カテゴリー: 経済・エコノミー

  • 日本で企業創業が増えないあたりまえの理由

    日本でヴェンチャー起業が発達しない理由は、従来はお金を出す投資会社が機能していないからと言われていたけれど、その実、機能していないのは大手企業やその護送船団である官庁が阻害しているからだという記事があり面白くよみました。

    従来の説はほとんどウソだった。日本でベンチャー企業が発達しない本当の理由。
    http://news.kyokasho.biz/archives/8483

    紅茶屋で創業して7年めぐらいになります。うだつがあがらない創業中小企業のおっさんです。外部から資本も入れてないし、借入もせずにのんびりやりすぎています。そんな零細企業から同じ現象を見ると少し状況が違うので、自分なりに書いてみたいと思います。

     

    日本の起業活動率

    中小企業白書よりexcelデータがあったのでグラフ化しておきました。まず、事実として、会社が潰れるスピードのほうが開業されるスピードより早いことがわかります。理由はいろいろあるでしょうが、ここではその一つとなる開廃業率についてみてみたいとおもいます。

     

    回廃業率

     

    長い目で見て、日本では順調に開業率が低下していることがわかります。

     

     

    回廃業率ショート

    1995年以降をみてみましょう。
    バブル崩壊やリーマン・ショックがあった年に廃業率が跳ね上がったというイレギュラー以外の要因で、2009年にとうとう開業と廃業が逆転していることがわかります。つまり会社出生率が1を割り込んだということで日本の会社は減少局面にはいっていることがわかります。

     

     

    設立登記件数

    こちらは登記件数です。こうやってみるとバブルの時に会社数が非常に多かったことがわかります。日本の経済状態が経営環境としてそもそも創業しにくいということが見て取れるとおもいます。

     

    大手資本や政府規制はベンチャーにとって邪魔なのか

    対象の業界が他の業界より利益が出るかぎり新規参入が相次ぎます。過当競争業界になると、利益が他の業界並になるので企業は参入障壁を設けます。日本の場合、設立開業資金は年々あがっていっています。例えば、もっとも創業が簡単な飲食業界をみてみると屋台などでの創業スタートというようなことはできなくなりました。店を持たねば基準がクリアできず、基準を満たす設備投資にはそれなりの創業資金がかかります。資本コストの増大により開業リスクが高まるので、開店も運営も、そして撤退も難しくなってきています。

     
    法律にもとづく規制は代表的な政府規制による参入障壁です。これらは資本の調達によって解决することもありますが、調達するための資本コストと将来的に得られる利益を比べると参入しても儲からない程度にまで参入障壁は高められます。

     
    ドラッグストアなどに薬剤師を置かなければならない、ネットでの販売を禁ずるなど、さまざまな企業の営利活動を阻害する規制が設けられます。これらが消費者保護の観点より、既存事業社保護の度合いが高い規制がおおいことはご存知のことと思います。
    資金調達が問題になるのは、お金のみでその参入障壁を超えらる場合のみとなります。しかし、日本の政府規制は海外でもビジネスの教科書に載る程度に有名なダブルバインド(サンドイッチで両縛り)があります。
    例えば、

    • 具体的規制内容は業界団体にのみ通達 and 業界団体規定に団体参加のために実績が必要とある
    • 参入のためには製造設備が整っている and 設備の建築申請には過去実績があること

    このような互いに矛盾する条項を組み合わせられ新規参入者が両方を同時に満たすことができないようになっていることがままあります。こっちの条件を満たすとこっちが通らなくなって、こっちを満たすとあっちが通らなくなる。日本で有名な縦割りたらい回しです。一周まわってダメでしたみたいな。

    ベンチャーキャピタルについて

    低金利の日本で銀行と投資家のハードルレートどっちが低いのよみたいな。株主資本調達コストが高い日本でキャピタルを使う理由はなんでしょうか?日本国債の長期金利があがって結果、銀行からの負債調達のコストが跳ね上ればキャピタルのような株主資本調達の余地は存分にでてくると思います。

    ベンチャーキャピタルと呼ばれる投資会社が機能するのはその資金をつかいレバレッジを効かせて利益を最大化するためにあります。その場合の資金調達のコストも会社側からすると、株主資本調達なのか負債調達なのかどちらを選ぶのかという選択があります。

