「公共情報通網無き都市は地上に如何なる文化施設を持つもそれはスラムである」
昭和34年の三鷹市の市長は医師でもあり「公共下水道無き都市は地上に如何なる文化施設を持つもそれはスラムである」と発言し公共下水道の敷設に邁進したという。のちの昭和48年に全国で最初に上下水道普及100%を達成したが、これを現代に捉えると、情報の上り下りは上下水道に例えられる程度に社会に必要なインフラであるが、公共wifiもない都市はいずれスラムと扱われてもやむないものである。
公衆衛生とならぶ衛生環境として、情報通信網は文化的な生活のためにはやむないものだ。
情報通信白書が公開された。
www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/h30.html
しかもなんかクリエイティブ・コモンズらしい。ひさしぶりに読んでみる。昔はhtmlでも公開されていたが今はPDFオンリーなので一行51文字の横書きは横幅が短い画面になれてしまった自分には辛い。なんかどこを読んでいるかわからなくなる。ディスクレシアになった気分。
興味の向いたところの拾い読み。
第1部 人口減少時代のICTによる 持続的成長 人口減少時代のICTによる持続的成長
持続的成長を前提としているが人口動態と現在の日本の投資(リソースの分配)状況を鑑みるに、日本に持続的成長はない。あらゆるものが成長を前提として動いているため、このような白書でさえもどうすれば成長を維持できるのかという論に立っているが、古木の形を変えたくないと新芽を摘んでるのに、成長もなにもあるまいて。
図中に新市場創出、グローバル需要取り込みとあるが、ここで重要なのが日本が将来にわたり世界に対して比較優位を持てるかということである。日本の比較優位は人的資源の分布の狭さ、つまるところ、誰がやっても大きくハズレないし、期待値から外れないということであるが、これが機能するのも、人件費がやすかったからである。
組織。いままでは、ものづくり社会であり、それにあたり人的資源にアクセス容易というロケーションが競争資源であった。そのため人を大規模に運用しやすいように資本や特許などの資産を多く抱えている資本増強型の参入がおこなえる大組織が優位であった。大組織であれば、ちょっとした無駄を改善するだけで大きな生産性向上みこまれる。
しかし、これからくる生産性向上は可変的な無人化であろう。
労働資源へのアクセス優位性はむしろ競争負担となりえる。
生産資源、知的資源、もしくは、消費市場へのアクセス容易こそが競争優位になるだろう。日本はご存知の通り生産資源はほとんどない。
知的資源を抱えている大企業は、労働資源を大きく抱えてしまっているので、それらと切り離すためにホールディングス化をすすめることだろう。アセットライトとかモジュール化がすすみ、おそらくスモールセル化してくることだとおもう。
これらがもたらす日本の社会構造へのインパクトは大きい。
労働付加価値生産額などをみれば、日本は金融へそのほとんどを頼っていて、金融の与信わりつけなどは大企業ののれんや勤続年数に頼っていて住宅ローンなどを割り出している。市場、組織、人のこのループは残念ながらイテレーションしない。回りゃしないループである。
コンテンツ・アプリケーション
ここ数年で最も変わったのはコンテンツのサブスクリプションモデルだろう。Spotifyあたりから本格化して、AmazonPrimeVideoやnetflix、Huluのような動画配信のコンテンツクオリティは非常に高い。連続ドラマで一話あたり5億とか10億円とかふんだんに使う世界に、竹槍でかなうはずもあるめぇ。
定額以外の売上が2016と2017で27%も落ち込んでいるのはなかなかな数字だ。予測値では、60億程度を下限値として踏みとどまるようになっているが、サブスクリプションは既存のコンテンツ毎販売のマーケットそのものをクランチさせる可能性は多いにあるのではないか。
自分の場合はAmazonのPrimeVideoやyoutubeを仕事中BGMがわりに流し見ている。見放題でもいくら見ても見尽くせないほどあるのに、別途単体で購入してまで見るのは、よほど前評判とかで期待でもしていないと買わないだろう。視聴者時間の食い合いでバッティングしてしまっている。音楽や動画の単体販売モデル、とくにCDなどのメディア販売モデルは代替の脅威の前にあえなく散りぬるを。
LPWA
LPWA(Low Power Wide Area)最近は自治体がらみで聞くようになった単語。三鷹市で確か一基基地を実証実験で設置したところだとか、そんなレベルだと思う。勘違いしていなければ、一つの基地局で数百メートルのエリアをメッシュできるらしい。低域なので遮蔽物があるようなところには向かないだろうけれども、ネットに全くつながらないというものから開放されるかもしれない。ちょっと注目。
ディバイス
スマフォは完全に平衡飽和かな。
タブレットは低下しているようにみえるが、これはSurfaceのようなノートパソコンとタブレットの垣根がなくなってきてことによるもののように思う。
ウエアラブル。価格帯の違う商品を積んでいるだけで、メガヒットとブームアウトによるノイズがおおくて、市場規模の推移という意味ではあまり役にはたたなそうなグラフですな。
