月: 2016年12月

  • 大晦日で人工知能

    人工知能について年暮ひがなうつつ宿題を。

    東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」 単行本 – 2014/10/15
    松尾 豊 (著), 塩野 誠 (著)

     

    松尾さんの動画やらなにやらをよく見たので本も読んでおこうとおもって買ったもの。
    間違えてカートに2冊ぶっこんでたのに気が付かずに届いたら2冊入ってて愕然とした。
    レイアウトがあれでちと読みにくかったのと、まさかの対談方式の本だった。

     

    本の内容については特に書くことはないのだけど、章の間に宿題がでててそれが面白かったので今年のうちに宿題をしておく。

     

    ISSUE 1

    1.人間は不要になるか?

    予測精度が異様に高い人工知能が、人間の役割にとって代わり、自己複製をはじめたとき、人間の存在意義はどこにあるのか?

    これに答えるにはヒトは使役動物であろうか?という問についても考えなければいけない。

    蒸気機関普及後、使役動物としての牛や馬はその数を大きく減らした。江戸、明治初期の馬数は住宅戸数とほぼ同程度であったが現在は住宅件数と比べるべくもない。

    先進国とされる国々において、身分制度や、奴隷制こそ終わりをつげたものの、ヒトの多くは経済動物としてその任を得ている。社会への奉仕。勤労の義務こそが社会構成員としての人間の存在意義であることは日本国憲法にも明記されている。「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」これは、社会を回すために必要な任である。

    封建制が終わった現代ではその任は特定誰かのためになされるものではないが、全体への奉仕としてなされる。社会をよくまわすための使役動物としてのヒトだ。年齢割合が歪み、子供や老齢者はどうするという構造問題を解決できていないが、今はそういう運用がなされている。自ら然して利他し、社会に対して義務を果たすのが、己の利益にもつながろうという社会で、そのように機能している。
    で、ここで、ひとつ動画をぽいっと。

    オランダ LELY(レリー)社のアストロノートA4
    http://www.cornesag.com/product/milking/milking_robot/astronaut_a4/feature.html
    乳牛さん達は、自分たちの意思で装置の前に列をつくり搾乳を待つ。餌もくれるし、乳も絞ってくれるから。

    一定時間を経過していない牛は素通りさせられる。システムで管理された高度な装置である。牛は人間にとって家畜としての価値がある。肥育牛も、乳牛も。

    もし、ヒトの提供できる価値が人工知能に代替されたあと、ヒトが社会に提供することができる価値とはなんであろうか。まさかヒトが肉や乳を人工知能に捧げることを望まれるわけではあるまい。では、馬のように荷を運ぶことだろうか?

    ヒトがヒトに必要とされるのは面倒を見てもらうため。互いに助け合うため。

    おそらくは、この原初的な欲求が解決されれば、現在のような数は必要なくなるので、使役動物としての馬のような推移をたどることだろう。ヒトが多くの子供を必要としたのは乳幼児死亡率が極端に高かったからであり、老後の面倒を見てもらうためだった。ヒトはヒトによって必要とされているが、ヒトがヒト以外に必要とされる数はとても少なくなるものと考えられる。ま、不要の用。

     

    2.犯罪予備軍を事前に逮捕できるか?

    ある人間が、将来的に犯罪を起こす可能性が高いかどうかが明らかになったとき、事前に逮捕することは許されるか?

    マイノリティ・リポートか、アニメのPSYCHO-PASS サイコパスかって話。(まだ、どちらも見てない・・・)
    オランダだったっけかな?ネットワークで繋がった防犯カメラを地域で配備して歩行の目的地の不確定さによって、不審者検出ができるようになったそうな。トラック強盗が多い地域にそれを配備した結果、パトカーが急行できその地域の犯罪は激減した。で、かわりにその地域の周辺の犯罪発生率が上昇したとかいうオチまで付いたお話。
    これはAIというよりは、遺伝子の問題でもあるように思う。反社会性因子と遺伝子の相関が統計的に79%とか出た場合、例えばそれをどうするか?犯罪をおかしてなくても事前に逮捕するのか??クレジットカード破産者が持つ遺伝子に強い相関があった場合貸付限度額をどうするのか?交通事故違反者に多い遺伝子に強い相関があった場合、交通事故保険料がおなじでいいのか?
    その相関を偽相関とみるか、ビックデータのパラドクスだと押しやるかは難しい問題である。

