Singularity is Peer


ことしのエントリーことしのうちに。

Singularityという言葉を一躍有名にしたレイ・カーツワイル2005年の著書に「Singularity is Near」という本がある。とても分厚い本で読むのに腰を据える必要がある内容だ。

 

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が、なぜか日本語のタイトルは、「ポスト・ヒューマン誕生」で、がっかりタイトルここに極まれりである。

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ポスト・ヒューマン?

ポスト・ヒューマンという語がでてくるのは、本文中おそらく一箇所だけで、それも、

P495
論者の中には、特異点のあとに来る時代を「脱人間」(ポスト・ヒューマン)と呼び、脱人間主義の時代になると予想している人もいる。
「新たな」種の創造だという人もいる。
特異点の根底にある転換は、生物の進化の歩みを一歩進めるだけのものではない。生物の一切をひっくり返そうとしているのだ

「ポスト・ヒューマンなんてもんじゃねぇぞ」という論旨の中であり、だからこそのシンギュラリティという単語なのだが、まさにタイトルと論旨が逆・・・なんやこの邦題タイトル。ちょっと悲しくなる。
で、Singularity is Nearが2005年だとすると、2016年はまさにpeer! 横に並んだところ、そしてティッピング・ポイント。今年は、ある程度の閾値をこえたところなんじゃないかとおもう。

 

 

技術的特異点

技術的特異点(Singularity)などないという人もいるが・・・。

人がなんらかの機能を自分より高効率でこなせるような機能をデザイン設計するのが、人工知能だとする。
人工知能がなんらかの機能を自分より高効率でこなせる機能をデザイン設計できるようになるのが、技術的特異点(Singularity)と定義すれば、本当に今年まさに見えているところだと思う。
技術的特異点を超えるとAIはArtificial(人造の)じゃなくなる。
それをなんて呼ぶかはわからないけれども、AIがAIを設計できるようになる。
反復し繰り返すことをコンピューターは得意とする。
その繰り返しのサイクルは人間よりも圧倒的に早い。
なので、人工知能が自分よりも少しでも賢い人工知能をつくれるようになった瞬間、

loop(AI^1.01)→∞
loop(AI^0.99)→0

AIの性能も発散しだす。

人間は1世代繰り返すのに最短でも15年のライフサイクルが必要であるが、ハードウェア上の制約も「集積回路上のトランジスタ数は18か月(=1.5年)ごとに倍になる」という1965年に提唱されたムーアの法則も人間とは比べ物にならないサイクルである。演算上のloopはもっと短い。

 

1950年代にトランジスタガールズと呼ばれる女工さんたちが、まさにハンドメイドしていたものが、現在のICチップはすでに完全無人化のもと製造がなされている。

トランジスタガールズ


www.shmj.or.jp/shimura/ssis_shimura1_24.htm

そもそも塵ひとつ混じっただけで不良品になってしまう集積回路で、ホコリの固まりである人間が製造工程に立ち会うのは不良化の原因でしかない。そういう意味ではハードの部分は既に人の手を離れている。ソフトウエアの自己最適化はさらにちょっぱやだ。

 

 

囲碁の世界と原子分子

Google DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラムAlphaGoと18回の世界王者。世界トップ棋士九段のプロ囲碁棋士 リ・セドルの間の囲碁五番勝負でAlphaGo側が4勝した衝撃はまだ記憶にあたらしい。

Dwangoが開発している「DeepZenGo」が趙治勲名誉名人に初勝利し、さらにそれを正体不明のGod Moves(神の手)が初手天元とかふざけたことをかまして、圧倒するとかわずか1年の間に群雄割拠状態。

1980年代の第2次人工知能ブームから、2010年代の第3次人工知能ブームになってから、2016年はまさにエポックだ。

 

チェスの場合の数

チェスの盤面は8マス×8マス 64盤
最初においてあるコマを動かしていく、取られたコマは盤面上から無くなりキングをとれば勝ち。
平均して30手~40手で1ゲーム(チェックメイト&リザイン)
この盤面の局面数はおよそ「10の120乗」通り。
1997年IBMのスーパーコンピューター「Deep Blue」 世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを相手に勝利した。
現代ではコンピューターのガイド付きだったり戦局分析サポートがされたりしている
(テレビ中継で有利不利が数字で表される)
ディープ・ブルー
gigazine.net/news/20160301-chess-game-visual-look/

 

将棋の場合の数

将棋の盤面は9マス×9マス 81盤
敵コマの復活ありで、相手の王将をとれば勝ち。投了(決着がつくまでの手数)は100~150手程度。
場合の数は「10の220乗」通り。
2016/4 第1期電王戦二番勝負第1局、Ponanza電脳戦 の山崎隆之八段 Ponanzaの勝利(二局目は5月)

「第1期 電王戦」、PONANZAが先勝
www.itmedia.co.jp/news/articles/1604/11/news135.html

 

囲碁の場合の数

囲碁の盤面は19路×19路 361目
石はどこに置いてもよく、相手の石を囲えば取れる。勝敗は自分の石が囲っている地所の大きさによる。
オセロと違って、石の取り合いが発生するのでゲーム終了までの手数が決定されない。
投了までは200~250手程度で「10の360乗通り」の局面があるとされる。

 
えっと、10の360乗それってどんな数???
いちばん馴染みのありそうな大きな数で、高校化学あたりで習う、アボガドロ定数を引き合いに出すと、6.02*10の23乗。
1モル数あたりの原子の数だけど、常温で空気1molの体積はおよそ22.4リットル。

 

計算計算っと、
10^360通り=(6.02*10^23)^15
22.4L^15=1.79*10^20L=1.79*10^17m^3
(1000L=1m^3)

ここでみんな大好き、大きな数の単位、ザ・東京ドーム!
東京ドーム一杯分の体積は124万立方メートルなので

1790*10^10÷124=14.4*10^10
ちゅうことは、囲碁の局面の数は

 

東京ドーム14.4兆個分にふくまれる空気の原子と同数!

