カテゴリー: 防災

  • 伊方原発だけは本当ないなーと思う

    先日伊方原発が再稼働し臨界に達した。

    再稼働反対と叫ぶ人たちが漂わせる近寄っちゃダメだ臭がすごくて、この件については声をあげづらいんだけど伊方原発だけは本当何考えてこんなところに原発設置したんだとセンスの無さに愕然とする。そのうえ、川内、伊方から動かすという判断がちょっと正直なに考えてるのかわからない。

    幸いなことに、再稼働したのは3号機のみで、1994年稼働の比較的新しい型。1977年の1号機と1982年の2号機は動いていないのには、まだ良心を感じるが、でも、総合してダメ。

    地震がおきないということはない

    日本は4枚のプレートの境目の歪により盛り上がってできている島国であるので、構造上地震の巣である。
    地球スケールの地殻変動において数年、数十年というのはほぼ瞬間の出来事にすぎない。

    1868年 チリ・アリカ地震 マグニチュード8.8 – 9.1
    1877年 チリ・イキケ地震 マグニチュード9.0
    2004年 スマトラ島沖地震 マグニチュード9.1(バンダ・アチェ南南東沖)
    2012年 スマトラ島沖地震 マグニチュード8.6(バンダ・アチェ南西沖)

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%88%E3%83%A9%E5%B3%B6%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87

    地震が起きるのは、生き物がうんこをするのと同程度の生理現象。

     

    歪みが地形を形作っている

    テーブルクロスなどを左右から押して、盛り上がったシワができたところが海面より上にでているのが日本だ。
    山や、半島、岬、湾になっている部分は力が加わっている方向の意味があり、伊方原発がのっている佐田岬半島は、その形からもわかるように、シワのようにできたいわば折り目の部分である。なんでこんな細長い折り目ができているか考えなくてはいけない。

    これは、西日本を横断する中央構造線という、活発で、ずぶとい活断層帯の現れなのだ。

    画像引用元:伊方原発を止めておくべき5つの理由
    http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/5/blog/52900/

     

    エリアのスロースリップ

    なにも体感で揺れるのだけが地震ではない。

    広島大学が収集しているATOMS(微動自動モニタリング)は南海沈み込み帯の深部で発生しているスロースリップイベントや超低周波地震といった、微動の検出をおこなっている。

    滑り込みで破壊(固着域/アスペリティがあるもの)があるものが地震で、するーっとゆっくり滑り込んでしまうのがゆっくり地震だ。

    最近のお気に入りなのだが、ちょうど四国の微動地震が盛り上がってきたタイミングで、伊方動きました報告なので、タイミングわるいなーと。

     

    今月の四国東部のゆっくり地震の発生の様子
    http://tremor.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/day.cgi?&day=1&month=08&year=16&figtype=omap&area=e-shikoku

    今月の四国西部のゆっくり地震の発生の様子
    http://tremor.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/day.cgi?day=1&year=16&figtype=omap&area=w-shikoku&month=08

    http://tremor.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/

     

    ちなみに、東日本の頃の四国西部の微動地震はこんな感じだ。

     

    ちょうど、先日、日本が載っている同じ太平洋プレートの辺縁、ニューカレドニア(ローヤリティー諸島南東方)で8月12日にマグニチュード7.6の地震が発生した。地球は今日も元気に活動している。
    http://www.jma.go.jp/jp/quake/20160812113049394-121027.html

    4/15 熊本 M7.0
    4/16 エクアドル M7.8
    4/28 バヌアツ M7.0
    7/29 小笠原沖 M7.7
    8/12 ニューカレドニア M7.6

    バヌアツの法則などと名前がついたりしているが、ニュージーランドやチリが揺れれば日本も揺れる。同じテーブルクロスに載っているのだから、不思議なことではない。ただ、1年も10年も地球からは一瞬というだけだ。

    南太平洋の巨大地震が連動か 「バヌアツの法則」の不気味
    http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/187724?pc=true

     

     

