人工知能について年暮ひがなうつつ宿題を。
東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」 単行本 – 2014/10/15
松尾 豊 (著), 塩野 誠 (著)
松尾さんの動画やらなにやらをよく見たので本も読んでおこうとおもって買ったもの。
間違えてカートに2冊ぶっこんでたのに気が付かずに届いたら2冊入ってて愕然とした。
レイアウトがあれでちと読みにくかったのと、まさかの対談方式の本だった。
本の内容については特に書くことはないのだけど、章の間に宿題がでててそれが面白かったので今年のうちに宿題をしておく。
ISSUE 1
1.人間は不要になるか?
予測精度が異様に高い人工知能が、人間の役割にとって代わり、自己複製をはじめたとき、人間の存在意義はどこにあるのか?
これに答えるにはヒトは使役動物であろうか?という問についても考えなければいけない。
蒸気機関普及後、使役動物としての牛や馬はその数を大きく減らした。江戸、明治初期の馬数は住宅戸数とほぼ同程度であったが現在は住宅件数と比べるべくもない。
先進国とされる国々において、身分制度や、奴隷制こそ終わりをつげたものの、ヒトの多くは経済動物としてその任を得ている。社会への奉仕。勤労の義務こそが社会構成員としての人間の存在意義であることは日本国憲法にも明記されている。「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」これは、社会を回すために必要な任である。
封建制が終わった現代ではその任は特定誰かのためになされるものではないが、全体への奉仕としてなされる。社会をよくまわすための使役動物としてのヒトだ。年齢割合が歪み、子供や老齢者はどうするという構造問題を解決できていないが、今はそういう運用がなされている。自ら然して利他し、社会に対して義務を果たすのが、己の利益にもつながろうという社会で、そのように機能している。
で、ここで、ひとつ動画をぽいっと。
オランダ LELY(レリー)社のアストロノートA4
www.cornesag.com/product/milking/milking_robot/astronaut_a4/feature.html
乳牛さん達は、自分たちの意思で装置の前に列をつくり搾乳を待つ。餌もくれるし、乳も絞ってくれるから。
一定時間を経過していない牛は素通りさせられる。システムで管理された高度な装置である。牛は人間にとって家畜としての価値がある。肥育牛も、乳牛も。
もし、ヒトの提供できる価値が人工知能に代替されたあと、ヒトが社会に提供することができる価値とはなんであろうか。まさかヒトが肉や乳を人工知能に捧げることを望まれるわけではあるまい。では、馬のように荷を運ぶことだろうか?
ヒトがヒトに必要とされるのは面倒を見てもらうため。互いに助け合うため。
おそらくは、この原初的な欲求が解決されれば、現在のような数は必要なくなるので、使役動物としての馬のような推移をたどることだろう。ヒトが多くの子供を必要としたのは乳幼児死亡率が極端に高かったからであり、老後の面倒を見てもらうためだった。ヒトはヒトによって必要とされているが、ヒトがヒト以外に必要とされる数はとても少なくなるものと考えられる。ま、不要の用。
2.犯罪予備軍を事前に逮捕できるか?
ある人間が、将来的に犯罪を起こす可能性が高いかどうかが明らかになったとき、事前に逮捕することは許されるか?
マイノリティ・リポートか、アニメのPSYCHO-PASS サイコパスかって話。(まだ、どちらも見てない・・・)
オランダだったっけかな?ネットワークで繋がった防犯カメラを地域で配備して歩行の目的地の不確定さによって、不審者検出ができるようになったそうな。トラック強盗が多い地域にそれを配備した結果、パトカーが急行できその地域の犯罪は激減した。で、かわりにその地域の周辺の犯罪発生率が上昇したとかいうオチまで付いたお話。
これはAIというよりは、遺伝子の問題でもあるように思う。反社会性因子と遺伝子の相関が統計的に79%とか出た場合、例えばそれをどうするか?犯罪をおかしてなくても事前に逮捕するのか??クレジットカード破産者が持つ遺伝子に強い相関があった場合貸付限度額をどうするのか?交通事故違反者に多い遺伝子に強い相関があった場合、交通事故保険料がおなじでいいのか?
その相関を偽相関とみるか、ビックデータのパラドクスだと押しやるかは難しい問題である。
個人的には、犯罪を犯すより前に、心身の拘束などはするべきではないと思うし、罰は罪とセットであるべきだと思う。だけれども、追跡タグをつけたりするのは罰ではないと思うので、そういうのはいいんじゃないかな。
そのヒトだけ付けるのは不公平であるので、みんなでつけるっていうのもありだとは思う。
あと、犯罪についてだけれど、もし、罪を犯しやすい気質があったとしても、その罪という概念が時間や環境で変化することはある。戦争などの時に人を殺したり、粗暴なことに気後れしちゃう気質の人ばかりでは組織を成さない。
完全に悪と断定できる犯罪でさえも、社会を強くしていくためには一定確率で必要かもしれない。
近代国家以前は、直系卑属を根絶やしにするために一族郎党打ち首獄門なんていうのもあったようだけど、流民がでていない状態ならそのような事や、名誉殺人のようなことをしてはいけないとおもうな。
3.人工知能の小説家は誕生するか?
