カテゴリー: 社会

  • ふるさと納税のことを考えるとパナマ文書について認めざるを得ない俺がいる

    世界をパナマ文書の衝撃が襲っているのだが、日本ではどこ吹く風だよね。

    夜のテレビニュースでは触れられもせず、新聞みても3面にベタ記事があるのみ。なぜ株価や為替が乱高下しているのかもパナマ文書に触れないままという、それってある意味凄いなと感心する報道がなされている。本日になってよぉぅやく、一面に載って夜のニュースでも取り上げられるようになったが、今日は4/7である。スキャンダルが明らかになりアイスランド・グンロイグソン首相が辞任を表明したのは4/5のことなのだが、ちょっとよくわからない時差があるようだ。日付変更線かなこれ。
    ま、報道のほうは別にどーでもいいんだけど、中国のように報道管制で報道されてないんじゃなくて、もしかしたら、その重大さがわかってないだけなのかな?と、むしろ不安になったので一筆かくことにした。

    まあ、タックスヘイブン[tax(税) haven(避難地)]をタックスヘブン[税金天国(heaven)]だと思ってて恥をかいたおっちゃんの案内なので、まあお察し。

     

    パナマ文書のヤバさお品書き

     

    • パナマにある業界3位の法律事務所からリーク←過去40年分ですと!?
    • プーチンや習近平など60人の国家指導者がリストに載ってる←政変あるんじゃね?
    • タックスヘイブン租税回避地利用←適法だが道義的にどうなの論
    • なんでこいつらの個人資産数千億円もあんの←まっくろだよね
    • 欧州を中心に500ほどの銀行のペーパーカンパニー15,000社がばれる←金融やばい
    • 今回リークがあったのは英国系の租税回避地←おい、アメリカがいねぇぞ

     

    過去40年分ですと?

    今回リークがあったのは2.6テラバイト分。
    4GB焼けるDVD-Rにして666枚分(不吉な数字だねぇ)、700MB焼けるCD-Rにして3,803枚分。
    まあ、データとしては現代ではそれほど大きいという印象はない。サーバー一台にぶっこめる量だ。
    PDFらしいので実質もっと小さくできると思う。(恐らく今、有志連中がデータ化している頃だろう)

     

    世界の状況はこちらから俯瞰することができる。

    panamamap2016-04-07 18_31_47-Panama Papers_ where the money is hiding

    https://briankilmartin.cartodb.com/viz/54ddb5c0-f80e-11e5-9a9c-0e5db1731f59/embed_map?ref=producthunt

     

     

    リストはここで検索できるようになっている
    https://offshoreleaks.icij.org/search

    → (※追記 offshoreleaksは2013/6に公開された 英領バージン諸島やケイマン諸島などのタックス・ヘイブン(租税回避地)におかれた企業やファンド等のデータを検索可能とするデータベース で約10万件分。今回のリークの100分の1以下で、またケイマン諸島を含むのでパナマ文書とはすこし性質が違うかも。パナマ文書については5月を待たないと我々は詳細をみれないのかな?)

    offshoreleaksでざくーっと日本の住所で検索して見た限り、外国人名が多い。

    Japanだと
    Officers & Master Clients (533)
    Offshore Entities (4)
    Listed Addresses (467)
    tokyoだと
    Listed Addresses (236)

    地元三鷹市だれかいるかなって住所で検索したらgoogleストリートビューに建物ごと「ぼかし」が入ってた。なにこれやばい案件??武蔵野市も調べたら・・・。あ、なんか興味半分に個々個別に調べたりして書かないほうがよさそうだねこれ。うん、命大事。

     

    まあ、それはさておき。

    過去40年分の業界大手の法律事務所が保有していた文書なんだけど、そもそも40年前って磁気テープすらなかった頃だよね。レコード。マイクロフィルムとか。こんなクリティカルなデータをなんで電子化したのかって話。誰かがそそのかして電子化させて、厳重に保管されていたものをハックして、身元を明かさずに流出させる。こりゃ言うまでもなく組織的な動きだよね。icijはFBIもCIAも知り得ない情報を手に入れたとかいってたけど、CIA以外むしろどこにそんな組織があるんだって話しだとおもうよ。

     

    政変あるんじゃね?

    やはりインパクトが大きいのは習近平やプーチンだろう。

     

    中国は汚職摘発に動いていた最中であるし、ロシアは現在軍事衝突をしている最中であるといいっていい。英国や、フランス、北欧でも影響はあるだろうけどトップが退陣すればいいだけの議会制民主主義国と違って、軍部や体制と強く結びつきすぎている国では政治的体制の崩壊が国家秩序の崩壊と同義になってしまう国がいくつもある。
    これは、立場のないおっさんの無責任な放言とおもって欲しいのだけど、今後の進展次第では世界地図が書き換わる可能性がある。アラブの春は民主化という名の無政府状態を生み出し多くの難民を生み出している最中であるが、同程度の衝撃が世界に広がる可能性は十二分にある。得に中国、いや主に中国。

     

    そう書いてたらニュースが飛び込んできた。

    プーチン大統領直属の「国家親衛隊」創設へ
    http://www.yomiuri.co.jp/world/20160407-OYT1T50106.html

     

    プーチンは35万~40万人規模の私兵を持つと5日に発表したそうだ。国軍の半分に相当する。本気だ。5日に発表されたのが7日に日本で報道。やっぱりちょっと時差が・・・ありますね。なんの時差だかは知らない。わからない。わからない。

     

    タックスヘイブン適法だが道義的にどうなの論

    みんなで収めて作った社会インフラにフリーライドしているではないかと。

    これは受益者負担の原則に反しているよな!というのが正論。

    でも、おまえら町内会費とかマンション組合費とかちゃんと払ってる?あれも裁判の判例上は納付義務があるものとして取り扱われてるらしいから、そういうところまでやってる人だけ石を投げなさい。ぁ!ごめん、やめて痛い。
    商店街とかで街路灯やら防犯カメラ設置して年間百万以上かかってんだけど、大手チェーン店とか儲かってそうな店ほど加盟もしてくんないんだよね・・・。フリーライダーにより地域が滅びるということはあるけれども、短期的な競争では宿主を滅ぼしてでもうまい汁は吸ったほうに軍配があがるからいたしかたないとも思うんだ。

     

