チャールズ・ダーウィンさんち


ダーウィンはそんなこと言ってないだの、ダーウィンも喜んでいるだのなんかいろいろ。

ホームステイ先から通ってたサマースクールへの通学路にダーウィンの生家があった。 何十年ぶりかにストリートビューで探してみたら、だいぶ雰囲気は違うのだけど見つけることができた。 そうそうこの銅像。あー、あの学校いった先にある新聞紙でくるんだだけの揚げポテトまた食いたいなー・・・。


ダーウィンの家 http:// goo.gl/maps/XC5n9s4MhKVP3V5L9

生家を見てわかると思うけど、実家はざっつお金もち。
紅茶好きなら誰もが知っている、陶器ウェッジウッドの創設者ジョサイア・ウェッジウッドの孫娘がなんとダーウィンのお母ちゃん。父ちゃんはお医者で投資家。ちなみにじいちゃんも医者。

ダーウィンの家の、お向かいにはこじんまりとしたシュルーズベリー城(この一帯はセバン川の屈曲した部分にある天然の要塞なので、館に近い)があって、お金のなかったダーウィンはここの城主とかにお金だしてもらってアフリカに冒険にでて種の起源を書くに至ったんだったと・・・思うんだけど、ウィキペディアにはそんなこと書いてないので、はて、どこで聞きかじったんじゃったか、それとも思い違いかもしれないのぅ。叔父のウェッジウッドのとりなしでってしか書いてないのぅ。んー。勘違いかもしれないのぅ。

その頃のシュルーズベリー伯は・・・、第15代シュルーズベリー伯 チャールズ・タルボット(Charles Talbot)(1753–1827)か。んー。んーー。このひとがすげぇ名君だった可能性?

ここはロンドンからは遥か西方、ウェールズに接しているシュロップシャー州ってところ。1760年代から1830年代におきたイギリスの産業革命発祥の地と言われておる。シュルーズベリーっていう街はこのシュロップシャーの州都。日本でいうとイメージ的には加賀百万石かな。

産業革命のシンボルとなってる鉄の橋が隣町のさらに辺鄙なところにある。そこには日本の皇太子(令和の天皇陛下)参上な碑石があって、はへー、こんなところにまできておわしゃるんか。すごいのぅと思った数十年前。治水の研究をしてたんだっけ? たしか世界遺産に登録されたとかなので、 今は観光地とかになってたりするのかな?

さて、さて、まさにチャールズ・ロバート・ダーウィン(1809生 – 1882没)が育った頃は、まさにそんな時代。生まれ育った土地は治水技術の粋で囲われた天然要塞、立派で長い石橋。渓谷のほうまでいくとそこには世界初の鉄の橋がかかっている(1781年開通)。親の代から時代が変わる様を身近で感じたことだろう。だから帆船のビーグル号でアフリカにまでいき、そして、科学の礎なりえたのだとおもう。

母の実家がウェッジウッドだというのも大きいだろう。
ボーンチャイナの製法は秘され、不可能とされていた白磁や青磁をヨーロッパで再現した人だ。窯の温度を測る術を発明したと言われている。つまり再現性を持った、科学者としての才覚があった人だ。

白磁をつくるためには、窯の焼成温度を上げ、酸素を大量に送り込んで還元炎をつくれるようにならなければならない。これができるようになると鉄の溶融温度にまで達するので鉄が溶けたまま出てくる。粗鉄から鋼鉄を作れるようになり、一回一回炉を壊さずとも鉄の連続的生産が可能になるというわけだ。鋼鉄が大量に作れるようになることで、鋳造ができるようなるので、 構造体として鉄が使えるようになり、 鉄の橋や鉄道のレールがつくれるようになるわけだ。

ウェッジウッドの窯元は、スタッフォードシャーのストーク=オン=トレントだそうだ。となりの県なのかな? ウェッジウッドの窯元を見学しに行った記憶はあるのだけど、正直、場所とかはさっぱり覚えていないが、そんな遠いところではなかったはずなので、ダーウィンも何度もそれを見たんじゃなかろうか。

