのことのようにもみえてしまう。法律や常識は国ごとに大きく違う。

    事実か事実でないかに違いがあるように、事実であってもそれが罪を構成するかは全く別のものである。日本で16歳がタバコやお酒を飲んだら犯罪になってしまうが、英国では16歳から可能なので高校にバーがあったりする。カナダなんかは先日、大麻が合法となった。ところがかわれば常識も法律も違う。

    罪刑法定主義

    独裁国家でも国民情緒法でもなく、罪刑法定主義を採用している近代国家は法律に明記していることが罪と規定される。法律にかかれていないことや、法が制定される前の事柄について罪に問うことはできない。法の不遡及の原則。これが法治国家だ。

    日本は憲法はもちろんのこと法律のアップデートも著しく遅い国であり、商法の改正なんかは120年ぶりだそうな。120年前にはインターネットも携帯電話どころか固定電話も怪しいわけで、その時代に考えられたものを骨組みを弄らないまま増築と継ぎ接ぎだけでなんとかここまでやってきた。

    裁判官が法の趣旨を斟酌して下した判例法とも揶揄されるものが逮捕や起訴の根拠になることはあっても、まぁ、それでも罪刑法定主義の原則はかわらない。

    法体系には主には2種類あって、やってだめなことを規定するブラックリスト方式の英米法系と、やっていいことを規定するホワイトリスト方式の大陸法系がある。日本は大陸法系。

    日本からなかなかイノベーションがおきないと言っているのも当たり前で、ホワイトリスト方式の法体系下で新しい技術ができたところで、ありもしないものを法が想定しているわけがない。許認可方式ではノーベル賞ぐらいの実績でさえも立法化までの道のりは険しく長い。

    ホワイトリスト方式下で新しいことをやると、だいたいどこかが何某かの法に触れることになるので、罪を構成してしまう。今では当たり前になったWEBの検索エンジンですら著作物のフェアユースがない日本では著作権法に触れるので、最初の頃は国内にサーバーを置くと運営者が逮捕されるとか、技術だけでなくそういう回避行為を同時に考えなければならなかった。

    だが、そんなようなことを法で規定するためには「USBの穴が穴でなにするがそんなことは部下に任せるので知らん」って人とポートとジャックの区別も怪しい人が議論ができるぐらいまでに基準や前例が必要となる。だから、ある程度技術が枯れてからじゃないと議論もできない。

    アメリカとかは提訴大国だが、やらしてみて駄目だったら懲罰的損害賠償をあたえて手打ちにしようっていう考え方なので、新しいことも事故もばんばんおきる。他方、従前的なやりかたを続けていれば、大きな変化もないが、逆に大きく間違えもしない。どちらにも一長一短がある。その良し悪しはここではおいておくことにして、同じ民主主義国家でも国が違えば法律も罪もその構成も異なるって話。

    ごびゅう、誤謬性

    で、そのホワイトスト方式の日本では刑事裁判の起訴後有罪率は99.9%だそうだ。ダブルバインド、二律背反したような法律が日本にはいくつもあるので、起訴までいっちゃえば何某かの罪に問うことは容易で、こういうことになるのだと思う。ギルティとノット・ギルティが正規分布すると考えると、犯罪認知後の無罪の偏差値は80以上ってことになるが、おい、おい。

    工業生産などの現場では不良品がないかをチェックするとき複数段階のチェックを置く。
    このときのチェックががばがばでもきつきつでも生産効率は悪くなる。エラー検定率(第一種過誤)は通常、5%とか1%で設定されるそうだ。全体の20%をハジクようなチェックや、100%通してしまうようなものはチェック項目として間違っているのだ。

    この有罪率の高さを見ると事前にふるいにかけているのだろうが、有罪にするものとしないものを担当者がアンダーデスクで振り分けるって、あー、それ、人治だよね?

    司法取引

    司法取引は早く導入されるべき制度だと思っていたのだけれども、まだ2回めだそうな。さすがに驚くほど未成熟ですな。なんだいこれ?やばみ!