    ふるさと納税というものがある。
    商品というリベートで釣って納税地を選びなよという仕組みだ。DMMのある石川県加賀市が納税額の半分をDMMマネーによる優待にしようとしたら換金性が高すぎると怒られた、あのふるさと納税である。これが普及したおかげで港区などでは税収が下がってしまったそうな。
    これの発展上に租税回避地というものがあると思ってもらえばいいと思う。換金性高いなんてのはなんのその。

    「うちは、税金安くするからうちで納税していってね!」
    「うちなんて税金とらないから登記だけでもしてね!!」

    っていう露骨な誘致合戦が極まった結果なのだ。

    税金を取らなくても本社登記地がそこにあれば、手続き、レンタルオフィスなどの不動産や対応人員、銀行、郵便など関連産業で雇用が生まれる。南太平洋に浮かぶトケラウ島は「.tk」ドメインをタダで配ったことにより世界のスパム業者の温床にはなってしまった。その是非はさておき、それによって島民はインターネットを敷設できたのだ。
    北海道の山中も東京銀座も税率は同じという日本からは想像がつかないかもしれないが、元来税率というのは地域によって柔軟性があるものだ。日本でもかつては悪代官が領民に重税を課していたように、物価やそれにともなう税というのも地域によって裁量があった。

    日本では登記につかえる住所さえあれば住民表は居住の実態関係なく日本各地どこにでも移すことができる。

    日本有数のお金持ちとして有名なユニクロ ファーストリテイリングの柳井 正さんやソフトバンクの孫正義さんの住民表をどこか辺鄙な寒村に移せば、それだけでその自治体の税収が大きく変動してしまうインパクトがある。トヨタがある豊田市はトヨタが赤字になったときに法人税収がふっとんだようなものだ。

    もしも、日本国内の自治体が自由に税額を変更することができたら、お金持ちや優良企業の奪い合いが始まるであろう。ふるさと納税で「納税地は選べるんだ!」とよく訓練された納税者はよりお得な納税地を選ぶだろう。

    それの発展形が租税回避地。租税回避地はお金持ちの誘致に成功したのだ。

     

    国際租税条約を結んでいる国同士では税の二重取りをしないために、片方で納税されていればそれを控除とか損金算入できる仕組みがある。税金をかけることや、税を自国の通貨で収めさせることができる通貨発行権、徴税の強制執行がおこなえるのは国家の最大の権益であるが、その権益を互いに侵さないために儲けられている条約だ。

    会社。本社機能と登記地の本社が異なることはある。どこで発生した利益なのかを厳密にわけたりすることはできない。一年の何日はここに住んだからここに何日分納税してなんてわけかたはしないで排他的に処理されるのだ。
    ハリー・ポッターの翻訳者が日本とスイスどちらに生活の本拠地があるかで見解が割れ、日本の税務当局が日本に拠点があるとして35億の脱税だとして告発されたり、逆に武富士の創業者から海外で生前贈与をされた相続人が海外資産1,330億円に日本が課税したら生活の本拠は香港だったので納税義務はないとして、国がペナルティとして400億円払ってごめんなさいしたりしている。(( http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG17022_Y1A210C1000000/ )) もちろん税額や仕組みは国ごとに異なる。だから、金持ちは豪華客船にのりお金(キャピタル)をもってフライトするのだ。住所のない上級流民ドリフターズになる。

     

    アマゾンが本社を置くワシントン州シアトルはかつては、所得税はあるものの売上税(消費税みたいなもの)がなかっために事業所得を赤字にしておけばその税額分を売値として安くできていたため成功した。(※現在は他州なみの9.6%)

    スターバックスは税金を払わずに済んでいる。

    アップルの実行税率が昨年は2%未満だったと報じられるのもそうだし、東証上場上位50社のうち45社がタックスヘイブンを活用しているのをみてもそうだ。いまや国際企業にとって競争手段、生存手段として必要不可欠なものになっている。

    競争のルールが違うところで、国際競争をしなければいけないのだから結果のパフォーマンスが異なるのは当然だ。税引き後の利益が2%とか4%とかいっているなかで、同じ商品を扱っているのにあそこの会社だけ14%もあるとなれば、競争の結果は有意にかわってくる。だってしょうがない。競争力のない個人商店にお客さんはこないし、納税地が理由で商品やサービスは選んではくれないのだから。

     

    租税回避地は世界各地にある

    http://editor.fem.jp/blog/?p=675

     

    そして、税の種類も様々あって税率も異なる。

    • 消費税:売上税のようなお金のやり取りに掛かる税金
    • 住民税や法人均等割:そこに存在するというだけでかけられる税金
    • 所得税:所得に掛かる税金
    • 固定資産税:日本では主に土地にかけられる
    • 相続税:日本ではもっか上昇中(知らないと死ぬよ!

     

    これは各国の実効税率を財務省発表を大手監査法人PwCがまとめたものだ。

    各国実効税率

    http://www.pwc.com/jp/ja/tax/news/library/keywords/effective-tax-rate.html

    このように税率は国によって異なる。だがそれ以上に制度そのものも異なるのだ。

     

    アメリカ、ラスベガスがあるネバダ州には、法人所得税なるものがそもそも存在しない。

    同じくペーパーカンパニーのメッカであるデラウエア州は営業活動を他州(米国外含む)でのみ行う場合は州の所得税は一切課されないし、申告書の提出すら免除される。ちなみに日本は法人登記をしているだけで赤字だろうがなんだろうが毎年均等割額で地方税7万が課税される(´・ω・`)

    ハワイの地方税率は4.4%なので日系登記会社も多い。ハワイを本社にして日本を支店にするなどいろいろなやり方がある。

     

    アメリカと日本ですらこのように税制税率が違うのだ。重要なところは、これが適法であるということ。さらにはどこかの国が他国に対して「おたくの税率低いんじゃないのー」とか内政干渉することはできないってことだ。
    だから、ケイマン諸島、マルタ、キプロス、モーリシャス、モナコ、パナマ、イギリス領ヴァージン諸島、バミューダ諸島など小国や資源のない国は税金を抑えてでも企業や裕福層を誘致しようとする。金持ちがたまに来てくれるだけで島がもりあがるからだ。

     

    道義的にこれらの貧しい国々がとった生存戦略を責めることはできない。

    お金持ちにノブレス・オブリージュ(貴族義務)よろしく、持つものは負担してねということはできるが、受益者負担の原則を考えれば、年収300万の人と同程度にしかインフラなんて利用してないしと言われると、スーパーリッチだという理由で数千億を毟る理由にはいささか弱い気もする。稼いでも取られるだけだってわかったら、じゃあ人並み以上には稼がんで遊んどこってなるのを責めることはできないと思う。
    才能があるからと才能を行使させることまで敷いたら、それは奴隷と変わらない。