ワットが蒸気機関を発明したのちその特許が失効したのが1800年。1804年に蒸気機関車が走り、1807年には外輪型蒸気船の航行がおこなわれた。まさにそういう技術イノベーションが起きている時代だった。1830年代には鉄道ブームになっている。ダーウィンが冒険に出たのは1831年。ビーグル号は帆船だったが、蒸気船の初航行実験ですら30年まえの出来事となる。種の起源に思い至る慧眼があるのであれば、世界が近くなる予感は誰よりも肌身に感じたはずだ。

偉人の出現はぎゅっと固まってる傾向があるように感ずる。
慧眼をもち人を育て、また財や才を結ぶ何某かの賢者がいたんでしょうかね。
聖人は聖人をつくるみたいなことを中国古典でなんかあった気がするんだけど、韓非子が言った孔子が言った、四書五経で読んだみたいなことをいうと、怒りだす人がいるかもしれないので、飛影が言ってたとでもしておこうか。余計ややこしくなるか。こういうなにがしかのブレイクスルーというか、歴史の特異点に綺羅星のごとく偉人が群生する。なんか固まるよね。不思議。俺は、天候というか気候の束の間の安定による生産余剰が原因だろうとおもってるのだけど、どうなんだろうね。

さて、「最も強い者が生き延びるのではなく、最も賢い者が生き延びるのではない。唯一生き残ることができるのは変化できる者である」をダーウィンが言ったか言わないか論争にもどる。

この論旨は適者生存論と呼ばれるものだ。

進化論の中でもあったと思うんだけど、あくまでダーウィンは自然選択理論で名をはせた人。だが「進化」という言葉ですら『種の起源』において、第5版にまで存在しないそうだ。適者生存論も数版追わないとでてこない、後から改版でたされたものだ。

適者生存論はハーバート・スペンサー(1820生 – 1903没)が『生物学の原理(Principles of Biology)』(1864)の社会進化論で書いたこと。
このハーバート・スペンサーのお父ちゃんは、ダーウィンのおじいちゃん(エラズマス・ダーウィン 1731生 – 1802没)が作ったダービー哲学会(1783年創立)のメンバーだそうだ。ちなみに、ダービーっていうのは地名ね。瞬馬のことダービーっつったりするけど、こっちの地名というかダービー卿由来。ダービーシャーはシュロップシャーからみるとスタッフォードシャー挟んだ向かい側。埼玉群馬茨城ぐらいな感じ。 それこそ競走馬、サラブレッドは1791年まで遡って徹底した血統管理がおこなわれているけど、なんで血統管理をおこなうようになったのかは推して知るべし。 ちなみにこのおじいちゃんが進化という言葉を使いだしたそうだ。

彼らは同時代に活躍した人たちなので、進化とか適者生存が種の起源でも改訂版からいはってくる。ラマルクの用不用説、ダーウィンの自然選択説、ネオ・ダーウィニズム、ネオ・ラマルキズム。

この適者生存、スペンサーの社会進化論をダーウィンにおっかぶせた意図的誤用はアメリカあたりからはじまったらしい。ダーウィンが事実言ったか言わないかは、まあ、おいておくとして、世界的にも一般人が知っているのはダーウィンぐらいなのでダーウィンが言ったにおっつけちゃってるのはしょうがないんじゃないのとは思う。実際後版のほうには適者生存に似た論旨で改稿はされてるみたいだし。

ちなみにだが、このダーウィンとスペンサーをマッシュアップした優生学(1883年)をおこしたのがダーウィンの従兄弟でもあるのフランシス・ゴルトン(1822生 – 1911没) 『遺伝的天才』(1869年)。彼も種の起源に刺激をうけ、回帰や相関係数の概念の提唱、統計的手法をもちい家畜の品種改良などをおこなった。

で、このフランシス・ゴルトンの従兄弟の嫁の従兄弟が白衣の天使フローレンス・ナイチンゲール(1820生 – 1910没)で、ナイチンゲールがコルドンに相談したことで統計学、公衆衛生や看護教育に至るのである。