    原発のリスクアセスメントがダメな感じ

    基準地震動を650ガルとなっているが、同じ中央構造線上にあるマグニチュード7.3の熊本地震では益城(ましき)町で1580ガルを記録した。

    津波は最大8.1mが想定されていて、原発の標高が10mなので大丈夫となっているが、1596年の慶長地震(中央構造線断層帯が震源)では伊方原発付近に10-15mの大津波が到達した可能性があるそうな。

    これらのリスク評価が甘いとは言わないけれども、事故が起きた際のリスク許容がダメな感じ。
    過酷事故が起きないものとして目をつむっているところあたりが事故前とあまり変わっていない。

    安全に運用され、想定の範囲内であれば大丈夫というリスク評価はわかるが、テロ攻撃でもなんでもいいが、事故が起きたのちの避難計画や、対応防除策などの見積もりが甘すぎる。

    安全に運用されないし、運用者もミスをする。運営者はコストのためにリスクを過少に見積もる。
    フェイルセーフではないのに、エラープロシジャーがない。すでにブラック・スワンがいる状態であるにもかかわらず、事故がおきたらどのように対処をするんだという設計が脆弱すぎる。事故がおきたら、ボートに乗って大分に逃げるんだってさ・・・。
    トピックス:1596年に発生した地震の伊方発電所周辺への影響について
    http://www.yonden.co.jp/energy/atom/ikata/page_08a.html

     

    怖がる大人たち

    理論上過酷事故がおきる可能性は著しく低いことに、異論を唱えるつもりはあまりない。
    それは理論上、お化けが居る可能性はほぼ無いと言っているのと変わらない。

    子どもが「お化けは怖い」と泣き叫んでいるのを「安全だ」「お化けなんかいない」と説き伏せて、暗闇に連れていくのは情動的には賛成できない。人間はよくわからないものを怖がる。怖がられることで、遠回りになったり、導入できないことはままある。

    怖がる子どもはやがて大人になり、怖がらなくなるかもしれない。
    だが怖がる大人はどうだろうか?

    江戸時代、写真は魂が取られると思っている人たちもいたし、汽車がくると真空になって吸い寄せられてハネられると思っている人たちも居た。現代でこそテレビやヤジオを怖がる人たちはいないが、それを怖がらないのは当たり前になっているからだ。

    ポケモンすら本能的に怖がり、嫌がる人たちがいるのだ。

    原発は事故を起こしてしまったため、それで怖がる大人達が多く出てしまった。
    だから迂回が必要だし、時間が必要だ。
    丁寧に説明する意外に何ができるだろうか?
    説明しないで、強引に推し進めることはできるかもしれない。
    しかし、怖がっているのに強引に暗闇に連れて行かれた子は将来にわたってそれを忘れないだろう。

     

    コストとしての恐怖

    原発を基盤産業にしてしまった田舎の恐怖がそこにある。
    産油で財を成したようなもので、油田が枯れてしまったらそこにはどのように価値生産をおこなったらよいかわからない人たちだけが取り残される。石炭炭鉱の町でおきたことと同じことを拡大再生産されることになる。

    日本は急速な高齢化と若手、生産年齢人口が今後30年で30%以上減少することにより社会環境が一変する。
    送電網や道路、トンネル、橋脚などの輸送網のインフラを維持更新していくことができなくなる。
    人手も需要がなくなるのだ。

    若い世代やその次の世代はそれら老朽インフラの介護をおこなわなくてはならなくなる。
    まだ少しでも余力が少しでもあるうちに、次の苗を植えて交代しておくべきなのだ。

    事業継承者がいないまま事業者が亡くなるったり、事故で活動不能になる。畑なら耕作放棄地で済むかもしれない。だが、インフラや産業は?維持コストや廃棄コスト、万が一事故ったときの現状復帰のための費用などのサンクコスト(埋没費用)はできるだけ生前に処理をおこなっておくべきなのだ。生前退位バンザイ。

     

    他、参考

    http://www.pref.ehime.jp/gen/chiji_message28.html#h280812
    平成28年8月12日 伊方原発3号機の原子炉起動について 愛媛県知事 中村 時広

     

    https://www.nsr.go.jp/nra/gaiyou/profile02.html
    原子力規制委員会
    田中俊一委員長
    更田豊志委員
    田中知委員
    石渡明委員
    伴 信彦委員
    伊方原発 中央構造線断層帯 耐震性評価、割れたまま
    http://mainichi.jp/articles/20160812/k00/00m/040/096000c

