「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」を読んでて、これだけ独立した項でまとめたくなった。
汎用技術(GPT)とは
広い範囲で多様な用途に使用され得る基幹的な技術は汎用技術(GPT:General Purpose Technology)と呼ばれているそうな。
情報通信白書でも話題にしたが、プロセスとプロダクトの切り分けがよーわからんなという図表。インターネットのあとでバイオテクノロジーとか、ナノテクノロジーが同じ階層で並んでいるのも気になるところ。
歴史的な観点からみてもちょいちょい残念。
植物の栽培をプロセスにいれるなら4~5世紀ごろの接ぎ木などによる品種改良とか、その後に続く18世紀の農業革命(ノーフォーク農法)とかをいれるべきだし、鉄で最後にするべきではなくてジュラルミンとかの合金発明とか、その後のカーボンなどの材料素材化学、なにより半導体をいれなかったらその後のコンピューターにつながらないじゃないか。という気になった。
大量生産が組織ではいるなら現在の半導体などでおこなわれている無人生産とかをプロセス改革にいれるべきだし、あれやこれや言いたくなる。
乗り物系プロダクトも飛行機が最後か。このあとは宇宙船とか、自動運転カーとか、セグウェイ的なパーソナルモビリティとか、ビッグドックみたいなロジスティクスロボットになるのかな?
農業や世界最古シリーズのwikipediaみておもう。
中世ヨーロッパにおいては、農業は「7つの機械技術 (seven mechanical arts)」の1つに数えられた(他は、機織り、鍛冶、戦争、航海、狩猟、医)。
そうだよね。戦争や機織りがないのもおかしい。
おかしいおかしいばかり言っていても生産性がないので、いろいろ追加したり世界最古にGTP化した時期などを調べつつ、材料・生産・組織・生命・流通・情報・破壊・動力と分類でくくり直してみた。
材料
- 元前8000- 7000年 鉱石の精錬
- 紀元前2800年 青銅
- 紀元前1200年 鉄
- 紀元前1世紀 ガラス焼成
- 19世紀 樹脂合成
- 20世紀 有機・窒素合成
- 21世紀 ナノテクノロジー
ナノテクは生産にいれるべきか悩んだけれどもナノテクによりもたらされるものは代表的には材料化学なので、材料に分類した。んー。もしかしたら生命工学かもしれない。
窒素合成の発明により、人工肥料などがつくれるようになり生産に大きく寄与するが、人工肥料の発明とするよりはハーバ・ボッシュ法などの素材としての発明としたほうがよいだろう。
生産
- 紀元前20000年 粘土焼成
- 紀元前19000年 陶器
- 紀元前9000- 8000年 植物の栽培
- 紀元前8500- 7500年 動物の家畜化
- 紀元前2000年 人工授粉
- 06世紀 接ぎ木
- 17世紀末 18世紀初頭 家畜の品種改良
- 18世紀 紡績機・飛び杼
- 19世紀初頭 工場
- 20世紀 ベルトコンベアー
- 20世紀 リーン生産/セル生産
- 21世紀 オンデマンド生産
- 21世紀 無人生産
これは生産性の向上に大きく寄与した発明などを記載した。
接ぎ木は紀元前前後には発明されていたようだが、柑橘類や葡萄などが産業として接ぎ木をされた時期とした。ガラスの焼成が材料で、粘土の素焼きは生産にしたのは微妙なところではあるが、セラミックよりもケイ素の加工技術の発明として捉えた。
生命
- 16世紀 帝王切開
- 18世紀末頃 予防接種
- 20世紀 抗生物質
- 20世紀 遺伝子組み換え
- 21世紀 人工多能性幹細胞
家畜化や植物の品種改良と分けるべきか悩んだが、人間の生き死にを生産性にくくると倫理的な問題がうまれそうなので、生命というジャンルにした。バイオテクノロジーという枠はあまりに大雑把すぎるの分けた。