さて、「生き残ることが出来るのは変化できる者である」という言葉を誰が言ったかというささいなことが、深刻ぶってだれかの口を塞ごうとする理由を、これまでに出た単語で皆様はすでに気が付かいているかもしれない。

用不用説、自然選択説、進化論、優生学、統計学いずれも現代の科学の礎にはなくてはならないものだ。だが、かの偉人等が去ったあと、アドルフ・ヒトラー(1889生 – 1945没)が選民思想(ナチズム)の論拠として、人種主義、ファシズム、そして優生学をいいように使った。

なので優生学は、家畜や植物の品種改良など現在でも基礎になっているにもかかわらず、禁忌となってしまった。社会学、歴史としてのタブーとしての優生学と、実務としての統計、遺伝や形質発現が学問のミッシングリンクになってしまったのである。理系が算術で学ぶ遺伝統計学(優生学)と文系が歴史で学ぶ優生学に断絶がある。早い馬と早い馬。早い馬と遅い馬。遅い馬と遅い馬。掛け合わせるとどうなるか、競馬だと確率的にどうなるかわかるのに、人の肌の色や人種が絡むと超絶タブーになる。そして優性遺伝という言葉は、とうとう顕性遺伝、潜性遺伝という言葉におきかわることになった。

遺伝による形質伝達と、遺伝しない獲得形質の違いもわからず、統計による想定と自分の体験の区別もつかず、公衆衛生と俺は大丈夫だったの違いもわからない。人の免疫にも血液型のように型があったりする。血液型によってもコロナウイルスの感染確率は違うというような報告もあるが、全体でみれば統計的差異でしかなかったものは個体差にまでおとしたときには差別になりかねない。ナイチンゲールは統計的手法をつかって野戦病院が不衛生だと死亡率が高いとか、検死解剖をした医師がそのまま患者をみると死亡率があがるなどと証明をすることで、野戦病院の死亡率を下げた。今は統計情報は個人情報のため伏せられていて集計結果しか知ることができない。

科学と社会の断絶。これが、もしかしたら人々のコロナウイルスへの対策を半分ぐらいは阻害している要因かもしれない。科学と社会は200年経ってもつかず離れずだ。

種の起源

だが、誰も彼も「種の起源」は読んでいないのである。みたいな。古典で、時代のエポックになった名著は読んだほうがいい。とは言え、種の起源、子供の頃読んだとは思うんだけど、ちゃんとオリジナルを読んだかはちょっと自信がないのでさっき岩波文庫版のほうをぽちった。こんだけ書いて読んでないのかよ。みたいな。ごめんな。

アンリミテッドに入ってると無料らしいので、こっちを一応貼っておく。

参考・引用

Shrewsbury Castle
en.wikipedia.org/wiki/Shrewsbury_Castle

シュルーズベリー伯爵
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E4%BC%AF%E7%88%B5

酸化焼成と還元焼成の違いについて
www.city.toki.lg.jp/docs/hpg000003447.html

製 鉄 技 術 史 の た め の 基 礎 知 識
www.isc.meiji.ac.jp/~sano/htst/History_of_Technology/History_of_Iron/History_of_Iron_background01.html

蒸気機関
ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%B8%E6%B0%97%E6%A9%9F%E9%96%A2

優生思想の論理と現代進化理論の(再)検討 -社会生物学は優生学か?
www.wrc.kyoto-u.ac.jp/kohshima/Study/abstract/oode99.html

アイアンブリッジ (橋)
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B8_(%E6%A9%8B)

「ダーウィンはそんなこと言ってない」「優生学では」 自民党広報Twitterアカウントの憲法改正啓発マンガにツッコミ多数
news.nicovideo.jp/watch/nw7479896

ハーバート・スペンサー(Herbert Spencer、1820年4月27日 – 1903年12月8日)
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC

Herbert Spencer
en.wikipedia.org/wiki/Herbert_Spencer

ラマルキズム
ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A8%E4%B8%8D%E7%94%A8%E8%AA%AC

ダービー哲学会
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E5%93%B2%E5%AD%A6%E4%BC%9A