  • 日奈久断層から別府島原地溝帯の地震に変化か

    今晩から明日にかけ瞬間最大風速35メートル、例年4月一ヶ月分の雨量が1日に降雨するという台風なみの暴風雨になると予想されている。緩んだ地盤に雨が入り込むので土砂災害が予想される。被災地では最大限の注意をされたし。

     

     

    さて、震源が熊本から大分にまで広がりつつある。

     

    2016-04-16 12_36_42-新しい通知

    http://www3.nhk.or.jp/news/live/?utm_int=all_contents_tv-news_live

     

     

    昨夜16日午前1時25分にマグニチュード7.3の地震が深さ10キロにて発生したのち状況が変わったと判断したほうがよさそうだ。(( http://www.jma.go.jp/jp/quake/20160416033614387-010000.html )) 震源の分布が16日午前9時頃から11時にかけて阿蘇山をまたいで大分県側に広がっている。

     

    14日に熊本にて発生したマグニチュード6.4の地震は、布田川断層・日奈久断層のうち、日奈久(ひなぐ)断層帯(全長約81キロ)のうち北端にある高野~白旗区間(同16キロ)が活動したとされる。(( http://mainichi.jp/articles/20160416/ddm/001/040/137000c ))
    地震で発生したエネルギーの関係から、14日のが前震で、16日未明の地震が本震ということになった。

     

    阿蘇山をまたいで震源が連動しだしたことで、別府島原地溝帯というもっと広い面で考えなければならないようだ。午後にかけて震源地もだんだん阿蘇から東北側に移動しつつある。

     

    2016-04-16 12_37_00-NHK NEWS WEB ニュース同時提供中

    産総研 活断層データベース 起震断層
    https://gbank.gsj.jp/activefault/cgi-bin/search.cgi?search_no=j024&version_no=1&search_mode=2

    2016-04-16 11_51_02-産総研:活断層データベース

    14日からおきている布田川断層・日奈久断層でおきている特定ひとつの断層でおきている地震だけだとは判断できなくなったといっていい。阿蘇山をまたいだ。(スクリーンショットは14:00のものだが、現在までにもっと多くの地震が発生している。)

    専門家「これ以上の本震が今後あるかもしれない」 地震連鎖可能性否定出来ない
    西日本新聞 4月16日(土)12時33分配信

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160416-00010013-nishinp-soci

     

    「震源、じわじわと東に」 別の活断層に影響の可能性
    朝日新聞デジタル 2016年4月16日11時35分

    http://www.asahi.com/articles/ASJ4J34VYJ4JULBJ00G.html

     

    九州大学の地震情報をみてみよう。

    この24時間での地震の発生状況だ。まさに別府島原地溝帯である。

    2016-04-16 12_32_34-SEVO Seismicity Map (kyu_last1day)

    http://www.sevo.kyushu-u.ac.jp/~hypo/hypomap/last1day_kyu.html

     

    この7日間の地震発生状況。

    2016-04-16 12_31_37-SEVO Seismicity Map (kyu_last7day)

    http://www.sevo.kyushu-u.ac.jp/~hypo/hypomap/last7day_kyu.html

     

    この30日の地震状況。

    2016-04-16 12_30_50-SEVO Seismicity Map (kyu_last30day)

    http://www.sevo.kyushu-u.ac.jp/~hypo/hypomap/last30day_kyu.html

    30日でみると、結構広範囲で中央構造線沿いに動いていることがわかる。得に画像左下、九州南西の海洋上が特徴的。右下の海洋上は海溝部でプレートが沈み込んでいるところだ。

