正常性バイアスと朝鮮半島有事


ストラテジーゲームのCivilization 5ではガンジーのAIはなんのためらいもなく核兵器を撃ち込んでくる。攻撃性が最低の1で超平和主義者のガンジーだが文明進歩で全体の攻撃性が-2されることで、一周回って最凶暴化するバグらしい。凶暴化したガンジーは交渉や同盟、抑止力などは効かず、戦力差や戦況を考えることなく噛み付いてくる狂犬と化す。核は使用するとペナルティが山盛りなのでとても使い勝手が悪い兵器なのだが、その使用にすらためらいがない。だからガンジーを残したまま時代がすすむとある日、戦術核を打ち込まれるという緊張をもってプレイしなければならない。

 

さて。

北朝鮮がきな臭いを通りこし発火した。
正常正バイアスがかかっていると「まだ大丈夫」と判断になるかもしれないが、状況を整理するとこれは「もう駄目ぽ」。

2015/8 韓国 金正恩排除作戦(5015作戦)aka斬首作戦が韓国軍よりリーク
2/3 韓国 THAADの年内配備決定。中国反韓措置開始。
3/1 韓国 史上最大規模の米韓軍事合同演習。
3/13 米国 米軍特殊作戦部隊群を韓国へ
4/3 韓国 米韓軍の軍事秘密作戦、作戦計画5027が流出したと発表
4/4 日本 1月から一時帰国させていた駐韓大使と釜山総領事を韓国へ帰任
4/5 北朝鮮 中距離弾道型とみられるミサイル発射、失敗。
4/5 シリア サリンで反政府の街を空爆
4/6 日米首脳電話会談
4/6 フィリピン 南沙諸島に政府軍を配備命令
4/7 米国 米中首脳会談、シリアにトマホーク59発打ち込む
4/7 中国 北朝鮮からの石炭貨物を返還するよう国内商社に命じ返送開始
4/8 米国 第1空母打撃群(カール・ビンソン)朝鮮半島近海に展開移動開始
4/8 米国 40年ぶりの新型空母ジェラルド・R・フォード 近海大西洋にて海上公試
4/8 NSC(米国家安全保障会議)が在韓米軍への核兵器再配備を提案

4/11 北朝鮮 金正恩就任5周年。最高人民会議開催。

今後の予定

4/15 北朝鮮 金日成誕生105周年
4/25 北朝鮮 朝鮮人民軍創建85周年
4/末 韓国 米韓軍事合同演習終了
5/9 韓国 大統領選 投開票
5/中 日本 テロ等準備罪の国会議決が5月ごろ? 30日内公布、公布20日後施行。
5/末 日本 自衛隊南スーダンから帰任

 

難民と避難民

日本や中国、韓国からすると、半島情勢は不安定化した時点で「負け」なので、お目こぼしされてきた。武力衝突がおこれば韓国経済は停滞し避難民が出る。日本や中国にも影響が出る。転じて米国にも影響が出る。
武力衝突などがおこらなかったとしても、北朝鮮が崩壊などという事態になれば、結果として数十万、数百万単位の難民が発生する。国境を接している中国や韓国だけでなく、日本にも多くの難民がくることだろう。

アフリカや中東での紛争から逃れるため非合法組織が手配した小さなボートで難民がイタリア沿岸に上陸している。海路で上陸した人が2007年では15,000人、国連の2015年レポートによると153,800人である。

 

2007年日本政府は北朝鮮難民を10万〜15万人と想定しているそうなので、まあスケールはそんなものであろうかと思う。韓国からの避難民を考えると一桁変わるだろうが、海を隔てた日本ですらこれなので韓国や中国はそれよりも一桁上の難民流入となるだろう。正常化まで十数年単位で掛かる。現在、第一次朝鮮戦争の時の難民問題を解決できているともいいがたいが同じことがおこる。

 

在韓邦人は正規には3万8060人、一説には6万人近くとも言われている。これらの避難はどうするのか。日本はようやく大使を韓国に帰任させたところだ。在韓米軍の家族などは、前回の軍事合同演習中にグアムへ避難するなどの訓練が軍事演習の一環としてすでにおこなわれたあとだそうだ。米国だけ準備万端。

 