    個人的には、犯罪を犯すより前に、心身の拘束などはするべきではないと思うし、罰は罪とセットであるべきだと思う。だけれども、追跡タグをつけたりするのは罰ではないと思うので、そういうのはいいんじゃないかな。

    そのヒトだけ付けるのは不公平であるので、みんなでつけるっていうのもありだとは思う。
    あと、犯罪についてだけれど、もし、罪を犯しやすい気質があったとしても、その罪という概念が時間や環境で変化することはある。戦争などの時に人を殺したり、粗暴なことに気後れしちゃう気質の人ばかりでは組織を成さない。

    完全に悪と断定できる犯罪でさえも、社会を強くしていくためには一定確率で必要かもしれない。

    近代国家以前は、直系卑属を根絶やしにするために一族郎党打ち首獄門なんていうのもあったようだけど、流民がでていない状態ならそのような事や、名誉殺人のようなことをしてはいけないとおもうな。

     

    3.人工知能の小説家は誕生するか?

    現在、SF小説の要素の組み合わせ、短編小説を書く実験がすすんでいる。人間の独壇場であった「想像力」はどこに活路を見出していくだろう?

    これはするよ。星新一プロジェクトみたいな実際の取り組みもそうだけど、作成しうると思うな。

    そう遠くない時間に、人間が書いたものか、プログラムが書いたものかを人間が見分けることはできなくなるとおもう(チューリングテスト的な意味でも)。

    ここらへん少し気になっていたので物語論、ナラトロジーとかの本を買ってみたんだけど、人間が類型化したナラトロジーの分野がまだまだ未発達なのね。面白くなかった。
    逆にAIからの章解析によって、プロット解析ができるようになれば、もっと面白い作品がいっぱいつくれるようになると思うんだよね。もし作れないというのなら、創る方向に力をいれて証明する側にまわってもいいとおもうぐらいちょっと魅力的な分野だとおもうな。

     

    ISSUE 2

     

    1.投資家は不要になるか?

    身体的な制限がないコンピューターが、株式市場の「穴」を見つけ、そこを突き続けはじめたとき、人間の投資家は太刀打ちできるか?

    これはできないよ。もうできない。

    市場というものが、ただの流動性確保の場になって久しいけれど、カブロボとかが登場したときは長期に企業価値算定をきちんとしないとダメだよ!っていう義憤に燃えて立ち向かったのももう十年も前のことだ。10年前だったら、あえて穴をムシした正統派も太刀打ちできる要素があった。いまはもうシステムトレードでもそんな余地はない。穴をつくアルゴリズムを一杯食わせるぐらいはできるけれども、それはもうなにしているのかわからないよね。

    システムトレーダーをつくる人間をつかまえて、太刀打ちできていると表現するならばそれは太刀打ちできる。

    あとは、すべて焼き払い単独で相場を動かせるほどの資本力があればできる。

     

    2.人工知能を信じられるか?

    人工知能によるレコメンデーションは、直感的な因果関係を重視する人間にとって腑に落ちないものになることが予想される。それでもなお、勇気をもって人工知能の判断に従えるか?

    人間よりい信用できるっていう人もいるだろうし、そのAIの啓示を伝えてあげる占い師おばば的なエバンジェリスト的な人間を一枚かませばいいだけじゃないかな。

    データもわかるし、論理的にも納得できるか、情動的にお前に言われるから賛同できないってことは、人間社会でもよくある話しだし。伝え方、伝える経路なんていくらでも変えられると思う。

     

    3.「国」はなくなるか?

    物理的な制約がなくなり、個々の行動履歴がすべて国境に関係なく記録され活用され、どこからでもサービスを受けられるとき、国という概念自体もなくなるか?

    むしろ増えるんじゃないかな。国というシステムを大きく重厚長大にしたのは、軍事的な要素と、運用のための度量衡を揃える効率化のため。日本のような島国であっても、地域言葉は異なっているし、幕藩体制のころは通貨発行権や、租税の体型も地域ごとに異なっていた。兌換や流通、教育、軍事、言葉などの効率性という点をAIなどが解決してくれれば、国という運用単位はもしかしたら市区町村単位で連邦的に運用されるようになるかもしれない。
    どんなに社会が効率化しても、ご近所レベルの地域社会はなくならない前提だが。

    でも、経済でみてもモジュール化がすすんでいるので、小さくなる傾向はあるようにおもうな。

     

    ISSUE 3

    1.意識はコピーできるか?