    こうやってみると30日の間に南西から亀裂の伝達が東北方向に移動しているのが見える。

    usgsで確認できる30日以上前のM2.5地震を確認するかぎり3月頃からおきている石垣あたりの地震から続いているのかもしれない。

    2016-04-16 16_27_54-新しい通知

    http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/map/#%7B%22feed%22%3A%221460791525281%22%2C%22search%22%3A%7B%22id%22%3A%221460791525281%22%2C%22name%22%3A%22Search%20Results%22%2C%22isSearch%22%3Atrue%2C%22params%22%3A%7B%22starttime%22%3A%222016-01-01%2000%3A00%3A00%22%2C%22endtime%22%3A%222016-04-16%2023%3A59%3A59%22%2C%22maxlatitude%22%3A34.452%2C%22minlatitude%22%3A23.08%2C%22maxlongitude%22%3A132.759%2C%22minlongitude%22%3A119.663%2C%22minmagnitude%22%3A2.5%2C%22orderby%22%3A%22time%22%7D%7D%2C%22listFormat%22%3A%22default%22%2C%22sort%22%3A%22newest%22%2C%22basemap%22%3A%22grayscale%22%2C%22autoUpdate%22%3Afalse%2C%22restrictListToMap%22%3Atrue%2C%22timeZone%22%3A%22utc%22%2C%22mapposition%22%3A%5B%5B21.57571893245848%2C117.68554687499999%5D%2C%5B34.125447565116126%2C139.306640625%5D%5D%2C%22overlays%22%3A%7B%22plates%22%3Atrue%7D%2C%22viewModes%22%3A%7B%22help%22%3Afalse%2C%22list%22%3Atrue%2C%22map%22%3Atrue%2C%22settings%22%3Afalse%7D%7D

     

    余震が連発しているが、7.2の余震にしては規模も間隔も短いので、今後も注意が必要だ。
    中央構造線と布田川断層・日奈久断層における地震については前回のエントリー、先日書いている。

    http://kuippa.com/blog/2016/04/15/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E7%B7%9A%E3%81%A8%E7%86%8A%E6%9C%AC%E7%9B%B4%E4%B8%8B%E5%9C%B0%E9%9C%87/

     

    四国のスロースリップ観測状況

    広島大学のATMOSもここ数日分を追ってみる。

    http://tremor.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/day.cgi?&day=1&month=4&year=16&figtype=omap&area=e-shikoku

    範囲は狭いが、四国東部の中央構造線上で体感できない(ゆっくり地震)スロースリップが観測されている。


     

    大分などの潮位情報

    地震と潮位は関係ないオカルトであることは前回のエントリーでも申し上げたが、貼っておく。

    http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/suisan.php

    2016-04-16 12_47_23-気象庁 _ 潮汐・海面水位のデータ 潮位表 大分(OITA)

    大分県の潮位変動は今日あたりが最緩慢か。

     

    四国西部、宇和島はこんな感じ・・・。

    2016-04-16 12_49_15-スタート宇和島

    四国、中部瀬戸内海側も16日あたりか。

    2016-04-16 12_50_34-気象庁 _ 潮汐・海面水位のデータ 潮位表 伊予三島(IYOMISHIMA)

    こちらは大阪方面の淡路島洲本。潮位変動はどちらかというと緩慢な印象がある。

    2016-04-16 12_52_19-気象庁 _ 潮汐・海面水位のデータ 潮位表 洲本(SUMOTO)

    潮位は、ただのオカルトなので科学的な立証でもされないかぎりは真にうけないこと。

     

    建物被害、文化財

    加藤清正が建てた熊本城の東十八間櫓や北十八間櫓が崩壊してしまったようだ。
    こないだのブラタモリがありし日の姿になってしまった。阿蘇神社の楼門と拝殿も壊れてしまった。

    熊本城の屋根瓦が吹き飛んだのは、昔の建物は瓦を吹き飛ばすことで免震構造にしてたということらしい。なるほど、たしかに、重量物をパージしていけば、建物の固有振動周期変えられるな。古式のエキスパンションみたいなものか。

    橋の崩落、高速道路の立体交差の陸橋、ダム(こちらは防波堤のみの決壊だったようだ)などのダメージがあったようで、やはりこれも明日からの雨で予断を許さない。

     

     

    噴火について

    阿蘇山が小規模噴火したが現在までのところこちらはおいておいて問題はないのではないか。以前から活動がやや活発化していたところに、表層の断層地震で刺激されて噴火した程度なのではないかと考えている。311以降ひずみが溜まっているはずなのでいずれ破局噴火がおきるかもしれないが今回のそれとすぐに結びつけるのはよくないことのように思う。なんにせよM7じゃぁないな。