    ヤクザの親分による殺人示唆と実行犯による殺人で、親分捉えたいがために実行犯をみのがして親分だけ狙うみたいな話しのように見えるよ。まあそれもありなのかもしれないけど、「suits」風に言えば、検察と内部通報者による共謀で悪意訴追ととられてもおかしくないよね。悪意訴追なんて法律日本にはないけど・・・。

    もし100億の報酬を、50億に見せかけてた金融商品取引法違反って話しが本当なら、利益を得たのは会長かもしれないけれども、実行犯は故意を持って行動した経理やIRであり、それを監査する監査法人や弁護士には通報義務を放棄したことになるし、なにより善良な管理者の注意義務がある取締役はなにしてたんだって話しだよね?ここでどんな関与と罪の減免の司法取引をクローズドにしたまま、これは司法取引ですって、ちょっとかなり乱暴すぎない?なんで被害者側に立ってるの?君たちもまず捕まったうえで司法取引はなされるべきじゃない?

    犯罪構成要件

    ちょぼちょぼ情報のリークがあって内容が二転三転しているのが気に入らない。
    最初逮捕された当初、過少申告による脱税かなとかおもわれたが、カルロス・ゴーンは日本に月の1/3も居住していないことから、申告地が日本にないことがわかると金融商品取引法で記載が義務付けられているIRの虚偽記載となった。売上の粉飾ならともかく、役員報酬の虚偽告知であるという。それで会長が逮捕!?証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがあるってことか???
    だがこれも報道を聞いているとなにか要領を得ない。

    現在のところ、どうも、会長職退任時に約束していた退職金の50億を報酬としてIRに載せろってことのようだ。金銭の授受に基づかない発生主義に則った退職給付引当金みたいなもんだろうか?まあ、いわんとすることは、わからなくもない。まあ、そんなもんが特損に乗ってたら投資家は逆に混乱すんだろ。
    どうなるんだろう?貸借では固定負債について、損益では特損?キャッシュフローは動かないのか?わかんねぇな。この場合、わかる人のほうが少なそうだけど。もうちょっと詳しく事情がわかるようになったら誰か解説してほしい。

    私的流用と投資

    日産本体ではなく、海外子会社経由との報道もある。もうこうなるとわけわからん。
    日本とフランスは国際租税条約を結んでいると思うので、主な在地がフランスであれば、フランスでの申告になろう。でも、フランス経由のオランダとかそういうタックスヘイブンのペーパーカンパニーを経由された所得だったりすると、日本側でなんかできることあるの?それで連結の虚偽記載においたの?その出資金は預け資産じゃなくて法人持ち株としての出資?財務活動のほうじゃなくて?

    ブラジルの次期大統領選に出馬とかが噂されてたりするけど、主がブラジルだったりすると、日本とブラジルだと、犯罪者引き渡し条約すら結んでなかったよね?これだともっと厳しくなるよね。立件まで継続できるんだろうか?国際問題になるよね。間違いなく。

    私的流用。
    日本の不動産は新築の物件が買った瞬間に二次流通では半額になるが、これは世界では稀有な例で諸外国では異なる。特にゴーン氏が家族を住まわせたとされる、ブラジルやレバノンのような国では、年に4〜7%のインフレがあるので現金で所有するよりモノで持ったほうが価値が毀損しないどころか、10年も寝かすだけで倍値になる。都市部ではさらに値上がりが見込めよう。

    その上、世界的に有名なカルロス・ゴーンが住んでいたというプレミアムが付けば、さらに高値で売ることができるだろう。海外住宅は家具はもちろんのこと冷蔵庫洗濯機、食器やスプーン・フォークまで住宅についていたりする。家族を住まわせていた、いつでも住めるようになっている、という事実と、それがまるごと売り物だという事実はなんら背反しない。

    浪費や流用と投資の区別は、成果を見れば一目瞭然だろうが、不動産についてはちゃんと言い訳ができそうだ。コーポレートベンチャーキャピタルとか投資会社が民間投資しねぇで不動産ばかり買っているっていう非難はできるかもしれんが、投資会社が逆に財産の管理および運用とかを定款とかにいれてないのだとしたら、それは一体なんの会社だい?

    家族旅行とかベルサイユ宮殿とかはどうだろう。これは正直よくわからない。
    ただsuitu脳だと、コーポレートカードでそんなもの買ったりそんな贈り物だとかのお金の使い方して経費って認められるのか。恐ろしいなアメリカっていう日本とは違う常識の国があるのも確かだ。
    財閥や華族が解体された日本では、放蕩なのは成金ぐらいだが、欧州のビッグファミリーとか王族とかと付き合うためのビジネス上の必要経費とすれば、庶民感覚ではないところで、妥当な必要経費なのかもしれない。100億、日本の自動車会社のトップとしてはもらいすぎの額でもアメリカ自動車産業と比べれば、それでも少ないそうなのだ。