    脳が工学的に再現可能になり、自己の保存が実現すると、そこに本当にヒトの「意識」は存在するか?

    20年ホルマリン漬けにしてた脳みそに、ニコチンなどをぶっこんだら脳波が観測できたっちゅうお話しがあった。

    いつ脳は死ぬのか?【When Is The Brain Dead-ホルマリン漬けの脳が20年の時を経てなお活性を示す】
    https://togetter.com/li/1062912

    脳みその構造を再現でき(これは、たぶんできない)るのであれば、意識はその脳回路を伝わる電気信号とそこから惹起された化学物質により構成されるものであるので、意識のシミュレーションはできるようになる。

     

    2.コンピュータ脳における「記憶」とは?

    脳が完全にコピーされ移植されたとき、特徴量を作る方法自体が異なってくる。そのとき、世界はどのように把握され、記憶はどのように変化するだろうか?

    人間は脳みそのみによって考えるのみにあらず、肌による皮膚感覚や、腸は第二の脳という程度には、体内、体外の環境に思考を強く影響される。これら付属の情報がなくなり、その他情報のインプットの経路が異なるようになった場合、記憶の重要度のランクは現生体のそれとはまったく異なる。
    景観の美しさや、静寂さなどよりも、周りの埃の量や、静電気、地場の変化が気になるようになり、電圧の変化に美しさを見出すようになるかもしれない。
    結論に至るまでに神経の興奮を感情と呼ぶならば、電圧の異常などで各所に発生するエラーが最終的に検算されて、正確な答えにいたるまでの、エラーハンドリングを感情と呼べばよい。そんで、そのログを記憶とでも読んだらどうだろう。

     

    3.人間の仕事はなくなるか?

    ほとんどの仕事が機械に代替されたとき、人間は何をして日々を過ごしていけばよいのだろうか?

    ん?

    紅茶でも飲んでひがな一日すごしてればいいんじゃない?

    ただ、修行僧のような生活がすべての人に耐えられるとも思えないけど。
    思索にふけって楽しめるのはスキゾイド人口の10%ぐらいか。

     

     

    ISSUE 4

    1.犯罪の「見逃し」が必要になるか?

    顔認識技術が発達し、町中に監視カメラが設置されると、どんな軽微な犯罪も白日の下にさらされる。そのとき、すべての犯罪を罰する必要はあるか?

    途上国とかにいくと、くじ引きみたいに交通違反取り締まってるよね。交通違反がたまりすぎると表の道が走れなくなるんだ。罪には罰だけれども、罰も軽微すぎると意味がないからポイント・マイレージ性にでもしたらいいんだよ。

    カルマポイント貯まりすぎちゃったから今月ボランティア10時間だー。みたいにね。
    見逃す必要はないとおもうよ。貯めておけばいい。

     

    2.自動運転は本当にできるか?

    機械に運転を任せられるようになると、社会全体がより最適化される。一方、事故が起きた場合に誰が責任をとればよいのだろう?

    技術的にはできるとおもうけど、人間社会があと1~2世代は許さなそう。人間側の価値観変化の問題なので、それをマテばいいいんじゃないかな。変化しないなら導入されないだけ。

     

    3.命の価値は、誰が決断するのか?

    すべての社会的判断の結果がスコアリング可能になったとき、「誰が不利益を被るか」を決める判断が必要になるが、その重責を負うのは誰だろう?

    最初の方の論に戻るけれども、不用の用というのがあって、なにかの価値というのはそのスケールでの価値であって、スケールを変えれば並び順は変わる。オーダーバイの仕方を1軸しかもたなかったり、集計の粒度を変更できなかったり、ascやdescもできないようなスコアリングは無価値になるべきだ。
    責任を追うのは代議された人か、またはその代表でいいんじゃね。

     

    ISSUE 5

    ### 1.学校は不要になるか?

    個人のレベルと環境に合わせたウェブ動画での学習が可能になったとき、学校や学年というものは不要になるか?

    むしろ必要になるとおもう。ただ、既存の座学という用途以外の意味で。そのエリアのWAN基地とか集会所とか、運動場としての価値とかとしてね。

     

    2.情報の飢餓体験は必要か?