     

     

    NHKの災害時サイマル放送

    災害時ということで、テレビニュースのネット同時提供されている。

    http://www3.nhk.or.jp/news/live/?utm_int=all_contents_tv-news_live

    他のニュースや関係ない報道をすると停波するんだけど、なんか中国のグレートウォール下で報道をみているような気分になる。こんな感じなんだろうね。

     

    人的被害

    最後になってしまったが、文化財やモノの破壊などなんということではない。しかし、前途洋々これからという若者が亡くなるということについては言葉もない。お悔やみを申し上げる。
    東海大学、阿蘇キャンパス農学部が。あったようだね・・・。
    http://www.u-tokai.ac.jp/about/campus/aso/

    南阿蘇村の道路が寸断し、1000人が大学に孤立した状態になっているそうだ・・・。

     

     

    震源地が広がっている。自然災害は防ぐことはできない。

    しかし、わずかな知識と心がけで立ち直り不能な被災者になることは拒否できる。

     

    東京防災

    http://www.bousai.metro.tokyo.jp/book/

     

    どうか、地震のない地域の人たちも他人事にならずに。

    中央構造線は熊本から静岡まで続いているのだから。

     

  • 首都直下地震ハザードマップ2012 レビュー

    首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年4月18日公表)
    http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/tmg/assumption_h24.html

    東京に住まわれている方はこの図をみて、自分の住む地域の火災などの危険性を知っておくこと。大規模火災だと逃げ道が閉塞されるので、広域避難場所を確認しておくこと。
    過去のハザードマップには閉塞予想地図もあります。
    すべての資料を通して読んでみたが地震などの概要部分については過去のデータとそれほど変化はない。元禄型関東地震が追加されたぐらいだが本質的なところに変化はない。
    ドキュメントの書き方、見せ方が6年前と比べあまり進歩していないのは残念だが、資料の量は圧倒的に増えた。津波や諸島部などいままでになかったとおもわれるところにも力をさかれている。

    火災の危険がある地域と、倒壊の危険がある地域の情報は避難においても有用であるのであらためて掲載しておく。

    被害想定などの具体的な算出方法、算出根拠などが明記されているのも特徴的。
    想定フローの図やロジックの組立を見る限り、コンピューターシステム化が可能なレベルで詰められているので、システム化がおこなわれたか、その準備がなされていることが伺える。
    これらのシステムの補正係数などを実際の被害と調整することで、震災発生の初期対応において、サンプル件数が少ないかなり早い段階で、被害規模の概算算出ができるのではないかと期待したい。

     

    インフラ被害について

    首都高速道路などは、老朽化から補修が必要とされたままで工事が必要な箇所は多く、この評価には疑問が残る。

     

     

     

    大被害はほとんど発生しないという見解のようだが、このような報道があった。

    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20120306-OYT8T00379.htm

    約3割が開通から40年以上が経過し、30年以上も合わせると半分近くを占める。
    点検で見つけた亀裂やひび割れなどを補修しているが、未補修の損傷件数は2009年時点で9万6600件と、02年時点の2・7倍に急増している。首都高は1日平均約100万台が利用し、トラックなど大型車の通行量が都内の一般道の約5倍で「予想を超える過酷な使用状況で劣化が激しい」

    http://gendai.ismedia.jp/articles/print/32162

    都市計画上可能であれば、物資運搬用の物流道路と人間が移動するための交通手段としての生活道路は計画的に分離されてしかるべきだ。特に都市部の狭い道路などは道と呼ぶには江戸時代に作った旧道や街道のなごりでしかない。首都の高速道路など引く場所がないから川の上につくっただけの急場しのぎだ。

    これらの記事は高速道路側が補修資金獲得のために公的資金による投資を狙ったアドバルーンの可能性もあるのでどちらが正しいとも言えないが、高速移動中の車の事故についての見積もりが甘いのではないかと思った。

     

