人口が減って空き家だらけになる日本はいったいどこへゆく。
こんなニュースがあった。
空き家放置が合理的 新築優遇、人口減で裏目に
2014/7/18 2:00
www.nikkei.com/article/DGXNASDF1200Y_U4A710C1SHA000/築46年の大和荘。10年以上前から誰も住まず、はがれた屋根板が隣家の庭に落ちるなどの被害が出ていた。
区は結局、持ち主の同意を得ずに解体する強権発動に踏み切った。
東京都板橋区に住む持ち主の男性(94)
「取り壊して更地にすると土地の固定資産税が跳ね上がるから」
94歳の不動産管理監督者責任を問うたうえで行政執行をするなんて、なんて!なんて!!鬼なんだと思う。
じつに恐ろしい。
記事でも書かれているように空き家を更地にするだけで固定資産税は6倍になる。でも、問題はそれだけじゃぁない。
今年増税されたのは消費税だけではなく、相続税も大幅に上がっている。
いままで相続税の申告が必要な人は100人に一人ぐらいでさらに支払いが必要な人はそのなかからさらに1/10ぐらいだったのが、東京都だと一気にこれが 「2人に1人」 が申告対象者になるんじゃねぇかと言われてるぐらいの改正が今年あった。
知ってた??知らなかったなら今すぐ知れ。死ぬぞ。繰り返すこれは訓練ではない。繰り返す!これは訓練ではない!!
で、もともと相続税を考慮しなければいけなかった人たちの母数が少ないし、あっても絶対超プライベート情報なので世間で共有されないないだろうし、開業してる税理士でもいままでは相続を納付までやるのは開業人生のなかでも数件ぐらいなツチノコみたいな幻獣分野だったのが、今年から二人に一人は幻獣になっちゃうファンタジー世界に突入したわけですね。
さあ、ここで問題になるのが不動産なわけです。
例えば、使っていない、空き家があったとして、これを更地にして駐車場にでもして貸し出せば、儲かるじゃないなどというのは日本ではあまりに浅慮なんですわ。
家がなくなることで、維持費に相当する固定資産税における宅地の1/6控除が外れるだけでなく、貸し駐車場のような収益性物件にしてしまうことで事業用用地になってしまうし、上物にも価値がでてしまう。
さらに相続税。
身内が亡くなって悲しんでいるところに、10ヶ月以内に金を用意して収めなさいという残酷制度なんだが、ここで問題になるのが不動産。簡単においそれと動かせないから「不動」産なのに、それじゃ10ヶ月以内に「現金で」支払ってね!と。
たとえば不動産が1億円の価値だと、えっと1億以上は税率は40%ね!じゃ税金4,000万のお支払いよろぴく!という感じ。
土地はたしかに相場価格で1億かもしれないけど、不動産を現金化なんてそう簡単にはできないし、そもそも売るつもりないし、分納とかもできないし、ぎゃーなんじゃこれーー!!って相続人まで死んでしまうことになる。
延滞税は14.6%、消費者金融かっちゅう感じだし、税が原因じゃ自己破産も認められないし、金貸しはドアをドンドン叩くだけだけど国税はバールでドア壊して入ってくるって先輩が言ってた。おっかねぇ。おっかねぇ。がくぶる
でも、まあ実際はそんな風に乱暴な計算をされるわけではなくって、お上!おねげぇしますだ、この土地を召しあげられると住むところがなくなってしまう(宅地控除)だで、農作物も(緑地)、旦那が(配偶者特別控除)だとか、そんな風に、お情けがあるわけです。ちょうど生かさず殺さずの範囲にしないと一揆が起きるからね。
去年までは、地所の路線価が1億でも基本的な控除分だけで、基礎控除で5000万+相続人×1000万があったので、なんだかんだのそこそこ現実的な税額にはなってたんだよね。去年までは。
まあ増税後は、4割の控除がなくなって、基礎控除で3,000万+相続人×600万になったので、都内みたいな土地の高いところに戸建てとか持ってると3,600万は確実に超えるだろうから、半分の人ぐらいは引っかかるよねって話しですね。
すげぇ事象が複雑で説明がめんどくさいんだけど、このお情けのセットの宅地控除がこの空き家問題のネックなわけですよ。例えば小規模宅地という宅地控除はなんと80%。つまり路線価格1億円でも課税額2,000万円で計算できる。なのでいままでは実質、相続税を払う必要がある人なんてのは数億以上の資産がある人たちに限られていた。
でも、この控除類にも変更が入ってるんですね。
専門家に聞いたんだけど、なんとも言えないんだけど(課税はほとんど後出しルールだからねぇ)、この宅地控除も亡くなった人と同居の親族にしか控除を認めないとか、二世帯住宅は同居と認められないという人もいたり、例えば住民票を移す必要があるような養護特老とかにはいっちゃうと、その人が住んでいた住宅は宅地控除がうけられなくなちゃうんじゃないかとか、なんじゃのかんじゃの。まあいろいろと影響がでかいところに網をかけようとするのが改正なので、注意深く行動する必要がありますね。