現在、SF小説の要素の組み合わせ、短編小説を書く実験がすすんでいる。人間の独壇場であった「想像力」はどこに活路を見出していくだろう?
これはするよ。星新一プロジェクトみたいな実際の取り組みもそうだけど、作成しうると思うな。
そう遠くない時間に、人間が書いたものか、プログラムが書いたものかを人間が見分けることはできなくなるとおもう(チューリングテスト的な意味でも)。
ここらへん少し気になっていたので物語論、ナラトロジーとかの本を買ってみたんだけど、人間が類型化したナラトロジーの分野がまだまだ未発達なのね。面白くなかった。
逆にAIからの章解析によって、プロット解析ができるようになれば、もっと面白い作品がいっぱいつくれるようになると思うんだよね。もし作れないというのなら、創る方向に力をいれて証明する側にまわってもいいとおもうぐらいちょっと魅力的な分野だとおもうな。
ISSUE 2
1.投資家は不要になるか?
身体的な制限がないコンピューターが、株式市場の「穴」を見つけ、そこを突き続けはじめたとき、人間の投資家は太刀打ちできるか?
これはできないよ。もうできない。
市場というものが、ただの流動性確保の場になって久しいけれど、カブロボとかが登場したときは長期に企業価値算定をきちんとしないとダメだよ!っていう義憤に燃えて立ち向かったのももう十年も前のことだ。10年前だったら、あえて穴をムシした正統派も太刀打ちできる要素があった。いまはもうシステムトレードでもそんな余地はない。穴をつくアルゴリズムを一杯食わせるぐらいはできるけれども、それはもうなにしているのかわからないよね。
システムトレーダーをつくる人間をつかまえて、太刀打ちできていると表現するならばそれは太刀打ちできる。
あとは、すべて焼き払い単独で相場を動かせるほどの資本力があればできる。
2.人工知能を信じられるか?
人工知能によるレコメンデーションは、直感的な因果関係を重視する人間にとって腑に落ちないものになることが予想される。それでもなお、勇気をもって人工知能の判断に従えるか?
人間よりい信用できるっていう人もいるだろうし、そのAIの啓示を伝えてあげる占い師おばば的なエバンジェリスト的な人間を一枚かませばいいだけじゃないかな。
データもわかるし、論理的にも納得できるか、情動的にお前に言われるから賛同できないってことは、人間社会でもよくある話しだし。伝え方、伝える経路なんていくらでも変えられると思う。
3.「国」はなくなるか?
物理的な制約がなくなり、個々の行動履歴がすべて国境に関係なく記録され活用され、どこからでもサービスを受けられるとき、国という概念自体もなくなるか?
むしろ増えるんじゃないかな。国というシステムを大きく重厚長大にしたのは、軍事的な要素と、運用のための度量衡を揃える効率化のため。日本のような島国であっても、地域言葉は異なっているし、幕藩体制のころは通貨発行権や、租税の体型も地域ごとに異なっていた。兌換や流通、教育、軍事、言葉などの効率性という点をAIなどが解決してくれれば、国という運用単位はもしかしたら市区町村単位で連邦的に運用されるようになるかもしれない。
どんなに社会が効率化しても、ご近所レベルの地域社会はなくならない前提だが。
でも、経済でみてもモジュール化がすすんでいるので、小さくなる傾向はあるようにおもうな。
ISSUE 3
1.意識はコピーできるか?
脳が工学的に再現可能になり、自己の保存が実現すると、そこに本当にヒトの「意識」は存在するか?
20年ホルマリン漬けにしてた脳みそに、ニコチンなどをぶっこんだら脳波が観測できたっちゅうお話しがあった。
いつ脳は死ぬのか?【When Is The Brain Dead-ホルマリン漬けの脳が20年の時を経てなお活性を示す】
togetter.com/li/1062912
脳みその構造を再現でき(これは、たぶんできない)るのであれば、意識はその脳回路を伝わる電気信号とそこから惹起された化学物質により構成されるものであるので、意識のシミュレーションはできるようになる。
2.コンピュータ脳における「記憶」とは?
脳が完全にコピーされ移植されたとき、特徴量を作る方法自体が異なってくる。そのとき、世界はどのように把握され、記憶はどのように変化するだろうか?