     

    そういう意味では中世の貴族は社会に隷属する奴隷のような存在であったと考えることもできるかもしれないね。立場や名声、富を得るかわりに才能の行使を要求され領民に奉仕すると。でもまぁ、現代はそうではない。権利を補償しないのだから義務も強要できない。
    まあそんなわけで、道義的にどうなのっていわれると、ここ個別の事情を鑑みざるを得ないから、一方向からそれは倫理的ではない、道徳的ではないと断ずるべきではないと思うんだ。感情的には賛同されないだろうけどね。規範というものは時代や国によって変わってくるものだ。だから、これについてはこれから議論が深まればいいんじゃないかな。

    ま・・・、

    報道しなかったりして議論の素地をつくらないのはダメだと思いますが。

     

    でも、あいつらまっくろだよね

    適法の範囲内でおこなわれた租税回避地を利用することは適法で、道義的には異論が出るだろうが手続きとしては問題ない。

     

    では、何が問題かというと、例えば一国の主導者が数千億の個人資産があることがおおやけになって、親族を含めると数兆もの資産があるとする。仮定ね。真偽はいまのところ保留で。
    で、その保有している資産の桁があまりにもおかしいと、じゃ、どうやってその資産を稼ぎだしたんだってことになるわけ。

     

    政治家としての報酬は過去に得た報酬全部あわせても数億だよね。それを、どうやったら数千億、数兆とかになるのって話。何か立場を利用した利益誘導がおこなわれていて、そこでお金が増えちゃったんだよね。うんうんわかるわかるーーぅ!って話。で、これは租税回避行為とかどころじゃなくて、おおよそどこの国でも脱法犯罪行為であることが多い。反社会的勢力、マフィアだの暴力団だの例の国とかがパナマ文書に乗ったっていうのならわかるんだけどね、犯罪利得が資金洗浄されて結局どこに落ちてきてたかが、その公然の秘密がバレてしまう。つか、まっくろすぎんだろと。

     

    社会文化的に未成熟な国では役人などに賄賂を送らないと、逆にいろいろでっちあげられて投獄されたりする国もあるけれども、額もやばい、指導者レベルの人が60人もでてくるのはヤバイ。ヤバイよ。ヤバイんだよ。国会議員が毎年所有資産は0円です〜って公開する衆議院議員が75人いるのがかわいく見える程度にはやばい。

    衆院議員の資産一覧(小選挙区)
    http://www.asahi.com/topics/word/%E8%B3%87%E7%94%A3%E5%85%AC%E9%96%8B.html

    そういえば、最近は日本国内の種類や税額があがっててさ、それにともなって新しい法律もがんがん施行されてるんだけど、海外に資産を5000万円以上もってたら、申告せぇよっていう多分相続税対策を封じる手がうたれてんのね。

    No.7456 国外財産調書の提出義務
    https://www.nta.go.jp/taxanswer/hotei/7456.htm
    [平成27年4月1日現在法令等] 価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合

     

    不提出等に対する罰則
    >1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

     

    ま、まだその実効性はあれなんですけれども・・・。

     

     

    金融やばい

    欧州を中心に500ほどの銀行のペーパーカンパニー15,000社がばれる。

     

    これな。

    こないだ日本の産業中分類95種ぐらいの従業員あたりの付加価値額を計算したのな。金融の偏差値が130ぐらいあってな。偏差値130ってなんだそれって散布図から見なおしたんだけど、ああなるほどねと。あの業界でお金増えすぎ。今の、資金奔流の原因ってほぼ金融に原因があるといっていいんじゃないかな。

     

    現在のマネーストックやマネーサプライの状況をみるに、各国結構やばいことになっていて、綱渡り状態であると。なんかやばい、やばいしか言えてないんだけど、ここをほじくるとどっからか入ってきた金がファンドやら投資組合を通して各国の銀行に流れてたことがバレちゃうんだよね。もはや公然の秘密であったとも言えるのだけど、それがエビデンス付きの文章としてリークされるとちょっと状況がかわってくる。これにヨーロッパの主要銀行がのきなみ乗っているらしいのだけど、これでEUが信用不安に陥るとリーマン・ショックなんかの規模じゃないんだよね。きっつー。

     

    おい、アメリカがいねぇぞ

    日本もいねぇぞ!
    世界には主だった租税回避地がいくつかあってその中で今回リークがあったのは英国系。

    香港とかは英国領だったので、中国人とかが多くのっているのだけど、反面アメリカや日本がいない。

    今回リークがあったのがパナマではなく、ケイマン諸島であればアメリカや日本の主要法人、銀行などが軒並みリストされてたはず。シンガポールになると投資家界隈。フィリピンとかになればあそこらへん界隈。

     

    これによってダメージを受けたのはEUおよび、ロシア、中国で・・・

    日本は短期的には利得する側なんだけど、偏りすぎているのが、きな臭さすぎるんだよ。
    世界を憂う一市民じゃねぇよ。
    長期的には必要なことなのだろうけど、こりゃまた偏るよねぇ・・・。偏った結果なにがおきるのだろうか。わしゃ心配ですりごま団子が食べてみたくなったのだ。

     

    ああ、まんじゅうこわい。

    http://shoeidoh.shop-pro.jp/?pid=45114634

    (ツイッターですごいウマそうにつぶやいている人が居てさ・・・)

     

    他、参考

    国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が
    https://panamapapers.icij.org/the_power_players/

     

    パナマ文書のヤバさを俺に伝えるスレ:哲学ニュースnwk
    http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/5032133.html

  • 保育園につまづいて日本は死ぬべきなのか

    こんな匿名ブログの投稿が先週話題をさらった

    保育園落ちた日本死ね!!!
    http://anond.hatelabo.jp/20160215171759
    何なんだよ日本。
    一億総活躍社会じゃねーのかよ。
    昨日見事に保育園落ちたわ。
    どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。

    Japan Shine!!!
    ご次節がら保育園入所に落ちた人たちの怨嗟がネットでうずまいている。
    このままでは「梅の花」にならんで「日本死ね」が季語になりそうである。
    著しい需給不均衡がおきているわけで、なにがおきているのだろうか?