ラマルクの用不用説
ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A8%E4%B8%8D%E7%94%A8%E8%AA%AC

「ダーウィンの進化論」に関して流布する言説についての声明
www.hbesj.org/wp/wp-content/uploads/2020/06/HBES-J_announcement_20200627.pdf

適者生存
ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A9%E8%80%85%E7%94%9F%E5%AD%98#:~:text=%E9%81%A9%E8%80%85%E7%94%9F%E5%AD%98%EF%BC%88%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%97%E3%82%83%E3%81%9B%E3%81%84,%E3%81%9F%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%A6%82%E5%BF%B5%E3%80%82

フランシス・ゴルトン(生1822年-1911年没)
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3

ダーウィン進化論に生じる誤解
textview.jp/post/culture/21642


まわりに化学な人はいますかい?


PCR、PCR!ねこもしゃくじもおたまじゃくしもPCR。
世に出てるウイルス対策、菌とウイルスの区別もないままだから、なんか一周回ってちょっと面白い感じになっちゃってるじゃん。なんでこんなことになってるん?? 鬼退治にはめざしにヒイラギがいいんですよごとき滑稽さを訳知り顔で話してて、冗談なのか本気なのかわけわからなくて、ちょっと逆に現状が怖いわ。

高校で理系と文系でわかれてしまう上に、理系のなかでも受験だと点のとりやすい物理を選ぶ人が多いので化学履修はちょっと別。
というか、そもそも化学は理系のなかでも、ちと特殊ゆえ大抵校舎の一番奥においやられる存在だったのを思い出した。だから化学にたいするあれこれはそもそも知られてないし、前提知識のないひとには危ないので机上のことしか教えられない。

でも、あまりに世間がPCRPCR言うので、はるか昔の記憶が堀りおこされた。化学科についてのあれこれを書いてみようかなと思う。

20年前、学生数数万人いる大学でも化学科は学年100人程度、さらにPCRをつかうようなことをやってたのは自分のいた1つの研究室だけ、十数人しかいなかった。そこに他の超マンモス大からも修士博士の子がきてたので、日本における人口あたりの割合はもっとすくないはずだ。今の日本に、できる人がいなくて当たり前じゃないか。

なぜ化学科は隔離されるのか

サイエンティストの定冠詞はマッドだからだよ。・・・バジンガ!

長野サリン事件のとき第一被害者であったはずの方が化学科卒というだけで、容疑者となったのを知っている方はいるだろうか。ひどい捜査だと思ったが、わからなくもない。

高校で化学を選択履修すると、ニトログリセリンや黒色火薬の合成法が教科書に載っている。そして、大学の前期には教養レベルの段階でサリンの合成なんて「あんなものの合成なんて簡単なんだよ」ってのたまいながら合成スキームを書く有機化学とかの教授に出会うことになる。

あるいは、化学というとコントなどで博士はいつも爆発しているイメージがあるかもしれない。たしかに、扱い間違えればビルがまるごと吹っ飛ばせるような物は保管されてるし、そうじゃなくても不幸にして事故はおきることはあるだろう。うちらの代だと粉体研で、みんなが映画や小説で知っている粉塵爆発がおきて救急車騒動になってた。

ABC兵器という言葉がある。核兵器、生物兵器、化学兵器だ。だが、どれもまあ化学科の学部生レベルがやるようなことの延長でしかない。だから化学科というのはどこの大学でもたいていひと目につかないところにひっそりあるし、簡単には移転などができない。

医者や薬剤師のように街中で見かける白衣な人たちと違って、化学な人は卒業後、研究職や専門職につくと分野が先鋭化していくので分野外への転職が普通はなされず、また企業も研究部門の秘密が漏れると存続問題になるため、囲い込みをされ、ますます世間と隔絶していく。
だから居ない人のまわりには本当にいない。たまに俺みたいに野良落ちしたのがいるかもしれない。氷河期世代はコンピューター系とかを中心に結構ちらばっているかも。
そういえば、数年前、東京大学やそのあと企業でもウイルスをやってたって人にあったことがある。ウイルスをやってた人は更に少ないと思う。でも美術館のお仕事でお会いした・・・。