超えちゃいけないライン

北朝鮮はいくつかの超えちゃいけない線を既に踏み越えてしまった。
次なにかやったらではなく、既に超えたあとなのであとはアメリカ、もしくは中国がいつ動くかの問題だ。

  • 金正男の暗殺:首の挿げ替えのために一応囲っておいた中国の庇護下にあった金正男をマレーシアの空港で暗殺を行った。中国の予備プランとしてあった傀儡政権策を壊してしまった。
  • 固体燃料の開発成功:固体燃料を使える技術が持てるようになると発射準備の兆候検知ができなくなる。打ち上げ後点火、移動式砲台からの発射にも成功している。つまり北朝鮮がロケットによる先制攻撃が可能になったことを意味する。
  • ロケット飽和攻撃実験の成功:PAC3、パトリオット迎撃システムで単発で打たれたロケットなら撃ち落とすことができる。しかし迎撃できる弾数を上回る数を打ち込まれると撃ち漏らしが発生する。これを飽和攻撃という。日本の重要拠点に配備している迎撃システムは全国でもおそらく20数台もない。北朝鮮はほぼ同じ場所にロケットを着弾させることに成功している。つまり、先制攻撃で日本の防衛施設、米軍基地などを一時的に無力化できる可能性を意味する。
  • 潜水艦からの発射成功:潜水艦からの発射は事前検知も破壊も困難である。これは距離が離れている米国本土を射程にすることができることを意味する。
  • 核兵器開発の成功:北朝鮮は過去5度の核実験をおこなっている。水爆の開発に成功したとも発表しているが世界からは疑問視されている。しかし、着実に進んでおり小型核弾頭化、水爆の成功もあと数度の実験でたどり着くだろう。もう笑っていられない。
  • 大陸間弾道ミサイルの失敗:いまのところ失敗している。が、4/5の失敗はそれに挑んだものだと見られている。これが成功するようになれば、米国本土が射程距離内に入る。つまりこれが最後の一線だった。

自衛権

ロシアの傀儡政権であったはずのアサド政権は、化学兵器のサリンを自国の国民相手につかったとしてアメリカからミサイルを59発打ち込まれた。信じられないニュースだ。しかも、中国の国家主席と会食中、デザートを食ってる最中に習近平中国国家主席それを伝えたのだという。おまえらどうかしている。

個人的な考えをいわさせてもらえばこんなの明確な国際法違反だし、侵略といわれてもその誹りは免れないだろう。だがアメリカはやった。やっちゃった。さすがトランプ。やはりトランプ。サイコパス指数どんだけだ。ロシアがクリミナを併合しても世界がなにもできなかったように世界はきれいごとだけで回らないことを平和ボケした日本人に思い出させてくれる。おそらく同じことを中国や北朝鮮にも思い出させたことだと思う。

 

アメリカは、化学兵器を使うシリアを野放しにすることは自国の安全保障にとっても脅威なのだという建付けで理屈付けをすることだろう。ABC兵器(Atomic核、Bio生物、Chemical化学)は実際人道上も脅威である。その点でシリアを評価するなら、北朝鮮の核の脅威はシリアよりも米国にとっては脅威のはずだ。

 

シリアがアウトなら北朝鮮などとうの昔にアウトなのだ。

北朝鮮より先にシリアにミサイルが打ち込まれたのは、すでにそこが紛争地化しているからにすぎない。ミサイルを撃ち込んでも、戦局が大きく動かないというのもある。
一発が数千万〜億円のものを59発も撃ち込んで、着弾したのは23発、死者が0〜15人という結果からみても示威行動に近い。ロシアと協議したうえでなのではないかとの憶測もあるが、わからなくもない成果である。現にアメリカがトマホークを打ち込んだあと、ロシアも8日戦闘機でシリアの反対政府エリアの空爆をおこなっているが、かわいそうな市民でポーンの取り合いをしているのみで戦局はうごいていないのである。戦局は動いていないが、やっちゃうんだぞというデモンストレーションで世界という大局を動かした。

 