    いつでもどんな情報でも手に入る状況になると、思考の習熟が望めない。子どもの教育のために、あえて情報を制限する必要はあるか?

    イスラム教のラマダーン、断食には学ぶべきことは多くある。不便を学ぶ機会は重要だとおもうし、ストレステストや、BCP上も、正常系から外れたテストと備えはしておくべきだとおもう。実際体験してみないと、気がつけないことは多いし、気がついたことに対して、備えができるのは正常下でのみ。

    日本は災害大国なので、情報からの断絶時にどうしたらよいかについても体験しておくことは有用であると思う。ま、デジタルデトックスたまにはしないとね。

     

    3.教育で身につけるべき能力とは?

    何かに気づく、法則を見つけるという役割はコンピュータに任せる場合、人間が教育で身につけるべき能力とは何か?

    ん~。

    • 怪我しない、死なないようにすること(フィジカル、クリニカル)
    • 苦労しない、道具をつかえるようにすること(テクニカル、プラクティカル)
    • 楽しめる、悲しみをわかちあえるようにすること(エモーショナル)

    ここら、あたりじゃねかな。

    ではみなさまよいお年を!!

     

    参考

    『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』松尾豊東京大学准教授セッション

    【5金スペシャルPART1】松尾豊氏:人工知能が閻魔大王になる日

    【5金スペシャルPART2】松尾豊氏:人工知能が閻魔大王になる日

    文科省の「AI研究」新拠点 トップに東大41歳教授
    (1/2ページ)2016/4/9 7:54 杉山将・東京大学教授
    「AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)センター」
    http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99433730Y6A400C1000000/
    犯罪に走る人には、”悪の遺伝子”がある? 犯罪者と非犯罪者を分ける決定的要素
    http://toyokeizai.net/articles/-/63200

    When Is the Brain Dead? Living-Like Electrophysiological Responses and Photon Emissions from Applications of Neurotransmitters in Fixed Post-Mortem Human Brains
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5131983/

  • 裕福層だとか格差がどうこう

    年の瀬に格差が格差がと叫ぶものありて、日本は格差がひろがっているのだそうな。

    日本が富裕層人口の増加でアメリカ抜き初めて世界一に(2016年対前年比)、アベノミクスで格差拡大

    アベノミクスを早くやめさせなければ、貧困と格差は拡大するばかりです。
    http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-12233028623.html

     

     

    なんとも難儀な話しです。

    世界の上位1%、10%の人口がアメリカを日本が増加率でぬいてなんとやら、それっていいことじゃないのかねぇとのんきにおもってしまうのであります。主義主張はいろいろあっていいとおもうので、同じ引用元からいくつかのグラフを引用しておきます。

     

    Global Wealth Report 2016
    https://www.credit-suisse.com/ch/en/about-us/research/research-institute/publications.html

     

    日本が裕福になるためにはそもそもの金持ちの人口も増やさないとね・・・。5000万ドル以上もってる人の人口がイタリア以下、台湾並だよ。

     

    2016年は日本の富がおおきく増えました。が、まぁ為替の問題です。ドル建てでみてるからってだけだよね。

     

     

    日本は家計の部門でも1位の増加率。ま、為替。

     

    で、格差がひろがっているのか狭まっているのかは今回はおいておいて、

    世界の各家庭ごとの保有資産割合を国別で気になった所をピックアップしていきましょう。

     

    これが日本です。100万以下の資産をもつ割合が10%ぐらいいます。年齢コホートないとわからないですが、ちょっと気になりますね。それよりも特徴的なのが1000万円~1億円の資産をもつ層の多さ。そしてその層と比較して1億以上のスーパーリッチ層の少なさがきになりますね。累進課税が効いているというよりは、それ以上を持つひとは政治団体をつくったりキャピタルフライトをしちゃう動機にあるのかもしれませんね。

     

    で、同じような構造になっているシンガポール。こちらは日本をモデルに教育に投資をおこない、一人あたりのGDPで日本をぬいて燦然と輝く近代化を遂げた国家であります。日本よりは「格差」がありそうです。

     

    で、気になるのが中国。

    0.2%しかいない超裕福層は日本からみると信じられないようなお金持ちだったりする。最初にあげた図からみてもわかるとおり、5000万ドル以上もっている人口は数でみると日本の4~5倍もいるのに割合でみると0.2%しかいない。

    蓄財もできていない貧困層の割合はとてもおおく、格差というよりも貧困が深刻。このマスの貧困層が中間層に移行するのか、中間層がまた貧困層におちるのかで国の明暗がわかれる。高齢化という速度でみると日本より深刻。

     

    人口ボーナスという点で期待があつまるインドと、なぜかそれと同じような構成になってしまっていて、日本と政治的には急接近中のロシア。

    おなじような構成になっているのが興味深い。多分中間層が今後中国なみに増えるのだと思う。

     

    アベノミクス?