    待機児童や保育所事情について調べてみた。

    ざくっと概要と結論

    未就学児童1人あたり3~50万/月の手厚い補助金を育児家庭ではなく、施設運営会社に投じていること。
    また非常に厳しい施設基準と、従事職員規定。9割を超える常勤職員により、常に需要より足らないほうに調整される構造上の問題であることがわかった。

    待機児童の現状について

    施設利用率は39.26%、待機率1.24%
    0歳児10月時点では入所児童数の約半数相当が待機児童

    認可施設基準の困難さ

    0~1歳児あたり、1坪(2畳分)の保育室が必要
    2歳児以上を遊ばせる園庭も1人あたり1坪(公園の場合は徒歩5分以内)
    2階以上に設置しようとすると、こんどは大型商用ビルなみの施設基準

    困難な職員への規定

    保育従事職員は保育士資格を有する常勤職員が原則
    0歳児3人あたりに1人の保育士を配置しなければならない

    保育所の採算について

    保育所の売上の57.9%が官公庁からの収入
    従業者1人当たりの売上高は397万円しかない。この数字は飲食店よりも低い。
    にもかかわらず常用雇用率は91%から99.51%になるほどの高さがある

    女性の活躍が社会的に制限されている?

    一億総活躍社会とはいっているが日本にはM字カーブという出産時の女性が働けなくなるという状況を端的に表した社会統計がある。日本や韓国では出産にともない女性が職場から一時的に退場する。

    まぁ、日帰りで出産する欧米人と、骨格が小さく出産が一大事業である東洋人を比較するのもどうかとは思うけどな・・・。新生児の発達も人種によって違うのかな?

    参考元:

    第1部 男女共同参画社会の形成の状況
    第19図 女性の年齢階級別労働力率(国際比較)
    http://www.gender.go.jp/whitepaper/h23/gaiyou/html/honpen/b1_s03.html

    東京都の待機児童の現状について

    就学前児童数と保育所利用者数の割合をみると利用率は平成22年の32.2%から平成26年の37.6%へと改善している。施設利用率の平成27年分を計算したところ39.26%であった。全体待機率は1.24%である。

     

    世田谷区 が 最悪で唯一4桁で、1,182人利用率32.4%とかなり最悪の数字を叩き出している。
    なんか世田谷のほうから、日本死ねって聞こえてくるな。

     

    下記に待機率が2%以上ある自治体を書き出す。

    平成27年 待機児童数 待機率 施設利用率
    狛江市 175 4.66% 35.70%
    国立市 99 2.96% 39.80%
    小金井市 164 2.85% 33.40%
    世田谷区 1182 2.73% 32.40%
    渋谷区 252 2.62% 38.30%
    府中市 352 2.55% 37.50%
    調布市 296 2.54% 37.40%
    目黒区 294 2.34% 33.60%
    台東区 170 2.32% 38.00%
    三鷹市 209 2.26% 35.60%
    立川市 183 2.11% 42.00%
    豊島区 209 2.04% 42.70%

    全体の施設利用率は東京都全体の就学前児童数÷合計の施設利用数として計算している。
    待機率は待機児童数÷就学前児童数として計算している。

    参考:
    都内の保育サービスの状況について 東京都平成27年7月23日 福祉保健局
    http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2015/07/60p7n200.htm
    http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2015/07/DATA/60p7n202.pdf

     

    施設を利用しようともしていない家庭を考えると潜在需要はさらにあるだろう。
    注意しなければいけないのはこれは4月1日時点の調査であることだ。

    平成10年の調査では、4月から半年経過した10月時点の調査したものがあるが、
    待機児童数は7,818人が12,297人になっている。これは公立の入園が4月に集中するためである。

    平成10年待機児童数2016-02-22 10_50_36-110002944183.pdf

     

    参考:
    231 東京都における入所待機児童について 石坂 孝喜 大塚保育園
    http://ci.nii.ac.jp/naid/110002944183

     

    特に0歳から1歳までの待機率および、半年経過時点ので待機率の増加はすさまじい。
    入所児童数8,356に対し4月1日の待機児童1,328人10月1日の待機児童数は4,218人。
    なんと半数相当が待機児童である。入学年度がくるまで生まれた時期によっては待機しなければならない。
    雇用保険法によると育児休暇が1歳または、待機児童になった場合1歳6ヶ月まで育児休暇が男女関係なく習得できることになっているが、まあ実態としては難しいだろう。うちのような独り親方の会社が育児休暇を取得したら、完全に業務が停止するしね・・・

     

    認可施設基準について

    需要があるのに、なぜ保育所が新設されないのだろうか。まず考えたのが保育所をつくるための基準が厳しいのではないかということだ。実際しらべてみたところとても厳しかった。
    保育施設に0~1歳児あたり、1坪(2畳分)が必要であり、2歳児以上を遊ばせる園庭にも1人1坪必要である。
    参考までに都内は一坪あたりの家賃は1~2万が相場である。特に一階の路面賃料は、商業上も価値があるので高くなるが、保育所を2階以上に設置しようとすると、こんどは大型商用ビルなみの耐火基準が必要であり、保育所用にビルをデザインしていないと無理な物件条件であった。以下、抜粋する。

    保育室等の設置

    不審者の侵入防止対策、モニタ、オートロック、安全家具、飛散防止照明や、指つめ防止、ベビーゲート、角の面取り
    2歳以上児1人当たり1.98平方メートル (内法面積) 以上。
    A型0歳児及び1歳児1人当たり3.3平方メートル(内法面積)以上。
    B型0歳児及び1歳児1人当たり2.5平方メートル(内法面積)以上。

    医務室の設置

    事務室等と兼用も可。

    屋外遊戯場の確保

    2歳以上児1人当たり3.3 平方メートル (児童が実際に遊戯できる面積) 以上。保育所付近にある屋外遊戯場に代わるべき場所を含む。園庭を有することが望ましいが、代替遊戯場は保育所から徒歩で概ね5分以内の距離
    屋上を屋外遊戯場として使用可能(但し施設基準あり)

    調理室の設置

    保育室と区画されていること。食品製造業等取締条例第五条の四に基づき保健所へ届、調乳室を設置することが望ましい。

    その他の施設の設置

    便所には保育室用とは別に便所専用の手洗設備、汚物流しを設置、原則として沐浴設備あるいはシャワーブース
    乳幼児が使用する施設は1階に設けることが望ましい。

    避難路の確保

    非常口は、2方向の避難経路
    同一避難路を通って敷地外に出る経路は不可
    避難路は幅1.5メートル以上を確保することが望ましい
    避難先が同一の公道である場合には、最終的な避難位置が10m以上離れていること。