日本ではなぜか個別自衛権と集団的自衛権が分けて議論されるので、別の説明をしなければいけないかもしれないが、通常は状況がすべて詳らかに明らかにされたNP完全問題でもないかぎりこれらを分離することは不可能だ。不可能というよりは分離することに意味がない。もちろんイデオロギーの表明のために分けることはできるが、今回のように同一視して行動する国があった場合、外部からそれは違うとか、それは侵略だとか、個別的自衛権の範囲外だと議論することは無意味である。ABC兵器が使用された、または開発されたので自国の安全保障上脅威と感じた、そして行動してしまったのがアメリカなのだ。

それでもあえて、分割して考えると、いままでは日本を攻撃されるかもしれないという集団的自衛権の範疇であった。しかし、今回の大陸間弾道ミサイルでアメリカにとっては個別自衛権にチャンネルが切りかわった。アメリカは先制的自衛権の行使をためらわず、イラクの大量破壊兵器ようにそれが誤ったものだったとしても反省はしない国である。そして今回はイラクの時以上に明確ないいわけの材料が揃っている。

 

日本人の一般常識から考えて、シリアへのミサイルぶっぱなしはどうかんがえても過剰防衛だろうと思う。だが、ABC兵器が拡散しないための緊急避難措置だのいわれればそうかもしれないなとも思う。正当防衛を主張するにはちと目に余るけれども、まあ違法性阻却事由として理解できなくもないという範囲だ。

 

もし、それは違う、国際法などで裁かれるべきだといったところで、じゃあシリアにミサイルを打ち込んだアメリカや、空爆しているロシア、はたまたクリミナを併合したことや、チベット問題を抱える中国にたいして国連としてPKOできるかっていうと、常任理事国の行為なんだから可決できるわけがない。遺憾の意砲をとばすことしかできないのだ。

 

いつなにがおきるのか?

アメリカが北朝鮮を攻撃してこなかったことは自制によるものではなく、日本や韓国などへの配慮からくるものであったのだろうが戦略的忍耐の時期は終わったらしい。軍事演習中からそのまま作戦を実行することはままあるので、状況をうかがうに中国の連休明けの4/5の軍事演習に合わせて斬首作戦を実行してしまうのではないかとも考えていた。

結果として5日におこったことはなんとシリアでのサリン使用だった。今から考えると計算されたようなタイミングだったんだね・・・。

結果として6日おこったことはシリアへの米国のミサイル撃ち込みだった。

 

北朝鮮の日本への当てこすりによる被害は当然懸念される。
軍事衝突にまで発展した場合日本も被害なしで終わることはないだろう。
スパイ活動天国とも揶揄される日本でテロ準備を取り締まれる組織は公安しかないし、法律はこれから審議しようかなんてざまだ。半島情勢が不安定化した時点で日本はほんといいことがひとつもない。

北が自分から軍拡ゲームを降りてくれればいいだろうが、序列上位を100人粛清していまさらそれはできない相談だろう。

中国がアメリカのかわりに北朝鮮の体制を保ったまま首の挿げ替えをおこなって傀儡化してくれると、日本には一番被害が少ないのではなかろうか。

最悪は中国と米国でどんぱち始めることだ。
それすらも辞さないアメリカの覚悟が見える。覚悟というよりトランプの狂気か。金融と軍需が国家財政の根幹にあるなかでアメリカファーストで経済的合理家のトランプが立ち止まる要素がない。

韓国の大統領誕生を待つつもりもなさそうなスケジュールなところが泣ける。

 

軍事衝突がなかったとしても不安定化する芽しかなく、やはり、負けなのである。

人の手で避けられるのに人の手によって産み起こされる悲劇ほど愚かしいものはない。できればただ単に自分が愚かで検討外の杞憂をしていることを祈るのみである。

 

バカらしいなとおもいながらも籠池問題とか豊洲問題でやいのやいのやってるぐらいのぬるさが自分にはちょうどいい。

 

 

他参考

jp.reuters.com/article/china-northkorea-coal-idJPKBN17D0KN
rhq.gr.jp/japanese/know/kur/08_05.htm
www.unhcr.or.jp/html/ref-unhcr/statistics/index-2016.html
www.unhcr.org/576408cd7
www.news-postseven.com/archives/20160729_429381.html
www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/5-25.php
www.sankei.com/world/news/170404/wor1704040011-n1.html
www.afpbb.com/articles/-/3124502
www.afpbb.com/articles/-/3124490?cx_part=txt_topstory
www.jiji.com/jc/article?k=2017040900194&g=int


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