    なんだろうね?

     

     

     

    http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html

    結果からみるに、3本の矢のうち、第一の矢、第二の矢はよく効いたとおもいます。

    ただ、第三の矢は正直及第点以下かな?

    国内設備投資はまだ本営大発表ですら「回復の兆し」であり、成果の果実にまでたどりついたとはいいがたいです。

    っちゅうか、言いたいのだけど、この第三の矢だけ、政策じゃなくて戦略なんだよね。

    1本目、2本目は矢。
    でも、3本目はどこを目指すかという的であって、矢ではない。
    じゃ、矢はなんだ?規制緩和か??

    せめて、矢にしていれば今は結果としてだいぶ違ったのかもしれないけれども、規制緩和にすると新自由主義がどうこうとアレルギーを持つひとも多いので、矢ではなく的になっちゃったんでしょうね。真の実力を発揮できる社会だってw

     

    吾輩の真の実力はまだまだこれからぞ!

     

    変身を残したボスみたいだね。

    多分、それって何が人々をモチベートさせるかだけだとおもうけども。

     

     

    みなさまなにとぞよい年の瀬を。

     

  • Singularity is Peer

    ことしのエントリーことしのうちに。

    Singularityという言葉を一躍有名にしたレイ・カーツワイル2005年の著書に「Singularity is Near」という本がある。とても分厚い本で読むのに腰を据える必要がある内容だ。

     

    http://www.amazon.co.jp/gp/product/B009QW63BI/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=B009QW63BI&linkCode=as2&tag=chams08-22
    が、なぜか日本語のタイトルは、「ポスト・ヒューマン誕生」で、がっかりタイトルここに極まれりである。

     

    ポスト・ヒューマン?

    ポスト・ヒューマンという語がでてくるのは、本文中おそらく一箇所だけで、それも、

    P495
    論者の中には、特異点のあとに来る時代を「脱人間」(ポスト・ヒューマン)と呼び、脱人間主義の時代になると予想している人もいる。
    「新たな」種の創造だという人もいる。
    特異点の根底にある転換は、生物の進化の歩みを一歩進めるだけのものではない。生物の一切をひっくり返そうとしているのだ

    「ポスト・ヒューマンなんてもんじゃねぇぞ」という論旨の中であり、だからこそのシンギュラリティという単語なのだが、まさにタイトルと論旨が逆・・・なんやこの邦題タイトル。ちょっと悲しくなる。
    で、Singularity is Nearが2005年だとすると、2016年はまさにpeer! 横に並んだところ、そしてティッピング・ポイント。今年は、ある程度の閾値をこえたところなんじゃないかとおもう。

     

     

    技術的特異点

    技術的特異点(Singularity)などないという人もいるが・・・。

    人がなんらかの機能を自分より高効率でこなせるような機能をデザイン設計するのが、人工知能だとする。
    人工知能がなんらかの機能を自分より高効率でこなせる機能をデザイン設計できるようになるのが、技術的特異点(Singularity)と定義すれば、本当に今年まさに見えているところだと思う。
    技術的特異点を超えるとAIはArtificial(人造の)じゃなくなる。
    それをなんて呼ぶかはわからないけれども、AIがAIを設計できるようになる。
    反復し繰り返すことをコンピューターは得意とする。
    その繰り返しのサイクルは人間よりも圧倒的に早い。
    なので、人工知能が自分よりも少しでも賢い人工知能をつくれるようになった瞬間、

    loop(AI^1.01)→∞
    loop(AI^0.99)→0

    AIの性能も発散しだす。

    人間は1世代繰り返すのに最短でも15年のライフサイクルが必要であるが、ハードウェア上の制約も「集積回路上のトランジスタ数は18か月(=1.5年)ごとに倍になる」という1965年に提唱されたムーアの法則も人間とは比べ物にならないサイクルである。演算上のloopはもっと短い。