物流、ヘルスケア・介護、外食、店舗といった製造業以外のサービスロボット。この予測値は甘さを感じる。代替が労務費なので市場規模が数倍に増えるブレイクがあってもおかしくない。1次関数的な近似曲線。
世界のドローン市場規模の推移及び予測。こちらも予測値がゆるいというよりは、過去3年が倍々で増えてるからこれからも倍々だろうみたいな感じ。2次関数的な近似曲線。
AIスピーカーは2017年の今までなかった市場が誕生したまさにその瞬間。ディクテーションAPIは3年ぐらい前からあり、いろいろな試行錯誤があったがAIスピーカーという形に落ち着いたのも面白い点。ディスプレイモニター型になるものだとおもってた。この市場は現在は音声認識だけだが、カメラによる顔認証とか、移動とかを捉えれば業務用や防犯用途にもいくのでAIディバイスという点で新しく大きなブルーオーシャンがありそうだ。
世界のAR/VR市場規模・VRヘッドセット出荷台数の推移及び予測
Oculus Goという単語が白書中にないが、以前のOculusと違って単体スタンドアロンでわずか23800円という価格はまさに、破壊的。Oculus Riftが切り開いて、PlayStation VRが裾野を広げ、Goが普及機になりそう。あと、アダルト動画をVRヘッドマウントで見るといよいよやばいレベルになってきたらしい。未体験だ。Oculus Go買おうかな。
日米のICT投資額の推移
日米のICT投資額推移(実質2010年価格)
最近じゃ日本と米国を比較することすらおこがましいレベルに日本は集落してきてしまっている。
2001が日米双方のソフトウエアとハードウエアの比率が逆転した年。
現在は2:1程度。
日米のソフトウェア比率(受託開発、パッケージ)
本文中にも従来のシステムへの過剰適合であったり、ICT導入以前の組織や業務プロセスに合わせるために行われるため、受託開発が多いとある。
明瞭な戦略にあうシンプルなシステムをたてて、オペレーションをあわせていくのが本来の経営戦略であるが、日本の場合は局所ごとの戦局にあわせてオペレーションがたてられるために、システムをそれにあわせる傾向がある。控えめに言ってくそだ。
ICTの経済成長への貢献
成長会計分析
このような大項目がつくられるようになったのは好ましい。そもそも売上、ちゅうか経済成長に税とかのれんなどを含んでしまっている国内会計だと、IFRSベースの会計を適用している国とそもそも比較が成立しないのではないか。TFP(全要素生産性)とかについては、不勉強につきよくわかんない。ちょっと本質的ではなさそうなものの気がする。
(生産の伸び率) から(資本分配率)×(稼動資本ストックの伸び率) と(労働分配率)×(総労働投入の伸び率)を引いたもののようだけれども、正直これだと継続的な参考指標にできるのかわかんないな。
www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh04-01/sh04-01-fuchu.html
日米の ICT とイノベーションの現状
この章はなんかまるごとレベルが少し低いね。(出典)総務省「我が国のICTの現状に関する調査研究」(平成30年)
これがもとネタかな?検索しても出てこないな。新しすぎるのかな?
日米のICT人材の比較
相変わらずの日本のユーザー企業のICT人材の少なさ
いくつかの法改正なども伴い、国内での受託開発でのリスクがひたすらに上がり続けているので、いまは準委任とかそういうのが増えてきたけれども、もしかしたら、ユーザー企業の人員を受け入れてシステムを開発するのを指導しつつ育てたら返すみたいな、反請負派遣みたいのもでてくるかもね。
じゃないと日本みたいに人材流動性が低い社会環境だとユーザー企業は永遠にICTスキル獲得しようもない。
政府機能の電子化が進むエストニア
先月会議で同席した内閣府だか内閣官房だかのCIOのような方(ふわっとぼかした書き方)が、エストニアに視察にいかれていたお話しをされていたのでデジタルアジェンダ今度読んでみよう、少し注目。
デジタル・アジェンダ 2020
クリックしてdigital_agenda_2020_estonia_engf.pdfにアクセス
日・エストニア間のICT・サイバー分野での協力や、両国の電子政府に関する取組みについて意見交換が行われた。エストニア相変わらず人気。ちょっと謎だよね。
2章 ICTによる新たなエコノミーの形成
汎用技術(GPT)とは
GPT:General Purpose Technology
あとで読もう
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
AI・IoTサービスマッピング
様々なX-Techの事例
こんなんも言ったもんがちだよね。海外の図表でもうちょっと綺麗にまとまってるのがあったからそっちのほうがいいかも。いかにもただのパワポアートっぽい。
電子マネー決済額の推移
電子マネー決済額とCDオンライン提携取引支払額の推移
シェアリングエコノミーに対する消費者の意識
シェアリングサービスの認知度(日本)
シェアリングサービスの利用経験(国際比較)(シェアリングサービスを知っている人のみ)
日本のシェアリングエコノミーの認知度も体験度もひくっ!