    民意と感情

    理論では納得できても、感情で納得できないという話しはよくあることだ。
    コストカッターで知られるってことは、多くのリストラをおこなったってことで、当然恨まれてもいる。

    50億もらってるひとがさらに50億ちょろまかしてた、家族旅行で数千万つかってったっていう報道を聞いて、妬み嫉みから自由でいられるほどの寛容性をさすがに多くの日本人は持ち合わせていない。
    だが、それを利用して誘導し煽っているようにも見える。それが今回眉間にシワがよるところだ。

    でも、それが本当に罪を構成するのかは、感情に流されずに判断できるようになりたい。推定無罪なのに解任になる日産と、推定無罪で解任にならないルノー。ここに答えがあるようにも思える。
    疑わしきは被告人の利益に。・・・なってないね?

    手続き

    FBIとかが逮捕のときに読み上げるミランダ・ルールにある「あなたは弁護士の立会いを求める権利がある!」が、日本にそんなものはない。弁護人はつけられても取り調べのときに立ち会わせることはできない。取り調べの可視化もされてなくて、録画も全体の1%程度と十分でない。そんでまた今回の共謀っぷりがぷんぷんの司法取引。悪意訴追を追求する制度もないし、警察内部に監察官みたいな部門はあっても、検察を捜査するような独立性の高い組織は日本にはない。検察審査会制度で申し立てがせいぜいだ。ちょっとだめかなと思う。江戸時代は北町と南町で輪番制が機能していたが、今のような、シングルスレッドの司法警察行政はフォールトトレラントじゃない気がする。

    電撃不意打ちでルノー、日産、三菱自動車の会長を逮捕拘束したが、カルロス・ゴーンのような経済上の大物を捕まえて、もしこれが誤認逮捕だったとしても、刑事補償法上の補償内容は、一日で最大12,500円にしか請求できない。最大でだ。系列の工場勤務の派遣従業員でさえもっと大きな経済被害が出るだろう。ゴーン逮捕でどれほどの経済損失が生まれただろうか?インパクト50億どころじゃない気がする。

    もし内部通報者のクーデターの為に、検察が共謀したのだとしてもそれを問うことができる仕組みは日本にあるだろうか?誤認逮捕とかで、うっかり死刑にしても最大で3,000万円にしかならない。刑事補償法はノータイムで改定したほうがいい。あと120年かかるかもしれないが、やったほうがいい。

    ゴーンぐらいの大物相手でも代用監獄収容を繰り返すのだろうか?
    我々は我々のやりかたになれすぎて違いに気が付けない。海外からも大きく注目される事件なので、こいうのでもきっかけでちょっとづつにでもよくなるといいね。

    再びsuits

    ジェシカは男子トイレでの喧嘩をなんでいつも仲裁できるのだろうか、不思議だ。なんでも織田裕二版のテレビドラマもあるんだとか。ハーバード・ロースクールの偽弁護士を最終盤、追い詰める証券取引委員会の調査員にショーン・ケイヒルが重要人物で登場するのだが、この役は誰がやるのだろうか? ぜひ。…to …. you!

    参考

    https://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&ad=DSXMZO3813554023112018EA2001&dc=1&ng=DGXMZO38135510T21C18A1EA2000&z=20181124
    「ゴーン後継」巡り綱引き 日仏連合、成長戦略に暗雲
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38135510T21C18A1EA2000/

    https://www.youtube.com/watch?v=dIiEHpodoHs

    日本の刑事裁判の起訴後有罪率99.9%は本当か?検察の捜査力について
    https://izumi-keiji.jp/column/jiken-bengo/yuzai-99-per

    第一種過誤と第二種過誤
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%A8%AE%E9%81%8E%E8%AA%A4%E3%81%A8%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E7%A8%AE%E9%81%8E%E8%AA%A4

  • ハードウェアハッカーよむよむ

    自分のTwitterのタイムライン界隈でやたらと前評判の高かったハードウェアハッカーが届いたので読んだ。積読を押しのけての即よみ、まあ、少し厚みはあるが技術書ではないので2日程度で読める程度のボリューム感。

    ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険 著:アンドリュー”バニー”ファン

    感想としては、監訳の山形浩生さんがあとがきで冒頭に書いていた「これ、いったい何の本なの?」という、素朴にして簡潔な疑問に両手を上げて賛同だ。いくつかの全く知らない世界と郷愁を覚える懐かしいエピソードがあるが、平たくいえばハッカーの書いたブログがオムニバスになった感じだ。コンセプト料理のフルコースではないけれども、濃ゆくて珍妙な面白食材をどさどさと積み上げられた形。これを消化、咀嚼できるのは読み手の力量、胃腸の消化力にちょっと頼り過ぎているきもする。