     

    1950年代にトランジスタガールズと呼ばれる女工さんたちが、まさにハンドメイドしていたものが、現在のICチップはすでに完全無人化のもと製造がなされている。

    トランジスタガールズ


    http://www.shmj.or.jp/shimura/ssis_shimura1_24.htm

    そもそも塵ひとつ混じっただけで不良品になってしまう集積回路で、ホコリの固まりである人間が製造工程に立ち会うのは不良化の原因でしかない。そういう意味ではハードの部分は既に人の手を離れている。ソフトウエアの自己最適化はさらにちょっぱやだ。

     

     

    囲碁の世界と原子分子

    Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラムAlphaGoと18回の世界王者。世界トップ棋士九段のプロ囲碁棋士 リ・セドルの間の囲碁五番勝負でAlphaGo側が4勝した衝撃はまだ記憶にあたらしい。

    Dwangoが開発している「DeepZenGo」が趙治勲名誉名人に初勝利し、さらにそれを正体不明のGod Moves(神の手)が初手天元とかふざけたことをかまして、圧倒するとかわずか1年の間に群雄割拠状態。

    1980年代の第2次人工知能ブームから、2010年代の第3次人工知能ブームになってから、2016年はまさにエポックだ。

     

    チェスの場合の数

    チェスの盤面は8マス×8マス 64盤
    最初においてあるコマを動かしていく、取られたコマは盤面上から無くなりキングをとれば勝ち。
    平均して30手~40手で1ゲーム(チェックメイト&リザイン)
    この盤面の局面数はおよそ「10の120乗」通り。
    1997年IBMのスーパーコンピューター「Deep Blue」 世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを相手に勝利した。
    現代ではコンピューターのガイド付きだったり戦局分析サポートがされたりしている
    (テレビ中継で有利不利が数字で表される)
    ディープ・ブルー
    http://gigazine.net/news/20160301-chess-game-visual-look/

     

    将棋の場合の数

    将棋の盤面は9マス×9マス 81盤
    敵コマの復活ありで、相手の王将をとれば勝ち。投了(決着がつくまでの手数)は100~150手程度。
    場合の数は「10の220乗」通り。
    2016/4 第1期電王戦二番勝負第1局、Ponanza電脳戦 の山崎隆之八段 Ponanzaの勝利(二局目は5月)

    「第1期 電王戦」、PONANZAが先勝
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1604/11/news135.html

     

    囲碁の場合の数

    囲碁の盤面は19路×19路 361目
    石はどこに置いてもよく、相手の石を囲えば取れる。勝敗は自分の石が囲っている地所の大きさによる。
    オセロと違って、石の取り合いが発生するのでゲーム終了までの手数が決定されない。
    投了までは200~250手程度で「10の360乗通り」の局面があるとされる。

     
    えっと、10の360乗それってどんな数???
    いちばん馴染みのありそうな大きな数で、高校化学あたりで習う、アボガドロ定数を引き合いに出すと、6.02*10の23乗。
    1モル数あたりの原子の数だけど、常温で空気1molの体積はおよそ22.4リットル。

     

    計算計算っと、
    10^360通り=(6.02*10^23)^15
    22.4L^15=1.79*10^20L=1.79*10^17m^3
    (1000L=1m^3)

    ここでみんな大好き、大きな数の単位、ザ・東京ドーム!
    東京ドーム一杯分の体積は124万立方メートルなので

    1790*10^10÷124=14.4*10^10
    ちゅうことは、囲碁の局面の数は

     

    東京ドーム14.4兆個分にふくまれる空気の原子と同数!

     

    まさに天文学的数だよね。いや、計算適当ーなので、どっかでいいふらすときはちゃんと検算してね。
    ま、そんなわけで、囲碁はその複雑さからプロ棋士に勝てるようになるのは演算能力のハードの向上スピードからすると10年以上先とも言われていたんだけど、十数年分一気に前倒しされちゃったわけさ。

     