    ベンチャーキャピタルトのゴールはキャピタル・ゲイン、つまり売却するぐらいしか出口が無い。株主配当を目指すキャピタルってあるのかな?現状、株主資本調達コストが負債調達コストより下回るケースは、成功すればよーーっぽど有望な利益を叩き出せる事業のみだけなのでは?
    日本で投資家の設定する利率を返せ、かつイノベーティブな分野であれば、最初から海外マーケットにうってでるべきなのではないかという問題にぶつかるわけです。

    例えば、電動バイクのテラモーターズさんなどは海外市場から日本に戻ってくるようなスタートアップのし方をしています。そうしなければ日本の業界団体の商習慣を超えられなかったというのもあるのかもしれませんが、マーケットを日本にしぼってしまっていてはスタートアップはさらに苦労したことでしょう。
    ベンチャーキャピタルが機能していないのではなく、ベンチャーキャピタルが儲けられるほど日本での創業環境がゆるくないちゅうことでしょうか。
    有望なビジネスであればあるほど起業家はなぜ日本で創業するのかという問題とも立ち向かわなければならない。その問の結果、海外で会社をつくってしまう人も増えています。今日本にいても作れるしね。成熟市場で規制をクリアするためにわけのわからない機能だらけになった電化製品とかを見ると悲しくなります。

     

    あと、もういっこ。風土的なものかもしれないのだけど、最劣後債権者であるはずの株主がちょっと金を出しただけで会社を私物化しようとする傾向が強いんですよね、なんでだか理由はわからないですが。

     

    他、参考データなど

    うだつってなんだ?→調べたけど書くようなことではなかった。ぐぐれば出てくる。

    中小企業白書
    http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html

     

     

    7表 会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移
    http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H24/H24/index.html

     

  • 上流では2%ではなく20%のインフレ

    しがない紅茶屋さんをやっているのだけど、あちらこちらからもう耐えられないと値上げの連絡がはいってきていて泣きそうです。
    震災の影響が一段落したのもあると思うのですが、ここにきてそれらが価格に反映されてきたというところでしょうか。

    某大手の袋屋さんからこんな連絡がきてました。袋ないと紅茶売れないので、うへー。って感じ。袋ってあれねレジ袋だけじゃなくて、食品を梱包するのにつかう中袋とかそういうのもね。
    20%以上値上げしますって。
    neage
    どうしよう、こないだ買ったばっかりなんだけど、また買い込もうかなぁー・・・。

    値上げはこれだけではなくて、例えば宅急便の運賃も震災のときに5%値上がってます。この一年はその上昇価格分は東北復興に寄付されるということで、当店からの寄付分として飲み込んで据え置きにしてきたのですが一年経ったということで、今月に入って宅急便価格は実際に請求されている金額に変更しました。5% 大きですよね。

    それ以外にもいままで200gだった黒糖そらまめが、価格据え置きで180gになりますごめんなさい!とか、なんも言われてないけど、品質下がってきてるなぁーと感じて奥にひっこめたり、仕入れ見送ったりしているのもあったりします。

     

    数年前の原材料高があったときにあれこれ価格が上がったタイミングがあったのですが、最近それに次ぐ、もしくはそれ以上の値上げのムーブメントがきているのではないでしょうか。

     

     
    実態としてのインフレ率は消費者物価指数なるもので見ることができます。速報値として毎月お国がせっせと情報をあつめて統計発表されています。

    http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm
    平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成25年(2013年)1月分

    概況
    (1) 総合指数は2010年(平成22年)を100として99.3となり、前月と同水準。前年同月比は0.3%の下落となった。
    (2) 生鮮食品を除く総合指数は99.1となり、前月比は0.3%の下落。前年同月比は0.2%の下落となった。
    (3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.6となり、前月比は0.5%の下落。前年同月比は0.7%の下落となった。

     

    消費者が手にする商品価格は最新速報でも下落しています。
    でも、これはモノが売れない、需要が限定的でコアなし市場だから最終小売価格は値下ってるだけなのかなとおもいます。
    反面、日本以外で需要が旺盛なところは世界をみると他にもあるので、世界的には原材料価格が値上ってきています。原材料はほしがる人がいっぱいるので、日本から買い付ける以上にいい値段を提示される。そうするといいものを仕入れするために価格で競り合わなければいけなかったり、その競り合いの結果同じ値段で買えるもののクオリティがさがったり、それが天然資源(魚介類をふくむ)だと、競り負けて手に入らないという状況もひんぱつしていていたりします。原油価格などに顕著にあらわれますが、いままでは円高の影響もあって、すこしマイルドになっていました。ガソリン価格の高騰などが物流が値上げしていますが、1ドル100円が80円になっていたから宅急便も5%の値上げで済んでいたともいうことができます。