組織
- 紀元前4000年 身分制度
- 紀元前3500年 都市
- 紀元前3000- 2000年 宗教
- 紀元前2500年 奴隷制度
- 紀元前2000年 法律
- 紀元前400年 裁判所
- 6世紀 企業
ちょっとどれも成立時期があやしい。
王政とか君主制とか民主主義とか社会主義、共産主義などをいれるべきかもしれないが迷ったすえ入れないことにした。正直、他のジャンルと比較して組織はイノベーションがあまりおきていないように思う。
治世という結果の差こそあれ、イノベーションという意味ではここ4000年ぐらいあまりイノベーティブじゃない。AIによる評価裁定などがおこなわれるようになったら、人民裁判以来の大きな変更かもしれないが、まだそういうのは起きていない。ちなみに世界最古の企業は建設会社の金剛組である。
動力
- 紀元前4000年 馬の家畜化
- 紀元前2世紀 水車
- 18世紀末 19世紀初頭 蒸気機関
- 19世紀終わり 内燃機関
- 19世紀末頃 電気
- 20世紀 原子力
- 20世紀 太陽光発電(アモルファス半導体)
20世紀の終わりごろにかけて大きなイノベーションがいくつもあった。
破壊
- 紀元前1200年 戦争
- 13世紀 火薬
- 14世紀 生物兵器
- 15世紀 銃
- 20世紀 化学兵器
- 21世紀 無人兵器
- 21世紀 レーザー兵器
どのようにくくるか悩んだ。組織論でもあるし、生産活動の真逆の略奪、簒奪活動なので破壊としておいた。
火薬は動力にしてもよかったかもしれない。火薬は歴史のエポックではあるが、化学的にみれば身近な酸化反応でしかない。
生物兵器はABC兵器にくくられる近代のものと隔絶があるかもしれないがペストの死体を投げ込むなどの戦略が14世紀には一般化していたのでそれを採用した。
流通
- 紀元前7000- 6000年 印章
- 紀元前4000- 3000年 車輪
- 紀元前4000- 3000年 貨幣
- 紀元前700頃 硬貨・鋳造貨幣
- 11世紀 紙幣
- 12-3世紀 債権
- 12世紀 証券取引所
- 15世紀 遠洋航海術
- 17世紀 株式市場
- 18世紀 商品先物市場
- 19世紀半ば 鉄道
- 19世紀半ば 鋼製汽船
- 19世紀半ば 金本位制
- 20世紀 自動車
- 20世紀 飛行機
- 20世紀 管理通貨制度
- 20世紀 ロケット
- 21世紀 自動制御運転
- 21世紀 仮想通貨
物流と商取引を分けるべきか悩んだが流通として纏めた。
また、元ネタには3本マストの帆船とあったが、羅針盤とかいろいろなものが相まってのイノベーションであるので遠洋航海術としてまとめた。
自動運転については最近は自動車のレベル4の自動運転などを連想しがちだが、モノレールとか、航空の自動管制とかを考えればすでにある程度は枯れた技術であるのでGTPとした。
情報
- 紀元前4000年 文字
- 紀元前3400- 3200年 筆記
- 紀元前1世紀 製紙
- 12世紀 複式簿記
- 16世紀 印刷
- 19世紀 磁気記録
- 20世紀 報道
- 20世紀 コンピュータ
- 20世紀 軌道衛星
- 20世紀 インターネット
情報という表現が的確か悩ましい。ここでは伝達手段とか記録手段を複合したものを情報とした。
報道についてであるが、読み売などのかわら版を入れると18世紀に遡るが、報道となると歴史は浅く20世紀の株式市場成立後にまで下るようだ。
不揮発性メモリとか揮発性メモリとか、いろいろ入れたくなったがこらえた。また別のエントリーに譲ることにします。
こんな感じ。どう?
MECE、抜けなく漏れなくかな?