    Chumbyとかすごく懐かしいけど、そういう人は少ない気がするし。あぁ、Haching the Xboxの人だったのかっ、と巻末にくるまで気が付かなったが納得もした。

    この本の紹介で「バイオハッキングまで!」みたいなものもあるのだけれども、バイオの部分は正直蛇足感が強い。バイオを齧った身としてはこの章まるっといらなくね?と思ったりもした。この章にはなにか奇妙さを覚えた。パールフレンドの彼女のためにねじこんだのかな?あまり「最新」とか「現代」のテクノロジーでという感はない。というか、ハックしてなくない? ちょっと古めかしさすら感じた。最近のバイオDIY的なことを期待してたんだがそういうことではないようだ。もしかしたらハードテックの方に先鋭な人たちは逆の感想を持つのかもしれない。

    P379 神話:「リファレンスゲノム」は存在するか?
    現在のリファレンスゲノムは、たった数名の、ほとんどがヨーロッパ人を祖先に持つ個人のゲノムをもとにして作られている。// 今のところ、遺伝子判定というのは、妥当性に問題のあるソースレポジトリを基準にした差分なのだということは、ぜひ覚えておくべきだ。

    自分が学生の時分は、遺伝子編集をおこなうようなバイオセーフティーレベルが定められた研究室に所属するときには実験の過程などで自分自身がなにか酷いコンタミしていないことを確認するために、ビフォーアフターの遺伝子採取が法律で定められていた。このとき提出した自身のサンプル遺伝子は研究のために研究にもちいていいかみたいな確認項目がある。あったきがする。ま、数十年前の知識なのでうろおぼえだし、今はもう変わっているかもしれない。つうわけで、リファレンスがあるとするなば、ヨーロッパ人をルーツにもつ数名のというのは、どうなのだろう?かなり限定的なリファレンスだとおもう。

    リファレンスゲノムの章立てをみたときはトバ・カタストロフで人類がボトルネック化してどうこうみたいな議論なのかなとか、ネアンデルタールと現生人類の交雑の痕跡がとか、アフリカ由来ではないホモ・フローレシエンシスとかのコードを一部アジア人は採用しているんじゃないかとか、そういうことが書かれているのかなとかを邪推した。そういうことじゃなくて、すごく平たい表層のことだった。もにょもにょ。なんていうか、perlでデフしたとかを出張らす分野なんかじゃない気がする。ヒトゲノム計画なみにフルスキャンするのはむりなので、特徴的に異なる部分だけを差分Diffをとるのはむしろまっとうなコスト意識だ。犯罪者や裁判情報となるのも人物の一致だけをみるならば、全配列をマッチさせる必要なぞない。・・・。ちょっと、この本の本質ではないところでぐだぐだ書いてしまった。

    本筋にもどる。というより、気になった部分。

    P233 「だれにとっても、所有するハードウェアのなかで最もクールなのは自分の体なんだ。」

    せやな、と、首がもげるぐらい同意。

    P150 「ダイヤラーで#0#0を入力し、あらかじめ組み込まれている自己診断プログラムを走らせた」

    こういうハード系メンテナンス隠しコマンド知ってるとかっこいいよね。自己診断系は公開しておいてくれると嬉しいんだけどなぁ。おもわずiPhoneで試してみたけれども違った。

    P68 「昔の大工の格言みたいなもんだ。長さは2度測れ、切るのは一度だけ。そしてどうしてもまちがって切るときには、長めにまちがえろ。」

    日曜大工をするので、これまた首がもげるぐらい同意。長めに切って、現物にあわせながら少しづつ詰めたほうがきれいに収まる。ほんと切り過ぎちゃったものはどうしょうもない。人生といっしょ。

    P56 「Foxconnの向上では1日に豚を3,000頭も喰うとか。深圳では豚がiPhoneに変わるんだ!」

    なんていうかびっくりしすぎて、プギーってなった。一日で3千頭!!?まじで??
    Foxconnでは25万人以上の従業員が働いているらしい。三鷹市と武蔵野市をあわせたぐらいの人数。東京23区のひとつの区。鳥取の半分ぐらいの人数がひとつの工場に勤めているとかにわかに信じられない。
    日本の企業に例えると連結だと日立製作所が従業員30万人、東芝15万、富士通が15万、NECが10万。むぅ。