    囲碁や将棋は局面理解が必要なのでチェスの10の100乗倍以上複雑になると言われている。
    Ponanza(将棋)は1秒に10万局面を検討できるそうだけど、囲碁は1秒で300局面検討がせいぜい。
    1000台以上のプロセッサを束ねたクラウドサーバ、報道では30~60億分円の演算リソース(たぶん実費で1億2千万ぐらい)をぶっこんでいるんでないかと言われている。
    3千万の教師データ棋譜を学習させる→57.0%の確率で、人間の指し手を模倣し、計算に3ms(0.003秒)。
    一局300手で終わると考えると1.8秒(0.003*300*2)で1ゲームが終了する。
    一手5μ秒=0.000005秒でおわる軽量版同士を戦わせてそこから得られた3000万の新たな棋譜からさらに学習

     

    人間の対局が1局仮に1時間程度だとすると(プロのタイトル戦などでは各自の持ち時間が4時間~9時間)
    仮に1時間とすると3000 0000 h÷ 24÷365 =3,424年分不眠不休で指し続けた時間に相当。
    それってほぼ人類の歴史じゃんね・・・。
    まさにある分野においては人類の思索の歴史とPeerした瞬間。

     

    まとめ的なもの

    知性と呼ぶにはまだ言うべくもないけれど、AIはすでにいくつかの役割において、大多数の人間を上回るパフォーマンスを出せるようになってきていて、その領域を着実に広げつつある。

    複雑さのスケールから想像できるとおもうけど、人間には検知できないレベルの微細情報からの異物検査や異常検知、シミュレーション精度向上によって新素材の開発や創薬とかにもたぶんブレイクスルーがおきる。たぶんおきてる。
    ロボットの機能を駆動、センシング、ロジックの3つに大別すると、駆動は蒸気機関のときには既にもちろんのこと、2016年には局面理解が必要なロジックの部分も勝てなくなったと見ていい。生物がいま現在も勝っているのは周囲の空気を読む、センシング部分である。嗅覚、触覚などをとってもまだまだ生体と同等の性能を出すには、サイズ、費用ともに現在の延長線上をたどるだけであればまだまだ代替まで時間的猶予はありそうにもみえる。カメラ、音波、赤外線センサー、人間には真似できないものも多くあるが、まだまだ生物のそれはイオン分子いっこで駆動したりする、すばらしいものだ。
    しかして、人類。
    ATCGを4進数、ヒトゲノムは約31億塩基対よりなる。
    コンピューター01の2進数、8ビット=1バイト、4進数の31億は8進数の3,200,000=3.2MBであり、人間の設計図はフロッピーディスク2枚分。FDとかいっても、もう若い子には伝わらない感じだけど、iPhoneとかで撮影する写真1枚以下の容量でしかない。
    研究室でえっちらと寒天に遺伝子ながして合成してた細胞分子合成もとんでもなく安価に高速自動におこなえるようになった。遠からず分子生物を利用したセンサーが流通することだろう。それは菌糸類とか植物とかそういう倫理的にもライトなところからかもしれないし、いきなり人間をセンサーとして利用すべく後頭部にジャックをぶっ刺す攻殻な形かもしれない。
    2017年、Singularityがtearとにならずにdearとならんことを。

    メリークリスマス。

     

    参考

    人工知能の歴史
    http://blogs.itmedia.co.jp/itsolutionjuku/2015/07/post_105.html

    ネット上の超絶棋士「神の手」 囲碁界騒然、正体は?
    http://www.asahi.com/articles/ASJDM75CMJDMUCVL031.html

    AlphaGo対李世ドル
    https://ja.wikipedia.org/wiki/AlphaGo%E5%AF%BE%E6%9D%8E%E4%B8%96%E3%83%89%E3%83%AB

    人間を超えたアルファ碁(AlphaGo)は、どのようにして強くなったのか
    https://cakes.mu/posts/12685

    AlphaGo の論文をざっくり紹介
    http://technocrat.hatenablog.com/entry/2016/03/14/011152?1458093145366=1

    AlphaGoの運用料金は30億円以上?
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1603/24/news058.html
    囲碁AIの勝利でさらに注目? 今年の将棋「電王戦」は“頂上決戦”
    https://thepage.jp/detail/20160408-00000010-wordleaf
    machine intelligence landscape
    https://www.oreilly.com/ideas/the-current-state-of-machine-intelligence-2-0

    億(10^8)→兆(10^12)→京(10^16)→垓
    10^23 千垓
    10^60 一那由他
    10^64 一不可思議
    10^68 一無量大数
    360乗は表せないのか・・・。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E9%87%8F%E5%A4%A7%E6%95%B0