    元禄型関東地震について

    元禄型関東地震(M8.2)が、直下型でないにもかかわらず、広範囲で揺れるためライフラインの毀損率がとても高く45%に達する見込みだ。この規模でダメージをおうと、上下水道復旧まで場所によっては数ヶ月ぐらいかかりそうだ。都の被害想定では停電に1週間、通信の復旧に2週間、ガスに1~2ヶ月、上水に1ヶ月、下水に1ヶ月を想定している。(*1-130)

    元禄型が来た場合、人口密集地でライフラインが不整備なままその地域で人々の生活を並行活動すると、復興活度を妨げ、生活基盤がよりよい状態に戻るのを妨げになるので、ライフラインだダメージを受けてしまった場合は復旧工事完了まで、疎開地などを考える必要がありそうだ。特に、電気やガスが止まるので、カセットガスコンロなどの備えがないと食料の調理が困難になる。平時であれば3千円もせずに手に入るので一家に一台ぐらいは用意しておくべきだと思う。
    特筆すべき区部東部の60%停電が予想される地区。自治体としてというよりも住まう地域住人として地域で具体的な対応策を講じておく必要があると強く感じた。

     

    帰宅困難、避難、疎開について

    区部の人口集中。避難人口は区部だけで3百万人、避難生活者は2百万人、疎開人口は百万人をそれぞれ超えるであろうと想定しているようだ。(1-133)
    都内滞留者1387万人のうち471~517万人が帰宅困難者になる。
    うち、屋外滞留者は20万人を超える。ターミナル駅は混乱が予想されるので近づかないのが正解だろう。どうせ電車は通らない。ターミナル駅には物資や情報も集まるかもしれないが人的リソースが不足し、十分な対応体制はとれないだろう。もし都心部で被災した場合、少し歩いてハブ駅ではないところで情報を集取するなどしたい。

     

    液状化について

    液状化についてのレポートもあたらしい。地図情報として注目しておきたい。

    地図をみるとはっきりと堆積地がどこであるかがわかる。千代田区、皇居のあるあたりがちょうどへりだ。武蔵野台地のヘリはわかりにくいが、ちょうど三鷹、吉祥寺の井の頭公園のあたりだ。ちなみに武蔵野三大湧水地は、 「石神井公園」「善福寺公園」「井の頭恩賜公園」だ。湧き水が沸くところがもともとが大地のはけで、それまでの台地から一段下がるので水が沸く。
    縄文大海進のころにまで遡ると、貝塚の分布や古墳があったりしておもしろい。大地の”はけ”がどこであるかがわかる。江戸時代以降に整備して埋め立てた土地が広いが、地盤のゆれやすさの図をみておくといいかもしれない。
    東京の古墳分布
    http://www.amy.hi-ho.ne.jp/mizuy/arc/kofunGIS.htm

     

     

     

    感想

    資料としては毎回読み応えがあり、いつも楽しみにしていた。3.11の件がなければ、今年も、みんな地震きをつけろよー程度に終わるはずであったが、実用的で、実効性をとわれる資料になってしまったのは残念なことだ。

    高度に人口が密集し、首都機能を持った東京が被災をすると、どうなるのであろうかという不安は3.11以降のあとますます強くなった。しかしながら関東の人たちの反応をみると、不安には思っているものの対策も対応もしていない場合が結構多い。自治体や商店街まわりで防災訓練ひさしぶりにやろうかーと言い出したぐらいで大きな前進かもしれないが、3.11でこれなら全体への意識付けはちょっと無理かなとも思う。情報を持って、考えられるひとが考えておくしかないような気もしている。

     

    新聞などのメディアによると立川断層の危険度が増加している旨のものが多いが、あくまで個人的な所感であるが、過去数十年の地震データを地図に並べて眺めると湾北地震が直近でもっとも懸念すべき地震であるとおもっている。ただ、今回の資料では房総半島、伊豆半島の震源の分布に注目している図があり、おっ?っと思った。

    なるほどなんで関東に半島があるのか、プレートのしわなんだね。日本そのものがプレートの間にできたシワであるといってしまうと身も蓋もないが、日本にある岬、半島は多いが、これらほとんどすべてなんらかの地殻変動の集大成だと考えると感慨深いなと思った。衛生からながめて地形のとんがっている部分のさき、ミネにはナマズの巣がありそうだ。