人間は脳みそのみによって考えるのみにあらず、肌による皮膚感覚や、腸は第二の脳という程度には、体内、体外の環境に思考を強く影響される。これら付属の情報がなくなり、その他情報のインプットの経路が異なるようになった場合、記憶の重要度のランクは現生体のそれとはまったく異なる。
景観の美しさや、静寂さなどよりも、周りの埃の量や、静電気、地場の変化が気になるようになり、電圧の変化に美しさを見出すようになるかもしれない。
結論に至るまでに神経の興奮を感情と呼ぶならば、電圧の異常などで各所に発生するエラーが最終的に検算されて、正確な答えにいたるまでの、エラーハンドリングを感情と呼べばよい。そんで、そのログを記憶とでも読んだらどうだろう。
3.人間の仕事はなくなるか?
ほとんどの仕事が機械に代替されたとき、人間は何をして日々を過ごしていけばよいのだろうか?
ん?
紅茶でも飲んでひがな一日すごしてればいいんじゃない?
ただ、修行僧のような生活がすべての人に耐えられるとも思えないけど。
思索にふけって楽しめるのはスキゾイド人口の10%ぐらいか。
ISSUE 4
1.犯罪の「見逃し」が必要になるか?
顔認識技術が発達し、町中に監視カメラが設置されると、どんな軽微な犯罪も白日の下にさらされる。そのとき、すべての犯罪を罰する必要はあるか?
途上国とかにいくと、くじ引きみたいに交通違反取り締まってるよね。交通違反がたまりすぎると表の道が走れなくなるんだ。罪には罰だけれども、罰も軽微すぎると意味がないからポイント・マイレージ性にでもしたらいいんだよ。
カルマポイント貯まりすぎちゃったから今月ボランティア10時間だー。みたいにね。
見逃す必要はないとおもうよ。貯めておけばいい。
2.自動運転は本当にできるか?
機械に運転を任せられるようになると、社会全体がより最適化される。一方、事故が起きた場合に誰が責任をとればよいのだろう?
技術的にはできるとおもうけど、人間社会があと1~2世代は許さなそう。人間側の価値観変化の問題なので、それをマテばいいいんじゃないかな。変化しないなら導入されないだけ。
3.命の価値は、誰が決断するのか?
すべての社会的判断の結果がスコアリング可能になったとき、「誰が不利益を被るか」を決める判断が必要になるが、その重責を負うのは誰だろう?
最初の方の論に戻るけれども、不用の用というのがあって、なにかの価値というのはそのスケールでの価値であって、スケールを変えれば並び順は変わる。オーダーバイの仕方を1軸しかもたなかったり、集計の粒度を変更できなかったり、ascやdescもできないようなスコアリングは無価値になるべきだ。
責任を追うのは代議された人か、またはその代表でいいんじゃね。
ISSUE 5
### 1.学校は不要になるか?
個人のレベルと環境に合わせたウェブ動画での学習が可能になったとき、学校や学年というものは不要になるか?
むしろ必要になるとおもう。ただ、既存の座学という用途以外の意味で。そのエリアのWAN基地とか集会所とか、運動場としての価値とかとしてね。
2.情報の飢餓体験は必要か?
いつでもどんな情報でも手に入る状況になると、思考の習熟が望めない。子どもの教育のために、あえて情報を制限する必要はあるか?
イスラム教のラマダーン、断食には学ぶべきことは多くある。不便を学ぶ機会は重要だとおもうし、ストレステストや、BCP上も、正常系から外れたテストと備えはしておくべきだとおもう。実際体験してみないと、気がつけないことは多いし、気がついたことに対して、備えができるのは正常下でのみ。
日本は災害大国なので、情報からの断絶時にどうしたらよいかについても体験しておくことは有用であると思う。ま、デジタルデトックスたまにはしないとね。
3.教育で身につけるべき能力とは?
何かに気づく、法則を見つけるという役割はコンピュータに任せる場合、人間が教育で身につけるべき能力とは何か?
ん~。
- 怪我しない、死なないようにすること(フィジカル、クリニカル)
- 苦労しない、道具をつかえるようにすること(テクニカル、プラクティカル)
- 楽しめる、悲しみをわかちあえるようにすること(エモーショナル)
ここら、あたりじゃねかな。
ではみなさまよいお年を!!
参考
『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』松尾豊東京大学准教授セッション
【5金スペシャルPART1】松尾豊氏:人工知能が閻魔大王になる日
【5金スペシャルPART2】松尾豊氏:人工知能が閻魔大王になる日
文科省の「AI研究」新拠点 トップに東大41歳教授
(1/2ページ)2016/4/9 7:54 杉山将・東京大学教授
「AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)センター」
www.nikkei.com/article/DGXMZO99433730Y6A400C1000000/
犯罪に走る人には、”悪の遺伝子”がある? 犯罪者と非犯罪者を分ける決定的要素
toyokeizai.net/articles/-/63200
When Is the Brain Dead? Living-Like Electrophysiological Responses and Photon Emissions from Applications of Neurotransmitters in Fixed Post-Mortem Human Brains
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5131983/