    2階以上に設置する場合の基準

    建築基準法第2条第9号の2に規定する耐火建築物
    退避可能なバルコニー(2階設置の場合)
    屋外階段と屋内階段
    保育室等の各部分からその一に至る歩行距離が30メートル以下
    スプリンクラー設備その他これに類するもの
    調理用器具の種類に応じて有効な自動消火装置
    壁及び天井の室内に面する仕上げを不燃材料
    火災を通報する設備
    カーテン、敷物、建具等で可燃性のものについて防炎処理
    耐震性能に関する要件。新耐震基準により建築された建物

    平成22年10月 東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課
    http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/129/1811/534/d00140647_d/fil/shisetukijyun.pdf

    困難な職員への規定

    同様に職員の配置についても厳しい規定がある。

    保育従事職員は保育士資格を有する常勤職員を原則とし、0歳児3人あたり1人の保育士を配置しなければならない。1歳未満の待機児童が多いわけだ。下記要件を抜粋する。

    常勤職員

    当該認証保育所において1日6時間以上かつ月20日以上

    保育士

    保育士となる資格

    保育従事職員配置基準

    (0歳児数×1/3)+{(1歳児数+2歳児数)×1/6}+(3歳児数×1/20)+(4歳以上児数×1/30)

    保育従事職員は保育士資格を有する常勤職員を原則
    保育従事職員数の6割以上を保育士資格を有する常勤職員とする
    0歳児3人につき一人以上、1歳児及び2歳児6人につき一人以上、
    3歳児20人につき一人以上、4歳以上児30人につき一人以上
    認証保育所においては、短時間利用児35人につき一人以上

    施設長

    同一施設で継続して1年以上保育士として勤務した経験

     

    保育所の採算について

    この時点で、認可保育を提供しようとしたら普通の家庭が払えるようなサービス価格で提供できないことがわかった。
    では実際どのように運営されているのだろうか?
    保育所の57.9%が官公庁からの収入で、従業者1人当たりの売上高は397万円で、飲食店の480万円よりも低い。
    雇用者数が10人を超える運営会社は91%から99.51%になるほどの常用雇用率で、他産業に比べるまでもなく高い。どのようになっているのか調べてみた。

     

    参考:

    http://d.hatena.ne.jp/azuma_ryo/20100826/1282795083

    認可保育園の運営費は、国・都道府県・市区町村からの補助金で99%を賄っています。ただ、ここで間違ってはいけないのは、補助金というのは100%税金ではないということです。
    ..
    利用者負担の割合があり、補助金のうちおよそ10%ほどが利用者から徴収した保育料にあたります。
    ..
    公立保育園では年度始め(4月)の児童数で、私立は毎月初日の児童数で補助金の額が決まります。
    ..
    保育園の経費の80%は人件費です。一般的に、85%を超えている場合は人件費過多、70%を下回っている場合は雇用環境が劣悪

     

    新規参入は断固阻止!! 保育園業界に巣くう利権の闇
    http://diamond.jp/articles/-/6229

    月謝の平均は約2万円
    ..
    東京都では、私立認可保育園で約30万円、公立では約50万円を、0歳児1人当たりの保育費用として毎月補助
    ..
    都心の認可外保育園の多くは、雑居ビルで運営され、0歳児の月謝は6万~7万円
    ..
    私立認可保育園では、女性職員は30歳までに辞めるように仕向けつつ、なるべく若い職員を中心にして人件費を抑えている..
    既得権を手にしている保育園業界からの猛反発が起こる。加えて、現在200万人いる認可保育園に通う子どもの親たちも、見方によっては既得権者といえる。改革によって今通っている認可保育園のサービスが見直されるとしたら、親たちから反対の声が上がりかねない

     

     

    東京都 ニーズが高まる医療,福祉関連サービス
    http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/monthly/sangyo/sangyo-industry-and-employment/2014/pdf/ch02/2_07.pdf

    待機児童数2016-02-22 11_02_17-スタート

    東京の保育所数と保育所定員は増加が続いており、2013年は認証保育所1を含めて約2千6百所、約21
    万7千人となりました。認可保育所数は2004年から2013年にかけて約18%増加していますが、認証保育
    所は同じ期間に3倍以上へと、より大幅に増加

    2009年以降、待機児童数は7千人を超える高い水準で推移し、そのう
    ち0~2歳児が約9割

    開所時間が12時間を超える割合が2002年の4.4%から2012年は25.5%まで上昇

     

    平成24年経済センサス-活動調査(確報)産業別集計(建設業、医療・福祉、学校教育及びサービス業に関する集計)
    http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/7/b/f/7bf05b64781d3b94f96b7db5e6834f5d.pdf

    事業所数 174
    従業者数(人) 3,217
    1事業所当たり 売上高(万円)7,336万
    従業者1人当たり 売上高(万円) 397万

     

    参考までに他の産業中分類ごとの売上規模が低いほうを並べておく。

    91 職業紹介・労働者派遣業 593万円
    94 宗教 46万円
    95 その他のサービス業 510万円
    76 飲食店 480万円

    保育所は飲食店よりも従業員ごとの売上高で下回る。

     

    表Ⅰ-40 医療、福祉における産業細分類別売上高及び収入を得た相手先別収入額
    相手先別収入額2016-02-21 20_10_48-新しい通知

    57.9%が官公庁からの売上、個人の一般消費者は33.1%

     

    経済センサス

    経済センサスのデータから保育所関係のデータをひっぱってきてエクセルで図にした

    保育所の企業数、事業所数2016-02-22 13_30_33-Cortana

    園の常用雇用規模別の保育所の企業数、事業所数である。10~30人程度の比較的小規模な事業者が多いことがわかる。

     

     

    保育所従業員数2016-02-22 13_30_59-保育所経済センサス02000-13.xlsx - Excel

    イメージどおり女性ばかりの職場ということがわかる。それと同時に、企業数としては少ない従業員100人以上の企業が業界の保育士の就職先の最頻値であることがわかる。公的な認可保育企業だろうか?