リベラルアーツなどに力をいれている大学では化学の実験や教育をされているが、そんな大学は今でも稀でまだ国内には数校しかないように思う。だからほんと知らない人の知識は「理科」で終わってしまっていて、それがアップデートされる機会は永遠にこない。なぜなら雑学じゃない生きてるウェットな化学は、そもそも独学実習が法律的にも許されないからだ。

もし遺伝子操作系実験をするためBSL(バイオセーフティレベル・バイオハザード)が設定されている研究室にはいれば、必然、放射線同位体も扱うことになるので、放射線管理区域のハザードマークまでついてくる。
劇物ももりだくだ。日常的につかう遺伝子染色をおこなうエチブロなんかは、DNAを染色するためのものなので、ちょいと皮膚に触れればもれなく癌化してくれることになるだろう。 法律的にも部外者の立ち入りは制限されるが、そうじゃなくても、あぶなくって入れられないよね。まじ危険。

高校生がキサントプロテインとかでお手々を黄色くしたり、ヨウ化銀で手を黒くしたり、液体窒素を頭からかぶってキャッキャしているのから大人にならねばならない。

遺伝子操作系は、自分が組み替え体になっていないことを確認するため、血液採取などもおこなう。PCRはそういう研究過程でおこなわれる。

今、各大学の研究室にどれだけPCRできるかみたいなお問い合わせを官庁がしているらしい。 それはレストランのキッチンにも流しがあるんなら、緊急時ならうんこも流せるよなという要請にほかならない。

化学科は大変

遊んでばかりのキャンパスライフ。
残念だな。それは幻想だ。

座学とは別に実験レポート実験レポート実験レポートだ。
だから化学科の子はバイトに多くはいったり外の学科の子とは遊ぶことがまずできない。

週に実験がいくつも重なると一週間でレポート用紙が一冊なくなる。
実験は数コマぶち抜きなので、一回休むと出席回数がいきなり足りなくなりアウト。翌年のその時間には別の実験がまってるのでどちらにしろアウト。
図書館で資料を探しながら実験計画をたてたりスキーム考えたり仮説をたてて実験してレポートをまとめる。
実験の種類も、有機や無機、物理、化学工学とかあっちゃこっちゃ。

考査試験も大変。
教科書やノート、はたまた教科によってはコピーまで持ち込み自由なものがあったりする。なんだ、かんたんじゃんと思うかもしれない。
残念。記憶力勝負とかじゃぁないのだよ。数学の試験に教科書を持ちこむようなものだ。 ただし公式は無尽蔵に近いほどありますみたいな世界。

触媒や反応経路など無数にある。将棋の試合に詰将棋の本を持ち込んで挑むようなもの。こっからこれを合成しなさいみたいな問題だと、図書館並みの資料が横にあってもわずかなテスト時間内に正解を導きだすのは困難だ。思いつかねぇぇで頭かきむしったところで、教科書に正解が載っているわけではない。 途中経路はどこでもいいけど時間内に目的の駅にはついてねみたいな感じ。 ただし予め使いそうな時刻表は自分で用意しておきなさいってことだ。

そんなだから、必修科目なのに合格率2割だったりものがあったりして、一年履修の課目でも4年でも2割の学生はとれずに卒業できない。俺も3年から4年にあがるとき留年した。就職活動説明会に行った帰り、研究室配属見に行ったら名前がなくて留年ですと言われて膝から崩れ落ちたもんだ。
4年で落としたやつはもっと深刻。就職が決まってたり、他大の院へ進学が決まってたりしたやつもいたりして・・・あ、これは化学科の問題じゃなくて、うちの大学、というかある教授固有の問題か。話しがそれてきた。友人に8年ひっぱっちゃったやつがいたが、こないだ会ったとき、いまだに夢でうなされると言っていた。怖い。罪深い。

ぐちぐちと関係ないこと書いてたら長くなったので、また続きはこんど。
Civilization VI やらなきゃいけないんだ。ぼかぁ。あ、そうだね、化学な人はCiviとか好きだとおもう。逆もしかりかな?