で、はい、ようやく本題。
つまりこの老い先、どう考えても短い94歳の空き家を壊すことで損ずる経済的損失は固定資産税6倍どころではなく跳ね上がるわけですよ。もしかしたら10年前から住んでいないというのも、高齢になったので、親族のところに身を寄せているとか、ホームに入っているとかそういう理由なのかもしれないし、親族も少なくとも名義変更が完了するまで修繕も改修もできないところで、はい、空き家だから壊しますよーっと強制執行して更地にしてしまった。なんて酷なことをするのだろうかと思う。94歳じゃ行政訴訟を起こしたくても年齢的に無理だろう。なんかつくづく鬼だなと思う。
そんなわけで、件のニュースの老人のお家は更地にされてしまったが、他にも日本全国には空き家や空き店舗はいっぱいある。更地にするより放置したほうが経済的合理性があるのだからしょうがない。
しかしながら、震災も多いようなところで古い木造家屋が密集しているのは、防災上よろしくない。
震災時に道路を塞ぎ、消火活動は困難が予想され、火の手は容易に拡がる。
東京都防災マップ(建物倒壊/火災危険)
www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/parts/kikendo_map.jpg
個人も社会も不合理だと思ってるのに、不合理な選択をすることが経済的には合理的だというのは、制度疲労が放置され法律が廃屋になっているからなんだけど、ようやくこの不合理な状態を正そうと、2013秋ごろから「空き家対策推進特別措置法」の準備が進みようやく取り組みがされるようになったようだよ。
うちも祖父の持ってた空き店舗があるし祖母が住んでいる古い木造もあるので、考えなきゃいけなくて、6/28に地元三鷹で開催された「空き家を活用した地域活性化の可能性」という国際基督教大学等の学生企画のトークサロンに行ってきたんだ。
・・・。ほんとはこれの事を話しながら、空き家の現在価値と将来価値とかの話を書きたかったんだけど、どうしても前段の知識がないと、そもそもお話しにならないので、書き殴ってたら長くなっちゃって、空き家ネタまで辿りつけなかった・・・・・・、また今度書こう。興味ある?知りたいことあればコメントでよろしくお願いしまっす。
**参考
空き家、市町村が立ち入り調査 自民が削減へ対策法案 2014/4/9 22:21
www.nikkei.com/article/DGXNASFS0902F_Z00C14A4EE8000/
空き家自主撤去で固定資産税減免 自民議連が対策法案
www.asahi.com/politics/update/1023/TKY201310220429.html
自民議連/空き家対策推進へ14年秋にも基本指針/市町村権限で除却・修繕命令 [2014年4月10日1面]
www.decn.co.jp/?p=10203
老朽化で倒壊する危険があったり、景観や衛生を損なったりしている空き家を「特定空き家」に指定。市町村が特定空き家の家主に除却や修繕、立ち木の伐採などを指導・助言したり、勧告・命令したりできるようにする。命令に従わない家主には50万円以下の過料を科すほか、行政代執行も可能にする。
(略)
特定空き家を含むすべての空き家を対象に、家主の把握などを目的にした情報収集方法も明記。市町村は家主の許可がなくても立ち入り検査ができるようにし、特に守秘義務が厳しい固定資産税情報の内部利用も認める。
空家等対策の推進に関する特別措置法案が国会提出へ。
www.newstyle-3405.com/category5/entry182.html
固定資産税(土地・家屋)・都市計画税
www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html#k_5
相続税の計算方法
www.tokyozeirishikai.or.jp/general/zei/souzoku/
相続税改正、東京都では2人に1人が申告対象者に–東京国税局管内でも4割超に
news.mynavi.jp/news/2014/05/16/261/
地震に関する地域危険度測定調査(第7回)(平成25年9月公表)
www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htm
やぼろじ 饗庭伸 / 首都大学東京饗庭伸研究室
www.yabology.com/
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