磯焼けと海苔の不作からすける除草剤の残効


有明海だの瀬戸内海だの、千葉だの各地で海苔が不作であるそうだ。わかめや昆布も大変で、海の砂漠化、”磯焼け”なんてワードもよく聞くようになってきた。

海中カメラで調査したらチヌ(クロダイ)が食い荒らしてたとか、アカモクを食い荒らしているのはイスズミだとかはたまたウニが全部食べちゃうとか。はたまた温暖化による海水温の変化が原因だなんだと騒がれている。

あのー・・・もしかして除草剤じゃね??

魚は何故減った?

先日、「魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う (東大教授が世界に示した衝撃のエビデンス)」なる本を読んだ。

東京大学大学院新領域創成科学研究科 山室真澄教授
陸水学、沿岸海洋学、生物地球化学

この本を買ったのはこの講演動画が面白かったからだ。

「魚はなぜ減った?~見えない真犯人を追う」
www.youtube.com/watch?v=gDSlR1ZEJmE

毒舌なので講演のほうがおもしろい。本のほうはデータや引用論文が豊富。

ざーーくり要約

山室さんは閉鎖水系、汽水域の研究をしていて、30年にわたってシジミと寒さに負けずに頑張っている松岡修造で有名な島根県、宍道湖(しんじこ)を中心に調査されていた。

ネオニコチノイド系殺虫剤が日本国内で許可された1992年から、うなぎ、ワカサギ、シラウオの漁獲量の激減とともに、底生生物、オオユスリカのような節足動物、ゴカイのような環形動物、エビのような甲殻類が減っていることを見つけたという。

残留濃度は人間や魚には影響がないようにデザインされているので魚が死んで浮かぶようなことはないので気がつきにくいが、無脊椎動物にとってはそれらは十分に致命的な濃度だという。まあそのための殺虫剤ですから。餌がなくなりゃそりゃ魚も減るよねって話。

で、本の内容なのでここでは踏み込まないが、いろんなエビデンスが載ってる。海老のエビデンス!(ここでぐらいしか使えないから許して欲しい。おじさんなのだ。)

様々なデータをあげて、富栄養化も貧栄養化でも、溶存無機窒素量、化学的酸素要求量(COD)でも、湾岸改変でも農地基盤整備でも、はたまた水温変化でもねぇんじゃねぇかってさ。

で、ここからは素人の推論と仮説

長年みているyoutubeチャンネルに、ただひたすら海に潜ってただウニをわりつづけているチャンネルがある。ただ割れていくウニとそれをついばむ魚を見るのに理由が必要な人は見ることはないだろう。

大成功を収めたアカモク育成のラストにまさかの事態が起こる【アカモク育成最終回】

何年も前からただウニを叩いていたのだけど、最近とうとう砂場でのアカモクという海藻の繁茂に成功しいて、逆になんで?と思った。え、磯場のときは駄目だったのに砂場では成功できるん?っと。逆になんでなん??と。

ちゃんねる主は食欲旺盛なイスズミ(お魚の名前)の回遊路から外れたからではないからと考えているようだけれども・・・。自分の中ではあまり腑に落ちしなかった。

ヤギがいる畑で作物を育てるのは難しいが、ヤギが居ないところなら育つ。

じつに正論。

しかし、どちらかといえば海の中で育つ海藻は雑草が持つ恒常性と均衡に近い。
雑草は管理して繁殖させようとするのは難しいがヤギが食べればなくなる。ヤギがいなければ増える。

このときその地域のヤギの頭数は雑草の繁茂力と同じかそれ以下で均衡するはずである。
釣り合っている状態のことを平衡に達したという。

繁茂力が食欲が下回るとき、それはヤギにとっての飢饉なので、ヤギが移動不能(閉鎖系)である場合はヤギは減り、食料の供給率に達するまで頭数を減らすことになるだろう。
ヤギが移動可能(開放系)である場合、その地域の雑草を食い尽くしたとき移動することになるだろう。

捕食、被食関係で均衡が破れるケースは捕食側の変化、被食側の変化によるものである。
捕食者側に考えられるケースは異様繁殖などによる要求量の増大で、被食者側の場合はなんらかの理由による増殖や成長率の鈍化が考えられる。

開放系ともいえる海の中で、捕食側の食害で食い尽くされて絶えるなんてことがあろうだろうか?
バッタの蝗害みたいな群生発生と高度回遊がおきているわけでもないのに?