ガソリン爆発、京都アニメーション、水素燃料


京アニの放火に巻き込まれた方が2ヶ月以上、経った今、また一人が亡くなられた。 先日全員快方へと報道があったばかり、また一人、才気溢れ若く前途有望なクリエイターが失われた。
深い悲しみとともに、ご冥福をお祈りします。

京アニ放火、玄関から逃げた女性死亡…死者36人に
www.yomiuri.co.jp/national/20191005-OYT1T50170/

犯行動機が「書いていた小説がパクられた」というなんとも頭を抱えてしまうものであるようだが、いまだ犯人の逮捕に至っておらず被疑者の回復を待っている状態である、言いたい事は山程あるが、犯人についてはここで私などが言っても詮無き事なので触れるのを辞めておこうと思う。

ガソリン放火

犯行の手段であるガソリンを用いた放火について。

この事件が起きるまで、実は私はガソリンはなかなか爆発しないものだと思っていた。 無知だねと思われるかもしれないが、言い訳をすると、少しだけ専門知識がある故、一周回って無知になっていた。
自分は大学の化学科を出ている。化学科を出るとガソリンスタンドの危険物取扱者の乙種4類を持っている資格の一個上の危険物を全種類取り扱える甲種の受験資格がおまけでついてくる。資格は取得していないが、その程度には可燃性危険物の危険性は知識としては持っていたつもりになっていた。

さて、なんで爆発しないと思っていたのかについてだが、ガソリンというものは、空気中の酸素と気化したガソリンである可燃性混合ガスの比率割合のレンジが非常にシビアに狭いため、濃度が一定以下でも、一定濃度以上でも爆発しない特性があるのだ。だから簡素なガソリンタンクに保管できるし、車にガソリンを入れるために蓋をあけた静電気で着火しても、ガソリンタンクに火が回り込んで吹き飛ばずに済んでいる。
素人がセルフで給油できるぐらいには、安全な危険物なのだ。

だから、たとえ車が横転して火がついても、よほどの事がないと爆発しないし、十二分の避難の時間があるものだと思っていた。実際にF1などでも消化器で消火できている。

ガソリンの爆発限界は1.1~7.6%と非常に狭い。かつ、密閉容器内で放っておくと56~79%まで気化するため、タンク内は自然と7.6%以上の濃度になるので火がタンク中にまで回りこまない。

容易に着火はするが、爆発させるには条件がある。これがガソリンの特性だ。

2003年の名古屋の立てこもり放火では、ガソリンを撒いてから着火まで3時間があった。この3時間で予混合がおきたため、着火時に爆発がおきた。・・・と考えられていた。

だが、今回はガソリンを撒いた犯行直後、みなが逃げ遅れる火災が起きた。

拡散燃焼

ガソリン爆発でないなら、では、京都アニメーションでは何が起きたのか。
ガソリンを撒き散らして火を着けた。化学的には拡散燃焼と呼ばれる現象だ。

爆発音が聞こえたとの証言もあるが、一部条件が揃ったところで、爆発がおきたかもしれないが、建物の内圧が高まって大きく吹き飛んでいないことからも、起きたのは爆発ではなく拡散燃焼からの予混合火炎であろう。

火災と、爆発では100倍ぐらい早く、発熱速度も100倍になる。
だが爆発は起きなくとも、通常の火災より素早い火炎の伝播がおきる。

ガソリンスタンドも少なくなった昨今では灯油のストーブも無くなりつつある。
ガソリンの気化がマイナス40℃で始まるのに対して灯油は44℃まで温めてあげないと火もつかない。

もし灯油を零してしまっても、すぐには火がつかないから安心して後始末ができる。・・・はずだ。
だが、その灯油でさえ、芯を使わなくても火をつける方法がある。
火炎放射器のように噴霧にしてから火をつければ拡散燃焼により素早く火炎が燃え広がる。