 

まさに天文学的数だよね。いや、計算適当ーなので、どっかでいいふらすときはちゃんと検算してね。
ま、そんなわけで、囲碁はその複雑さからプロ棋士に勝てるようになるのは演算能力のハードの向上スピードからすると10年以上先とも言われていたんだけど、十数年分一気に前倒しされちゃったわけさ。

 

囲碁や将棋は局面理解が必要なのでチェスの10の100乗倍以上複雑になると言われている。
Ponanza(将棋)は1秒に10万局面を検討できるそうだけど、囲碁は1秒で300局面検討がせいぜい。
1000台以上のプロセッサを束ねたクラウドサーバ、報道では30~60億分円の演算リソース(たぶん実費で1億2千万ぐらい)をぶっこんでいるんでないかと言われている。
3千万の教師データ棋譜を学習させる→57.0%の確率で、人間の指し手を模倣し、計算に3ms(0.003秒)。
一局300手で終わると考えると1.8秒(0.003*300*2)で1ゲームが終了する。
一手5μ秒=0.000005秒でおわる軽量版同士を戦わせてそこから得られた3000万の新たな棋譜からさらに学習

 

人間の対局が1局仮に1時間程度だとすると(プロのタイトル戦などでは各自の持ち時間が4時間~9時間)
仮に1時間とすると3000 0000 h÷ 24÷365 =3,424年分不眠不休で指し続けた時間に相当。
それってほぼ人類の歴史じゃんね・・・。
まさにある分野においては人類の思索の歴史とPeerした瞬間。

 

まとめ的なもの

知性と呼ぶにはまだ言うべくもないけれど、AIはすでにいくつかの役割において、大多数の人間を上回るパフォーマンスを出せるようになってきていて、その領域を着実に広げつつある。

複雑さのスケールから想像できるとおもうけど、人間には検知できないレベルの微細情報からの異物検査や異常検知、シミュレーション精度向上によって新素材の開発や創薬とかにもたぶんブレイクスルーがおきる。たぶんおきてる。
ロボットの機能を駆動、センシング、ロジックの3つに大別すると、駆動は蒸気機関のときには既にもちろんのこと、2016年には局面理解が必要なロジックの部分も勝てなくなったと見ていい。生物がいま現在も勝っているのは周囲の空気を読む、センシング部分である。嗅覚、触覚などをとってもまだまだ生体と同等の性能を出すには、サイズ、費用ともに現在の延長線上をたどるだけであればまだまだ代替まで時間的猶予はありそうにもみえる。カメラ、音波、赤外線センサー、人間には真似できないものも多くあるが、まだまだ生物のそれはイオン分子いっこで駆動したりする、すばらしいものだ。
しかして、人類。
ATCGを4進数、ヒトゲノムは約31億塩基対よりなる。
コンピューター01の2進数、8ビット=1バイト、4進数の31億は8進数の3,200,000=3.2MBであり、人間の設計図はフロッピーディスク2枚分。FDとかいっても、もう若い子には伝わらない感じだけど、iPhoneとかで撮影する写真1枚以下の容量でしかない。
研究室でえっちらと寒天に遺伝子ながして合成してた細胞分子合成もとんでもなく安価に高速自動におこなえるようになった。遠からず分子生物を利用したセンサーが流通することだろう。それは菌糸類とか植物とかそういう倫理的にもライトなところからかもしれないし、いきなり人間をセンサーとして利用すべく後頭部にジャックをぶっ刺す攻殻な形かもしれない。
2017年、Singularityがtearとにならずにdearとならんことを。

メリークリスマス。

 

参考

人工知能の歴史
blogs.itmedia.co.jp/itsolutionjuku/2015/07/post_105.html

ネット上の超絶棋士「神の手」 囲碁界騒然、正体は?
www.asahi.com/articles/ASJDM75CMJDMUCVL031.html

AlphaGo対李世ドル
ja.wikipedia.org/wiki/AlphaGo%E5%AF%BE%E6%9D%8E%E4%B8%96%E3%83%89%E3%83%AB

人間を超えたアルファ碁(AlphaGo)は、どのようにして強くなったのか
cakes.mu/posts/12685

AlphaGo の論文をざっくり紹介

AlphaGoの運用料金は30億円以上?
www.itmedia.co.jp/news/articles/1603/24/news058.html
囲碁AIの勝利でさらに注目? 今年の将棋「電王戦」は“頂上決戦”
thepage.jp/detail/20160408-00000010-wordleaf
machine intelligence landscape
www.oreilly.com/ideas/the-current-state-of-machine-intelligence-2-0

億(10^8)→兆(10^12)→京(10^16)→垓
10^23 千垓
10^60 一那由他
10^64 一不可思議
10^68 一無量大数
360乗は表せないのか・・・。
ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E9%87%8F%E5%A4%A7%E6%95%B0


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