    豚の成体はだいたい100キロらしい。
    鳴き声以外喰えるっちゅう一匹の豚をまるっと、食ったとして、
    一人一食100gの豚バラを25万人に食われたら・・・
    あれ、25000Kg
    250頭分・・・だな。
    あれ?
    200gのポークステーキでも、500頭。
    一日で3000頭って言いすぎじゃね???
    実際は、100キロの豚から骨とか血液とか内蔵除くと、いいところの肉は25キロぐらいしかとれないとしたら、1000頭分ぐらいだけど、一日で消費される分を一日稼働で処理するわけではないと思うので、屠畜する量で言えば、3000頭ぐらいを一日で潰すのかも。

    いままで、こういう消費される命の量を考えたことがなかったので、この本の中で一番衝撃的だったのはこれでした。そういえば20年ぐらい前、上海に行ったとき、街中は近代的な日本の超高層ビル郡なのに裏道にはいると、鶏とかを生きたまま売ってる市が立ってて、びっくりしたのを少し思い出した。

    一千万人が住まう東京では品川にある芝浦屠場が都内で唯一の「と場」と肉食中央卸売市場なんだけれども、いったい一千万人の口を糊するために、東京では一体何頭の豚や牛を・・・。考えたこともなかったや。ちょっと調べてみても数量的なものはでてこなかった。まあ、歴史的にもくそセンシティブな部分だもんな。・・・。

    作中に、乱暴な解釈だけれども中国での工賃はお米の値段で勘案できるというような趣旨があったのだけれども、まあ共産主義において、工業製品の生産力(付加価値額)の限界費用というか、調達限界は農産畜産品の生産高からそろばんを弾くのもありなのかもしれない。

    あと、新鮮な価値観だったのがIP(intellectual property)知的財産についての言及。まあ、理路を再構築して最短距離を狙いがちなハッカーにはありがちで、多分自分もそちらよりの考え方に毒されているのかもしれないけれども、作者や中国での知的財産についての考え方や振る舞いをみていると、人類の未来に貢献するのはオープンテクノロジーの方なんじゃないかと、むしろ権利保護が技術発展の阻害要因になっているんじゃないかとすら感じもした。

    知的財産権とか著作権はジュネーブ万国著作権条約以降の、まあ、せいぜいここ70年ぐらいの比較的新しい権利発明で、近代での運用をみていると、発明者や著作者の発明権や財産権を守るための制度というよりは、そこに投資したひとの永続的経済的利潤を守るための運用がなされているし、大手でさえ特許回避みたいなバッドハックをしている様をみていると、それなりに害悪だなと。もちろんいい点もあるけどね。

    ただ、先行特許調査だけで日が暮れてしまう日本の研究者技術者と、まだ比較的フリーダムな中国での同じ立場の人たちが競争した場合、競争にすらならないなと。レギュレーション細かくなりすぎるのも、考えものというか、レギュレーションすら競争のために変えてくる強かさが日本にはないので、ちょっと無理そうだなと。

    党とかの方針変更で後からルールを変えてくる中国は、英米法に近いのかもしれないですな。ブラックリスト方式なのでイノベーションがおきやすい。大陸法系の日本はやっていいことを記載したホワイトリスト方式なので、新しいことをやるまえにお墨付きを得ないといけない。どちらにも長所短所はあるのだけれども、ことハードウエアハッキングについては、競争しようもないですね。製造者責任法とかを考えると事業リスクのほうが大きいもんね。日本じゃ。

    戦後間もなくの高度成長期のころは多分日本もそうだったんだろうけども、少しだけ羨ましいなと思ったりもしました。寂しいもんです。

    余談。
    作中に中国語使うときはルビ降っておいてほしいぜ。しんせんなのかしんしんなのか頭のなかで悩むし、山寨とか冒頭からでてくるのに読み方もわからないのでもやもや。山塞か。

    https://diamond.jp/articles/-/116420?page=5
    中国のニセ製品でよく言われる「山寨」(Shanzhai:シャンザイ)

    中国のニセ製品でよく言われる「山寨」(Shanzhai:シャンザイ)である。
    山寨は山岳要塞という意味で、中央の目の届かないところで勝手なことをする梁山泊のような事柄を指す。もともとは罵倒語だったのだが、最近の発明家の間では肯定的に使う人もいて、英語圏のハックやハッカーと通じるものがある。

    訳者が同じだからか、P151の説明と同じような説明だね。

    そんなわけで、とくに要点も結論もないひらたい読書感想でした。