高齢者の駐車場のシェアリングとかの認知が予想より高くてアキッパとかじゃないだろうし、なんでだろうねと話してたんだけれどももしかしたらタイムズのカーシェアとかのおかげかな?
第3章 ICTによる生産性向上と組織改革
OECD加盟国の時間当たり労働生産性比較
情報通信産業と一般産業 労働生産性指数の推移
建設部門で少し改善がみられる。少し不思議。
ここまでくると未導入企業でも生き残れる不思議さはあるよね。
未だにBYODがだめそう。たぶんこのままだめなまま進むんだろうな。
ICTを活かすための環境整備の状況
ほんと、ただ単に生存競争がないんだとおもう。
ICTによる生産性向上の効果
製品・サービスのコモディティ化 4倍!
第3節 組織を「つなぐ」ことで生産性向上をもたらすICT
APIの認知・公開状況
クラウドサービスに対する課題の認識状況
課題もわからない日本の状況。それでも存続できるのだからぬるくてよいじゃない。
第4章 ICTによる インクルージョン促進
「インクルージョン(包摂)」
2~3年ぐらいまえエンゲージメントとかの単語が流行ったときに同じく包摂なんて単語も聞くようになった。こういうのの仕掛け人は海外かなんかのシンクタンクかなんかなんだろうかね?
インターネット接続端末
加齢によるデジタルデバイドは解消不能なのかもしれない。介護の領域だ。
オフラインやオンラインで知り合う人の信頼度(国際比較)
日本人の他人の信用しなさ加減といったらすごいな。
オフラインのコミュニティにおけるソーシャルメディアの活用(国際比較)
第5節 ICTの進化によるこれからのしごと
人工知能(AI)導入によって自動化してほしいと思う業務(有職者)
学び直しや職業訓練の必要性(日本、年代別比較)
学び直しや職業訓練の必要性(国際比較)
日本の「わからない」という将来のみえてなさ。5~60代の学び直しは必要もないという諦観。老害になるか知恵袋になるか。引退後のクオリティ・オブ・ライフに大きく影響するとおもう。
老齢人口の再義務教育化で日本のだいたいの問題は解決するような気もするんだ。
第2部 基本データと政策動向
第5章 ICT分野の基本データ
放送市場の動向
民間地上テレビジョン放送の視聴可能なチャンネル数(2017年度末)
我が国の放送コンテンツの海外輸出額
我が国の放送コンテンツ海外輸出額のジャンル別割合うなぎのぼり。でもほとんどアニメのみ。
トラヒックの状況
我が国のインターネット上を流通するトラヒックの推移
図表5-2-5-1
主なメディアの平均利用時間*29と行為者率
わかものの深刻な(?)テレビ新聞離れ
図表5-2-5-4 主なコミュニケーション手段の利用時間と行為者率
メール?
第3節 電波の利用動向 第4節 放送政策の展開
ここはいいかな。
第5節 サイバーセキュリティ対策の推進
情報連携投資等の促進に係る税制(コネクテッド・インダストリーズ税制)の創設
コネクテッド・インダストリーズ税制
最低投資金額が5000万という数字をみても分かる通り。税というより大規模優良企業の課税控除の抜け道かな。セキュリティは一番低い水準に合う、桶の水は一番低い立板から漏れるにあるように、ボトムアップこそが重要なんだけれども、これはお題目にかこつけた優遇策に見える。
第6節 ICT利活用の推進
4 プログラミング教育の推進
*10 若年層に対するプログラミング教育の普及推進ページ:
www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jakunensou.html
*11 地域におけるIoT の学び推進事業ページ:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/IoT_learning.html
*12 小学校を中心としたプログラミング教育ポータルPowered by 未来の学びコンソーシアム:https://miraino-manabi.jp/
第7節 ICT研究開発の推進,第8節 ICT国際戦略の推進,第9節 ICTによる行政・防災の推進,第10節 郵政行政の展開
NICTや異能vation、インフラシステム輸出戦略
・・・だめそう。
感想
読もう読もうとおもって、380ページぐらいの白書なんだけれども、読みはじめてから一月ぐらいかかった気がする。昔は白書系は1日でおもしろそうなところピックアップできたのだけれども、勘所も頭も鈍くなってるのかもしれない。
白書系そういえば最近読んでなかったので、今回のあとで読む系もふまえてしばらく白書を読み下そうかとおもう。