そして、最近それがごく短い期間でそれが全部なくなったというのを見て、やっぱり仮説を強くした。

あ、やっぱこの時期? 海藻にも除草剤の残留効果が原因じゃないのかなと。

環境水中の残留除草剤

前述の本によれば、河川、水道水中における残留除草剤の濃度は田植えが盛んな地域では5月1週目が最高濃度となっているデータがあった。

除草剤のクロルニトロフェン(CNP)は胆のうがんに繋がり、人体にも影響があるということで農薬取締法改正により改善したのかその後はよくわからんが、現代も環境水中の除草剤の濃度は5月の上旬が一番高いであろうことは容易に推測できる。

除草剤はその後も進化し、人間にとってはより安全に、そして雑草にとってはより過酷に。自然界で分解するのに効果日時も持続するようになった。

ここに日本固有の特殊事情が加わる。
日本では畑だけでなく水田が存在する。田植えは一年に一度で地域で同じ品種をつくるため、同じような時期に一気に作付けをおこなう。都会に出稼ぎにでたやつも戻って実家を手伝えというゴールデンウィークというやつだ。
結果、水田に撒かれた水溶性の除草剤や殺虫剤はそのまま河川にごく短期間高濃度で流出し海に出る。

水田に撒かれる除草剤は、初期、中期、後期と一発処理剤に分かれるそうだが、田植え後に撒かれる初期一発剤は除草剤のなかでも自然分解までの期間が長く処理後30~50日と残効期間が続く。

そりゃ30日もあれば海にも出るわな。
海に出ても除草剤の効果は損なわれない。
水田に撒く除草剤は、稲を枯らさぬように沈水植物にも効くように作られたものなのだから。

「宍道湖における沈水植物大量発生前後の水質 」

www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/75/2/75_99/_pdf

2006年5月から「食品中の残留する農薬等の基準に係るポジティブリスト制度」が施行されたことにより、それまで検出されたらアウトなブラックリスト方式であった残留農薬基準がこの物質がこれ以下ならいいよというホワイトリスト方式に変更された。

その結果、宍道湖のシジミからホワイトリストにない除草剤が検出されたことから、周辺農家に除草剤の使用量や使用方法の働きかけがなされ除草剤の残留濃度に大きな変化が出た。で、宍道湖の沈水植物の大量発生に繋がる。

流れ込む除草剤が減ったら藻が昔のように増えた。
流れ込む除草剤が増えれば海藻が減るというエビデンスは今のところない。

なにせ調査がないのだから。
だからこれはただの素人の仮説にすぎない。

環境水のモニタリング

残念ながら日本では環境水中の濃度に関する研究がほとんどなされていないそうだ。
先の本の中では1999までの論文で殺虫剤であるネオニコチノイドの環境水中濃度についての調査は一件もなかったと嘆かれていたが、2023現在ciniiを検索すると、近年増えてきているようなので、将来に期待である。
自分みたいなノラにも読めるオープン論文はないので、指を加えてリストを眺めるだけだ。

ネオニコチノイドやその他残留農薬は水溶性なので堆積物からの過去の調査を行うこともできないそうだ。
さらに残念なことに日本の環境モニタリングでは降雨による影響がないよう濁水を採取しないことになっているそうで、田面、水田土壌、化学物質の影響が検出されにくいのだという。されにくいというかできないんじゃ?

そりゃ駄目だよね。
東京オリンピックのときにトライアスロン会場の大腸菌が話題になったが、日本の下水道は多くがいまだ雨水合流だ。特に戦後復興を急いだ東京23区では8割が未だに合流式下水道である。
昨日の大雨で目黒川がクサイとTwitterで話題になっていたがあたりまえだ。それ本当に下水だもん。

クリックして09gouryu-kubu.pdfにアクセス

雨の量が一定レベルを超えると、下水処理施設の限界を超えるため、トイレットペーパーとかそのままに東京湾に放出される。神田川とか目黒川とか渋谷川とかのガンジス川モードだ。

そりゃ、そんな濁水をモニタリングしたら、いろんな環境基準に触れて一発アウト。知恵を絞って考えたのだろう。データがなければ大丈夫ンゴ!!って。

濁水のデータもモニタリングするべきだとは思うけど、そのお金や対策費はどうするんだってお話しになるので、みんなそっと蓋を閉じるのかもしれないね。箱のフタを開けて観測しなければ猫は死んでいるか生きているか確定しない。そのシステムは今、動いてるんだから触るんじゃねぇってね。

豊洲市場の排水ピットに長靴でばちゃばちゃ入って、ジャムの瓶に濁水くんで、アルカリ性ですだの、環境基準の何倍も出ました!!とかをやれというわけではないが、なんでこう極端から極端しかねぇんだろ。
データが貯まればいいとおもうし、濁水のデータもとったほうがいいよね。
研究者に予算つけてあげてとおもうのである。

頑張れ研究者、ネバー ギブアップ

参考・引用元

海の水質向上で神戸の「養殖ノリ」が激減? 収穫量は20年前の2割減 原因はチヌの増加か…
www.youtube.com/watch?v=S6ROO82UNgI

minorasu.basf.co.jp/80228

ci.nii.ac.jp/author/DA15881523

www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/75/2/75_99/_pdf