     

     

    保育所常勤者数および男女比2016-02-22 13_33_04-Cortana

    認可の雇用者規定に常勤の規定があるために、一定規模以上の保育所では異様に常勤者率が高いことがわかる。99.5%とかパートとかアルバイトのような調整可能な労働力の入る余地がまったくない制度になっていることがわかる。

     

    保育所常用雇用規模別 事業所別の雇用人数2016-02-22 13_38_46-保育所経済センサス02000-13.xlsx - Excel

    従業員数が1000人を超える企業はじつは都内には3社しかなく、2000人を超える企業は1社しかない。都外以外のデータをみるにいずれも全国支社をもっているようなので、ビジネス的に採算公立がよさそうなのは事業所あたり12人程度なのであろうが、都内は物件の方が貴重になるので、保育所あたり35~30人の保育士を詰め込むことになるのであろう。

     

     

    参考元:

    http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001064690&cycode=0

    企業産業(小分類)、企業常用雇用者規模(海外を含む)(11区分)、経営組織(3区分)、資本金階級(10区分:会社企業のみ)別企業等数、事業所数、男女別従業者数及び常用雇用者数-都道府県、大都市

    企業産業(中分類)、国内支所の分布範囲(2区分)別企業等数、事業所数、従業者数、売上(収入)金額及び1企業等当たり売上(収入)金額(国内複数事業所企業)-都道府県

     

    解決策など考察

    公的な取引先からの収入をいれて、売上高が従業者1人当たりの397万円ということは、給料水準はこれ以下におさえられなければならず、過剰に安い人件費により労働供給がなされていて不健全である。知り合いで保育士をやっていた人が安すぎて生活できないからと辞めていたが納得の数字だ。

     

    また、施設基準を見る限り、認定保育施設を建てようとすると、そもそもの土地の固定資産税分も稼げそうになく、社寺や宗教団体が保有する土地ぐらいでしか、そもそもの採算ラインに乗らないであろう。ビジネス上、都内に新規参入の余地はまったくない。

     

    雇用を維持するには会社側が負担している社会保障費など管理費用を含めると給与の3倍が必要になるといわれている。給与20万の人を雇うには60万円が必要ということだ。20万円の給与をもらうためには60万円分稼がなければならないのだ。

     

    0歳児保育は1人の従業員に対して、3人しか面倒みれないのであれば、たとえ支払いが20万の給与だとしても人件費分だけで20万を考慮しなければならない。

    東京都の1人あたりオフィス面積は平均3.87坪月額65,192円だそうである。
    https://soken.xymax.co.jp/2015/10/20/151020-office_space_per_person_2015/

    これに保育施設分の保育室1坪を足せば、8万である。
    ゼロ歳児保育をしようとしたばあい、利用者には最低でも28万の費用がかかるのである。
    これには建物を建てる、土地取得費用、家具などの内作の初期費用を含んでいない。

     

    かわりに、認可保育では毎月幼稚園に0歳児1人当たりの保育費用として補助される私立約30万円、公立約50万円が、これを肩代わりしているため、月謝がやすくなっているにすぎない。
    つまり、認可保育に入れなかった児童、さらには1~2%の待機児童はこれ以上の補助を受けられないことになる。

     

    日本の税の再分配はOECDの調査によると現金による再分配がほとんどおこなわれていないそうであるが、若者向けにも金をつかっていると言うかもしれないが、それは新生児の育英補助ではなく、保育園事業をしている既存業者の保護にほかならない。

     

    利用者がここのサービスがいいと価格とサービスを比較して選ぶのではないから、競争も発生していないし、新規参入も撤退も発生していない。利用者が間違ったサービスを選び事故にまきこまれないように保護しているという名目であろうが、これは行政による新規参入障壁の形成である。

    根深い怨嗟を生みながらも、なかなか改善されなてこなかったのは、その貧乏くじを引くのが全体でも1.24%しかいないからである。

    おもいつき提言

    常勤職員の緩和

    センサー類や、保育資格者以外の常時監視があれば、0歳児保育3人に有資格者1人の比率も緩和できるのではないか。常勤者雇用であると需給調整が困難であるので必ず足らないほうで調整されてしまう。構造的な問題である。

    3ヶ月以上の待機児童家庭への毎月補助10万

    保育所に育児支援金といって30万とか50万を払っているのであれば、待機児童になってしまった家庭にも育児費用として私立なみの補助をおこなわなければそもそもの補助の性質からずれていると言わざるをえず、フェアではない。三鷹市の場合、0歳児待機児童数は209人なので2,090万、年間2億5千万程度の予算規模だ。

    基準年度の見直し

    生まれる時期が同じではないのだから、年度での入学や補助金の決定は柔軟性がない。
    複数年度で予算化し、都度見直すほうこうで。

    職場保育施設など

    園に補助金ではなく、子育て世代に補助することで、職場に場所をつくったり、そこでシッターを雇ったりできるようになる。なんにせよ、補助金による過剰競争力をもつ認可保育の存在が、育児における新しい産業形態がうまれる創意工夫の余地をまったく潰している。

     

    あと、ciniiなどで論文も掘ったのだが学術的な研究が見当たらなかったのが残念ね。

    ちょっと雑駁になったけど、とりあえず投稿。あとはみなさんよしなに。

  • 人権という発明と奴隷制やら身分制やら

    奴隷解放宣言よりわずか前、米国議会では真面目な討論がされていた。

    「奴隷を鞭打つとき、女性であった場合、裸にするのは紳士的ではないのではないか?」

    わずか200年前の出来事である。
    後世からすると滑稽とも言えるような議論を真面目にする時期というものがある。そしてまだその議論をするにまで至っていない国や地域というものも存在する。

     

    アメリカの奴隷制

    初代大統領のジョージ・ワシントン、アメリカ独立宣言(1776年)のトマス・ジェファソンも当然のように奴隷所有階級だ。エイブラハム・リンカーンが1863年に奴隷解放宣言をしたときもリンカーンのまわりに奴隷商はいたし、義父は奴隷売買業者だったのではないかとも言われている。開放宣言というエポックになる程度にその時代まで奴隷制というのはごく当たり前に社会制度として存在した。

     
    奴隷制度があった時代の欧米の資産家の複式簿記でしるされた帳簿には奴隷という勘定科目が乗っているという話しをきいたことがあるが、19世紀に隆盛した複式簿記よりも奴隷のほうがあとだとは、いやはやである。