福知山花火大会露店爆発事故は、温めた炭酸のようにガソリン携行缶からガソリンが噴霧状に吹き出し、その先に火種があったことで被害が拡大した。

京都大学が放火火災の分析をしてくれている。

図5
5秒で螺旋階段が煙で埋まり、わずか10秒で1階は約 1218℃にもなる。
15秒で3階階段が煙で埋まり41℃、20秒で3階が255℃になる。
20秒で3階が352℃、30秒で2階上部まで煙で埋まり164℃。

今回は火災発生現場と上階まで抜ける螺旋階段をつたって煙突効果で火が上階まで登ってしまった、外部非常階段がなかったなどの建築構造物などのいくつもの不幸もあったが、なによりも、犯人はバケツにガソリンを入れて撒き散らかすことで火災延焼の速度を知ってから知らずか獲得してしまった事が最大の不幸だ。

仮設トイレでメタン爆発

仮設トイレでタバコを吸ったために爆発がおきて亡くなられたという、なんとも可哀想な事件がアメリカの方でおきた。

糞尿からメタンガス(いわゆるおならの成分)が立ち上り、これに火がつくことで爆発がおきたわけだ。
上のガソリンとメタノール(簡単にいうとメタンガスの液体)の図にもある通り、メタノールの爆発限界は6.7~36%と結構広い。(メタンガスだと5~15%?)

メタンの爆発事故は地中でメタンアーキアなどの微生物による分解の過程で生じるため、温泉ガスなどに交じることもあるので、比較的頻繁に爆発事故がおきていて、大惨事になることもある。

爆発の常識

トイレが爆発するなんて思って生活している人などほとんどいないだろう。

原発がある町で小学校時代を過ごした。
「原発ってのはとても頑丈に作っているからジャンボジェットで突っ込んでも大丈夫なんだ!!」と大人たちは言っていた。福島原発事故がおきるまで、私もそれを疑おうともしなかった。

ガソリンも爆発はなかなかしないものだ。比較的扱いやすいものだと考えていた。
もしかしたら火炎瓶闘争世代が、意図してガソリンの危険性を下の世代に教えないようにしたのかもしれないが、安全性バイアスであったのかもしれない。

例えばタワーマンションでの火災は、防炎扉でほとんど被害が十二分な消火や避難の時間は稼げる設計になっているはずだ。
だが、悪意をもってエレベーター付近で凶行に及ばれた場合、それらの安全策はどこまで機能するだろうか。それが拡散燃焼ではなく爆発だった場合は?

テロのソフトターゲット以外でもロンドンのグレンフェル・タワー火災のように、施設の老朽化とともに通常火災が深刻化するというのは十分に想定しうる未来だが、残念なことに、悲劇というのは起きてみないとそのような事が起きるなど思いもしない事ばかり。

水素燃料と水素爆発

福島原発で建屋を吹き飛ばしたのは水素爆発である。
水素は水に電気を流すだけでもつくることができる基本的な元素だ。
昨今は、燃料電池などとして期待されていて、ガソリン車の代わりに水素燃料電池の車や鉄道などが開発されている。

だが、この水素控えめに言ってもこと爆発に限ってはガソリンなどと比べるべくもない超危険物質である。

燃焼限界:水素4-75% メタン5-15%
着火:水素0.02mJ メタン0.3mJ

つまり、水素は低濃度でも高濃度でも爆発する。
静電気のパッっていう火花すら必要ない。ガソリンなどは、酸素濃度で爆発しないようコントロールできるが、水素は燃焼に酸素を必要としないのでできない。
つまり、水素がこんにちはしたら爆発までは時間の問題だ。

水素「きちゃった・・・。」

水素下限4%上限75%

水素は静電気のパッチっというのの1/10ぐらいのエネルギーで火が着く

爆発は2.67乗、威力150倍

水素燃料電池おっかねぇ

参考

2017年度「東京大学公開講座「爆発」」
ガス爆発・粉じん爆発の現象解析と防御技術
土橋律「ガス爆発・粉じん爆発の現象解析と防御技術」ー公開講座「爆発」2017