     

    仕入れた原材料から加工したりサービスを付与して付加価値をつけてるのが商売ですが、その仕入れ原価と販売価格の差を限界利益といいます。

     

    仕入れ原価があがって販売価格がかわらないなら限界利益率は下がる。この利益から人件費などの販売管理費が捻出することで企業は継続していきます。

    とはいえ、仕入れた中間財に前の会社の人件費が乗っているので、人件費が安い地域でつくったものが流入してくることで、物価は下落します。

    じゃあ物価の下落以上にお金を刷って、紙幣流通量をふやせばインフレするね!というのがインフレターゲット。目標2%に設定されています。

     

     

    てろーん♪
    ここで、企業物価指数っちゅう日銀発表のデータをみてます。
    卸売物価指数とかよばれたりするものです。
    各需要段階の指数

    企業物価指数の公表データ一覧
    http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/index.htm/

     

    ざくーっとみて120%上昇しています。また2008年のようなことになると、リーマンショック再びみたいなことになりかねません。

     

    いまさらインフレターゲットがいいとか悪いとかTTPとかについて、別段意見もありません。うまくいくかもしれないし、いかないかもしれない。だけどそれだけじゃなくて、勝負しなければいけない環境やルールがどうもまた代わりそうですなという所感でした。

     

    世間はベアだなんだと浮かれてていいなーと思います。わしも春をあじわいたい。

     
    少し関連。キプロスが預金封鎖して、10万ユーロ超の預金に預金額の9.9%、それ以下の預金に6.7%を徴収みたいな素敵なことがおきていて、これが実はロシア経由でユーロに飛び火すると、まーた、変なことになりそうだなと心配しています。
    http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92H03X20130318

    ロシア・・・
    http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9N0A901720130318

    2012年末のロシアの銀行によるキプロス10+ 件の国内銀行への預金高は120億ドル、法人顧客の預金高は190億ドルにのぼるとみられている。

    つー、わけで一足はやく20%インフレのお知らせでした。

     

  • 情報発信社会における教えることで教わるスタイル

    複利の計算も怪しいひとたちがいかにして10ヶ月でMBAの人達が使うwaccやらを肴にキャッキャウフフできるようになったか?教えるは学ぶの早道。今後注目すべき恐るべきソーシャル・ラーニングという学習形態についてレポートしたいと思う。

     

    概要

    • 目的:企業戦略、マーケティング、会計&ファイナンスの主要三科目と、英語やIT、時事などの補助科目の学習を通しビジネスの基礎筋力を鍛える。
    • 形式:共通の教材を元に各グループが発表をおこなう、大学でおこなわれる輪読や輪講に近い形式ではじめられた。
    • 頻度:月に一回の頻度で丸一日、10ヶ月

     

    結論

    年齢、仕事、それまでの学習など様々な異なるバックボーンを持つ人達が互いに教えあうソーシャル・ラーニングは、実務経験などがあり”ツッコミ”ができるメンバーが参加することにより、テキストの表層上の理解にとどまらず、テキストが体系化し整理したその事象そのものを再構築し分解することで、勉強会に参加している各自の体験を共有する助けとなることがわかった。
    つまり何かってぇえと、お偉い先生が定義した共通言語を獲得したグループが会話すると、座学での学習なのにいくつもの実務をこなしたぐらいすげぇ勉強になるし、捗るぜ。ってこと。

     

     

     

    ストーリー

    皇居周辺をランニングしていた大学生が「ビジネスに数学って必要なんですか?」と一緒にランニングをしていた社会人に尋ねたことから事は始まった。この一石はfacebookなどのソーシャルメディアを通じ媒介されそして増幅された。
    そのつぶやきからほどなく2012年ゴールデン・ウィーク開け。都内某所の某高いビルの上の会議室に十数名が集まった。ちょっと勉強会をやるべさぐらいののりでfacebookなどを通じて集まった面々だ。その中になぜか私もいた。なんか楽しそうという物見遊山でひきこもりが都内に向かったのだ。

     

     
    某経営コンサルタント(※有名な人なので名前を伏せておきます。)

    「教材用のテキストはここらへんにしようとおもうんだけどー」

     

     
    ででーーん!
    出張帰りで大きな荷物もってるのかなと思ってたのだけど、なんと1週間ぐらい出張にいけるような旅行バッグの中身はすべて教材用の本だった!しかもほとんど英語の本。そだ彼ハーバードMBA・・・