     
    米国南部の奴隷の多い地域、1750年ヴァージニア州の黒人奴隷が102,000人、総人口231,000人である。奴隷の割合はなんと人口の44.15%にものぼる!1860年まで時代を下って、米国全体平均でも12.57%(3,953,760/31,443,321)が奴隷である。

     

    奴隷推移2015-12-24 19_58_25-スタート

    http://aboutusa.japan.usembassy.gov/pdfs/wwwf-pub-freeatlast1.pdf

    労働力が直接、生産力に直結していた時代。家内制手工業から工場制手工業に変遷する未満の時期は、労働資本=人間の頭数である。この割合で奴隷が必要であったようだ。

     

     

    日本の身分制と人口割合

    日本でも領民は財産だった。もっとも支配層も「よき支配者」であることが求められたわけで、一揆やお取り潰しなどもあったので支配地域ごとに見れば絶対王政といえるようなものでもなかったようだが、統治体系として支配層(家)の財産として勘定された。庄屋には郡役所に収める財産目録には抱えている領民や小作農そのものや、そこからの上がりを”確定申告”することが責務付けられていた。律令制下での荘園制の時代は言うにおよばず、労働力が生産性に直結していた時代のあいだは文字通り領民こそが財産であったのだ。

     

    1831年 墓石制限令 ← 平民の墓石を許可
    1863年 アメリカ奴隷解放宣言
    1869年 四民平等 ← 皇族・華族・士族・卒族・平民・賤民という身分制は残す
    1870年 平民苗字許可
    1871年 卒族、賤民を平民に編入(新平民)、平民と華族・士族間との通婚許可
    1872年 皆学、職業転居の自由を制定
    1875年 平民苗字必称義務令
    1876年 秩禄処分 ← 華士族に対する家禄支給の全廃
    1947年 第1回参議院議員選挙、日本国憲法施行 ← 皇室以外の世襲身分の廃止

     

    四民平等とされた明治維新であるが、実際は身分制度は残って華族や士族という身分制度が廃されたのは1947年の戦後になってからである。
    明治維新で秩禄処分で対象になったのは支配階級である。この明治3年ごろの士族+卒族は人口比率で6.4%程度であったようだ。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%AB%E6%97%8F

     

    賤民制が制度としてあった時代の人口割合をすこし調べてみる。
    佐貫藩(千葉県/上総国)1万6千石(領民1万6千人相当)で穢多97人、非人26人とある。人口比で考えると0.76%にしか相当しない。久留里藩(千葉県/上総国)3万石に対し、穢多入口74人、非人人口128人でこちらも人口比0.67%程度。

    c.f. 明治初期における穢多・非人の人口分布に関する一考察(3) 松井 茂樹
    http://ci.nii.ac.jp/els/110004687558.pdf?id=ART0007422310&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1450953551&cp=

    江戸の人口で検討してみる。町方並寺社門前人口と、弾左衛門・車善七・松右衛門の手下(いずれも世襲の江戸の穢多頭、非人頭役職名)と当日寄非人(無宿人など)を合計して計算する。

    c.f. 江戸の人口
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%8F%A3

    1692年江戸の門前人口353,588に対して、非人頭手下勢4,329人、当日寄非人1,037人、これは人口に対して1.52%に相当する。1835年の2.6%を最大として、割合でみると都市部でも人口比1%代後半から2%前半で推移しているようだ。wikipediaから数字を参照しグラフにまとめた。

     

    穢多非人人口比率2015-12-27 20_23_39-フォト

    ※左側縦軸:門前人口、右側縦軸:手下、当日寄人口

     

    グラフの1750年とか、1777年とかの当日寄非人の数字が極端に減っているのを見ると、当時の役人が鉛筆をナメた数字のような気もするが、wikipediaからのデータをつかったに過ぎず、引用文献から精査したわけではないので、郊外都市、千葉県のようなところで1%未満、江戸で2%前後というぐらいの割合なのであろうという規模感がつかめれば充分である。

     

    保護必要層とアウトサイダー

    ***手下勢と言うと、現在では指定暴力団を連想する。
    https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai18/h26_jousei.pdf

    日本で公的に現認されているアウトサイダーは指定暴力団であるが暴力団構成員数は、警察庁の統計によれば平成26年で構成員(22,300)と準構成員(31,200)を合計して53,500人である。平成3年には91,000人であったが減少の一途をたどり現在最小値を記録している。人口比では0.045%しかいない。江戸時代の手下勢と比較すると最低でも20倍以上の差がある。

     
    当日寄無宿人は今でいうところのホームレスを連想する。
    ホームレスは厚生労働省平成24年度調査では全国に9,576人しかいないことになっている。そんな少ないわけもないだろうと思うのだが、この数字を信じれば人口比に直すと0.0079%程度しかいないことになっている。

    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000027ptf.html
    なんか、どっちの数字もお役人の数字の取り方への誠実さが江戸時代以下な気がするのだが・・・、どうかな?

     

    米国ではソーシャルセキュリティーナンバーを持つためには住所が必要で、住宅を借りるには銀行口座が必要で、銀行口座を開設するにはソーシャルセキュリティーナンバーが必要で、このサイクルから弾かれるとアウトサイダーになってしまうという流れがある。江戸時代で言うならば寺請してもらえないと長屋でご隠居から部屋も借りられず、部屋もなければ身請けも口寄せもしてもらえないので生業ができず、社会的にはアウトサイダーになってしまうのと似ている。
    歴史からみると社会構成的には人口の2パーセンタイルぐらいは社会保護が必要になるはずなので、かなりの数を取りこぼしているのではないだろうか?マイナンバーの発番とかで住所が確認できない層を認識できるようになれば漂流民の社会統計もとれるようになるかな?