     

    テキストをみて、ちょっと気軽すぎちゃったかなと少し青くなった・・・。

    詳細を話すとそれだけで、一記事をついやすことになるので省略してこの時決まった事は下記のとおりだ。

    • 科目:主要3科目(企業戦略、マーケティング、会計&ファイナンス)+英語、ITや時事などの補助科目
    • 教材:教科書(日本語訳のほう!)と副読本
    • スケジュール:月一開催で年末までという通しのスケジュールと初回開始日
    • チーム:主要3科目の何に興味があるかでチーム分けをおこなった。4人1組み。4つのチーム。
    • 担当:校長、副校長、オペレーション、会計、書記、ITなどの担当を分担した

     

    第一回目授業はエクセルの使い方などの基本講座が開催された。エクセルで本を出してる方がアシスタントに着くレベルのプロフェッショナルによる贅沢授業。参加メンバーはfacebookで情報のやりとりこそできるものの、パソコンの扱いが初心者レベルから、プログラム書いてるべさの人まで受講者のレベルが一様ではなく、おそらく教える側からすると、とても教えにくい集団である。私も今更エクセルなんて…と思ってたが、随所にこれは知らないでしょ的なテクニックが織り交ぜられていて上級者から初心者までためになる授業だった。

     

     

    かようにしてメンバーはエクセルとパワポの基礎を習得した。
    以降、発表は各チームがパワーポイントにまとめプレゼン形式でおこなわれた。

     

     

    各チームはオンライン・オフラインを通し、担当のテキストの章をどのように発表、講義するかでミーティングをおこない、資料をまとめた。小難しい内容がショートコントにまとめられるなど、発表は回を増すごとに暴走創意工夫がましていき、終盤のケース・スタディなどでは実地覆面調査などまで行われた。実務でもここまでやんないだろうというレベルの作りこみである。

     
    会計&ファイナンスについては素人が輪講の形で教えるには難しすぎるということで、ちょうどTACとLECという資格専門予備校に会計の勉強で通っていたタックレックコンビとMBAホルダーによる財務特命チームが結成され授業がおこなわれた。超贅沢。しかし、やはりアカウンティングとファイナンスは数学の学習に近く、中学校のときにならった二次方程式とか怪しいね……という人によってはすんなりとした理解が難しいようで、学習が追いつかない人にはかなりの数の補講もおこなわれた。skypeによる補講なども何度もおこなわれ学習用のまとめ動画などまでつくられた。

     
    ちなみに、一般公開されることは無いと思うが授業風景は第一回目より録音録画されyoutubeにアップロードされている。授業に参加できなくてもメンバーはその授業を反復することができるようにされた。資料もオンライン上でアーカイブされ共有されているのでいつでも確認が可能だ。運営はボランティアだが、ここらへんの体制はそこらへんの生半可な仕事や有料ビジネススクールよりしっかりしている。

     
    途中、メンバーのひとりが海外に留学してしまったのだが授業がskypeを通して中継されオンラインで授業に参加できるようになるなど、試行錯誤こそあれどこの時代ならではITの恩恵はてんこ盛りだ。

     

     

    かくして、海のものとも山のものともわからない状態で始まった勉強会は、背景がまったく異なる人達が入り混じったことで突然変異のごとき化学反応をみせて、反復学習とshow&tellなどの工夫みせつつ、ちまたで話題になっているオンラインだけのソーシャル・ラーニングとはおそらく一線をひいたほうがいいレベルで「教えることで教わる」という、当たり前だけどなかなか実現するのは難しい仕組みを再構築したのでした。

     
    佃煮屋のおねーちゃんが将来価値の計算ばっちこいとか、古本屋さんがなんでcapmでパスワード保護されたエクセル突破してるんだろう的な光景とか、アナリストでもないのに公開されているIR情報から企業継続価値(ターミネートバリュー)まで計算してDCF法で理論株価までだしてるのを見て個人的には感動した次第であります。すげぇなと。というか、なんだこりゃと。

     

     

    約10ヶ月にわたる壮大な実験勉強会が終わったわけですが、その後はどうなるんでしょう。わかりません。有名な人が絡んでいるので少し気を使って情報としてまったく外にだしていなかったのですが、形として終わったのでぺろんとこんなことをやっていたよーと一部情報公開しました。

     

    でも、なんか卒業テストがあるので、ぶっちゃけ私が卒業できるかはわかりません。
    ルールル、ルルル、ルールル~・・・