     
    見落としているのかなと、生活保護世帯数について調べたら、平成26年の速報値では2,163,716人となっていた。人口比に直すと1.8%であった。
    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000062671.pdf

     

    労働層と奴隷と見習い身分

    さて、保護層とアウトサイダーをあわせても人口比2%程度なので、米国などで奴隷制が必要としていた12-44%とは大きく異ることがわかる。現代のイタリアの例だが、都市労働者階級(37%)+農村労働者階級(9%)で労働層の合計がちょうど46%となっている。

     

    ブルジョアジー(労働人口の10%)[4] – 上流階級の起業家・管理職・政治家・自営業など
    ホワイトカラー中流階級(17%) [4] – 肉体労働ではない中流階級労働者など
    都市プチブルジョア(14%) [4] – 商店主・スモールビジネス起業家・自営業など
    農村プチブルジョア(10%) [4] – 田舎で農林業に従事する、小規模起業家・不動産オーナー
    都市労働者階級(37%) [4] – 都市で肉体労働に従事する人々
    農村労働者階級(9%) [4] – 農業・林業・漁業などの第一次産業に従事する人々
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E9%9A%8E%E7%B4%9A

     

    現代のわれわれの「奴隷」という言葉への価値観からすると、鉄球を足につけ鞭で打たれながら強制的に労動を強いられているイメージはあるが、酷い経営者なんていうのはいつの世にもいるわけで、奴隷を殺してしまうまで鞭打つか、従業員を鬱になるまで追い込むかぐらいの差でしかないのかもしれない。

     
    労働層、これらは江戸時代で考えるとどの層であったのだろうか?
    小作人、住み込みで働く職人見習いや丁稚という身分の人たちには決められた給金というものがなかった。いや、そもそも明治維新前までは人の流動がすくなかったために、お金の掛取り(集金)は盆と暮れの年2回程度で、他はツケの信用でまわる社会であったので給金が払われないことは労働衛生環境的にはなんの問題もなかったのやもしれない。

     
    現代まで残っている職業でみると、お相撲さん、力士の給与は幕下にはつかなくて、幕内も引退するまで部屋預かりにして独立するときに初めて現金でもらうみたいな運用がされていると聞く。これが昔しながらなのやりかたなのだろう。衣食住が確保されていれば、毎月の決められた金額を与えられるより、小遣いでこと足りる。

     

    この手順を踏まずに飛び出したりすると、身請け人もおらず、寺請証文を書いてもらえないので転居も新しい生業もすることができない。核家族化の前の長屋の時代、まさに「大家といえば親も同然、店子(たなこ)といえば子も同然」の時代であった。親方は親で、弟子は子なのだ。

     
    借金のかたに吉原に身請けされるなどとあるが、結局そこで読み書きや礼儀などの教育を受けて、嫁ぎ先をみつけて最終的にはいずこかに身請けされる。当時の世俗を調べてみると、人身売買のような悲壮感は感じない。ただし飢饉の時はかなりの悲惨さがある。
    古代アテネの時代から、楽しい奴隷ライフをおくれせてくれない雇い主は結局殺されるかなにかするので、どんな生業でも、持続可能性がない人の道にそれたことを長くは続けることは難しい。

     

     

    身分がある家の身分の無い人

    現代の人権感覚から考えると、奴隷制より恐ろしいなと思うのは身分や財産がある家の身分がない人への扱いである。財産を散逸させないために、家督を継がない次男以下には婚姻や外働き、分家を許さず部屋住みの下男のような扱いをしていたという記録がある。独立を許さない分下男より辛い。

     
    耕作面積が少く田分けが難しかった山間部の地域では財産を散逸させないために、農家ですら厳格な家長制度を運用する必要があった。比較的近世まで続いた長野の風習「おじろく」「おばさ」で、記録を追うことができる。

     
    名家や武家の次男は家督を継がせないために、仏門に出家させ女人禁制の山に幽閉し、結婚させないことが常道とされた。ここらへんは有名所だと真言宗の総本山高野山などのご由緒で伺うことができる。院や房は、学を収めるための場として機能し、長男に何かあったときのために待機場であるだけでなく、図書館や叡智の集積地修練場となり、多くの人材も排出装置として機能した。

     
    長子相続制は、世襲にまつわる係争を回避するための経験則からの発明なので、日本だけでなく英国などの爵位などの身分制を置く地域に広く見られるが、今回はちと本筋からそれるので言及するに留める。

    現代の身分制

    現代の身分制は職業が代替しているということに異存がある人はいるだろうか?ニュースでも犯罪者は無職**、自営業**、公務員**だし、ニュースソースとして重要なのは職業と年齢だ。

     

    家内制手工業から工場制手工業にかわり、そして工場制機械工業にかわり、これら過去の身分制度はあまり用をなさない意味のないものになった。江戸時代から人口が4倍になっても、お米の生産量は1.4倍程度にしか増えていない。貿易という手段で、資源を手にいれることができるようになり、機械のほうが労働力より安くなったからだ。
    この200年で人口が4倍に増え、平民にも苗字が必要になったし、墓も必要になった。
    この100年で農作地よりも職住近接が重要になり、土地のほうが資産価値をもつようになった。
    この50年で身請けしてくれる家の身分よりも、身請けしてくれる企業での役職が重要になった。
    この30年。工場制機械工業は成熟し、労動組合などが組織され労働者の権利が確立し、正社員だの非正規だのと新たな身分制度がうまれてきている。
    だが、しかし、この10年。
    人頭の時代も土地や設備などの資源の時代も終わり、金融と情報の時代になった。
    科学技術の発展をみると工場制機械工業すらも終焉の様相が伺える。工業化の時代(Industrial Age)は一段落し知財の時代(Transfer of knowledge)になったそうである。情報革命(Information revolution)では、工場は完全無人化され、コンピューターの頭脳ICは既にコンピュータによってつくられている。工場制機械工業から自動制機械工業になったと言っていい。これらが代替するのは労働層だけでなくホワイトカラーだ。人切り(首切り)がまるでリストラクションの唯一の手段かのように、評価される現状は、モジュール化できない労働層には経済性がないと判断されているからだ。

     
    企業同士がM&Aをするときに、当然、無形資産の価値評価(日本がとてつもなく弱い分野)をする必要がある。これには「のれん代」だけでなく、そこに勤めている人材の価値評価(valuation)をする必要がある。人材価値評価は、言葉悪く言えば、まー、奴隷という勘定科目よろしく、企業財産目録に人のリストと値札をつけるような話しなのではあるが、経済的に評価するために必要な仕組みだ。こういう流れは未来においてどうなるであろうか?

     

     

    情報化がすすむこれからの10年、職住近接の意味は変わるであろうし、われわれが人権だとおもっているものの常識も50年後にはまるで違うものになっているに違いない。「うわ、この時代の人たちお金で時間を拘束されてたみたいよ」とかいわれるのかもしれない。

     

     

    … あと書き。

    内容にかなーーりセンシティブなものを含んでいる箇所があるので、かなり回りくどく書いたら、思っていた数倍の長さになってしまった。でも、六曜が差別だとかで揉める地域もあるらしいので正直もう意味わかんないんだけど・・・こんなんでどうだろう?